作品名DeGurad[u]ation
元ネタ東方Project
公開日20250606
公開場所Pixiv小説
頒布イベント第二回幻想郷ほたる祭り
掲載誌DeGurad[u]ation

§

でっぷり膨らんで垂れ下がった肉に、ひょろひょろ縮れた毛が無数に散りばめられている中央には窪み、ヘソ。内臓脂肪たっぷりの男の腹は三段になっていない、それに耳で乗るみたいにして竿の側面を見ているのは、若い少女……いや少年か。男のペニスは別に逞しいサイズというわけではない大きさは10センチちょっと位。おっきければいいってもんじゃないからね、とでも言いたげに少年は目を細める。まるで気に入りのぬいぐるみに抱き着いているみたいな表情で男の股ぐらに潜り込んでいる少年。サイズ感はともかく肉棒から漂う匂いが気に入ったのか、少年は、鼻の下を伸ばして頻りにそれを嗅いでいる。スンスンと鼻を鳴らしてはとろンと目を垂らして口を半開きにしていた。

男は腹の上に乗る少年の頭を撫でたウィッグを被っている。耐熱ナイロンの少し硬い感触が男の指で掻き分けられ、その下から茶色かかった地毛が覗いている。少年が身につけているのはウィッグだけではない、ブラウス、半ズボン、それに、マント。普段着にしては少しファンタジックな装いだったハロウィンには時期外れだが。

なんのキャラクター?

東方Projectっていうんだけど、気にしなくていいよ。

ごめんね、知らないよ。なんて呼んだらいい?

〝リグル〟、このキャラの名前。〝カイ〟のまんまでもいいけど

男の子キャラ?女の子?

どっちでもいいじゃん、だよ?

女の子だよ、と言うにはその顔は血色の良い健康少年そのものだった。若い。その上からメイクをしていて、彩られた目や唇、頬がまるでみたいに鮮烈で艶めかしい。犬歯をみせてと満面に笑う表情が、アニメから飛び出たキャラクターのような強烈な彩度を放っていた。ボーイッシュな少女の「ボーイ」と「少女」だけをわざと強調するならこうなるだろうか、中性というよりは両性なその顔が、今は太った男のペニスを求めて伸びている。

舌だけをツン伸ばすみたいにした先端で、男のペニスを横から舐める。お、と声が聞こえた。男らしい低音の掠れた音色で、男らしくない情けない声。少年リグルはふんわりと笑む。

おじさん、かわい……

男の脚の間に体を入れ込んで、両手に感じるのは毛むくじゃらの肌。開いた男の太腿の内側には、でも、毛が少なくて色白で、すごくすべすべしていた。獰猛で臭い獣がひそめる柔らかな腹の肉を思わせるギャップを、少年は気に入ったらしい。太腿の内側のサラサラとした色白で柔らかい皮膚に文字を書くみたいに指の腹と掌を這わせて、優しく撫で回す。愛撫。

おう……

またかわいらしい声を上げる男。男は満足そうに少年リグルウィッグを撫でた。指に引っかかる長い角のようなものを避けて、たまに指先は地毛と素肌に触れる。猫のように目を細める少年、流行りのメイクではなく女装コスプレ用の強い化粧で笑う貌は幼気いたいけなのに淫靡。少年リグルを買ったデブ男はもう、クラクラにやられている。

ハマったな。上乗せ支援、お願いしちゃおうかな。お金持ってるようには見えないけど……

ちゅっ、ちゅっ、唇だけをすぼませて、その表面が男のペニスに触れるかどうかまで寄る。リップを塗って瑞々しさをチートした柔らかな唇が、期待でギンギンに張り詰めた男のペニスの肌を、わずかに触れたで歩き回る。可愛らしく肉色に塗られた唇を割って、肉欲さえ顕な赤々とした舌の先端がちろちろと顔を出した。男の竿の側面を焦らすように彷徨い、その間も濡れた唇が吸い付くような刺激をまぶしていく。

リグルちゃん、もうすこし……

ふぁい……

少年は男のペニスに、ハーモニカのように横から咥えついて唇で挟んだ。唇で吸着した口の中では舌が細かく蠢き、ジグザグに突くように撫で回すように、男のペニスを可愛がっている。少年が首を動かして刺激範囲を根本から先端へ移動させると、やがて亀頭の側部が口の中に含まれる。縦に割れた溝を舌先でこそいでほじり、丸みを帯びなめらかな表面を舌が舐めると、男の低い声が、低いまま切なそうに揺れる。傍目に見れば気色の悪い反応だが、スイッチがオンになっている少年にはその様子が愛おしくてたまらないようだ。

男の股ぐらに挟まり上半身を男の腹と太腿に預けるように体を投げ出す少年のブラウスは、漢によって上からいくつかボタンが外されている。開いたブラウスの隙間から差し込まれた男の太い手は、まるで女の胸でも愛でるように少年の胸元を撫でて揉んでいる。

あ、胸っ……

勃ってるね

だってえ

男のゴツい手が、少年リグルの上半身を包むコスプレブラウスの下で蠢いている。二、三本の指が、乳首を撫でたりつまんだりしているようだった。ハーモニカフェラで男のペニスを焦らし続ける少年は、ねちっこくときに鋭くオス乳首を刺激されて、小さく鼻を鳴らし切なそうに眉を寄せる。時折細くて薄い肩をくねらせているが、男の指に操られるように時折小さく跳ねている。

んっちくび、キュンってなる……

カイくんリグルちゃん、女の子よりも女の子の反応してるね

わ、私は、女の子だもんっ

そっかそっか。でも、おまたには男の子が付いてるみたいだなあ?

少年の下半身は太腿までのハーフ丈のズボンだったが、挑発するようにボタンとベルトは外れていてファスナーも下がり、その切れ目から白いショーツが見えていた。ショーツは膨れ上がっていて、女物ショーツの低い股上では隠しきれなくなったペニスの先端を、上から覗かせている。男のペニスへ奉仕し、男に乳首をいじられて、〝おんなのこ〟を名乗った少年は、発情していた。

「おじさん女の子に会いに来たんだけどな、リグルちゃんは男の子なのかな?」少年の股間の膨らみを見つけった男は、ニヤつきながら少年に問いかける。ベタついた笑みは、まともな女子なら絶対に逃げるやつだが、今のリグル少年には恰好の獲物。

やぁん私、女の子だよお?乳首いじられてこんなに感じちゃうのが男の子な訳ないじゃん……

もっとしてほしい?

うっ……んッ

きゅ、と男の指がブラウスの下でツン勃ちした乳首を、強くひねった。

や……ッ、強っ僕、それ、クるっ

鼻の下伸びてるよ。ほら、もっとおちんちん可愛がってくれないかな

ふぁ……い……

片方の乳首を強く愛でられ、もう片方の手で頭を「いいこいいこ」撫でられている少年リグル。次第に表情からカワイ子ぶる余裕を失っているようだった。男が指摘したとおり、欲情熱でのぼせた顔は表情筋が緩み、とろんとした目、伸びた鼻の下、半開きの口、みるみるトロ顔に変わり始めている。

「こうして」と男に促されて、お腹から頭を上げて股の間で四つん這いになる少年。男のペニスと顔面接近戦を強いられ鼻の下を伸ばしてヨリ目になっているのも、少年リグルを一層スケベな顔に仕立てている。

目の前にそそり立つ(大きくはないが)愛しい肉棒へ、鼻の下を伸ばしたまま舌を伸ばそうとする少年n。ベッドに腰掛けた男の勃起ペニスは四つん這いになった少年の口の位置より少し高くて、喉を反らせ顎を上げて口を開いて伸ばした舌は上を目指して突き出されている。まるで自分の鼻先を舐めようとしているみたいな間抜け顔の少年リグル。男のペニスを求めてだらしないトロ変顔を見せる美少年に、男は一層ペニスを固く反り返らせていた。

かわいいよ、リグルちゃん

あぅ、先っちょ、高いよう……私じゃ届かない……

きちんと声変わりを終えた男の声を天井で高く擦った、女を真似した媚び声。決して女のものではない低い波長と裏返った気音が混じっているが、その覆い隠された「男」が、少年の「女」を一層艶めかしくしている。男にしては狭い肩幅だが、女ではない鋭角が潜んでいる。男にしては細い腰も、女のようにくびれてもいない。

こんな子が野良で売ってるなんて、トー横はすごいな

んふふ地雷女や不良男はいっぱい転がってるけど、女として売り物になる男なんて、そうそういないんだからおじさん、運がいーよ

美形の顔は中性的でメイクのせいで見事女を演じているが、眼孔の彫りや顎の形、鼻筋は男の頭蓋に間違いなかった。男を上等に女へとラッピングしてある肉体は、エキゾチックなセックスアピールを放っているだが、性別セックスとは、なんであろう。この少年が誘う性は、異性であるのか、同性であるのか。ならば「セックス」「アピール」とは。

決しては女とは言えない男だが、それが女めいて男を求めてくねっている。意図的に混在させている以上、「未分化」という形容は不適当だ。セックスアピールを前に、だが確かにデブ男のは昂っている。

これでどう?

男は少年リグルの頭を撫でる手を、ギンギンに反り返ったペニスへ運んでそれを掴み、先端を下へ向けようとする。だが普段の何倍も、自分でも想像できない硬さで勃起したそれを下に向けることが出来ず、腰を引いて前屈みになって先端が下へ向くよう努力していた。

僕のために、こんな、固く……おじさん、腰が引けてて、かわいいなあ

ほら

うんっ

男のペニスはリグルの鼻先にまで降りてきた。リグルは男の上半身に潜り込むみたいにして拳一つ分だけ進み、喉を反らせて口を開き直す。かろうじて男のペニスの先端が上唇に触れる、なんとか赤みを増し張り詰める亀頭肉に上唇を被せると、骨のない唇肉襞に力を込めてペニスを自分の口にまで引き込んだ。

かた……ぁい……

無理やりお辞儀させたペニスをもう逃すまいと、リグルは唇を締め頬を窄めそれを咥え込む。手を使わないのは四つん這いフェラのお行儀だ。上に弾もうとするペニスを口の中で懐けようと首を動かし、唇と舌を使って口の奥へ導く。手を使わず口と舌だけでの愛撫がエスカレートし時折下品な音を響かせていた。男の眼下にある小柄な肉体、白い背中に浮いた背骨の凹凸、ショートボブの緑色の髪は樹脂製のニセモノとはいえ性行為に揺れると思えばそのツヤは逆に淫らに映る。首と背中を淫らにくねらせる姿は股間のものがぶら下がっていなければまるきり女。だが腰回りはメス男の限界、胸の下まではあばらが浮くほど痩けているのに、女艶のくびれにはなりきれずに、細った平行線のままするりと落ちていた。女になりきれない肉体の輪郭に、男はしかし逆に興奮しペニスを固くしていた男が、こんなメス行為をするなんて。

リグルちゃん、最高だよ。男の子なのに、女の子みたいにえっち。今まで何人のおじさんのカノジョになってきたのかな?

まだ女の子になって3ヶ月だよお、そんなにケーケンホーフじゃないもん💢💢💢

ごめんごめん、あんまり上手だからさ。ほんとに女の子みたいだ

メス男子を演じきる少年もさることながら、男も男でメス男子の扱いを心得ているようだった。メス堕ち女装少年にありがちの劣等感と承認欲求をくすぐるには当然彼を男として扱ってはいけない、だが完全に女として扱うのではなく〝お前は女みたいにかわいい男〟と絶妙な力加減が最も効果的なのだ。持ち上げおだてながら、図に乗せず、わからせる。男と女の間の喜びをふらふらと惑わせる。片や少年リグルの方にもその自覚があって、男のコミュニケーションに息を合わせていた。少年の本当の悦びがどこにあるのかはわからないが、今目の前にいて自分を可愛がってくれる変態おじから、今貰える最大の快感を吸い出そうとしていた。ビッチ。

女の人は、こぉんなフェラ、しれくれる?

そう言って少年は、イタズラな笑みを浮かべてからわざと舌を見せるように口を大きく開く。そしてそのまま男のペニスに貪り付いた。口の中には大量の唾液が溢れ、少年は舌でそれを掬い喉へ突き刺さるペニス竿に撫で付ける。それでも大量の唾液が口の端からだらだらと溢れ出してた。ペニスを咥え慣れた少年リグルの唾液腺は、口への刺激と性的興奮それに味に反応して、しとどに唾液を分泌するようすっかり学習していたのだ。

ちゅっ、ちゅぶっ、れろおっ

のどちんこと、おちんぽの、兜合わせっ

男の愛情に応え自分の性衝動をアピールするために、フェラチオの熱を上げていく少年リグル。うっとりと目元の表情を緩めながら、一方で唇と頬を絞める。舌でペニスの裏側をなぞり上がり、雁首のあたりの凹凸を乗り上げたりホジったりしながら丸を描くように撫でる。とば口からじわりとしょっぱさのある液体が滲み出してきたのを感じた少年は、じりじりした甘みとむず痒さを想像してあえてそれを自分のペニスの先端に描いていく。

だーめぇ

すげ、リグルちゃんのフェラ、どの女よりやばいよ

イきそう?ねえ、イきそう??

口の中がペニスと先走りと唾液でいっぱいで声を出すことが出来ない少年リグルは鼻から抜ける声で訴えて、男の腰に手を回してそれを追いかけ、頭全体を押し付けて自分の喉に男のペニスを貫かせるように、追い詰める。男の手は少年リグルのウィッグの毛を掴み、それをずらしてしまう。下から覗く少し色の薄い地毛の色。そんな乱暴さも、少年にはかえって興奮を誘う性行為の一環に過ぎない。

おじさんのちんちん、僕ののどマンコでビクビクしてる……

くぼっ、ぶちゅ、ぶぼっ、じゅるるっっくぼっ、くぼっ、くぼっ、くぼっ、くぼっ、じゅぶっじゅぼぼっ

わざと音が鳴るようなフェラチオを続ける少年。溢れる唾液を吸い上げると、その音は一層下品に高まった。男のペニスを根本まで呑み込み喉の入り口で締める、ちょうど亀頭全体を全方位から熱い粘膜で締め付けて喉と頭をねっとりと艶めかしく動かすと、男の腰は逃げるように引けた。

ま、まって、カイくんっ……

まちませーん

男のペニスから快感を、そして精液を吸い出そうとする少年。だが、男が快楽に呻きをあげる度に、少年のペニスもくっくっと持ち上がって、先端から行き場のない求め汁を垂らしていた。

ちんぽ、切ないよぉシゴきたいっおじさんのちんちんおしゃぶりしながら、僕もちんぽコきたいよおっ

何も入っていないのに、少年の尻括約筋は無意識にぐぐっと締り上がり、勃起した包茎ちんぽが上下に振れる。自分のペニスをしごきたい欲求をそのままフェラチオにぶつける少年。喉の奥で男の射精兆候を感じている少年リグルは口の中で舌を暴れさせ、喉奥を細かく震わせるように動かしながら、スロートを加速させる。加熱した亀頭粘膜に摩擦する少年の喉膣はまるでローションをたっぷり注いだ電動オナホール。男の射精我慢を突き崩すように抽挿を激しくし、舌の動きを細かく変化させていった。

せーし……おじさんの、せーし……僕を女の子にしてくれるお汁……っ

唇の力を強くして、竿の根本から絞り上げるように。雁首の円周を唇でひっかくと同時に、舌の裏で亀頭の表側を撫で回す。唾液はリグルの口の中で溢れて零れるままになり、男とリグルの接合点の床にぱたぱたとシミを落とす。激しいオーラルセックスで唾液の飛沫が描く跡は徐々に広がっていく。

だせ、だせっせーし、僕の口に、だせっのフェラで、イッちゃえっ

う、あっ、で、るよっ、のんで!

びゅっ、びゅびゅっっ……!びゅっ

リグルの口の中で、ペニスが跳ねた。先端から少しひんやりした液体が口の中に注がれる。体温よりも低いはずのそれをしかし、少年は愛しさのあまりに酒精のように熱く錯覚して、飲み下すよりも口の中に貯める。一噴き、二噴き、精液が口の中に溜まると、それを舌で混ぜて唾液と精液の混合液を作る。精液が体温と同じ温度まで温まって、口の中に匂いを放つ。生臭いけどどこかつんとする匂いが、鼻に抜けた。

この、におい……

とくん、とくん、少年の胸は早鐘を打った。好きな人を目の前にしたときのような、ときめきが少年の中で膨らんだ。胸が一杯になって、愛情ホルモンを誘う。この味と匂いは幸福感のクスリ。男からもらった媚薬精液を口の中で弄んで味と匂いを堪能しながら、口の中に収まったままの男のペニスにそれを撫でつけて、少年は更に愛情表現する。

くちゅ、くちゅくちゅっっちゅぱ……っ!

う、まって、イッたあとだから

女の子みたいなことゆってる……

射精後のペニスを、射精直前のピストンで追撃する。射精で防御力ゼロになったちんちん粘膜が途方もない快感と苦痛を同時に与えてくることを、少年はよく知っていたのだ。同時に、自分の中にあるペニスへの奉仕心と幸福欲求の不浄な混合物ミクスチュアが、男の絶頂を求め続けている。

指一つ触れていない少年の包茎ペニスは小さいながらに必死に勃起して、余った皮と可愛らしい亀頭の隙間に、とろとろの牡愛液を湛えていた。激しいフェラで体が揺れ、ノータッチちんちんが振られると時折、その粘液が糸を引いて床に垂れている。男のペニスを咥えながら、彼のカラダはペニス性交を期待している。女になると言いながら、まったく倒錯した肉体反応。少年の、ぐちゃぐちゃに壊れた性欲の姿だ。だが、それが正しいことかどうかなど彼にとってはどうでもいい。今は目の前の男の性欲を満たし、自分を女と見てもらい、自分自身を肯定してもらうことに、少年は全ての力を注いでいるのだ。

ちゅううううっきゅ、きゅぽっぐじゅ、ぐじゅじゅっ、れろれろれろっ、っちゅっ

ッっ、り、リグルちゃんっ、やば、それっっ

イけ、イけイけイけっ、もっと射精せ、せーしもっとだせっっ

男の玉袋が、もう一度ヒリ上がる。少年の口の中で男のペニスが上へ跳ねようとし、毛むくじゃらのケツと太腿が固く締まる。

また、射精るんだ……

んぉ

びゅっ、びしゅっっ、ぴゅっ……ぴゅっ……

〜〜〜っ精子と、お潮の味……っ

口の中に、特徴的な風味が再度溢れると、今度は不意に少年のカラダも、ぶるっと震えた。男の視界には見えないが、リグルの股間にぶら下がる愛液溢れの包茎ペニスから小さく飛沫が飛んで床を汚していた。さっきまでの焦れ溢しではなく、小さいながらも明らかに噴き出した跡。射精、だろうか。

リグル、ちゃん?

一発目の口内射精と比べると量も勢いもない、でも二回連続で「僕を女と認めてくれた」ことが少年にとっては何物にも代え難い、幸福だった。少年は、男のペニスとのオーラルセックスで、軽メスイキをキメていた。口の中に溢れている、もう何の液体かわからない匂い汁を、嬉し泣きの涙目でこくこく飲み下してぷぁ、と口を広げる少年。開いた口の中では舌が蠢いていて、精液の匂いが立ち上っている。

おじさんのおちんちんと口セックスして、私もイッちゃった……男の、牝ウェット……

そう言って少年リグルは尻もちをつくようにひっくり返り、股を開いた股間と腹、それに自分で汚した床を男に見せる。少年リグルの包茎ペニスはフル勃起ではなく、やわやわと中途半端な硬さのままだ。床にはショタペニスから垂れ散らかされた液体の跡が、あちこちに残っている。少年の半勃ちペニスの先端付近に絡むヌメリ汁の量は、ただの我慢汁では説明がつかないほどだ、それに今も男の目の前で小さく、とろ、と一筋の液体を落とした。勢いは射精のそれとは違っていた。ただ溢れ出して、押し出されて溢れたような、勢い。

うわあ、触ってないのに?

……うん

薄いね、女の子の精液だ

えへへ………

男を貶めるような評価だが、少年リグルは目を細め満足そうに笑う。もう一度四つん這いに戻り、「お掃除するね」今度は丹念なお掃除フェラ。また勃起する男。

すごく良かったよ、リグルちゃんのフェラ

おじさんこそ、私のクチでイッてくれて……ありがと

少年の表情には、男の性を貪った後のビッチ女の不穏さも、逆に作業として男をオーガズムへ押しやった後の商売女の厭らしさもなく、あまりにも嫌味のない笑顔と欲情の熱色だけが浮かんでいた。

その表情が娼年としての演技なのか、少女♂としての素養なのか、あるいは少年カイの特徴であるのか、男にはわからない。男色欲と金で彼の夜を援助する男にとっては最早そんなことはどうでも良かったし、リグルカイ少年にとっても男が自分をどう捉えているかはさほど問題ではなかった。

このおじさん、いっぱい僕のこと〝かわいい〟って思ってくれてる……

好きな男と清いセックスをする女にとってどうなのかは彼に関わりのないことだ、少年リグルにとって「精液」とは自分を女と見做しその肉体が性欲に満ちオーガズムへ至った証であった。精液が自分に向くことこそ自己の証明であり、その量が自己肯定の大きさだった。ありがとう、の真意はその歪んだ自己肯定への狂った感謝だ。

家出女装少年との性交を好む男にとって少年の持つそうした歪みは、理解しがたい情動ではあったが扱いやすい感情でもある。そうした不安定な少年性を男は好んでいる、その度合が想像以上に強い少年カイの様子を目の当たりにし、彼への愛着を増幅するデブ男。

この子、大当たりだ

一方の少年めぐるにとっても、男の性指向は扱いやすいものだった。だが、少年にとって今夜のおじさんは、数多ある選択肢の一つでしか無い。彼にとって大事なのはただ一点、〝かわいい〟の言葉と当面の生活費だけだ。それをくれるなら、どんな男でも、そんなペニスでも関係ない。

お掃除フェラで再び勃起した男のペニスにキスしながら、リグルはわらう。

で……せっくすも、する、よね?

彼はそういう自分を、選んだのだから。

§

かわいかったよ

その言葉はボクへの肯定、ボクへの承認。お金と同じで、誰に言われても一様に価値があるし、誰かに言われたからって特別な言葉にもならない。「かわいい」の言葉に、体温なんて要らないよ。それで十分だし、それ以上は重たい。

そうして今のボクはもう「かわいい」に嫌悪感なんか感じていないだから、こんな風にも生きていける。肯定、価値、料金、承認、存在、自分。チューハイやブロンなんかより、よっぽど頼りになる。ボクはそれらを必要とせずに済んでいる。

解き放たれた、気分だった。

朝までいてもいいよ、というの言葉に甘えて目が覚めたのはAM800。二つ並んだロッカーの片方が〝使用可〟の緑色だった。シーツを剥いで、ベッドの縁に体を起こす。ぬるいエアコン風が時折肌を撫で付けた。

眠い目を擦り欠伸とも溜息ともつかない息を吐いて、スイッチを探す電気じゃなくて、自分の。二度、三度、とウェイクを試みてようやく世界入力センサがReadyになるのを感じた。手を伸ばして取った携帯はボクとは違ってすぐに目覚めたでも特に何かを確認するわけでもない、通知領域を無味に流してまた放り投げる。昨夜吸い付かれた鎖骨の周り、執拗に舐められた乳首に触れてみる、それにあそこ痛みはない。痕になってなければいいけど。

カラオケボックスのような軽食のメニュー、AVのチャンネルリスト、アダルトグッズ自販機の説明、周辺の出張型風俗店の広告。その上に放られている持ち込みコンドームの箱、PTP包装の殻、使用済み包帯。ストロング缶が転がっていて、スナック菓子がしけっている。フロント呼出の受話器の傍に重なるメモ紙の、一枚だけが切り取られて反り返り、生温いエアコン風に揺れていた。

よかったらまた連絡して.

ばぁ〜か。だれが行くか。ちんぽだけになって出直してこい

上手くもない字でその一言と、電話番号、MINEの連絡先が書かれている。バカみたい。元々ZenleenでマッチしたんだからZenleenに送ってこればいいのに。カッコつけたいのかもしれないけど、ショーワっぽくて逆にカッコ悪い。薄っぺらい言葉の下には追加の金が置いてあった。〝かわいい〟とお金これだけあればいい。上辺のそれを握り潰してそれだけ掴む。声文認証でロッカーを開け、取り出した財布にその金を突っ込んだ。

ヘンタイにも、感謝はしなきゃいけない。これで向こう一ヶ月は生活できそうだった。

バウチャー(オジ持ち)を食事に替えて旨くも不味くもない朝ごはんを食べる。シャワーを浴びて、朝の毛の処理。自撮りタイム。セーラー服に着替えてガチめのメイク、バッチリ作った〝商品〟で笑って見せて、写真を保存する。ここには椅子もベッドも、大きい鏡もあるから、都合がいい。笑った顔だけじゃなくて無表情、挑発、上目。包帯を意図的に隠した角度、見せた角度。可愛くキメた立ち絵とか、ちょっとえっちなポーズとか。それに、胸と、ぱんつも。次の〝神〟を釣るのに使う餌を、今の内に作っておくトー横跡地の路上ではまともに撮影なんかできないから。

決して毎日こうではないけれど、非日常というほどレアな朝ではない。二、三週間に一日はある、こうした朝には慣れていた。

いっそここで死ねたら楽なのにね

本当に死のうと思っているわけではない、それを「消えたい」と訳すそれでもない。ボクはここで「ひとつづき」であることを辞めて「断続」したいんだ。「生まれ変わりたい」なんて世に美化されたコトバとも違う。でもボクには「変態」が出来ないことも、よく分かっていた。

ボクはもう一度布団に包まり直す。真っ白いシーツと布団でまんまるになり、その中の真っ暗な空間に潜んで息を殺す。この布団を出たら、全く別のボクに、あるいは全く別の世界になっていてくれやしないだろうか。そう願い、何度も願い、何度も何度も願って願い、でもボクは、恨めしいほどに「ひとつづき」だった。

昨晩ボクはこの中で小さな小さな死を迎え全く新しい個体になることが出来た。錯覚だけど。そのすぐにさめる錯覚が欲しくて、〝かわいい〟を売っているのだと思うと、何ていびつで不完全なのだろうと毒々しく思う。呪いの言葉を売って自分を買い戻そうとするその行動を、馬鹿だと思っていてもやめられない。チューハイやブロンなんかよりよっぽど、〝かわいい〟の毒性が強いことくらい、分かっている。

でも。不完全なボクは、こんな形でしか、ボクを一致させられないんだ。

§

ハア、ハア……

幽香の息が上がっている。眼下には、仰向けにひっくり返し腹を見せる姿勢でのメス後尾を強いられ、見事メスイキ失神を果たしたリグルがいる。失神し意識はないにも拘らず、絶頂のミニチュアを味わっているみたいに、時折肌が跳ねた。

彼のペニスは、精子にしては薄く水っぽい液体を自分の腹に何度もぶちまけている、女みたいにヘソ筋の窪みが通った腹には、大量のオス潮が降りかかり、まだ濡れている。精子臭い液体で自分の体を汚すリグルをみながら、幽香は射精後の余韻を噛み締めていた。

リグルのそれは終始全勃起していなかった。幽香がペニスをリグルの肛門に突き入れ吸い付いてくる直腸越しに膨れ上がった前立腺をペニスで叩きつける最中も、メスアクメをキメながら体を震わせ自分で勃起乳首を潰しているときも、ペニスからは白濁したサラサラの汁を何度も勢いよく噴き出しながら、だが幽香の腰使いの前にリグルのペニスは幾分かの柔らかさを残し、波打って揺れていた。ガチガチに、メスへの挿入に備えて勃起している生殖器の姿ではなかった。

リグルの腸内に溢れんばかりに精液を吐き注いだ幽香は、リグルの半立ち潮吹きペニスから目が話せなくなっていた。まだ潮を噴けるとばかりに震え柔らかさを残したまま勃起姿にすがっているが、雄々しく反り返る姿はやはりない。

幽香は、初めてセックスしたときこのペニスが幽香のを求めてギンギンに反り返り、張り詰めたアキレス腱のように硬かったのを、よく覚えていた。今はその姿は、全く目にできない。当然だ、幽香はリグルを男ではなく女として犯しているのだから。それが希望通りに進んでいる以上、リグルのペニスから男らしさが薄れていくこともまた、順当な変化だ。幽香にとっては望ましい変化だ。だが。

リグルの、ちんぽ……ちんぽ……っ

幽香は慌てて、まるで後ろめたいもを見てしまった後のように、視線を引き剥がした……いやそれは、初恋の相手と目を合わせるのを恥じらう乙女のようでもある。罪悪感と気恥ずかしさを綯い交ぜにした感情。そしてその一瞬一瞥だけでも、自分の臍の下に熱い塊が生まれ蛇のようにうねったことに幽香は気付き、そして振り払おうとする。だが、出来なかった。

ペニスに力を入れ、開ききったリグルのケツ穴の仲で動かすと、気を失ったままでもペニスを舐り回すように直腸が反応してうねった。

これを、私は、こんなものをっ!

腰を引く幽香。排便には不必要なほど大きく広がるようになった肛門は。ずる、と引きずり出されようとして、しかし亀頭が引っかかり最後の抵抗を見せてから、内側へと戻った。柔らかさと弾力を失わない、女の膣より優秀なオナホ肉。女のマンコよりマンコできる尻穴。いまや愛液のように腸液さえ分泌するメス男を見下ろしながら、幽香はその雄膣からペニスを抜き取った。

ぶちゅ、と下品な音を断てて、リグルの肛門は幽香のペニスを諦めた。広がった穴から、本物の男よりも大量に吐き出された精液が吹き出す。二度、三度、とポンプするように精液が噴き出してベッドに蒔き散らされた後、そのケツ穴はしぼんで閉じていく。大きく拡張された肛門は尻肉に挟まれるように閉じると、女のマンコとそっくりに縦に割れた姿をしている。

こんなにも、メスになったのに。私がこいつを、メスにしてやったっていうのに。

失神したリグルの殻に向けて、幽香はペニスをしごき始める。

リグルは、メスなのよ。私は、メスのリグルと、男としてセックスして、男として射精もしたのよ!

シコ、シコシコシコシコシコシコシコ……

ずちゅ、ずちゅっずちゅっ、ずちゅっずちゅっずちゅっ!

ダウンして半勃起のまま横たわるリグルのペニスを見ながら、幽香はガチガチに勃起したままのガチブトペニスを両手でしごきまくる。オス臭い先走りがすぐに溢れ出してリグルの体に飛び散っていく。

リグルの顔を見る。男らしさを失って丸みを帯びた体に、幽香が好で好きで仕方がない、顔。童顔で可愛らしい顔。女の体の上に乗っかっていれば、女の顔といいって間違いない。いま、リグルの体は幽香の手によってメスに変化している。ならばこの顔は女の顔だ。

私は、こいつを……女として、見ているのよ!だのに、だのになんで

理想の体に仕上がるリグルを見ながら全力オナニーに吹ける幽香だが、快感を貪ると言うよりもどこか切羽詰まっている。焦っている。射精しなければいけないという強迫感さえみえた。

センズリの甲斐あって射精へ至る幽香。男のペニスよりも圧倒的なサイズのふたなりペニスは、暴れまわるほどに跳ねて精液をリグルの体にぶちまける。

幽香の視線は、自分のペニスごしに、リグルのペニスを見ていた。目が離せない。

くそ、くそ……っ!止まらない、チンボコキ、止まんな……ふーっ、ふーーーっっ

射精を続けるふたなりペニスの先端を、リグルのペニスへ向ける。自分と比べて圧倒的に小さい。勃起もしない。メスの体についた不要器官に成り果てようとしているそれに、幽香は、執拗に自分の精液を浴びせかけた。さっき彼の肛門まんこの中に大量に射精した後だと言うのに、手コキで白い筋を空中に描くほど量の精液をもう一度ぶちまける。

っ……ホォっっ

びゅーっ、ぴゅっ、ぴゅるるるっっ!ぶびゅ、びゅーーーっ、ぶちゃ、びちゃびちゃっ

リグルのペニスが、幽香の精液で白い液体に濡れ沈んでいく。その光景を見て幽香は、更に興奮してしまう。手コキの勢いを再加速し、硬さを失わないペニスを握りしめながら、幽香はリグルのペニスを見ヌきしていた。

どうして……どうして、よッ!

何度リグルのメス体で抜いても、幽香の下半身に生まれた蛇のようなうねりを、追い出すことが出来なかった。精液を吐き出せば吐き出すほど、ペニスに突き刺さる快感は、まるでホールを反響し続ける音のように子宮を痺れさせ、彼と出会う前まではすっかり忘れていたメスの潤いを湛えていた。

§

そっちにいった!めぐる

人差し指を立てた両手を合わせ、拳銃を持ったアクション俳優のマネをしている。

だいじょうぶか、めぐる!?

う、うん

てきはひとりだ!まわりこむぞ!

広くもない家の壁、扉、襖と柱を使って、刑事モノの銃撃シーンのごっこ遊びをしている。相手は幼馴染の女の子だ。

ち、茅野ちの、そっ……

わかった!バンバンっ!

ばんっ

彼女は飛び跳ね、走り、転がって、見えない敵から飲み得ない銃撃をかいくぐって移動しながら、見えない敵へ銃を撃っている。ボクはそれに蹴っ飛ばされるように同じような動きをしようとするが、どうにもキレがない。銃撃を回避するローリングもしなければ、柱を使ったカバーリングもしない。アクションごっこで「男らしくかっこいい自分」を作ることが酷く嫌で、どうにも乗り気になれていなかった。

ちょっとめぐる、まじめにやってよ!

う、ん

学校でもそうだ。ボクは女の子じゃないから外に出て、男の子と一緒にヒーローごっこに混じる。でもヒーローは得意じゃなくて〝主人公〟たちをサポートする別の役を選ぶ。ドラゴンストーリーごっこでも、勇者やウォリアーじゃない。呪文を叫ぶウィザードもできない。いつもクレリック。

もー。じゃあなにしてあそぶ?

えっと……おうちごっこ

〝おうちごっこ〟とはつまるところ、おままごとのことだ。アクションごっこは苦手だけど、おままごとはマシだった。

またー?めぐるすきだよね。わたしもうあきちゃったんだけど

うん

めぐるいっつも〝こども〟役じゃん。私が〝おかあさん〟やったら、〝おとうさん〟がいないよ。〝おとうさん〟やる?

え……じゃあ、べつのことしよう。ブタミントンとか……

彼女は聞こえるように大きくため息をつく。いつも、こんな調子だ。女の子のほうが男の子をうまくやる。でも女の子は絶対に女の子で、女の子をしていても誰にも怒られない。ボクが男の子をやっても、本当は誰も怒らないだろう、そうあるべきなんだでも、それができない。

女の子になりたいというわけでもない。「おうちごっこ」でも、〝おかあさん〟や〝おねえちゃん〟は絶対にやりたくない。ボクはいつも、〝こども〟か〝あかちゃん〟。役割があるようで、何もないのが楽だった。

本当は、おままごとだって、好きではなかった。

〝かわいい〟と言われて強烈な嫌悪感を抱いていたボクは、どこに行ったのだろう。

「女の子」を拒絶していたのに、でも、今は「男の子」を前にすると凍りついてしまって体が動かない。怖い。

だからといって、「女の子」へ完全に指向する勇気もなかった。

どちらにもなれないボクは、一体何者なのだろう。

§

えー、かわいいー

カイくんそれめっちゃ似合うわー

ほんとうー?

女の私よりかわいーわコノヤロー

「カイ」はボクのH.Nハンネ。本名のめぐるを読み替えただけの安直なものだけど、使い始めてもう皆にそう呼ばれてるので変えるつもりもない。

〝かわいい〟をボクは、ここで克服しようとしている。

「東方シアター歌舞伎町の」という通り、この区画には既にそんな名前のシネコンはない。「東方シアター歌舞伎町」がないだけではなく「跡地」そのものも、もう無い。かつてそう呼ばれた場所に今は、高層ホテルが聳えている日本の聖地の一つであった〝カブキチョウ〟に宿泊するというフレイバーを楽しみたい酔狂な外人向けの、外資系ホテルだ。名前は、横文字でダラダラ長いので正確に知らないボクには縁もない。

旅行者というのは訪れた土地の猥雑な側面を見たがる、日本人だってそうだ。汚いものこそ本質だなんて、人間ってのはよく分かっているなと思う。でも、そういう目的でこのホテルに宿泊するのなら「残念」と言わざるを得ないこんなホテル、ジャングルの秘境で先住民の生活を垣間見ようと動物園を訪れ飼育員の姿を見るようなものだから。裏通りの一本一本にまで煌々と照明が刺さり、監視カメラが互いの死角を補っている。まるで屋内みたいな潔癖さが街全体を包み込んで、病質クリーンを体現している。治安は良く、裏社会はすっかり追いやられより深い場所に潜み居る、いまやただこの街を訪れただけではリーチできない。路面もよく清掃され、多少のゴミは落ちていても、人は落ちていないこの「東方シアター歌舞伎町跡地の横トー横」の付近以外は。

ありがと。普通の通販のだけどね

カイが着たら〝普通〟にはならないんだよなぁ

くすみカラーのボレロとワンピースを中心に色数少なめでまとめたコーデ、坂道系テイストからボクは徹底的にミリみを取り除くことにしている。だからって代わりに、安直に夢みや地雷要素を突っ込んだりしない。ボクの主義はあくまでも「ナチュラルでかつ、つくられたカワイイ」だ。できるだけ「羽目を外していない」女子高生のイメージにまとめつつ、スカートの長さと広がり具合、ボレロの丈と袖の長さと、リボンの結びの大きさ。ソックスと靴も大人しめなセレクト。それに、メイク。でも、こんな制服はどの学校のものでもないこれ自体は男の幻想を具現化したアイテムだ。それをまとう、これがだ。

おー、カイ、久し振りじゃーん!相変わらずかっわいーな

えへへ、じゃあ付き合う?

男じゃん?

男と女だもん、問題ある?

カイをかわいいってゆったんだよ

じゃあルミが男になればいいよ

無茶言わないで

ちらり、と脳裏に恵谷の姿がよぎったが、すぐに振り払う。ここではボクは「生まれたときから」でいられる、嘘をついているわけではない。新しい場所では過去は関係ないし、この場所では誰もそんな細かいことを問わない。ここには恵谷はいないし、ボクがなった理由も時期も、誰も気にしない。それが「トー横跡地」、ボクの居場所だった。

日進月歩の技術革新と多国籍な資本元の意向を反映しながら、安心安全と清潔で健全な歌舞伎町を目指して統廃合と区画整備を繰り返した結果、この歌舞伎町は独自の進化を遂げた。ほとんどの部分でそれに成功した反面、極々小さな領域には機能と物理の緩衝地帯がトマソンじみた目的不明の空間や構造物になっている。何を区切るのかわからない低くて短い塀理由のわからない段差行き先のない階段ただ広い空間の真ん中に固定されたベンチ、何故か一部だけ素材感が違う地面、謎の柱動かない時計灯らない街頭車道もないのに佇む信号機。ホテルと周囲の地権者や機能性の折り合いがつかないせいで開発の谷間のまま放置されているとの話だが、詳しいことはよくわからない。

それら目的不詳の凹凸オブジェクトを思い思いに活用して、ボクと同じくらいの年代の人が好き勝手に集まっている。あと、無闇矢鱈に多い鳩。仮にも公共の往来を一企業や一個人が取り締まれる訳もないし、公権は、この場所をどうして残しているのだろう

錠売ってねえから、諦めてその分ストゼロ買ってきたわ

朝からか。元気いっぱいかよ

元気ないから飲むんよ

わかる

ボクらとは別のグループから、かんぱーい、と女子らしい黄色い声が聞こえる。ストロング系酎ハイ「ストリング・ゼロ」のロング缶を開けたのは、ボクと同年代くらいの女の子。フリフリとレースが重なった白黒バイカラーのワンピース、それとは不似合いな通学鞄にはピンク色のキャラクターグッズが留められている。それに既に口のあいた缶を当てて乾杯に応じるのは、青や緑の鮮やかな色合に巨大ボタンやファスナーを強調した、ピンク色の髪の女の子。どちらもおそらくは、お酒を飲める年齢ではない。

そこに割って入ってきたのは学生であることを隠そうともせずブレザー制服のままの子。ほんとに自分の学校の制服かどうかは知らない。そんなことどうでもいいもん。その場で小さくぴょんぴょん跳ねるみたいにして、待ち合わせたみたいに手を握り合っている。制服の子が、おみやげ、と持ち上げたコンビニビニール袋には、同じくストロング系の「シックスナイン」が入っていた。

ごゴブサタじゃん

親につかまってた、っていうかカンキンされてた。〝だったらもう学校行くな〟だってさ。学校よりバイトさせて金吸い上げてる毒親がうっせーわ

うちの親みてー。大学生のピは?泊めてくれないの?

別れた。ほかの女とヤってた

二股かよ

わかってたけどね。こんなヘラ女なんて遊びに決まってたわ

ここにはメンヘラしかいねーしな!

そう、メンヘラしかいない。そうとは限らないけど、だいたいそういう感じ。でも、こんなに安心できる場所は、他にはない。ここにするのは、悪さをしたりテリトリを競ったりヒエラルキを築いたりする徒党ではない。かつて歌舞伎町にたくさんいた裏社会の人間や半グレ、商売のナワバリを争う者でもない。とにかく何らかの組織や集団に属した人間ではない。もっと、もっともっともっと弱い人間の、極めて緩くて脆くて弱い横のつながりで集まっている個人、「集団」というよりは「集合」。

男女比は女子の方が少し多い、こういう場所に来たいと願う動機そのものが、女性に寄り添ったものなのらしい。ボクはそう考えている。

今って古参は西新窪行ってんでしょ

金あんだよね、結局さ

あたしらってもっと落ちこぼれってか

でも古参が残ってたころって結局グループあったじゃん

あった

あんなんなったらガッコとかわんねーよ

たしかにー

ハバツつくって、段々いなくなってったよね。ハバツ同士で雰囲気悪いこともあったしさ

ここきてまで学級会したくないよねー

いなくなって良かったわ

だね。こっちはこっちで、ここでやってこうぜ

おーう

このトー横は一応は公共の往来で、この場所に特別な用事もなく通り過ぎる人もいれば、ボク等とは関係なく留まっている人もいるホームレスはその一例だ。かつてこの場所で、トー横にたむろする子達がホームレスを暴行しその映像がSNSに流れて問題になったこともある。メインメンバーは他の場所に流れたし、自警団みたいな自治機能も消えて、実質的なリーダーもいなくなった。無法地帯に更に近づいたこんな空間を、公権があるいは地権者がどうして放置しているのか、詳しいことはよくわからない。言ってしまえば、その理由に興味なんかない。

この場所が時代を写す鏡だとか、追いやられた子供達の波止場だとか、美化された詩的な表現をされているのも見る。でもそんな公衆便所の落書きみたいなリリックにも一切興味がない。そんな表現は何も実態を示さない、単に大人にとって都合の良い解釈でしかない。理解だって、解決だって、してくれない。大人達はボクらからストゼロを取り上げ、ブロンを取り上げて、この空間を取り上げ、ここで過ごす時間を取り上げて、ボクらの掴もうとする藁を取り上げるだけだ。他には何もしない。何もだ。

大人だけじゃないかもしれない。この場所にいない全ての同年代の人達だって、教室からボクらを嘲笑い、理解不能な宇宙人だと馬鹿にしているに違いない。

それでもボクはここで生きている。他人の理由口実なんて、求めない。

ボクらにとって重要なのは、このトー横がどうして存在するのかではない。今も、そしてこれからも、ボクらの居場所として残っていくこと、それだけだ。

ボクはここで、〝かわいい〟を克服しようとしている。

でも、ボクの中に居座っていた〝男〟、〝自分は女ではない〟は、一体どこに消えたのだろう。

ふと、携帯に通知が入っていることに気がついた。親や学校でないことを願いながらアプリをアクティブにしないよう通知のみを確認する。通知はSNS「Zenleen」への新着レス。

あれ、募集取り下げるの忘れてた

一晩から当面の間の宿の世話を募集する書き込みは、宿が見つかるか懐事情に都合がついたら募集は削除するか閉鎖するものだ。今朝のおじさんはしばらく宿には困らない程度にはお金をくれたのだけど、その時に募集を閉じるのを忘れていたらしい。また新しい〝神〟が釣れていた。

お金はあるにこしたことはないし、宿代と別に払ってくれる人だったらかな

早速Zenleenのレスから「今いいですか?」を送り、OKが出たので、セルフィーとマイクで動画通話を開始した。当然電話番号は通知偽装しているし相手もそれは了承済みで、どちらかといえば顔の保証を得るため。僕の方も、あんまりにもアレなオッサンだったり会話してみて危なそうだったら、何か理由をつけて断る。

あ、書き込み見ましたカイです、身確で電話しましたー。一応確認しますけど、僕、男ですけど大丈夫ですか?……あは、じゃあその条件でお願いしまーす

通話自体はで終わった。お金ももらえるって言うし、もうひと仕事って感じかな。今度こそ募集を閉じて置かなくちゃ。終話してZenleenを操作しようとしたとき。

〝カイ〟って、あんたのアダ名?

あだ名、って今どき……目の前に、突然人影が差し込んでくる。学校関係者じゃなきゃいいんだけどなと顔をあげるとそこには、見慣れた出で立ちそれに、顔。

……風間?

§

まだ幼い頃の誕生日の出来事だ、思い返すならこの日の出来事は思い出深い。精神理学的な意味で言う意味ではなく、もっとカジュアルなノリで「トラウマだわ」といえる出来事。

誕生日プレゼントなんて、実際には本当に欲しいものが貰えるわけではないことに、幼いながらに僕は薄々気付いていた。欲しいゲーム機、流行りの漫画、キャラ物の文房具、アニメのグッズ、そんなもの期待するだけ無駄だ。「これが欲しい」と伝えてあっても貰えるのは、欲しくもない教育教材、好き狙いのズレたキャラのグッズ、嬉しくない服、靴、楽しくない玩具。恩着せがましい声。ありがとうと笑顔を返さなければいけない、重荷。

子供にはこうあって欲しい〟という与える側の願望が透けて見えるプレゼントに、楽しみ二割、期待していない七割といったところだ。残りの一割は……もっと悪い状況への不安つまり。

今この瞬間みたいなやつ。

包装紙を剥いて現れたものに、どう反応を返せばいいのかわからなかった。それが一番恐れていたことだと初めて気付かされ狼狽したという方が正しいかもしれない。プレゼントの包装紙の下から現れたのは、別に好きなわけでもないタイトルの僕シング漫画とタイアップした子供用のちゃちな僕シンググローブだった。

ありがとう

それを与えてくれた人、周囲の人々、僕を取り囲むすべての人達が、このプレゼントを見て厭味一つ無い笑顔を浮かべている。この人達は、僕がこのプレゼントを嬉しく思い喜ぶことを望んでいる。このとき改めて感じたのだ、僕は男として望まれている。

ありがとう、と反応を返しながら内心で猛烈な後ろめたさを感じていた僕は自分自身に男らしさの欠片もないことに気付いていたからだ。アクションごっこもできない僕が、ボクシンググローブをつけて一体何をして遊べるだろう。そして、でも、それを望まれているのだという重圧に、逃げ出したくなるほどの嫌悪感。泣き出したくなるけど僕はもう大人だ昔のように、大人からの不本意な仕打ちを恨んで泣き出したりしない。彼らには彼らの思いやりがあるのだ、それを正しく受け取れない僕が、悪い。

僕に向けられる〝かわいい〟を恐怖していたあの頃。それが恐怖だった理由は、自分の男性性を愚弄されていたからではなかったのだ。周囲からの要求に応じて男らしく振る舞うことができない自分への、後ろめたさ故だった。

僕の中にある「いい子」が言う。

ちゃんと男の子みたいにできなくてごめんなさい。

§

それはその後も裏付けされていく。幼い子供へは容赦なく疑問無く浴びせられていた〝かわいい〟は、掌を返したかのようにやみ、代わりに〝男らしくあれ〟〝女みたいなのはやめなさい〟という圧力へ変化する。僕が抱いたのは圧力自体への嫌悪ではない、そうした「幼子」と「少年」の間で勝手に僕を別のものに産み替えたような身勝手さが、酷く僕の不信感を煽った。僕は、昔から、ひとつづきで、僕だった。勝手に別物に切り離すな。大人共は僕を、いっこの人として、認識していないのだ。

どうやら顔が中性的だったこともあるらしい、それが親の不安を余計に誘ったのかもしれない。僕から「女っぽい記号」を徹底的に避けようとした。それを身に着けようとする僕に「オカマはやめなさい」と叱りつけた。マグカップを両手で持つだけでも「女みたいだからやめなさい」と叱る。「変態になるから」と先回りして身の回りを整えるのだ。踏み外せば叱られる。

女になりたくてマグカップを両手で持っていたわけでも、女になりたくてスカートを履いたわけでも、女になりたくてピンク色を選んだわけでもない。身振りに女性のようなものを取り入れたからって女になりたかったわけじゃない。ただ、自分はそれが好きだなと思っただけだ。そこに「性別」はなかった。「性別」は大人が勝手に押し付けた、しかも、時期によって、一貫性無く。

はっきりと言える、これが逆つまり、僕に「トランスセクシャル」を強いて、大人たちが僕の男の体に女の振る舞いを期待してきたとしても、同じように大人を不信しただろう。

何がレインボーだ、何がグラデーションだ。どの色になったとしても、何故どれかの色でなければいけないのだ。

僕は、決定的に大人とは相容れない。僕の精神はまだ、この校門の中にある。僕はまだ卒業できていない。18歳で大人となり、高校を卒業してその立場を明確化したとしても、僕はまだ、子供のままだ。

大人達の都合の社会いや、「性の多様性」を謳う偽善な排他的社会で、僕はきっと摩耗していく。

いっそのこと、変態する昆虫のように蛹になって本当に生まれ直すような体であれば、どんなに楽だっただろうか。だのに今の僕は、変態せず生まれ直さず、意識の一貫性を持っていることによって、周囲からの一方的な断絶を蒸し返されるように「ヘンタイ」と指さされる。

僕はいっそ、芋虫になりたい。

§

らる、それかわいー!

えへへ、いーでしょ

教室の真ん中に4、5人の人だかりができている、いつもの光景だ。女子が数名集まって黄色い声を上げていた。太腿にかかるだいぶ短いスカート、バラエティ豊かな髪型、メイクが強めの子。一方でジーンズスタイルの私服の子もいれば、おとなしめの髪色の子もいる。この学校は、制服はあるが着てこなくても良い。身だしなみについての校則もあるが、遵守すべき規則ではなく目安とされている。かなり自由な学校、ここは夜間学校だ。彼女達は「らる」と呼ばれる生徒を囲うように集まっていて、今は彼女の身に付けているアクセサリか小物か何かを話題の中心にしているようだった。

いいな

それを自分の席から遠巻きに眺めている男子生徒。マッシュともボブともつかない中途半端な髪は少し跳ねっ返りのくせっ毛で色が薄く、跳ね返った部分は日に透けると殊更に明るく脱色しているようにも見える。その向かいにはもう一人、ぱっつんと水平に切り揃えたおかっぱ頭が特徴的な男子。この夜学は制服を着てくる必要はないのだが、律儀に上下ともかっちりと学ランを着込んでいる。おカタい制服を着ている割に、その髪の色はアッシュグレーでほとんど白、遠目からでもすぐに分かるほどに目立つ。背後の嬌声の方へ顔だけで振り返るように視線を送る銀髪男子は、苦笑いしながら正面の少年へ向き直った。

相変わらず囂しいな

ま、まあ元気なのはいいことなんじゃない?

男子から見れば、女子のああした集まりは未知のコミュニティだ。その盛り上がりのポイントも、盛り上がり具合も、その言葉さえ異世界の言語に見える。彼等だけではなく他の男子からもそれは大差ないようだ。今はその輪にいない女子たちも別の日には交じることもあるし別のアイテムで盛り上がることもあるが、だがそこに男子が交じることはない。男の視線をよそに盛り上がる女子の輪。

ねえねえ、それどこで買ったの?

秘っ密ぅ。こないだ見つけたお店が隠れ家的な?ちょっといい感じでさー

えーどこぉ?今度連れてってよ

女子が囲むように羨ましがっていたのは、どうやら真ん中の子が持ってきた背負鞄リュックのようだった。装飾が派手で、見ようによっては翼のようにも思える。入手先を問われるももったいぶったように「えぇ〜、どうしよっかなー」と笑っている中央の子は、周囲の女子から見て一回り程背が高い。ふわふわとウェービーなソフトマッシュはド派手な青色だった。私服も派手で、そのカッコでどうやって授業を受けるのかというフリフリの、コスプレのような姿。レースフリルを盛ったブラウスにシフォンスカート、目立つのは声だけではなかった。

意地悪言わないで、おねがいっ

ちっちっ、らるを落とすのにそんなんじゃダメだよ

えっ?

らる……ワッパーで手を打たない?

へっ!?

クワトロダブルワッパーチーズ。

す、スパイラル卍ポテトも……

よし、落札!

女子の一人が青髪の子に抱き付くようにふざけてはしゃいでいる。らる、と呼ばれた生徒もケラケラ笑いながらそれを受け止める。

うぇーい、約束だかんね!

らる、そんな細いのにクワトロダブルワッパーにポテトなんてどこに入るの?

別・腹!

ちなみに「クワトロダブルワッパーチーズ」とは近くのハンバーガーショップのメニューだ。運動部の男子でも一つを持て余すような特大サイズのバーガーで、でかいだけでなく分厚いパティが4枚重ねな上に尋常ではない量のチーズが挟んであり相応のカロリーが約束されている。それを女子が食べるとなると一大事な覚悟がいる、普段ならば食べるのを避けるくらいの代物だ。

心はこんなにも乙女なのに、体は食べざかりの男だってんだから、はー、この世はクソゲー!

大丈夫!〝夜学の女神〟らるちゃんは不滅だよ!

あはは、善処しまーす

てへぺろ顔をキメるらる。「じゃあ明日昼待ち合わせでいい?」「どこ?」「奥佐和駅」「奥佐和かぁー、やっぱりね!」話は盛り上がったまま続き終わる気配はない。

女子の輪にいて、女子に馴染み、女子と一緒に盛り上がっている恵谷らるは、しかし自らを男と言った。そう言われてから見直すのなら確かに体の端々に男らしい特徴が見え隠れしている、だがそれも言われて見直すのなら、であった。そうでもなければ全く「そういう女の人も普通にいる」という程度のものでしかない。

……いいな

めぐる

それをぼんやりと眺めていた男子生徒は、目の前のおかっぱ少年に声をかけえられて我に返る。

えっ?

えっ、じゃねえよ。ノート、使わないなら返せよ

あっパクくん、まって、もうちょっとで写し終わるから!

ったく。本当はぐーたらで不真面目なのに、真面目そうな顔のせいで得なヤツだ

パクにノートを写させてもらっているめぐる。明後日には期末試験だ、夜間学校だからって無策で挑んで何とかなるものではない。だがその〝策〟がこれだ。今になって必死にノートを写しているが、そもそも写した内容を覚える時間など残っていない、ただの写経に過ぎないのだ。せめてノートの提出で基礎得点を貰えるというのならわかるが。その点をしても、パクからみればめぐるの焦りは全くの無意味だった。それを言ってもノートは写したいという友人の頼み込みと、自身が一夜漬けの類をしない性格もあっては、断る理由もない。

そのノートの代償、お前は何を奢ってくれるんだ?

クワトロダブルワッパー、パクくん、食べる?

いらないよ……。しかし自由なもんだな、この学校風紀ユルユルだけど、恵谷が一番楽しんでる

そう、だね。でも、恵谷はその、しょうがない、んじゃない?

物心付いたときからの、ねえ。

頬杖をついて、女子の輪の中心で飛び跳ねているらるを見るパクめぐるの方からは、その表情は窺いしれない。同時に、パクの方からも今この瞬間は、めぐる顔は見えなかった。

「折り紙」とはつまり診断書のことだ、惠谷らるは自己の認識の開始と共に性同一性のねじれを得ていた、そのことを医学的に証明する、証明書折り紙。まさしく〝心は乙女〟なのだ。親も、学校も、同級生も、恵谷らるを知る人間のほとんどがそれを認知し、受け入れている。彼は物心付いたときから、肉体と逆の性自認を持つ者として承認されているのだ。

恵谷らるを見るパクの表情はいざ知らず、しかしめぐるのそれは、紛うことなく羨望に満ちていた。

いっそ、ああだったら、よかったのに

元からそうだったと証明してくれる「診断書」、自分にもそれがあったなら、こんなにももやもやとした毎日を送らなくて済んでいたかもしれない。夜間学校になんか通う羽目にはならなかったのかもしれない。めぐるの、恵谷らるをみる目の色が、変わっていく。

気付くのが少し遅かっただけなのに

自分を「持たざるもの」と卑下してしまえば刹那、羨望は怨みにさえ似てくる。今のめぐるにもそうした悪魔の手が忍び寄っていた。この学校に来ている時点でそうした特徴も恐らくは彼(女)の人生に暗い影を落とす要素なのだと容易に想像こそできるのに、それを意図的に無視してまでめぐるは「不幸な自分」を肯定しようとする。めぐるには確かに、その「不幸」を正当化してしまう覆せないビハインドがあった。

(性別を意識するのなんて、普通は今ぐらいの歳になってからだ。僕は気付くのが遅かったから「おりがみ」が貰えない。もらえても、恵谷のよりも、。恵谷は、ずるい。もう僕には取り返すことができない。落伍者なんだ、僕は)

めぐるの毎日は、こうだった。彼は学校に来て恵谷の姿を目にする度に、自分が劣等なのだと思い知らされる。気分は、晴れない。

いい気なもんだな。ま、こんな髪してるオレが言えたことじゃないけど

と、振り返ったパクめぐると違ってその理由がない彼は、けろりとした顔で恵谷のはしゃぎっぷりを見ている、どこか嘲笑うようでもあった。表情を戻し、慌てて取り繕うめぐる

そ、そうだよ。何その白髪。おじいちゃんじゃん

はあ!?白髪じゃねーし!銀髪だ銀髪、みてわかんだろ!?

わーっわーっ、ゴメンって、竹刀はだめ!

§

小学生の社会は、低学年から中学年、高学年と進むに連れて、男子と女子の溝が急速に深まっていく。中学校を超えるとそれは「差」でしかなく差を内包して再び緩やかに接続されていくのだが、小学生の男女間は、対立的とも言える分断を生じるものだ。

小学生の持つ幼さ故の残酷さは、年齢による変化の遅い者や変化が起こらない者にとって、生死に関わる社会の激変だ。

ちー、おはよ……ん?

茅野ちのの周りには4人程の女の子がいた。心做しか、茅野ちのめぐるの間に立ちはだかっているみたいな雰囲気。茅野ちの自身の視線もさることながら、彼女を取り巻く友達の表情も、硬い。

めずらしいね、えと

めぐるとはあまり交流はないが、名前は知っている子達だ。「ゆう」「きらり」「あおい」「みるく」。茅野ちのと仲がいいのは知っていたけれど。一緒に学校に行く予定になってる……というのは些か不自然に思えた。二人の家は学校からかなり遠い方だ、一緒に行くとなると他の子達はわざわざ遠方からここまでやってきてということになる。帰りならともかく、行きの通学は。何か理由があるのかとめぐるが訝しんでいると、ちょうど茅野ちのめぐるの間に立つ女の子、ゆうが口を開いた。

きもちわるいから、もういっしょに行かないって

えっ?

ゆうの言葉に耳を疑うめぐる茅野ちのは何も言わない。援護射撃はゆうの方から次々と飛んだ。

あしたからもう声かけないで。ちの、めいわくしてるんだから

男子は男子でとうこうしてよね!

ほんっと、きもちわるい

どういうことか問い質すことも、めぐるには出来た。だがそうしなかった、する気にならなかったという方が正直かもしれない。

ああ

いつかこうなることを彼は予感していた。茅野ちのの態度を目の当たりにしためぐるは、そうなのかとすぐさま諦め引き下がってしまう。女友達で集まって登校する姿を遠巻きに見るように距離を取ってから歩き出す。

ちかよんないでよ

ついてこないで

茅野ちのめぐるを、一瞥もしない。もうめぐるなど世界に存在しないかのように、ただ周囲の子と笑いながら歩いていた。

小学生の社会に生まれるこうした溝は、もう数年の間に再び埋まっていく。差は「差」でしかないと承認され、やがて差を内包して再び緩やかに両者は接続されていくものだ。だが、一部の特殊な例を除いて、たった今この社会においては、それは敵愾心まで生じながら深まっていく。

その「特殊な例」が、実はめぐる茅野ちのだった。幼馴染のような2人は、そうしたこども社会の潮流にさらされながらも、随分長い間一緒に行動していた。

きもちわるい、か

だが周囲の目、要請、圧力はいよいよそれを許さなかったのだろう。異性と一緒にいれば友人の輪から外され、付き合ってるのかとイジメに近い茶化しに遭い、放置すればみるみる悪化する。たった一人の異性の友人といるために、同性の友人を何人も失う上にヒリヒリするような嫌がらせを受ける選択をするわけには行かない。

さしものめぐる茅野ちのも、周囲で高まる分断の空気を感じ取っており、そしていよいよ魔の手が茅野ちのに伸びたのだ。めぐるにはそれを責める気にはなれなかったのだ。自分なら悪魔を言いくるめ逃れることが出来ただろうか、と考えてもまるで不可能に思える。それに。

おとこのこでも、おんなのこでも、なくなっちゃうのかな

めぐるには、それを跳ね飛ばすだけの足元の土台がなかった。男になりきれず、女ではない。そんなふうな後ろ暗さがいつも手足の先から染み込んでくる思いでいたのだ。男女が明確に分断されるこども社会の中で膨らみ続けていた漠然とした不安は、いよいよ残酷に彼をどちらでもない余り物として輪郭した。想像通りだった。

ぼくは、どこにいけばいいんだろう

学校の男子とはウマが合わない。戦いごっこもできないし、スポーツもさほど得意ではない。女子に対して刺々しくあたる強かさもないし、一方で案の定女子の社会からも切除された。

そうやって、逃げ続けて、このザマか

あの日を境に、めぐるにとって学生生活とは我慢と逃避の日々に変わってしまった。逃げ続けた結果が、この夜間学校だ。逃げ続けた先の、後ろめたく陰鬱とした新世界だったはずなのに。

ちょっと

ちー……白石

声の方には、彼女が立っていた。めぐるの方へ冷ややかな表情を、一瞬だけ向けるとすぐにその先にある机へ送った。それは彼女の席だ。退けと言っているのだろう。

お、おは

邪魔なんだけど

えっ、あ、ごめん

飛び退いためぐるを一瞥だけしてすぐに、すん、と視線を流し切って白石は席についた。そこにいるめぐるにも、パクにも意識をくれない。

白石茅野ちのは、休みがちだ。理由はわからないが、家庭になにか問題があるようだった。だがその割には欠席日数がハンパなくても進級できたり、珍しく登校しても常に持ち歩いている携帯電話に応じるようにそのままいなくなることもある。不良というのとは少し違う形、そもそもまともな境遇や生活態度なやつなんて、この学校にはいないのだけれど。

敢えてそんな問題児ばかりがかき集められているんじゃないかと、当の生徒たるめぐる自身さえ思うくらいの、妙な学校だった。

今日も休みだと思って彼女の机の付近で立ち話をしていた二人だったが、そそくさと場所を移動することになる。いつものようにめぐるの席に落ち着いた。

小学校同じだったんだろ?もう少し仲良くしろよ

もう昔のことだよ

パクの尤もな言葉にめぐるは窮してしまう。

……仲良かったわけでもないし

〝仲良かったわけでもないし〟。本当は、めぐる自身はそうだと思っていない。仲が良かった頃も、本当はあった。

あの頃はよくわからなかったんだ

今は?

……今もわかんないや

肩を竦めるようにして小さく笑うめぐる。逃げ続けた先に、また茅野ちのがいるとは思っていなかった。昼の普通科学校に通うには彼女にも彼女なりに何か問題があったのかもしれない、何かあったのか。あの時茅野ちのは本当に自分を「きもちわるい」と思っていたのか、それとも。だが、それを聞く機会はなさそうだった。

性別なんて、なかったらいいのに

いつ何時でも、気を抜いたら地面からまるで急激に冷えた地面から、油断をしたら背後から立ち籠めるように暗い背後から、じわじわと染み込んでくる、飲み込んでくる、まるで安らがない恐怖。不安。落胆。幾許かの怒り。きつく絞ったつもりの布にさえ入り込むみたいに、指先から登ってくる黒い液体。どんなに見回しても視界のへ逃げる化け物の、無数の粘ついた触腕。その正体が何なのか、めぐるに理解できたのは高校2年生になってようやくだった。

性別、この世の人間の全てが囚われている、呪

情けないことだ、とめぐる自身も理解していた。小学生時代のあんな小さな幼い出来事いに、今でも拘泥して身動きが取れない。なんてのかと。

めぐる、お前、大丈夫か?顔色悪いぞ

大丈夫じゃないかもね

冗談だったら殴るぞ。そうじゃないなら、保健室でも行け

はは、と乾いた声で笑うめぐるに呆れるように、パクは彼を殴りさえしなかった。

男の子といても、呆れられるんだな

パクのシルエットの向こう側に、日差しに輪郭を溶かす白石が見える。

僕はまだ、あの場所にいる

§

こんな場所、作った覚えがない

そうだろう、と胸中独りごち周囲の光景を見回しながら幽香の少し後ろを歩くリグル。彼の記憶の限りではここは、低木林地であった。まだ豊かとはいい難いが、成長中の土。

背丈の低い木や草が占める植生は日光を遮らず、地面を薄く覆う草花にも光が十分行き届く。そうして長い時間をかければやがて、多様性を維持した林へ、森へと成長する。より長いあいだ育てれば極相に至るが逆に多様性が失われるので、風見幽香が実際に手入れするのはその手前だ。里山と人里の関係と同じように、樹海と神妖特にこの妖怪風見幽香のテリトリとの関係は、そうしたものだった。かの妖怪は百花千樹を育み、十分に育った森林はかの妖怪に利息をつけて力を還す。

誰が植えたのか知らないけど、随分趣味が良いわね

だが今、不自然に点、点、と影を断てているのは、リウマチ指のように歪に曲がり伸びるやせ細った橘の木ばかり。到底、自然のエネルギーに満ちた土地とは言えない姿に変貌していた。

植え替えた方が良さそうですね

当然だわ。でも、抵抗されてる

抵抗?

橘木に葉は少なく、だが妙に太く、枝分かれが少なくて、迷うように伸びて居るせいで背も低い。そして枝先には、黄色というより土くれた色の実が垂れている。形こそ橘とわかるが、そうでなければこの木が橘だともわからなかったろう。気味の悪い橘実は一本の木に一つ、必ず一つが、実っている。畸形じみた樹体が並ぶ光景もさることながら、必ず一つだけの実を付けている様は、まるでそれが心臓であるかのように不気味さを放っていた。

これ、ニンゲンだわ

ニンゲン?

こいつら、〝死にたくない〟って、言ってる

橘の実は、確かに弱々しく幽かに脈打っていた。まさか本当に心臓?リグルはこの土地に澱む呪わしい空気に触覚を鋭かせる。死の匂い、というよりは病の匂いが残っている。旧知の土蜘蛛のことを思い出したが、同時にそれではないとも確信する。疫病などより、もっと不純な気配。

幽香は実の一つをもぎる。刹那、蒂の切り口から赤い液体が勢いよく噴き出した。橘の実は瞬く間に萎れ、熟しすぎて地面に落ち腐った実のような姿に変わる。実をもがれた木の方も忽ちに立ち枯れて死んだ。

ちっ

潰れた心臓橘実を捨て、幽香は日傘をリグルに手渡す。懐からハンカチを取り出して手に付いた腐敗汁を拭った。

ヒトですね

魅入られてここまで連れられて、こんな姿に变化したの。馬鹿な奴ら

風見幽香にせよ、リグル・ナイトバグにせよ、定常的な姿を維持し続けられる、十分に力の強い妖怪である。ニンゲンに対する哀れみなど、人間から人間に向けたそれに比べれば露雫のようなものに過ぎない。妖怪は人間に尊厳など見出さない。人間から見た小虫や雑草と同じような感覚で、妖怪は人間を認知している。もちろん小虫や雑草を愛でる人間がいるのと同じこともまた言えるのだが。

風見幽香やリグル・ナイトバグは、政治的な理由で、人間の尊厳を一定程度認める立場にあった。人間がこうした姿に变化させられていることにいちいち悲しみや怒りを感じはしないが、厄介ごとだと面倒臭がる程度には。

博麗から何か情報はもらってないんですか?

〝何かあったら、摩多羅を訪ねろ〟ですって。私あいつ苦手なのよね、八雲紫と同じタイプ

はあ

風見幽香は地面に落ちた黒く腐れた橘の実に指先を向ける。地面から伸びた糸がその先に括られているように、その糸に繋がった地中の何かをしなやかに上へと引き上げるように、その指先をくいと持ち上げる。ぞろり、と潰れた実が割れて中から細長いものが伸び上がる。これがまともな植物の種であれば、青々とした姿へ成長し花さえ咲かせて風見幽香を称えるのだが、この実はそうはならなかった。ひょろ長く伸びたものは木の芽、茎、葉と花へと成長する代わりに、まるで人の姿のような黒紫の塊へ変化した。病変した草のようにじくじくと崩れ腐敗を放つ人型の草塊は、自重に耐えきれず柔らかく溶けた病巣から折れて倒れる。地面に横たわったまま、もぞ、と一瞬だけ身じろぎをしてから、もう動かなくなった。始終を見届けた風見幽香は、淡々と言うだめね、手遅れだわ。

おそらくここに生えている橘の木全てがなのだろう、その数はリグル達が見回す限りは、数百はありそうだった。

これは、とリグルが浅い嘆きの声をあげようとした時、幽香は思い出したように付け足す。

ああ、あと一つだけ、霊夢から言われてたわ

はい

幽香はリグルに背を向け、顔だけを少し彼に向けて、言った。

私よりあんたのほうが、適任だろうってね

え、どういう

どういうことですか、と聞き返そうとした時だ。もの寂しく立ち並ぶ畸形な橘の間という間から、びょう、と冷たい……いや、場違いなほどに清涼感のある風が、抜けた。

っ?

……何

葉もなく実を一つだけ付けた歪んだ橘が点々と並ぶ不気味に死んだ閑林を抜けた風は、その風景に反して冷涼で乾いており、爽やかに溌剌と踊っていた。そのアンバランスさは奇妙であったが、風見幽香は苦々しく目を細めて毒吐く。

こういう手前、魔界にはよくいたものだわ。距離感のおかしな、グロテスクな記号を好んで並べたがる奴

リグル・ナイトバグは、風見幽香の服装や彼女の咲かせる花の可愛らしさと、普段の言動の落差を思い出した。(なるほど、魔界は。)が、特に言葉には出さなかった。

こういう手前、といって風見幽香が指さしたのは、そのグロテスクな爽風とともに姿を表した人影。膝を抱えて座るような姿勢で、不自然に曲りくねった橘樹の枝に抱かれるように浮いていた。膝を抱えて丸まった背中からヒレのように突き出た平たく巨大な構造物、それは肩甲骨から腰辺りまで伸びる線状の領域で人型と連結しており、2枚が重なり立っているようだった。蝶の羽、それ以外には形容しようがない。頭から鬼の角のようではなくリグルのそれと似たような突出物が生えている、触角だろうか。

霊夢が言ったのはこういうことかしら。確かに、あんたの友達っぽいわね

風に乗って現れたというのか、静かにだが突然現れた鮮やかな姿。2人は警戒心を強めた。やがて膝を抱えた姿勢の人物はゆったりと足を伸ばし、つま先から踵へすとんと地へ降りる。背中の羽も、大型の蝶がそうであるように、ふわふわと風に乗っているのか風に遊ばれているのか判然としない様で、開閉している。緊張感に高まる自身の心音と全く約数を持たない羽根の開閉リズムは、リグルを否応なく忌まわしい気分に沈めてくる。優香も同じらしかった、あからさまに不快そうな表情で現れた蝶の神妖を見ている。極彩色の斑を浮かべる羽、蝶の姿は極めて華やかで美しいというのに、背後に広がるの樹林と、相対して受ける印象だけは、それとは全くかけ離れていた。

地に踵を下ろした体柱が伸び切り羽が大きく開いたところで、それは顔を上げて目を開く。顔は人(や人を模した姿を保つ神妖たち)と同じような目鼻口を備えていて、最低限のコミュニケーションはできそうだ。目は大きな雨粒を嵌め込んだように澄んでおり、細かく砕いた雲母片を撒き散らしたような輝きを閉じ込めている。さらにその奥には、多角形の鏡面を敷き詰めた構造が秘められていた。やはりリグル・ナイトバグが稀に見せる特徴と類似している。三角形を思わせるシャープな輪郭に並ぶ鼻と口は小さく上品な印象を与えるだが、生命力の輝きこそ秘めているが視線の先が読めない複眼底と並ぶと、作り物のような無機質な幾何学模様にも見える。触角のような突出物は髪の毛をかき分けるように生えている。その頭髪は青色だが光の差し込む角度で微妙に色合いを変える、風に柔らかくなびいてゆれ、その度に油膜のように変色し続けていた。

上品だが作り物じみた目がリグル・ナイトバグを捉え、上品そうな口が開いて彼の名前を呼んだ。

やあ。あなたがリグル・ナイトバグ?

えっ

突然名前を呼ばれたリグル・ナイトバグは、流石に狼狽した。蝶の羽が細かくはためく、周囲の空気が光を散らしたように輝き煌めいた。リグルはすぐにそれが鱗粉と理解する。そうでなければ、何か神々しいもののように見えたかもしれない。

久しぶり

……初めまして、の筈だけど

硝子の鈴のような声を、ディジタルにリバーブさせたような、不自然な声。あ、あ、あ。だが、それもまるでラジオをチューニングするときのように、自然な人肉声へと変化していく。ボイスチェンジャーのパラメータ同士がびたりと調和を見せた瞬間みたいに、通った声は澄み切った中に可憐さと威厳が居座る、人心の隙間に入り込む、美声に。

あれぇ、そうだっけ?久しぶりすぎて忘れちゃったかな。

ボクは、君のことを知らない。

うーん、こまったな。私はあなたにあったことあるけど

風見幽香が、横槍を入れた。

会ったことがあるというのなら、名前くらい名乗ったらどう?

……誰ぇ?

「こいつの保護者。この辺りは私がこいつに管理させてる土地なの。で、こいつは」「ラルバだよ。幼生、永遠の。」

え?

わたしの名前。

風見幽香を無視したように、言葉を割り込ませる。ムッとする表情の幽香を更に差し置いて、ラルバと名乗ったヨウセイは真っ直ぐにリグルの方へ近寄っていく。距離を保つべきか迷って一歩二歩と下がったリグルだが、ラルバは迫るように手を取ってにっこり笑う。

らる……ば?

あなたの望む過去と未来、そして今。私の悪夢を破壊して、私の目を覚ませてくれたのは、あなただよね?

何の話かわからないけど……

ほんとかな。わたしは憶えてるよ、あなたの、革命

ラルバの声は黄色く愛らしいが、なんだかイントネーションがおかしい感じがした。普通上げるべき箇所の一、二単語前からイントネーションが上がり切る。意味はわかるがなにより、語尾の上げ下げで意図の機微を判断できず真意を掴みづらい。少なくとも風見幽香はこの幻想郷に新参らしいラルバと名乗る女が、リグルの旧知を自称することに不可解さを抱いていた。

あんた、リグルの何?リグルも、また新しいお友達ってわけ?

彼の周囲にいる関係者を四則同盟カルテットとして組織化し支配機関の一つに含めたのは博麗だ。その博麗の巫女も、その管理を任された風見辺境伯TheSleepingDandeLionも、ナイトバグという太古から今まで存続する眷属やその当代眷魁ロードとして君臨するリグルに対して、全く理解が浅かったことを、時と共に自覚しはじめている。

えっと、よく覚えてなくて

リグル自身が「虫の報せサービス」として利用しようとしたビッグデータは他の種族に比してあまりにも膨大で、学習収束のアルゴリズムについても解明されていない。リグルは博麗から、サービスの出力結果の妥当性を誰も検証できないとして使用の自粛を求められている。リグル自身、自分の背負う同族の積年には認識が及んでいないようで、おそらく今回もそういうことなのらしい。

いつもそうね。知らない、なんていつもトラップじゃないの

実際そうした事が何度もある、因縁の相手側にも代替わりが含まれていたりすると、お互いに認知の無い中で宿命だけが歯車を回すこともある。その部外者である博麗も、幻想郷の賢者たちも、あるいはもっと近くでそれを見ている風見幽香も、ナイトバグという眷属が人知の歴史ではアンコントローラブルであることを問題視し始めている。

そのくせ騒動が終わってみれば元の鞘みたいな顔してる。部外者は黙ってろってこと?

そういうつもりではないんですが……

そういうことだよ

弱り顔のリグルと非難がましい表情の幽香の間に、ラルバは火に油を注ぐような言葉を差し込んだ。

なんですって?

〝部外者は黙ってろってこと〟

ま、まって、勝手に話を進めないで。キミが何を言っているのかほんとにわからないんだけど

リグルが更に慌てる、混乱、焦り。それに、ちりちりとかすかに火花を散らす、脳髄。

変態、わたしは出来たよ。あなたにもできる。だって、それを教えてくれたのは、わたしの悪夢を覚ましてくれたのは、あなただもん

だから、ボクにはそれがなんのことか

あなたは、どっちでありたいの?それともVoidの崇高を、保ち続けられる?

ぼいど?

無ってことだよ

無……なんでこの人から、そのキーワードが出てくるの?なんか、すごくモヤモヤする……妖夢くんの知り合い?

リグルは触角を倒して外からの情報を一時的に遮断する、内的な処理が追いついていない。手で頭を抱えるようにして、モヤモヤするなにものかの正体を掘り返そうとしていた。永遠の幼生・ラルバ、彼女の言っていることは全く理解できないのに、爪横のささくれを剥き上がるみたいな快感と痛みが、記憶を掘り返すたびに胸の中に溢れ出てくる。だが。

ぐげっ

いい加減にしろクソ夢女。気持ちの悪いことを吹き込むな

風見幽香が、突然リグルの首根っこを掴んで小さな彼の体を持ち上げた。

やだー、こぁーい

えっ、なんでボクが乱暴されてるの????

ラルバと名乗る女の狂言を差し止めるのではなくリグルを虐待する理由はともかく、彼は内向に沈むのを妨げられた。一方、グーに握った両手を胸の前で合わせるようなポーズで、ラルバと名乗る蟲様の神妖はくねった悲鳴を上げる。その目が、風見幽香を見た。

あんたも大概、クソだったけどね。自分の歪みを悲観しながら、その歪みをものさしにして他人をはかる、孤高で傲慢な異常者。綺麗だったけど、中身はぜんぜん違う。

……電波がキツすぎるわ。がご希望だったかしら?ねえリグル、あんたの友達だったとしても、駆除して文句ないわよね?こんな

うわやだ、この女必死かよ。

ぴし、と何かにひびが入る音が聞こえた気がしてリグルは総毛立つ。ラルバはその無機質に煌めく表情を挑発するように踊らせて、幽香へ向いた言葉を遊ぶ。

あんた、リグルの変態が怖いのね?捨てられるから?それとも

その目は無機質に光を散らし続けており、瞼が細まると妖しさを増したまるで、悪意を宿しているような。ば、と両腕を広げ、背中の羽も大きく揺らす。鱗粉の輝きが歪な閑林に広がり、爽やかな風は人魂の橘の匂いを運ぶ。全く屈託のない邪悪な笑みを爆ぜさせて、ラルバは風見幽香へ言葉を投げつける。

それとも、この世界の悪夢が、終わってしまうから?悪夢は、自分で悲観しているうちは……気持ちいいからね!あはは!

§

本当は白石と付き合ってるのに隠しててあの態度だと思ってた

残念。全くあの通り

そう答えるしかないでしょ、と言いたげに首を傾げて見せるめぐる。仮面の形に馴染みすぎた顔は、もう人前でそれを外すことができない。少なくとも今の彼にとって白石茅野ちのは、パクの思っているような関係からは程遠い。

ま、二人の過去を詮索するような野暮はしないけど

過去なんかないってばー

あの日こっぴどい形で告げられた「きもちわるい」、彼女の口から出た言葉ではなかったが、結局それ以来一度もまともに口を利かぬまま卒業してそれぞれ別の中学生活を送り、その間のことも知らない。こうしてまた同じ教室になるだなんてなんともバツが悪い。めぐるもそうであるし、白石もそのように見えた。

この話は防戦一方でツラいと踏んだめぐるが、苦し紛れに話題を切り替えようとする。

ち白石はともかくさ、パクくんに一つ聞きたいことが

おう、なんだよ?

その……そういうとき、って、どうすればいいのかな

え、なに?

だ、だからさ。好きな女子に告白って、どうやってすればいいの?

好きだって言えば?

そういうんじゃなくてさー

幼馴染の二人に今更言葉なんかいらないだろ

だからちがうってば

ごまかすなって、ヨリを戻したいんだろ?

戻すもなにもないんだってばぁ

§

風間優香ね

うん

パクが白石茅野ちのから離れてくれたのは10分近くくだらない問答を繰り返してようやくのことだった。

お前、見かけによらず面食いなんだな

どんな見かけに見られてるの僕

草に食われるタイプ

よくわかんないけど、あんまり良い言われ方してないねそれ?

風間優香はめぐるたちとはカリキュラムが違う生徒で、たまに共通科目で教室が同じになることがある女子だ。めぐるは風間とは口を利いたこともない。風間はめぐるのことを認識さえしていないかもしれないというのに

にへへ

きも

どうやら風間のことを想像するだけでこの顔の弛み様なのらしい。パクは呆れ顔で返す。パクが返した情報は、めぐるにとっては旗色を悪くするものだった。

外見はモデル級、確かに男子からの人気も高い

だけ?

性格キツイっていうか、会話に全然取り合えってもらえないってもっぱらの噂。見た目はすげえいいから、言い寄る男子は多いらしいけど。フリーなんじゃないか?見る目あるんじゃねえの?

それは無いっていうのでは……

後で訂正されることだろ。ぜひ〝見る目無かったな〟って言い直させてくれよ

ひどい!

白石にフラレた次はよりにもよってアレか、とパクに嗤われているめぐる。弱り顔でパクの言うことを否定する材料を探そうとしたが、いかんせん話したこともないのだ、取り付く島もない。

いやいや、こんな知名度ゼロの夜学に来てる女であんな外見のいい女なんて、地雷しかいねえよ、顔イイのにフリーだなんてなおさらだ。やめとけやめとけ

ケラケラと笑うパク。だがめぐるは食い下がった。

と、とりあえず一回お話してみないとわからないよ

まあ、そりゃあそうだ

どうやって声かければいいの?

知らねえよ、バラでも渡したらいいんじゃないの?

いよいよ鼻をほじり始めたパクめぐるで遊んでいる。いつもの光景だ。

真剣なのー!ねえ、一緒に来てよお

は?馬鹿かよ。なんでオレが

パクくんモテそうじゃん、助けると思って!このとおり!

仏様でも拝むように合掌して頭を下げるめぐる。つまり、次に彼女と教室が同じになるときに声をかけたいから付いて来て欲しい、自然に友達を装えと、言うわけだ。真剣な面持ちでパクに頼み込むめぐる。対して、パクは急に神妙な面持ちに塗り替わった。

いいか、めぐる。いいこと教えてやる

はい、師匠!

モテる男は自分から告白とかしねーんだよ

う、うわーーーーーーーーーーっっっっ!!!!!!

パクの一に、めぐるが爆散する。破片になっためぐるだが、それでも果敢に挑もうというのだ。

わかったよ、僕一人で行く。決戦は……明後日、2コマ目の生物Ⅲが、合同クラスだ。

おう、骨は拾ってやるよ。何ならめぐるの屍を越えて、オレが風間をもらってやるよ

そんなことしたら一生恨むから!!

§

私、ビアンだから

……へ?

そんなフラレ方があると、めぐる自身考えてもいなかった。まだ好きですとも言ってない、それどころかた〝こんばんわ〟って声をかけただけなのに。めぐるは、声をかけて二秒で殺されてしまった。

§

リグルが妖夢のブレザーのボタンを外し、ネクタイを抜き取ったシャツの前を開くと、そこにいたのはブラジャーだった。

あ、かわいい普段からしてるの?

た、たまに、たまにだよ!

たまにかーそっかー

にこにこしながら、外していい?と聞いて、答えを待たずに背中のホックに手を回しているリグル。うん、と妖夢が答えた次の瞬間には背中の留め具は解放されていた。

ボクはこういう可愛いのが似合わないからなあ

そんなことないと思うよ

男には乳房がない、ブラに圧迫感があるわけではないから、上にズラすだけでも十分だけれど、手順通りに取ってあげることは儀式として必要だ、リグルはそれをわきまえていた。ちゃんと外してから、するり、ブラを取り去る。

女性のような豊かな乳房はないが、乳輪のもう一回り外側からぷくっと不自然に膨らんでいる。女性ホルモンの分泌が始まって、胸が膨らみ始める女子の初期性徴、メス行為に没頭しすぎた副作用が胸に顕れていた。

ふふ、すっかりスケベな女の子おっぱいじゃん、妖夢くん……ううん、妖夢ちゃんだね

そ、そんないいかた、やめてよ

妖夢の上半身を剥いたリグルは、彼の上に被さったまま、可愛らしく膨らみかけているオス乳房にキスをする。

かわいい

ふぁ……っ

ちゅっ、と軽く口付けられただけで、妖夢の胸は期待にむくむくと立ち上がってくる。リグルは、可愛らしい虫でも見るように目を細めてそれを指で撫でた。

このおっぱいは、自分でシてるでしょ

た、たまに……

たまにかーそっかー

じ、自分でじゃなくて、鈴仙さんに、してもらってるの!

あーっそう。こういうところで他の人の名前出すの、良くないと思うな

あ……ご、ごめん

そんな悪いセフレくんには、おしおき

おしおき、といってリグルは、妖夢の閉じられた唇の上も下も全てまるごと飲み込むように大きく開いた口で彼の唇を奪う。そうされてしまえば妖夢も、口を開いて応じるしかない。あっという間に舌と舌が出会い、口呼吸禁止のオーラルセックスに発展した。意図的に唾液を妖夢の口の中に注ぐリグル、妖夢は目を白黒させながらそれを飲み下している。

その間にリグルの指は、期待にすっかり充血した妖夢の乳首へ向かう。こり、と凝った先端を再び見つけると、紙縒りを作るようにその先端を転がす。さっきよりも少し強い。口の中の性戦で精一杯の妖夢は、突然胸から湧き上がってきたびりびりの乳首快感で一気に防戦に押し込まれる。

ふっ、ふぐっ、んーーーっ、んぅっ、んっ、んんっっっ

口を塞がれているのに呼吸を乱される、下品な鼻呼吸を強いられる妖夢だが、鼻から抜ける呼吸も呻き声も、あっという間にピンク色に染まっている。

形勢が定まったホモ百合、妖夢はされるがままにリグルの責めに翻弄される。

口の中では、逃げ場のない妖夢の舌が、リグルの舌に撫で回されて抵抗する意思を失っている。背中を反らせているのは、乳首刺激を求めてしまうメスの本能が芽生えて花咲いているからだ。リグルが乳輪を撫で乳首を摘む度に、口の中ではリグルの舌に抱擁を求めて妖夢の舌が伸び上がっていた。

いつもはあんなにつんつんなのに、ホモセのときだけはガチネコなんだから……リグルは妖夢の反応に満足を覚え、もっとそれを満たしてあげようと乳首責めの手を厚くしようとする。ぐ唾液が溢れてちゃぐちゃになった口を離すと、湯気立つような桃色の呼気が放出され、泡だった唾液が溢れ出して妖夢の白い頬を汚した。離れていくリグルを惜しむように、妖夢は舌を伸ばしている。二人の舌の間にはねばっこい唾液の橋がかかっている。ペニス同士の兜合わせでオス愛液が糸を引いているときみたい、そう思ってしまった妖夢は一層に蕩ける。

リグルは唾液でベタベタの唇で、妖夢の細い顎、喉仏のライン、柔らかな鎖骨の輪郭をなぞって、口を妖夢の胸へと運んだ。それを察した妖夢は、まるで恋する乙女のように心臓をバクバクはねさせている。

ちゅっ、ちゅっちゅっ!

ぁぁっ

ピンク色の乳首にキスマークを重ね塗りするみたいな容赦のない吸引で、リグルは妖夢の胸を吸った。舌では尖り立った先端を弾くように撫でたり、その周囲を囲むようになぞる。

そ、それ、す、きっ……乳首、キス、すきぃっっ

男の乳首は、クリトリスと同じ。他に使い道のない、快感専用の性器。メスになるための近道、そしてスイッチ。リグルに吸い付かれた妖夢の乳首には、快感火種を大量に含んだ熱い血潮が集まり充血する。より赤みを増した乳首は張り詰めて熱を帯びる、敏感さを増してより貪欲にメス快感を得ようとする。男の体が、女体への適応を見せていた。

はむ

ふひゃ……ちくび、きもち……ぃっ

ぐらぐらと快感の熱を煮えたぎらせ、ふるふる震えながら火花を散らす、でも慎ましやかで小さな雫。線香花火みたいな性器乳首が、口と指で左右両方同時に刺激されて爆竹に化けようとしている。

リグルの下が膨らんだ乳輪の円周輪郭をなぞるように舐めると、その軌跡に沿ってぱちぱち火花が散る。時折乳輪境界を破って侵入し、その裡に快感マグマを閉じ込めて膨らんだ乳首を舐められると、その度に鼻の奥がきゅっと縮み上がって脳みそから快感ヨダレが漏れ出しそうになる。

ふぁ……あぁっッ

上手、すぎるッ。普段はツンとした切れ味鋭い剃刀のような妖夢が、今はただただ快楽にとろけてそれ以外のことを考えられなくなって、ただの溶けた鉄の塊になっている。

細いがくびれのない少年の白い背中が反り返って、性感ダンスにクねった。

乳首、だけで、こんなに。リグル・ナイトバグとホモセックスする度に、妖夢は思い知らされる。

女体化が進みじんじん痛みを訴える初期乳房を圧迫しない力加減は、肉体のメス進行をよく知るリグルの気配りだ。そんなところでも、妖夢はリグルからの乳首愛撫に蕩け切っていた。

はーっ、はーっちくび、もう……

妖夢ちゃん、おっぱいで女の子の顔になってる……

無限に発火する快感火種となった乳首をリグルから執拗にねぶり上げられる快感は、男から女として扱われる愛撫より、女から男として扱われる愛撫より、強烈だった。メス男子の肉体を熟知したリグル(もちろん妖夢もそうだ)の責めは、男からのそれよりも、女からのそれよりも的確で、歪んで拗らせた妖夢の性癖に対してあまりにもマスターピースだった。

男の子なのにこんなかわいいおっぱいなの、反則だよ?

こりこりっ、きゅっ

ふあ、はあっっン……!

妖夢の勃起乳首を、今度は少し強くつまみ上げるリグル。射精直前に脳へ向かうペニスの快感電流と似て非なる甘くて激しい奔流が、両乳首から全身にそして額のあたりへ向かって至るところでスパークを散らす。

はっ!は、あ、っ!すご……っ!リグルのそれっ……ダメになるっ

ダメじゃないよね?女の子になるんだったら、もっとしないと

ぎゅっっ!

〜〜〜〜〜っ!

にげちゃだぁめ

まっ、まって、リグルまって

またなーい

頭を振り乱す妖夢をしっかり捕まえているリグルは、彼の乳首へ容赦なく追い打ちを仕掛ける。しなやかな指先と、唾液を含んだ口。手で摘み上げられて胸肉の深いところまでメス快感の楔を打ち込まれ、舌は乳輪と乳首のピンク肉を優しく撫でて溶かす。左右の乳首を手と口が交代する度に、リグルはわざといやらしく、左右の乳首の間で舌を這わせて唾液の足跡をつける。指にも唾液をたっぷりとまぶし、乳首を潰して細かく円を描くように転がす。

へっ、へぁっ、りぐ、る、上手ぅっっ……

んふ、ありがと

顔筋崩壊のトロ顔でリグルの乳首責めの奴隷になっている妖夢。ただ刺激すれば気持ちよくなれるもんじゃない、男同士でも、メス快感を求めるなら。二人は恋人ではないが、ある種の信頼関係で繋がっている。相手のプレイが自分の欲求と、自分の行為が相手の快感と、噛み合っていることは、恋人を見つけるよりも難しい。

妖夢ちゃん、感度いいから。女の子でも、こんなになる人、いないんじゃない?妖夢ちゃんってば、本物の女の子より、女の子

ほんもののおんなのこより、おんなのこ……

甘えモードの猫のようになってリグルに全身を委ねる妖夢。熱に浮かされた赤い顔、浅い呼吸と、潤んだ瞳。脱力した全身は相手にイかすも焦らすも委ねる意思表示。リグルの腕に両腕を絡めて、捨てないでと懇願する妖夢。ねだっているのは餌でもなく捨てないことではなく、メスアクメ。

乳首愛撫一つで蕩けきった妖夢の姿に、リグルは満足そうな表情を浮かべていた。一方で、ショートパンツの股間部分は明らかに膨らんでいて、妖夢が胸を突き出して背を反らせ腰をくねらせるのと同じように、リグルの股間の膨らみも、しゅく、しゅく、とゆっくり脈打っている。

強気な発言も、実際には裏腹。リグルも股間の切なさに切羽詰まっていた。

このまま、イッちゃおっか

ひぅ……っ

ちゅぱ、きゅっクリクリっぺろっ、ちゅっちゅっキュックリっコリっ、ツンツンツン、キュウウッ

ふへ、ぁぁあぁああぁっっ

怒涛を打つ責めの連続、乳首防御力0になっていた妖夢は抗うことなく乳首愛撫でメスアクメをキメた。ガクガク体を震わせて、脚をピンと伸ばし、元気に立ち上がっているペニスから精液は溢れていない。背筋を反らせた反動で透明な我慢汁が一筋だけ伸びた。女体化進行中のオス乳腺が開き、男を誘うフェロモン香を噴出している。セルフ調教済みの乳首はギンギンに充血勃起して、二粒一対のクリトリスになっていた。

ん、おっ、ひ、ぃぃーーっッッ

イッちゃえ

乳首イきは妖夢も何度も経験している、自分で開発した乳首は自分の望んだ通りに快感を生み出す性器となり、女装オナニーを覚えてからは食事の回数と同じくらい乳首で絶頂してきた。でも、声が漏れるほどの乳首アクメは初めてだった。

ぴんっ、ぴくんっ、がくんっ!

たった2つの小さな胸の突起をイジられているだけなのに、脳みその快感バルブを直接捻られているみたいにメス快感ホルモンがダダ漏れになってしまう。男の肉体すべてを、女のオーガズムへ拐った。

びくっ、びくっ、妖夢の体が小刻みに震えてそれが止まらない。まるで子宮が底に備わっているみたいに、妖夢の臍の下で暖かい幸福感が生まれる。幸福なのに、うねるような飢餓感がポッカリと口を開いている。そこに到達できる穴は、男の体には一つしかない。妖夢は、とっくになっていた。

妖夢ちゃん、イってる

ひっ、は、はへっ

ねえ、ボクそろそろ我慢できないんだけど、いいよね?

まだ、と言われるなんて1ミリも思っていない問いかけ。いや、今の妖夢にリグルの問いを拒否できるわけがなかった、それは問いというよりも、宣告。

恥じらう乙女のように伏し目で頷く妖夢、半ズボンをおろし、勃起したペニスを窮屈そうに抑え込んだぱんつを剥ぎ取って、股を開いて見せる。可愛らしいふぐりと、半剥けのおちんちん。陰毛はすべて剃ってあるようだった、メス男子の嗜みだ。

前が良い?

リグルの顔見ながらシたい

うわー、殺し文句……

茶化すリグルにも、しかし余裕はなさそうだった。妖夢が広げた股の間にあるアヌスは、唇と見紛うほど肉厚なフチを備えていた。ぷっくりと膨らんだ入り口が、ひくん、ひくんと切なそうに蠢いている。垂れ下がった小さな金玉には敗北オスの風合いがあるが、アヌスは女としてその美貌を誇っているようだった。それを目の当たりにしたリグルに、余裕はない。既に熱り立ったペニスを、妖夢のメス化済アナルにあてがう。しかし。妖夢はすんでのところでリグルの侵入を止める。

まって

そんな、と焦れた声を上げるリグル。だが、残念がる必要がないとすぐに分かった。妖夢は、自分の指を口に含んでぬったりと濡らし、唾液にまみれた指で自分の肉厚肛門をほぐし始めた。十分過ぎるほど柔らかくオスに馴染んだ尻穴に見えたが、唾液を塗り付けててらてらと濡れた姿は、その認識が甘かったと思わせる。濡れた指で刺激された妖夢のアヌスは、まるで唾が呼び水になったように濡れ始めた。腸液分泌オス愛液が潤うほどに、妖夢のケツマンコは進化していた。

……相変わらず、すっご……妖夢ちゃんのそれって、もう特殊体質なんだよ……

返事を返す代わりに、すっかり濡れ穴になったアヌスから指を引き抜き、半開きになった熟門を改めてリグルに見せつけた。入れて、の合図。恥ずかしそうに乙女の表情で目をそらす白肌の少年の、その華奢なのに柔らかな肉体は、女よりも淫靡でありながら、淫靡な女は持ち得ない清らかささえ兼ね備えているように見えた。

リグルのオス部分を、強烈に誘う少年のメス肉体、女の色香。

いれるね……!

いよいよ辛抱ができなくなったリグルは、ぷっくりと膨らんだ肉厚の肛門肉をかき分けるようにペニスを埋め込んでいく。ホモセックス用の愛液でヌルヌルに濡れた妖夢の媚肉穴は、リグルのペニスの先端を感じると同時にふんわりと開いて包み込むように変形する。奥へ、奥へと取り込むような動きは、本気で子作りを望む女の膣と同じ。

ー、きもちぃぃっ妖夢ちゃんのオマンコ、おちんちんに吸い付いてくるっこの穴、男のくせにちんぽに媚び過ぎでしょ。本気で子作りしたがってない?

ずる、ずるるっ。地下棲みの肉食虫が、獲物を巣の中へ運び入れるときのように、妖夢の肛門性器はリグルのオス器官を貪欲に飲み込んでいく。本来排出する器官である尻から、子作りのプレゼントを取り込もうとする変化は、本物の女よりも女としての機能を研ぎ澄ました、まさに〝メス〟。

飲み込まれてく……妖夢く……妖夢ちゃんのおしりまんこ、えっちすぎるっ

ぶちゅっ、ぶぶっ、ぱちゅんっぱちゅんっ!

妖夢のメス化したアナルは、同類のメスショタ、リグルのペニスを強制的に男に変えていく。自らもケツ穴でメスアクメをキメられ、日常的にパートナーからメスイキさせられているリグルだが、妖夢の穴を前にした今はすっかりオスの本能を取り戻しているようだった。

リグルの、おちんちん……ぴったりなの、僕のとっ……

うん、しってるよ。ここ、でしょ?妖夢ちゃんの前立腺Gスポット

妖夢の沼肉筒に夢中になっているリグル。臍の下でぷるん、ぷるん、と踊っている妖夢のペニスは、勃起していなかった。ただ透明な液体をとろとろと垂らして臍の下のなだらかな丘を濡らしている。

、んりぐ、そこそこぉっぞくんって、ぞくんってなる僕のメスイキポイントっ好きなトコっリグルのちんちん、ソコ狙うの上手でっ、好き、好きぃっ

カンペキに、メスなんだ、妖夢くん……

自分の下で女の子になりきって自分の男を受け止めいる妖夢の姿を見ているリグル。無力にしなだれたままのペニス、反対に貪欲なほどにペニスへ吸い付いてくるアヌス。乳首はまだ勃起したままで、妖夢は鼻の下を伸ばしただらしない顔を恥じることもなく自分で自分の乳首を摘み転がしている、尻穴をほじられながら。

メスとして乱れまくる妖夢の姿を見下ろしながら、ギチギチと痛いほど勃起したペニスを彼の肉に埋めストロークし続けるリグル。先端のコリコリとした感触は妖夢の発達した前立腺。普通の男に比べると圧倒的な存在感で腸壁越しに膨らみを見せている。

妖夢くんの前立腺、ぷっくりすごい……これ、うんちするときに刺激されちゃうんじゃないかな……

メスイキを覚えた男は、体の至るところに副作用を生じる。ホルモンバランスの狂いや、本来的ではない性行為、肉体の手入れ。副作用は一定程度知られたものもあるが、予測不能な変化を生むこともしばしばだ。二人の胸に見られる少女のような慎ましやかな膨らみも、よく知られたものだ。

ふぅっそこ、もっとリグルのちんぽ、もっとがつんがつんしてっ僕のメススイッチ押しまくってっ僕、前立腺ソコで女の子になれるからっ

妖夢ちゃん、すっかりスケベな女の子じゃん。そこまでエッチ好きなひと、女の子にもそんなにいないと思うよ?

だって、だってぇっみんな僕に優しいの女の子になってえっちしたら、女の子になった僕に、みんな優しいのっ好きになっちゃうよ、セックス、好きになって当然っ女装セックス大好き

人に優しくされるだけが理由じゃないことは、リグルにはよくわかっている。女装をするようになってからの妖夢はすっかり強くなった。頃に比べて芯がしっかりして意思も強くなって、白玉楼の庭師としてだけでなく西行寺幽々子のボディーガードとしてもしっかり働ける一廉の人物に成長していた。

男でしかない、を、卒業したから。か。

リグルにとって妖夢のそれは、憧れのポイントでもあった。その裏側の姿がこの可愛らしく蕩けたスケベメスショタであることも、リグルには輝いて見える。愛おしくて、それは恋ではないけれど、堪らなく欲情をそそる。

……ボクは、優しく出来ないけど、ねっ

ずぼぉっ!ぐちょっ、ぶちゅっ、ぐちゅっ、ぶぶっ、ぶちゅっ、ぐちゅっ

出し入れのたびに、マン屁ならぬ本物の屁のように空気が抜ける下品な音がする。柔らかく解れつつもしっかりリグルのペニスを食いしばる貪欲なケツまんこ。リグルのちんちんの亀頭に絡みつく肉筒のヒダは、女の膣壁に勝るとも劣らない。こする度に、リグルも射精欲がこみ上げてきた。

ふぉ……ヲっっおんっっっ強い、リグルのちんぽピストンっ、ボクの男の子を破壊しちゃってるどんどん女の子にしてくるっきもちよくされちゃうっ

ふっ、ん、ねえ、ボクなんかのこと、男として見て、いいの?はっ、ん、ぼ、ボクも、妖夢ちゃんとおんなじ、メスイキ趣味の雑魚オスなんだけど?

ざこじゃないっこのちんぽ、僕、しゅき僕を女にしてくれる、逞しい、お、フへっ……んおっ、おへっ……そこ、ソコばっかり、ソコばっかりダメ、だめじゃない、しゅきぢんぽぉぉっっ

妖夢のお尻の穴の中で、次々に炸裂するメス幸福の爆弾。下腹部に生まれている空想子宮と想像卵巣が、ずきずきと疼いてメス系分泌を促す。女としての幸せ麻薬に中毒している脳みそは、ありもしない女の器官からの偽情報を受け取って、理性ではわかっているのに嬉々としてメス幸福ホルモンを体中にバラ撒く。

はーっふーーっ、ふーーっ幸せしゅぎゆメスイキって、しあわせなのぉっ

乳首でイッてから、アナルセックスでの前立腺アクメへはほとんど途切れなく移行した。妖夢の体はリグルの下でビクビク震え続けていて、リグルに縋るような手付きや、何の液体かもうわからないいろんな汁であちこちを濡らし尽くしている。ぐちゃぐちゃになっただらしないアヘ顔も、メス絶頂が続いていることを示していた。

い、イく……リグルのちんぽで、また、い、きゅ……

ぞくんっぞくぞくっぞくんっっっ

きゅううっ

う、ん、っふぇっ…………………………………………っっ

うわ、本当にイッた女の子みたい、うっあ、締まって、る。すっごい、よ、妖夢ちゃんのオマンコ

っ……、ぁ……っおんなのこ、きもち、い

妖夢ちゃん、可愛いっ射精そう、ボクもっ妖夢ちゃんのスケベ顔見ながらイきそうっ。ツリ目おかっぱ美形ショタのメスイキアヘ顔、尊いっちんぽにくるっねえ、吸い取ってボクのおちんちんに必死に吸い付いてボクみたいな雑魚オスのザーメンを、見境なく求めて受精したいってゆって

じゅせいっ女の子みたいに受精したいっリグルの精子で、受精っ蟲王様のロイヤルザーメンで、受精したいよおっ

きゅっ、きゅっっっ

窄まりうねるオス膣。男子宮。揺れるメス化脳。本能のどこかに刷り込まれた女としての反応が、自分を犯すペニスを締め付け媚びる。

うぞうぞっ、じゅるっ、きゅううっ、ひくっ、ひくひくっ、ぎゅぎゅっ

っ、だめ、もう射精る妖夢ちゃんのオスマンコに、ボクの精子たっぷり出すからね?うじゃうじゃの精虫で、妖夢ちゃんの子宮満たしてあげるからね?ボクは王様だから、これで孕んでも責任取らないから。無責任にショタ孕ませてちゃってごめんね

ぶっ……びゅうううっっ!びゅっっ、びゅううっっっっっ!びゅっ、びゅっ、どぷっ、どぽぽぽぽぽっっっ……びゅっ……びゅーーーーーーっっ!

ほぉぉぉおぉおおおっっっっっ流れ込んでくる、数え切れないくらいの赤ちゃんの素、僕を孕ませようとして、僕の子宮の中で波打ってうじゃついてあばれてるっ

吹き出した精液は、リグルの精巣に収まる量とは思えなかった。妖夢の腸を満たし、溢れさせ、逆流して、犯していくリグルの精液。

ごぽんっぶびっぐる、きゅるるる……ごぽぽぽっっ

腹の中にどぷどぷと存在感を増していく液体が、自分を女として認めた末に吐き出されたオスの本能の結果だと思うと、妖夢はそれだけで幸せに沈み、その重ささえ快感に変換してしまう。

はーっ、んお、すっごい、射精た……これ、マジの繁殖射精とおんなじくらいでちゃったよおおかっぱ美形ショタのイキ顔、オカズになりすぎるよぉっ

射精を終えたリグルは、しかしまだ勃起ペニスが萎えていない。射精後の開放感と満足感に浸りながら、ただ徒に妖夢のケツの中に入ったまま、膨らみを増す前立腺をこつんこつんといじめ続けている。

ふっ、あ、ぉふっまだ、まだ続いてるっリグルのちんちん、押してるから僕のメスボタン押してるから、続いてるのっ

メスイきのトロ顔でリグルに甘え付く妖夢。もっと前立腺Gスポット突いて、もっとイかせて、と媚び散らしてリグルに絡みつくが、リグルはまだ硬さを保ったペニスを妖夢のお尻から抜き取った。ぬるりとした液体が糸を引き、ぶりぶりに厚みを増したオスラビアが、にゅるりと口を閉じる。まもなく、その閉じ窄んだ梅型の肉唇が、ヒクつきはじめる。

あ……あ……やだ、よお

泣き出しそうな声を上げる妖夢。そして、痙攣するように震えながら踏ん張っていた肛唇が、決壊した。

ぶばっ!ぶりゅ、ぶりゅっっ、ごぼっ、ごぽぽっ!

ひっ、でちゃ、うせっかく出してもらった精子、にげちゃうよぉっ男の人の愛を漏らしちゃうなんて、女の子失格だよぉ……

ケツ穴からリグルの精液を吹き出し、倒錯的な科白を口にしながら、ぶるるっ、と体を震わせている。排便ならぬ排精で快感を得て、再び絶頂しているらしい。肛門から吹き出す白い噴水が、ようやく収まる頃、妖夢は泡を吹いて失神してしまった。どちゃ、と床に崩れ落ちる。妖夢。白目をむいた美ショタのトび顔を見て、リグルは自分の肩を抱くように腕を交えて、ぞくん、と震えた。

妖夢くんばっかり、ズルい

ふ……ぇ…………?

妖夢が完全にメストびしたのを見て、リグルももう尻の疼きを我慢できそうになかった。自分だって、さっきの妖夢みたいになりたい。

リグルはブラウスを脱ぎ、スポブラも脱ぎ捨てて、妖夢にそうしたように両手で自分の乳首を挟む姿を見せつける。妖夢をメスイキの淵に何度も落としたショタちんぽはまだ勃起していて、妖夢を誘って腰くねスケベダンスをする度に左右に揺れ、メス愛液の糸を左右へ飛ばした。

妖夢くん。ボクじゃ、おちんちん、立たない?

メス絶頂の失神から意識を復旧させた妖夢の視界に、リグルのメス化希望ポーズが飛び込んできた。

ふわふわとおぼつかない視界と意識が、すうっ、とクリアになるのがわかる。妖夢の視線はさっきまでさんざん自分をヨガらせ啼かせたペニスではなく、リグルが強調して見せつけてくる乳首へ吸い寄せられていた。とても男性のものとは思えない。徹底的に乳首を開発された女の肉ザマと遜色ない勃起肉が異様なほど立ち上がっていた。

メスヨガりのために発達した乳輪から乳首にかけてのビンカン肉はすっかり使い込まれ、メスイキの回数を刻まれ磨き上げられた肉色の宝石になっている。

妖夢の乳首と同じようにリグルの乳首も、すっかり性器化している。目の前でそそり立つ乳首を目にした瞬間、妖夢は自分の乳首からその時の快感を再生してしまう。

リグルも、メス乳首になってる……

うん、妖夢くんとおんなじ

リグルの胸にも、妖夢と同じようにメス行為に没頭しすぎた副作用が現れていた。未熟な乳房が、メス男の体と、その快感を物語っている。

リグルのメス化乳首を見ていると、妖夢は自分の姿にさせた半霊との二人オナニーで見慣れた自分の胸を見ているような気分になってしまう。リグルのメス乳首に誘われて、同じように自分の乳首に指を添え、さっきリグルにされたようにクリクリクリクリ、と自分の乳首を摘み転がす。

妖夢のちんちん、おっきくなってる

ホモセフレンドとの相互オナ、ハマっちゃう……

妖夢の顔が崩れて鼻の下が伸び口は半開きに、あっという間にメストロ顔に変貌する女装少年。今目の前にいるのは、オナニー伴侶の半霊ではなく、紛れもない他人。さっきリグルに味わわされた泡吹きメス絶頂の天国を、今度はリグルに味わわせたい。自分を犯してザーメン脳みそになってたリグルを思い出して、今度は自分が射精アクメで失神したい。

「だめだよ妖夢くん、自分のばっかりイジってないで。今度はボクの乳首を、女の子にしてよ」「わかってる、よ」

てけてん!

妖夢の半霊から妙な声?が聞こえたと思うと、それは瞬く間に妖夢と同じ姿に变化する。端正な顔つきの美ショタが、自分を狙ったペニスをギンギンにして、二人も、ソコに。

へ、へえ。それ、すごそう……

リグルは想像する。妖夢と妖夢の半霊、この二人のペニスにかわりばんこで、オスマンコをズボ突きされるのだ。四本の手で乳首を捻り潰され体中を愛撫され、日本のペニ先で前立腺を絶え間なく突き上げられるのだ。

直腸が捻転して、肛門がヒクつき、腸液があふれるのを感じた。ペニスを受け入れる準備、自分の体がまたたく間にメス順応するのが、リグルには理解できてしまった。目の中にハートマークを描いたトロ目で妖夢の姿を見、腰を抜かしたようにその場にへたり込むリグル。すぐに、目の前に二本のペニスが差し出された。リグルは迷うことなくそれにむしゃぶりつく。

第二ラウンドは、攻守交代、否、男女交代だった。

§

リグルは見事にだなあ

妖夢くんが、それ言うの?

僕は女になりたいの。男である自分は、邪魔くさい。二刀を使いたいわけじゃないし、うまく使える気もしない

さっきまではちゃんと女の子してたよ?まあ、おちんちんすごかったけど!

ああ、そういうことだよ。妖夢は俯く。

幽々子様と一緒にいると無性に……男に戻るんだ

あの人、綺麗っていうか、男を誘う女って感じだよね。しょうがないんじゃない?魅了魔術チャームみたいなものでしょ

幽々子様をそういうふうに言わないで!

あの人絡みになると途端にめんどくさいよね、妖夢くん

げんなり顔のリグルをよそに、妖夢は自分の発言でダメージを負ったらしい、うなだれている。

リグルに誘われたって、射精したくてたまらなくなった。自分で自分を制御できない。女で、いたいのに。女の子でいる間は、あんなにも自由で、強くなれるのに。男に戻ったら、僕はただの弱虫なのに。時々無性に男に突き戻されるんだ

それを言うなら、とリグルは口を開く。

ボクは両方になりたいんじゃない。どっちであることも、ボクはやめたいんだ。どうやらボクは、どっちかでいること自体が、苦手なみたい

どっちでもないってこと?

あいだじゃない、空っぽでもない。そのパラメータ自体が存在ないことを、ボクは望んでる。でもさっきみたいに、どっちかの役になってエッチしたりもする。

よくわかんないけど……と少し考える風の妖夢。付き合いの長いリグルにとってその仕草は「いつの間にか随分女の子らしくなったな」と思えるものだ。無意識にそうした所作が出るのなら、それはもう、そうということで良いのではないか。と、彼に伝えたところで、妖夢は納得しないだろう。リグル・ナイトバグ自身もそうなのだ、これ以上のことを言うのをリグルはそこでやめた。

零と虚の違い、か。八雲紫の能力でさえそれは再現できない。大望だね、キミの言う〝強くなりたい〟ってのは

今度はリグルが妖夢の言うことをうまく理解できていないようだったが、そのディティールはさほど重要なことではないのだろうと隅に追いやる。

まっぴらなんだよ、もう。男だ、女だ、なんて

それって、風見幽香の前でも言える?

……だからこまってるんだ

苦笑いするリグル。追い打つ妖夢。彼に、責めるつもりはないのだろうが恐らく、身につまされる何かがそれを問うた。答を求めている。

性の上にしか成立しない己なんて嫌だ。そうじゃなくて、己の上に性を立てたい。その性がどっちだって構わない

風見幽香は、女だよ

女を好きなのが、男とは限らないでしょ。

まあ、たしかに。キミはメスとして、風見幽香に好かれてる。その好意は、性とのバンドルでできてる。彼女だけじゃない、この世の殆どの存在は、性を抜きに自己を確立しないし、性を抜きに相手なんか見られない。ならリグルは、性が、憎い?

違う、憎いんじゃない。性別は、絶対に尊重されるべきものだ。

顔を上げて否定するリグル。

ただ……ボクが男と見られようが女と見られようが、んだ。自己を性に縋るのが、嫌なだけ。

自分は、性的に自由でありたい?

少し違う、でも、言葉に直しちゃうとそうかも知れない

自己を性に縋る。妖夢はぎくりとした。図星を突かれたように小さな怯えを抱き、反発するように言い返してしまう。昔、自分を救ってくれた女装男性ひとに言われた。「ティピカルな〝女〟を被って満足するような段階に、ないのかもね」。あの言葉を、自分は裏切っているのかもしれない。

……わからないな。性のグラデーションなんて、この世にはない。誰かにとって誰かの性は、何処か一点に固定される。仮にそれが肉体と相関を持たない点であったとしても。それどころか自分のことさえグラデーションにはできず今いる足元の点を指して〝自由だ〟と叫ぶだけ。自分のことさえ出来ないのに他人にそれを認めるなんて、幻想だよ。キミは、その点さえ拒絶するのか

そうだね。きっと、勝ち目のない、戦争だ

まくし立てた妖夢に対して、リグルは諦めたように相槌を返した。諦め?首をもがれた虫がまるでそれを気にしないように動き回る姿、切り潰しきれなかった虫の命のしぶとさ。よく知った〝諦め〟という言葉で包含できないリグルの気配に、妖夢は戦慄さえしてしまう。主を護る立場でよく知っている、屍兵は、剣の達人よりも恐ろしい。

キミは……戦うことが、目的になっていないか?

わかってるんじゃん

高尚なことだね、と揶揄するようにいう妖夢だが、リグルはそれでも妖夢を信頼の目で見ている。居心地が悪そうに目をそらす妖夢。妖夢にも、その終わらない戦争の〝高揚感〟が、理解できてしまったから。

風見幽香は、リグルをメスとみなしている。性器の形を無理やり無視してどちらでもないことを望んだところで、キミの肉体は風見幽香にパラメータを刻まれてる。だったらリグルは女だ。キミはそんな小さな世界からでさえ、性別を確定じゃないか。リグルを男として好きなやつだっているだろ。無だなんて、可能だと思うの?

責めるような言葉、でも彼の手はリグルの手の上に重ねられた。その感触を温かく感じながら彼は、妖夢の手を握り返す。100%愛情とは到底言えない感情で視線を交わす。

んー、だから妖夢くんでヌいてる

ハハっ。えー、ひっど

ちゅっ。

友情というよりは信用、利害の一致、戦友、共犯者。それが丁度いい、二人には。恋でなければ体を結ぶ絆になれないなんてことは、ない。

ひどい、と言いながらしかし、妖夢は女の顔でリグルの頬を抱き寄せて口づける。好色な女の顔で、男の獰猛さを隠すことなく妖夢はリグルへ、問うた。

次は、がいい?

§

ヒノコノゲシの綿毛が溶けない粉雪のようにふんわりと降り積もっている。一部はのんびりと宙を漂い浮いていた。ヒノコノゲシの綿毛はその名の通り火の粉のように穏やかな橙色に発光して、じっとりと沈む空気に色を溶かしている。これを間接照明として利用するのは、風見幽香が室内のを出すときに好んで使うやり方だった。そしてそれは、彼女だけではなくリグル・ナイトバグにとっても馴染みがある。窓のない重苦しい空気の部屋が、柔らかな淡い橙色に満たされていた。

そこに座って、脚を開きなさい

びくっ。俯き視線を地面に投げるようだったリグルは、跳ねるように顔を上げ、視線を自らの主幽香の方へ向ける。

粘つき肌に絡みつくような空気の中、穏光にゆらゆらと照らし出される艶めかしい輪郭は、風見幽香。てらてらと光沢を宿す艶黒の生地で、健康的な白肌をキワドく隠していた。白銀に煌めく金具はアクセントの鋲、小さな布地と小さな布地を辛うじて繋ぎ止める鎖、編み上げ用のグロメット。睨む目の赤。開けば秘部が顕わになる箇所に、敢えてここは開く場所だと見せつけるように配置されたファスナーの引手からは繊細なチェーンが垂れ、先端にはバラをかたどったヘッドが扇情的に揺れている。金属リングを通る革リボンはキツく編み込まれて、内側の白い肉を絞り出すように締め上げている。風見幽香のはち切れんばかりの肉体と、細い腰が、ボンテージによって過激に強調されていた。黒光りする小さな覆布に締められた縁から溢れ出しそうに盛り上がりハミ肉している乳房と尻たぶが、圧倒的なボリューム肉を更に淫靡に形作っていた。

……ふふ。そんなに腰を反らせて、つま先で立って股を開いて。男を誘ってる娼婦みたいね。そんなスケベ衣装、売春婦でも着ないわよ?それを、こんなに似合う男、いる?

だが。それ以上に目を引くのは、屈強な男でも自分を恥ずほどの、見事な男根だった。開けば女陰を開帳するに違いない無骨なファスナーで際どくも確実に女陰を隠す一方、そのペニスは一糸纏わずに露出しており、使い込んだ雁首と浮き上がる厳しいスジをあられもなくさらけ出している。勃起して威容を相手に見せつけるように反り返り、目の前の男リグル・ナイトバグに見せつけるように揺れている。既に竿全体が何か粘り気の強い液体にまみれており、粘液が糸を引いて滴り落ちている。

淫らすぎるボンテージに勃起巨根の威容を備え、だが溢れ出す不遜な威厳を隠そうともしない女王然とした姿が、リグルの視界に焼き付けられる。幽香は自らの巨根を可愛がるように右手で撫で回し、糸引きのスライムローションを塗りたくるように動かしながら、左手を腰に添えて仁王立ちしている。股を開け、と命じたのはその正面にいる男に向けてだった。

ああら、あら

脚を開け、と言われその場に釘付けとなっているリグルは、妙に高い椅子に腰を預けていた。椅子の座面は極端に小さく斜めになっている。スタンディングチェアとでもいうものだろうか。座るというよりは腰を支える機能しかなさそうだ。座れと命じられたリグルは小柄な少年ではあるが、椅子はそれをしてなおわずかに低く調整されているこれは、脚を開いてガニ股になった高さで丁度いいのだ。

幽香に命じられたとおり、リグルはバランスの良くないスタンディングチェアに腰を預けて、股を開いた。そうすることで腰が座面に落ちるが、それでも斜めに傾いた座面は全身を支えるには心もとない。

不安定なら、背もたれでも掴んだら?

リグルは幽香に言われる通りに椅子の背もたれを探すが、これも非常に小さい。後ろ手に背もたれの頭を掴むと確かに幾らかは安定するものの、肩を開き胸を反らせて強調する姿勢になる。加えて下半身は背の高い椅子でがに股を開き腰を突き出すようにしてつま先立ちになっているのだ。

恥ずかしいポーズを自覚して、リグルは顔を真赤にして視線を幽香から引き剥がす。

好いポーズね。ハイヒール、似合っているじゃない。そんな下品な赤のハイヒールなんて、私でも履けないわ。さすがね、男より女の方が素養あるんじゃない?スケベ女の素養。

リグルのつま先立ちを補助し同時に、そのいやらしい立ち方を強調するのが、踵の高いハイヒールだった。一般的には……男が身に着ける靴ではない。だが挫けばすぐにでも折れてしまいそうなリグルの細くて白い足首は、品がないほど艶赤が光るハイヒールへ滑り込むように伸びている。

それだけではない。ガニ股でつま先立ちになり胸を突き出すスケベポーズで立たされたままのリグルは、透け感のある極薄の下着のような肌着を身につけていた。

女物の下着としては使い物にならないあまりにも布地の小さいブラジャーは、乳房を受け止めるほどの面積もなければ、隠すほどの厚みもない。小さな三角形の布地では乳輪さえ隠しきれず端からピンク色の肉輪がこぼれ出しており、レース地のような薄い生地ではその下の乳輪も覆えず乳首は透けて見えていた。

男のくせにこんな透けブラが似合うなんて。乳首が勃起しているわよ?こんなにそそり勃って、あんたの粗末なちんぽより立派なんじゃない?

あうっ……!あっ、や……ん

もはや開発され尽くして長突起となっているリグルの乳首は、内側から指でも入れて突き立てているのかと思うほどに高く勃起しレースブラの上から形が浮き出るほどになっている。幽香の細い指が、まるで豊かな葡萄の粒を一つ摘むような手慣れた様子で、レースブラの上からリグルの乳首をひねり上げた。オス長乳首が摘み捻られて、痛々しく変形した。だがリグルの口から漏れた声には、苦痛の色に確かな喜悦が混じっている。

なんて声、この変態。キンタマブラジャーも随分具合が良さそうだけれど?

下半身のショーツも女物のそれとは大きく違う。ヴァギナを隠す前布はなく細い紐のように痩せている、代わりにぶら下がった睾丸を受け止める白く繊細な袋状の布と、ペニス全体を包み込む薄いレース生地の筒が備わっている。竿を納めたレース筒にはフリルやリボンが設えられており、ペニスを過剰に装飾していた。意図的に羞恥を煽る意匠だが、彼のペニスは勃起状態でこのペニスドレスを着こなしている。これは、男子用にデザインされたスケベ下着だ。幽香が、リグルのために用意したのだろう。

あらあら、可愛いお嬢ちゃん、頑張っておっきしてるのね

お嬢ちゃんじゃ、ないです……っ

幽香に煽られて、顔を伏せるリグル。だが、顔を伏せたところでこのポーズでは時分の変態じみた下半身が目に入るだけだ、目を閉じる。

そうね、タマブラなんて男の子じゃなきゃ使えないものね。でも、タマブラなんて要らない体にしてあげる。徹底的にメスイキさせて、メスホルモンでじゃぶじゃぶにしてあげるから。キンタマなんてあっという間に退化してラヴィアの代用品になるわよ。

ひ……っ、あ……や、やだ、ボク、男、ですっ、そんなこと……

恐怖に引きつった声を上げ否定するリグルだったが、同時にペニスドレスをまとった彼のペニスがぴくんと跳ねるのを、幽香は見逃さなかった。

乳首捻られながらペニスびくびくさせて、どこまで男を名乗っていいのかしらなの?乳首で感じられるなんて、もう立派なメスになったものね?ぶちゅっ、れろっ

ふぁ……ん……っっん、ぁ、ん

すっごいメス声

幽香は、愛おしい人とするのとは違うオーラルレイプとでも言うべきな乱暴な口吸を重ねて、リグルの舌を無理やり吸い出す。無遠慮に歯を立ててリグルの薄くて小さな舌を噛むと、彼は目に涙を浮かべながらしかし嬉しそうに啼いた。

幽香の備える「女」が豊満な肉体と安定感のあるムチムチな肉色香によって示されるセックスアピールであるのなら、リグルにも「女」が備わっていた、男であるにも拘わらず。幽香の持つそれとは違い、華奢で、すぐに手折れそうな儚さの持つ小動物のような可愛らしさが、彼に「女」を注入している。男子用のスケベ下着は形状だけは男用だが過剰にフェミニンなデザインになっていて、女化調教を受け続けているリグルがまとえばこの通り、このコスチュームも女を強調するアイテムだ。形を保つペニスだけが辛うじて男のシンボルになっているが、あまりにも可愛らしく飾り付けられたペニスからはもう、男らしさは伝わってこない。

ペニスドレスも似合ってるし、女の子にして貰えて、よかったわね?情けない敗者オスでいるより、メス化した今のあんたの方がよっぽど魅力的よ?無様で、可愛いわよ。いつ、この無能チンポとお別れしようか。女のあんたにはもう要らないでしょ?それとも、メスイキしまくってチンポ退化するまで、ぶら下げっぱなしにしてみる?

ぎゅっ、ぎゅっ……!

幽香がリグルのペニスを力任せに握る。潰される痛みとこすれる快感の混じった感覚がペニスから入り込んで腰を溶かす。

っ、ん……やっ……ぁ

気持ちよさそうな声出して。勃起して、まだ男をあがいているの?御覧なさい、女のチンポでこれなのよ?それに比べて、あんたのチンポはどう?

ぺち、ぺち。幽香は自分の巨根でリグルのペニスを叩く。腕と指ほどの差がある残酷な落差。リグルのペニスは幽香のペニスを前にして精一杯勃起しているが、まるで人間を威嚇するナメクジのように滑稽な対比だ。

幽香はリグルの椅子を蹴り飛ばし、その支えを外す。バランスを崩したリグルに「腕は上で組みなさい」と命じる。リグルは頭の上で腕を組んだまま、後ろの幽香の動向を気にしてキョロキョロしている。幽香はリグルの後ろに回り込み、反り返る勃起ペニスを押し下げて、リグルの股の間に通した。股の間から、子供の握り拳ほどもありそうな亀頭が顔を出し、それが首を擡げるように伸び上がる。リグルよりも背が高い幽香、そのペニスがリグルの股から通ると、彼は足をピンと伸ばしてつま先立ちになる必要があった。踵を踏ん張れないハイヒールは誂え向きだ。頭の上で腕を組んだままハイヒールでつま先立ちになって、女のペニスを股にくぐらせて頬を染めるリグルは、煽られ高まった興奮を、口から吐息にして吐き出している。

ぁ……ふ……うぁ……ぼ、ボクは、男の子、ですっ!男の、本物のおちんちんは、幽香さんの偽物ちんぽなんかに、負けません!

あらそお?こうやって並べると、あんたのチンポのショボさがよく分かるわね?これで男?情けないのね。のペニスの十分の一くらいしか無いんじゃない?

妖夢くんとは、ちゃんと出来たんだ……っ

リグルの股の下を通った幽香のペニスは、リグルのペニスを上に乗せるように勃起している。幽香の巨根の上で精一杯に勃起を続けるペニスは、まるで子供のようだった。陰嚢は幽香のペニスの上で左右一つずつに別れて、白いレースに包まれたまま巨根の上でプルプルと震えている。圧倒的な身体差。男なのに、女に男の象徴で敗北している情けなさ。女として扱われる宣言、女調教が深刻化する肉体。

どくん、どくん、男のくせにまるで少女のように胸をときめき高鳴らせながら、勃起して反り返り青筋を立てて自分の股間から覗く巨根に視線を釘付けにされているリグル。

あ……しゅご……ぃ……

なぁに?男がちんちんをスケベな目で見てんのよ。これ、女の子を喜ばせるためのものなんだけど?

べ、べつに、スケベな目でなんて!

すぐに顔を真赤にして俯くリグル。まるで、男として愚弄されているというよりも、女として図星を指されたみたいな恥じらいを見せる。幽香は、ふうん、と目を細めてその様子に満足する。

リグル、ちんぽ、好きよね?女の子メスなんだから。

す、好きなわけないです、ボク、男ですよ!

強情ねえ、目の中がハートになってるの、ばればれなのに。

陥落♂と化し、わきまえたように振る舞うリグルに満足する幽香は、胸が高鳴るのを感じた。興奮と性欲どろついたマグマのように下半身でうねる。今はペニス先行の幽香だが女としての情欲も頑然と存在し、それは下腹部の奥底、子宮内側でぐつぐつと沸いている。女陰と子宮で生まれる性欲が、今はペニスで発散されようとしているだけだ。それはリグルに向いている、リグルは幽香にとって女なのだ。男であるリグルの雌性に発情する、女である幽香のペニス。リグルの体を押し上げるほどの勃起巨根は、リグルの股間に挟まれてより一層固く熱く反り上がり、リグルは自分に向けられる熱さを感じ……胸を高鳴らせる。

す……ご……妖夢くんにはあんなことゆったけど……こんなの見せられたら……

何よその、メス顔。ねえ、あんた男としてのプライドとかないわけ?私、今からあんたをメスとして犯そうとしてるんだけど。

ぷっ、プライドくらい、あります!おちんちんは男の持ち物なんです、女の人の偽物のおちんちんより劣ってる、わけ、わけ……

じゃあ、リグルのちんちんは、私のこれと勝負して、勝てるってことね?ほら、これと、勝負

幽香が煽るようにリグルの股の下で腰を動かす。巨根に伝わった振動が、リグルの矮小おちんちnを突き上げるように潰す。陰嚢が押し上げられ、キンタマがきゅっと圧迫される。竿が跳ね上がって、被虐喜悦の先走りを一筋、垂らした。

勝負?この、強そうなおちんちんと、ボクが、勝負……?だ、だめだ、弱気になっちゃ!幽香さんだって今までボクの中で何回もイッてるんだ、幽香さんのおちんちんだって、無敵じゃないんだ

細切れになった加熱吐息を吐き出し、早鐘を打つ心臓に翻弄されるようにリグルの腰がくねる。男を求めて誘う女の動き。見せつけられた幽香のペニスにも沸騰するほどの血が巡り脈打っていた。

まったく、昼間っからそんなソソる顔ぶら下げて私の目の前歩いてたんだから、ブチ犯されても文句は言えないわよね?

ふ、ふざけないでください!何ですかメス顔って。お、おちんちん欲しがってるみたいに言わないでくださ……い……

リグルの視線は、湯気でも上げそうなほど熱く脈打ち、先端から強烈なオスの臭いを漂わせる幽香の巨根に吸い込まれっぱなしだ。とろりと垂れる女製カウパーの本物さながらの臭いを感じて、リグルは鼻の下をのばしたままそれを目で追う。

しょ、勝負って、なにするんだろ……お尻に挿れて、どっちが先にイくか、かな……おちんちん、挿れ、て……

そう、その顔よ。いちいちいちいち、チンポ煽るようなメス顔!

リグルの横から顔を出すように、肩越しに顔を見せる幽香。腕を伸ばして、彼の頬を挟むように顎を掴み、自分の方へ顔を向かせる。指に力を入れ頬を押しつぶすようにして彼の口を広げさせる。

っんぶ、んっ……!ぶあ、な、なに……んっっぐ

ぶちゅっ、ちゅっ、じゅるる、ぶぼっ

押しつぶすようにひしゃげて開いたリグルの小さく薄い唇に、幽香の肉厚で色香をダダ漏らす赤い唇が吸い付く。

無遠慮に侵入しリグルの口の中をレイプして回る幽香の舌。頬肉、歯茎、舌の裏側までを執拗に舐め回し、溢れ出す唾液を吸い出しては自分の唾液を混ぜてリグルの口の中に流し込む。頬肉も顎も自由を奪われたままのリグルは唾液を口に含めることが出来ず、舌も絡め取られて扱えない。上向かせられれば二人の唾液が混じった泡立ち汁を飲み下すしかなく、幽香の舌レイプを受け入れている間は唾液をダラダラとこぼすばかり。

興奮で呼気が荒れるが口は使えない。品性を欠く乱暴な鼻息に、ピンク色の欲情蒸気がこもっていた。

ら、乱暴……っ、おちんちんされなくても、幽香さんに口レイプされるだけでドキドキしちゃう……ボク、男なのに、女の子みたいに、キュンって……

じゅぶ、くちゅっ、じゅるるるるっっっっ!ぐちゅっ、じゅるっっ!

わざと唾液に空気が混じり汚らしい撹拌音が響くように、幽香は唇をすぼませてリグルの口の中に入りこむように押し付け、泡を噴くみたいに唾液をこぼすリグルの口の中を自分の舌でめちゃくちゃにかき混ぜ、大きく口を開けてリグルの口どころか鼻まで舐め回すようにして口の中に食べる。おおよそ理性のある大人の行為とは思えない、常軌を逸した汚らしいキス。だがそれも、自由を制されてされるがままで受け続けるリグルにとっては、マゾヒスティックな快感に突き刺さってしまう。

べちょべちょ……幽香さんとボクのツバで、ボクの顔ベチョベチョになっちゃってる……

だがそんな風にされてもなおリグルは上で組んだ腕を崩さず、幽香のペニスの上で貧相な小男根を震わせている。薄レースのスケベブラの下で、乳首は興奮に充血して勃起し続けていた。

ぼとぼと滴る下品な唾液雫がリグルの胸へ滴り、股の間から顔を覗かせる幽香の巨根にも垂れる。びくん、とまるで野獣が寝返りをうつかのようなメス巨根の跳ね上がりに、リグルは雄々しさに蕩けるメス男子の本能を刺激されていた。幽香が、リグルのメス匂いを嗅いでは、いよいよ堪らず声を上げる。

っぷあ、ああ、もう、完全に女レイプしてるときの気分。ちんぽイラついて我慢キッツいわ。もうメスにしてやるから、壁に手ついてこっちにケツ向けなさい。早く!

え、おちんちん勝負……

っさい!さっさとしろ、ケツ穴チンポスリーブになりたいんでしょ!?

幽香に命じられ、渋々、だが欲情期待に胸を高鳴らせながらリグルは、橙色の光に彩られる部屋の壁に向かう。一歩歩く度に床に降り積もったヒノコノゲシの綿光がふわりと舞い、ハイヒールとスケブラ+タマブラの変態衣装を纏うリグルの白い肌が湿っぽい光に照らされ陰影を揺らす。勃起したままのオス乳首も、抵抗の意志を宿して勃ち続けるペニスも、はっきりとそのシルエットが壁に投影されていた。慣れないハイヒールの筈なのにリグルは、脚ではなくしっかり腰で歩いている。一歩踏み出すごとに腰骨が上下に揺れくねり、男を煽るウォーキングをリグルは本能的に幽香へ見せつけていた。

幽香は、リグルのスケベウォークを舐め回すように見る。貧相なほど細い足が真っ赤なハイヒールに履かれているのを、チンポドレスを推し着せられながら弱々しい男の必死さを見せる短小のペニスを、完全にメス敗北してスケブラの下で性転換しつつある勃起乳首を、食い入るように見ながら幽香は、自分のペニスを扱いている。

あー臭い、オスマンコからダダ漏れのメスフェロモン、100m先からでもプンプン臭うわ。これ絶対ホモが群がって数珠繋ぎになるやつね。チンポにクるわ

リグルのそれとは比べ物にならない幽香の怒張。リグルの短小ペニスから垂れていれば情けないベソかき涙にも見える先走り汁も、幽香の巨根からたれれば肉食獣の涎だ。乳房の開いたボンテージに押し出される乳肉に乗る乳首にも興奮は窺える。それでもリグルの服従勃起とは全く異なる、まるで相手を突き殺す獣欲満たしたペニスのようでさえあった。

だが、雄欲剥き出しでリグルを見る幽香にも、臍の下の奥には別の性欲が湧き上がっていた。それを自覚する幽香は、目尻に少しだけ苛立ちを表し、舌打ちする。その僅かな苛立ちを、八つ当たりにも等しい形でリグルにぶつけ直す。そうすればリグルは一層メスみを増した姿を見せて、幽香の雄獣性を強く掻き立てる……そうすれば自分の女をごまかせるから。

ちょっと、もっとケツ穴締めて歩きなさいよ!ケツマン汁の匂い漏れすぎててキッツいのよ!!あんたみたいなメス野郎にチンポ煽られてるこっちの身にもなんなったらどう!?

そんな、こと、言われても……っ

さっさとケツ向けなさい。股開いて。もっとケツ上げて!

リグルよりも幽香のほうが背が高い。壁に手をついて尻を幽香の方へ向け股を開くと、幽香のペニスの高さとリグルのアヌスの高さは合わない。ケツを高く上げろと命じられたリグルにとって、つま先立ちを補助するハイヒールはまたしても都合が良かった。

まったく、スケベハイヒールがよく似合うわねぇ?

壁に手をついて上半身を前屈させたままのリグル。幽香の半勃ちペニスが開いた股の間から再び顔を覗かせた。立ち上がりこそしているがまだ柔らかさを持つ肉棒が、リグルの太腿の間で揺れている。

男のチンポは女のチンポに勝てるって、さっき言ったわね?

そ、そうです。おちんちんは元々男のものなんですか……ら……

その男が、女に向かって、女みたいにケツを向けてるんだから世話ないわね?

幽香は四股を踏むほど股を開いてリグルよりも深く腰を落とし、反り返ったズル剥け巨根を掴んでリグルの股の間で下品に踊らせて見せる。数度手でしごいて半勃ち固く整えると、先端でリグルの包茎短小ペニスを下から擦り上げるようにねっとりと腰を動かした。先走りぬめりを宿した幽香の肉棍棒は、反り返ってその先端でリグルのペニスの裏筋に触れている。腰を何度も前後に揺らし、硬さを保った亀頭でリグルのペニスを竿から亀頭の縫い目に向けて執拗に擦っていた

お、お尻、するんじゃ……?

てっきりいつものようにアナルセックスが始まり、直腸にザーメンを吐き出して終わるのだと思っていたリグルは、ペニスに与えられるペニス刺激に戸惑う。そして。

ふぁ、ぁっ……

これで、どっちが先にイくか勝負させてあげる。女のチンポに、勝てるのよね?

も、もちろんです

リグルよりも深く腰を落としている幽香は、自らのペニスでリグルのペニスを突き上げるように激しく動き始めた。飢えた猛獣の涎のごとく先走りを垂らす幽香のチン先が、怯えるように何とか勃起し続けるリグルのおちんちんに擦り付けられ、いや扱き上げられる。

ぬるっ。ずっ。くちっ。にゅるっ。にゅるっっ。

それにしても、ちょっと可愛そうになっちゃうわよね、そのサイズで男だなんて。そんな可愛らしいおちんちんじゃ、周りの男友達はリグルのこと、絶対スケベな目で見てたわよ?いつか犯してやるって、ギラついた獣の目で見てた。私、その子達の気持、わかるわぁ……。彼らは悪くない、ホモじゃないのよ?あんたがあんまりにもメス臭いから、雄の本能でリグルのことを見ていたのよ。

わ、わけわからないこと言わないでください

わかるわよ。あんたみたいなメス顔が、こんなしょぼいちんちんぶら下げて〝男だ〟なんて言われても、誰も納得しないわよ。

幽香はリグルの尻たぶを掴んで、まるで女の穴を後ろから犯すように、リグルの股ぐらの間でペニスを前後に動かす。規格外のサイズの幽香のペニスが押し出されると、リグルの小さなペニスを轢き殺して更に進み、壁に手をついて前傾姿勢のリグルの腹にさえ当たる。

シコッ、シコシコシコシコシコッ、シコシコシコッ!!

ふああっおっき、い、幽香さんのおちんちん、おっきすぎて……らめ、おちんちんに、おちんちんあたってぇ

あんたのなんて、ちんぽじゃないわよ。クリトリスよこんなの、女のクリトリス!

ちがいま……ふきゅっ

こぉんなちっちゃいちんちんは、身の程を知るべきだわ。ほら、ほらっ!どう?女のチンポに♂クリこすられて感じちゃってる感想は!?

クリトリスじゃ、な……あ、あつよ、いっ、幽香さんのちんちん、つよ、ぉっ

まだそれのことちんぽだと思ってるの?クリトリスよ、違うって言うならこの可愛らしい肉突起ちゃんがちゃんとちんぽだっていうのなら、女のちんちんになんか負けちゃ駄目よ?ほら、ほら、ほらっ

シコッ、シコッ、シコッ、シコッ、シコッ、シコッ!!

ずるっぶちゅっぐちゅっにゅるにゅるっぐいっ

やら、やらぁっおちんちんが、ボクのおちんちんが、おちんちんに犯されて……

ねえ、ほんとに?勃起してそのサイズなの?勃起してるのにそんなに下向いてるの!?女のチンポに勃起負けして、恥ずかしくないの?ほらほら、私のちんぽであんたのちんぽクリトリス、イかせちゃうわよ?

ふーっんっふぅっあっボク、男だもんっ、おちんちんだ、もんっ!まら、まけにゃ……ぃ……っ!

リグルの尻を穴まで見えるように掴んでいる幽香に、リグルが下腹部に力を入れたことが見て取れた。

くっ、くっ、と、リグルのペニスが硬さを増して突き上げてくる幽香のペニスに迎え撃った。勃起力を得て上向いたリグルの裏筋が、擦り付けられる幽香の亀頭に抵抗して、柔らかいズルムケ肉に摩擦刺激を分ける。

あらぁ、かたぁいまだそんなにがんばれたのね?えらいえらい

ゆ、幽香さんのおちんちんのさきっちょ、柔らかいんじゃないですか?ボクのおちんちんと擦れて、気持ちいいおツユいっぱい出てますよ、ね?

ええ、早く目の前のメスをズボ穴にしたくて仕方ないって、駄々をこね始めちゃったわ

ボクのおちんぽスマタで、イッちゃってください

ふーん?ナマイキね。じゃあその背伸びおちんぽが負けないように頑張ってねほぉら、ちんぽでこすられてるのに、あんたのギリギリちんぽは、子作りシたくて必死じゃない?ちんぽ相手にセックスと勘違いして射精しようとしてるんじゃない?ちんぽでしごかれてるのに、膣圧と間違ってるんじゃないのぉ?

ち、ちがっ……ゆ、幽香さんこそ、ボクのおちんぽでキュン勃ちしてるだけなんじゃないです、か?

ふきゅっあちゅ、い硬いっ幽香さんの亀頭、ゴリゴリってっっ

幽香のペニスが、リグルのペニスを容赦なく擦り、押しつぶし、叩きつける。力なく垂れるリグルの陰嚢に対して、左右それぞれ桁外れに大きな幽香の玉袋は、射精臨戦態勢のまませり上がり続けている。オスとしての逞しさは全く比較にならない。

ごりっ、こりこりっ、きゅっずんっ、ずりゅっ

クチュ、くちゅくちゅっ、とろぉっ

ぴゅ……とろっ、とぷっ

あらあら、先走りが射精みたいに飛んじゃってるわね。我慢必死

ま、まだ……ですっ

ちんぽ擦りでセックスと間違って射精しちゃうの?負けちゃっていいの?女にチンポで負けて、男の尊厳を女に奪われちゃっても、いいんだ?

まだ、射精てないっっ、ボクはまだ射精してないっ……!

そうね、ほら頑張りなさい、ちんぽ相手にちんぽイッちゃうなんて、男として認められないわよねえ?

あた、り、まえ、ですっっ……!ふぁ……

ふふ、ちっちゃいちっちゃいお嬢ちゃんちんぽ、私のガチブトに勝てないからって泣いちゃってるの?そんなにとろとろ愛液漏らしちゃって、大丈夫?イきそうなんじゃないの?女のチンポに精一杯抵抗してるけど、無駄だってそろそろわかった?男のちんぽは女のちんぽに負けたりしないんでしょ?ほらほらほらっ女のちんぽに追い詰められて、あんたのクリちんぽ、ビクビクしてるわよ?負けるの?ほら、ねえ、負けるの?

まけ……にゃ……ふーっふーっっぎ、っぎぐっ幽香さんのちんぽ、ボクのおちんちんに、キクぅんっ負けたくないっ、男として、おちんぽ負けたくないっでも、でもぉっっ

男のチンポのくせに、女のチンポと擦れて無様に射精しちゃうの?メス負け認めちゃうの?もう負けそうなんでしょ?セックスと勘違いしてる弱々ちんぽ射精しそうなんでしょ?女ちんぽにちんぽ犯されて、負けちゃえ

ふあ、ふぁっっしゅりしゅり、おちんぽでおちんぽしゅりしゅりされて、クリちゃんみたいになって……ま、まだ、まだぁっ!がんば……ってぇボクのおちんちん、まだ、がんばって……おちんちん、まけない、でぇっまだ、まだできる……からぁ……んぉ

トドメよ

ゴリっっっっ!ズリズリズリっ……こりりっっ!ぞりゅっんっ!

熱を帯び鋼鉄のように固くなった幽香の亀頭が、射精我慢限界で硬直痙攣するリグルのペニスの裏筋を亀頭裏を打ち

っ……だ、だめ……っちゃ、だめ、ボクのちんちん、まだ、まけ……

そのまま摩擦を強いながら正確に先端へ上る、到達した亀頭のと裏筋の迎合点の凹みを押し潰すように刺激した。そして擦り潰すように先端へ弾けて外れ、幽香の亀頭はリグルのへその穴に先端を押し付けながら、じゅわ、と先走りを滲ませる。

ま、まけ……まけゅ……ちんちん、まけりゅぅっでちゃう、もう精子でちゃうゆ、幽香さん、おねがい……おねがい、一緒に射精っボクの負けでいいですから、一緒にぃっ……

や よ。一人でイきなさい。

びゅっ、ぴゅっ、とろぉ……とぷ、とぷんっ……

はあい、おもらし〜負け〜リグルの男チンポ、女おちんぽに負けちゃったわね?情けない違うわね、これでリグルのこれは、おちんぽ失格クリトリスよ。ザーメンもこぉんなちょっとしか出なくて、垂らすみたいに勢いがなくて、こんなの射精のうちに入らないわよ。私のちんぽの先走り程度しか出てないじゃない?

ふぁ……あふ……

あらあらベソかきチンポ、あんなにちょっとおもらししただけで、もうしょんぼり萎れちゃってるの?このクソ雑魚男。

ずる、ずる、と壁に手をついたまま腰が砕けて床に崩れ落ちるリグル。へたり込んだままのリグルを見下ろしながら、ふん、とそれを嘲笑い、幽香は仁王立ちで自分のペニスを扱く。一瞬、鼻の下が伸び口が半開いて、瞼をトロンと揺らすと、幽香の巨根から勢いよく精液が吹き出した。

びゅーーーっ、びゅーーーっっ!ぶしゃっっ、びゅびゅっ!びゅーーっ!!

びちゃっ、びちょっ!

幽香のペニスにイかされたリグルの射精とは全く違う、一発で女の卵管を登りきり卵子を探し当てて犯し抜く精子の奔流。その質感だけでも女をヨガらせる媚薬酒精のように熱い精液がまるで小水のような信じられない量で吹き出している。

床に崩れたままのリグルの体に、立ち小便でもするように精液をぶっかけていく幽香。ひくひくと動く触覚に、幽香よりもキューティクルな女子のような髪質の頭に、男にしても女にしても貧相な細く硬さを感じる体、妙に白い肌にも、わざと散らすようにして射精を向ける。

女チンポにコスられて射精して、たった一発でノックアウトなんて、本当に無能な男ね。メスなのは顔だけにしてくれる?チンポにさえ男の威厳が備わってないなんて、ほんっと負け組男よね。それを女のちんぽに理解らされるなんて、情けない。

あ、っ……ぃ……

男としての意志がへし折れたようにへたり込んでいるリグルは、幽香のザーメンシャワーを全身に受けながら、快感で身を震わせる。あまつさえ、恍惚の表情で鼻を鳴らしながら全身に受け止める白濁液の匂いを嗅ぎ、鼻を伸ばしながら髪から垂れ顔を流れる幽香の精液を舌で舐めている。それだけで、と小さくなって地面に潰れたままの小チン先から、ちょろ、と薄い精液が漏れ出した。

§

私、ビアンだから

……へ?

思わず聞き返してしまうめぐる

え、あの

意志の強そうな目は、東洋人の特徴と言える吊った細い形とは少し違う。目尻こそ上がっているが、くりりとした瞳自体は大きい。その瞼が僅かにだけ眠たそうに降りているのがなんだか達観したような眼差しを作っている。視線を向けられれば睨みつけられているとも見つめられているともつかない不思議な感覚になって、めぐるが彼女に惚れ込んでしまった理由はその目だった。

やっぱり……すき……だなぁ

立ち居振る舞いには自信が満ちていて気品があるが、その端々にはどことなく投げやりで粗野な感じもある。現れためぐるに視線を向けた仕草、それ自体がまさにその気品と粗野の共存した振る舞いに満ちていた。

そういうわけだから、さよなら

だがその目が、めぐるを一瞥だけしていや、一瞥だってくれたかどうか怪しい、目の前に現れた彼が何か言葉を発するその前に、けんもほろろに突き返した。そうして机の上の教科書ノートを整えてから、腕を組んで足も組む。目の前にいるめぐるを避けるように視線を斜めに投げて、その間にここから去ってと、風間のオーラは物語っていた。

「あ……はい」(はいじゃないけど!?え、なにこれ!?

めぐるは見えない手に頭を掴まれたみたいに回れ右をして、彼女の前から立ち去るしかなかった。

え?ビアンって何?いやどういう返しなの?からかわれてる?

アドリブに弱いほうだとは思っていたけど、これ、パクくんなら対応できる冗談だったりするんだろうか。あるいは恵谷なら、わかるー!とかいう魔法で仲良くなれたりしたのだろうか。めぐるの頭は一撃で脳震盪、グロッキーのままフラフラと自席に戻る。

………。やっぱ見る目なかったな!

ひどくない!?

いや、なんか死にそうになってるからちょっと言葉見つかんなくて。何言われたんだよ。

えっと、び

ビアンって、いっていた。れずびあん?れずびあんって、なんだっけ。ああ、そうか、あれか……

アウティングとかそんな事を気にしたわけではない、めぐるにそんな余裕も、思慮だって備わっていなかった。ただ暗い井戸に蓋をしてその中にずっと押し込めたままだった泥濘じみた食指がぬらり、と井戸の蓋の隙間から溢れ出し、彼のはらの中に染み込み横隔膜を強張らせたのだ。

冷静に考えるなら、めぐるに向かってあの場でサラリと告げたのだから、他人にそれが伝わることを気にしてはいないのかもしれない。ただ、そういう奥底に潜んだ何かを他人である自分が勝手に晒してしまうことに、めぐるはには言ってしまえば、配慮というよりも、恐怖があった。

ビアンカ派だってさ

はあ?おまえ、いったい何て声かけたんだよ……

呆れるパクめぐるが咄嗟についた嘘だと見抜けていないわけではないようだが、追求もしない。

めぐるそんなショックだったかよ。もともと脈なかっただろ

う、うん

元々脈がなかった、それはその通りだ。だがめぐるの心臓を締め付け続けているのは、その失恋の情ではなかった。失恋の悲しみ、その大部分は慕情していた相手を獲得できなかった想定喪失への痛みが占める、残り僅かな部分あるいはその後背レイヤーにあるのが、自身の性的魅力の欠如への虚無感だろう。少なくとも、今のめぐるをある種奇妙なほどに締め上げているのはそれだ。いや、それの、少し腐ったやつだ。悲しさよりも、悔しさが上回っている。

また、僕は

パクとの会話は当たり障りのない表層人格が適当にこなしている。その閉ざされた下層でめぐるはぐつぐつと性根の悪い腐敗を進めていた。もうそうした閉じ篭もりを、カウンターが壊れて弾けるくらい繰り返してきた。最近はめっきり減ってきていたと思っていたのに。

……この学校に来てから、また、増えたな……

自分の胸部に穿たれた傷の正体にめぐるは気付いている。だが気付いていれば自分で防いだり自分で治療したりできるというわけではない。

もし女の子だったら……

それで何もかも解決するわけじゃない上に、そもそもそれは叶わない。上から下まで破綻し尽くした考えだということくらい、彼自身にもわかっていた。

男としての魅力に欠いているから、女性に見向きもされない。そうして歪みまくった土台の上に、片思いの相手の恋愛性指向が女だからなんて、相手にするのさえ馬鹿らしい問題だ。だが彼にはそれさえ重大な鈍器となって襲いかかる。

失恋ごときでトラウマもらうなよ?

トラウマになんか、ならないけどさ

トラウマ。そんな深いものじゃない。でも、病理の名前をもらえるほどに深くない傷なら人間を変えてしまったりはしない、なんてことはない。自分の性への不信と諦観、性転換への希望と諦観。何よりも、悔恨。

いっそ、女として振ってもらえたら

自分が男だから、自分が女じゃないから、可能性の俎上にさえ乗ることが出来ない。それとももし自分が男としてちゃんとしていれば、こんなにもダメージを受けなかったかもしれない。

表層上の反射だけでパクと会話しながらめぐるは、ちらりと視界の端に入った白石から、視線を感じた。白石に姿を見られるのは、死ぬほど恥ずかしい。白石が本当にめぐるを見ていたのかどうかはわからない、ただの被害妄想だといわれても今の彼には反論はできないだろう。ただ、風間がいる世界は、白石がいる世界は、めぐるにとっては自分がそこにいられなかった世界だ。

結局、キモい男のままなのか。男であることから逃げ出したい。めぐるの倒錯した逃避感情が、急激に高まっていく。どうして女じゃないのか。意識の刃はしかし世界に向く直前で一旦自分を突き刺し貫かなければ気が済まないらしかった。

あ……あ

心臓が締め上げられて、うまく脈動できない血液が肺に流れ込んでくる。呼吸がうまく出来なくて酸欠、脳みそがぐるぐる回って視界を暗転させる。点しか見えない、耳鳴り、平衡感覚の消失、寒いのに変な汗が浮いてくる。

……おい?めぐるおい!?

パクめぐるの変調を察して、声をかける。スローモーションになった世界でめぐるは、酷く狭窄した視野の向こうに見えるパクを見る。時分の肩を掴んだ彼の手が、剣道をやってるくせに妙に細いななんて思ったり高い声が綺麗だななんて思ったり。ぐらりと揺れたピンホールみたいな細い視野に入り込んできた白石が自分を見ているのに気付いたり。

そうしてようやく、めぐるは自分が椅子からひっくり返ったことに気がついた。パクに引き上げられるようにして姿勢を取り戻すと、途端にすうっと意識が戻ってくる。突然頭の中がクリアになって、視界が広がる。呼吸は急激に落ち着いて、汗は引いた。突然、何かが切り替わっている。

え?

慌てるパクに聞き返ようにめぐる、だがそれはパクへの言葉ではなく自分自身に向けたものだった。今の一瞬で一体何が起こったのか、彼自身も理解できていない。

大丈夫か?頭うってねえか?

打ったかもしれないけど、打ってないかもしれない。急に何が起こったのか、めぐるにも理解できていなかった。ただ体中の感覚が急に新鮮で、全身の神経がそっくりそのまま新品に入れ替わったみたい。氷水を注がれた血管が発熱しているようなクリアな興奮が頭の中に宿っていて、手足のつま先の先の先まで意識が通じているみたい。直前までの、体中の体液が澱んだような精神不全感は嘘のように消え去って、頭の詰まりが取れたように、光と透明に満たされていた。

えっと……

受信した、そう表現するとあまりにも怪しげだが、めぐるは頭の中に突然に現れた言葉をしっかりと認識していた。降ってきたと言うには、彼の中に沈殿していた言葉だが、いつも抱えていたと言うには言語化出来ていなかった言葉。その言葉を見つけて手に掴んだ瞬間に雪崩込んできた全能感。これだ!と確信できる絶対の自信があった。そんなふうに自信を以て何かを信じられるのは、生まれてこの方初めてのことかもしれない。

大丈夫か?保健室行くか?パクに問いかけられたがそれはどうでもいい、めぐるは頭に突如として浮き彫りになったその言葉を、口にした。

僕、男、やめるね

あ?

§

持ってきた本を読むつもりだったが、一向に内容が頭に入ってこない。そういう日もある、割と頻繁に。パクは読むのを諦めてただページの間に指を挟んだ本を手の中で弄びながら、まだ2人しか来ていない教室の中を眺めていた。

近視気味で、裸眼で遠くを見ると人一人ひとりの姿は適度に滲んで個性を失う。人を個別に認識する事それ自体はできるし剣道の練習をするには視覚の解像度は高いに越したことはないのだが、細く見える視覚に疲れてしまうタチのパクは裸眼で過ごすことが多い。自分以外の人間の個性が、いちいち重荷に思えてしまうのだ。

剣道教室の夕練がある日は、練習が終わってから学校のシャワールームで汗を流してから教室に入る。結果として他の生徒より早く来ることになるパクは、例によって今日は教室に一番乗りをする日だった。

この学校は、なにかおかしい。オープンに開かれた普通の夜学だってのに、生徒が偏りすぎてる、特に

早く来ても特にすることがあるわけでもない、本でも読んでいるうちにやってくる他の生徒ひとり、ふたりに、彼ら彼女らの姿をぼんやりとはぐらかしながら挨拶しているうちに、パクは何やら異変に気付いた。

空気がざわめいている、だなんてフィクションの武道家じみた感覚ではなく、実際に教室の外で普段はない声が聞こえている。夜学の廊下なんて、基本的にそんなに賑やかなものじゃない。せいぜい恵谷が何か珍しいものでも持ってきたときに、仲間内の楽しそうな声が響く程度だ。だが、今日のそれは少し違った。

昼間は普通科の高校として運用されている校舎だから、普通科側の夜にまでかかるイベントがなにか催されていると、こういうこともある。たとえば学祭。でもこの時期ではない。そう多いわけではない夜学の生徒の声は、普段の話し方や声の調子と併せて聞き慣れている。だが、それらとも違う。

パクは顔を上げ、教室の奥まった位置の自席から廊下の方へ視線を上げる。ほぼ同時に、何か奇妙なものが目に飛び込んできた。ぼんやりとした視覚に滲んで描き出されるシルエットは、女子のものだ。だが学校に来るには些か鼻につくタイプのに思える。可憐な淡色、見せつける肌色、誘う髪色。ぼやけて詳細はわからないが、空気の読めない女子新入生でも来たのか?という感じだ。だがそういうケースは教師が連れて入ってくる、だろうし今現れたりしないだろう。ならばやっぱり恵谷だろうか。

恵谷……いや、

違う、雰囲気が。背丈もそうだが、立ち居振る舞いに、安っぽい威嚇感がある。試合中に相手から感じるもので比喩するなら、不動の威圧感ではなく、空っぽのフェイントを繰り返す奴。恵谷を前者とするなら、これは、後者だ。別人。そう感じて、改めて眼鏡を掛けて見直した。

そして目に入ってきた高解像度の光景に、パクは流石に声を上げてしまう。ああ、廊下のざわめきの声は、これだったのか。

めぐる

おはよ、パクくん

めぐるは周りの目にニコニコと返しながら教室に入り、まっすぐに……いや少し回り道をしてパクの傍までやってきた。回り道をしてまであえて通ってきたのは、自分の席。一旦カバンを置いただけの風にも見えたがパクには、わざとの前を通ってきたように見えてしまう。

ノースリーブのブラウス、末広がりのフレアスカート、長い髪の毛は方の前にも垂れている。少しVに切れ込んだブラウスの内側にはその切れ込みが視認しやすいように別の色のシャツが仕込まれていた。細くて白い腕、男の割に細い腰、すらりと伸びた顎から首のライン。殆ど目立たない喉仏。元々彼に備わる特徴は、それに適していたと言える。パクにとって言動にもそう感じていたことは多くあった。だが、実際に目にすると違う。恵谷と違うのは、立ち居振る舞いのなれの部分だろうか、あるいは時分の姿を誰かに誇示したいという無意識の動き。

めぐるパクの前にやってきて小さく手を振った、挨拶、そんな仕草でおはようと言ったのは初めてだった。

めぐるは、女装していた。

そう、この学校は、何か、おかしい。性が歪んだ人間だけを、意図的に集めている感じがする

目の前に現れた友人の姿を見て、パクの予感は、また一つ色濃くなった。

§

えーっ!カワイイじゃん!これどこの服?

めぐるのノースリーブのブラウスはあえて肩を出すことによって男の肩幅が更に広がるのを防いでいる。筋肉が少なくなで肩のめぐるの肩幅であれば効果が高い。更にロングヘアのウィッグは肩から腋の上にかかるようにセットされており、視線を遮断している。左右の肩を繋ぐラインを断ち切ることで肩幅をうまくごまかしていた。その合わせ技に気づいた恵谷は、人懐こそうにめぐるに近づき、その一端を担っているブラウスを褒めた。めぐるの肩に指を伸ばしてブラウスの肩袖に触れる。肩タック気味に引かれたレースが、髪の毛での肩ライン切断の効果を強調していると同時に、どうしても消せない男の硬い肩の露出を和らげていた。恵谷にとって、純粋に自分もそれを使いたいという興味の現れだったろう。

つ、通販なんだけど、よさそうだなって。肩まである女性物って、肩幅入らないから……

わかるーーーー。これ可愛いのに、サイズのラインナップ少なっ、ってなるよね!

でもこれはあたりだね、とめぐるに構い倒す恵谷。周囲の女子も奇異の目で見ている。ブラウスはウェストを絞らないデザインで胸から下にむけてふんわりとした雰囲気を与えている。それが男のストンとしたボディラインをうまく隠していた。更にはフレア気味の長めスカートに視線を下へ誘導し、下方の輪郭を広げることによってシルエットを△へ近づけて寸胴な男の体のラインをうまく隠しながら可愛らしさを作っている。

めぐる君、コーデすごいよ。やるじゃん。あと顔きれーだからなー

え、きれい……?

うん。お化粧無しでこのレベルはズルいよー。ヒゲレベルゼロはもはや才能。メイクしないの?

きょ、興味はあるんだけど、よくわかんなくて……

たったその一言でめぐるの目がキラキラと輝き雰囲気が弾んだように明るくなったのを、パクは見逃していなかった。

そんなの教えたげるよー。

良かったじゃねえか。お前、ずっと恵谷のこと見てたろ。

あ……わかってたんだ

目の前でやられて気づかないわけ無いだろ。何なんだろうなと思ってたけど、そういうことだったのか

えー、そうだったの?ゆってくれればよかったのに!ほんとはさ、ずーっと気になってたんだよね、めぐるくんのこと。女の子になっちゃえばいいのにって。素質ありそうな顔、してるからさ!でも今日は急にどうしたの?

今日急にってわけじゃないんだ。めぐるは少し弱ったように笑って恵谷に答える。めぐるの脳内には、親戚や白石との昔のやり取りが駆け巡っている、だが、それが急にただの硝子細工のように思えてきた。叩けば簡単に砕くことが出来て、そのまま掃いて捨ててしまってもいいものだと気付いたみたいに。

もとから……男とか女とか、本当はよくわかんなくって

うんうん

僕は男だけど、男って僕にはすごく居心地が悪くてさ。ずっと女の子の方がほしいと思ってた。女の子の持ち物を持ったからって僕が女になるわけじゃないと思うんだ。でも、そうすることが〝女になる〟ことなら、僕はどっちかと言うなら女になった方が、身の丈にあっている気がする

はあ?と横から声を上げたのは、パクだった。まるで厄介な相手でも見る時のような目を、めぐるへ向けていた。それに気付いためぐるは、パクに向かって弱々しく問う。「変、かな」。

変に決まってるだろ、そんなと答えようとしたパクの言葉を遮るように、恵谷が割り込んできた。

それって、こういうことじゃない?性別のってとこをさ、SEXのじゃなくって性質のだと思って、もっかい〝女性〟とか〝男性〟って言葉を見直すと、すーって来る感じ。男っぽい性質、女っぽい性質っていうだけの話で、ちんちんとかおまんことか関係ないってこと。

そ、そう、そんなかんじ。らしさっていうのもちょっと違うんだけど

自由なパーツの組み合わせ。何を持っても構わない。それらを肉体や本能の受動ではなくて、理性と能動で選択する。自分に心地の良いサイズの服を着るのと同じように

恵谷の言う言葉は、めぐるには方程式の解法を覚えたあとに鶴亀算の問題を見直したときのように、すんなりと入り込んでくる。アレだけ悩んだというのに今はもはや難解さはない、明快な式へ再評価できる。

だが、横で聞いていたパクはそうではないようだった。

性質としての男とか女って何なんだよ。垣根がなさそうなことやってるくせに、その言葉は随分ナンタラへの配慮を欠いてるんじゃないか?

名前だけだからね

は?

男だとか女だとかって、人間が肉体の〝性〟に縛られてた頃に付いたタダのダっサいラベル。私はもう古い常識を脱皮して理解わかっちゃってるから、名前なんてどうでもいいんだ。でも変化できてない人間には、そういうラベルがあった方がわかりやすいでしょ?

可愛いものが好きとか、言葉使いとか、あるいはスカートを履いてるとか髪が長いとか、ただそれだけを取り出したものが女。マッチョで、大雑把で、狩猟的、あるいは硬派で短髪でだとか、ただそれだけを取り出したものが男。それらは言葉でしかない。オレが〝女〟を持っていたって構わないってわけか

パクくん、声かわいいし、顔キレーだしね。女性的な特徴だけど、肉体的な女性を指すものではないしね。

そういうこと、と恵谷が頷く。

ひとかたまりに全て持っている必要もない、一部だけつまみ食いでいいむしろそうあるべき。男女って言葉で色を分けるのが嫌なら、TrueとFalseとか、1と2とか、〝ああああ〟と〝qazxsw〟とか、なんだっていい。そんなもの、ただの論理名だから。

それって、すごい……!すごく革新的だし……核心的だよ!肉体に依存した性別なんて、くだらないんだ。心は自由で、心は、男からも女からも、好きに属性をゲットしていいんだよね!

目をキラキラさせながら恵谷の発言を肯定するめぐるの手を取って、恵谷は囁くように言う。肉体的には男だと言われても信じられない、長いまつ毛に包まれた大きな黒目がちの目に吸い込まれる。黒目を大きく見せるカラコンかもしれないが、今のめぐるにとっては些末なことだ、むしろのならその方が都合がよい。

めぐる君は、羽化できたんだね

え?

幼虫から成虫になった。蝶になって羽ばたくんだよ、新しい世界を。ううん、新しくなったのは自分自身だね!

新しい、自分

この世界なんて、真正面から見るのには汚すぎる。変態を踊るくらいが丁度いいんだよ。身を守るために身につけてきた殻は、そろそろ私達には要らなくなる。自分の羽を手に入れたんだから

そう語る恵谷は、ただのギャルにも、女装癖クラスメイトにも、もはや見えなかった。まるで何かの宗教の教祖のように威厳を放ち、人を引き付けるオーラをまとい、そして魅力的に見える。異性装のエキゾチックな雰囲気さえ、人を超えた存在であることをを理由付けるのに一役買っていた。今はそのカリスマが全て、めぐるに向いている。隣りにいるパクにもそれは感じられたろうが、ただの余波だ。

おい、めぐる

私達はもう、くだらない性のせめぎあいに巻き込まれることはない。自分の手でそれを制御するんだよ

自分で、制御する……

まるで洗礼のように、恵谷は一言、めぐるへ振りかけた。

常世にようこそ、めぐる

§

で、なんだよその格好。本当に恵谷の轍を踏むのか?

轍って。別についてくつもりじゃないよ。お手本にするところはあるかもしれないけど

放課後になってパクは、溜め込んだ不満をぶつけるみたいにめぐるの服装を指摘した。始業前の恵谷とのやり取りも、パクにとっては不満の残るやり取りだったらしい。

一日中むくれてたね

むくれてねーよ

むくれてるじゃんー

服装一つ、の問題では説明できないくらいに、めぐるの仕草は女性をなぞっていた。肘も膝も内側に入れ、一挙手一投足に綾を付けるようにひねりが入っている。いやみを感じるレベルじゃなく、どこでそんなことを習ったのかあるいは持って生まれた感覚なのか、適度に自然にこなしているのが逆に、パクには気に食わなかったらしい。あからさまに舌打ちを鳴らして、まるで品定めでもするみたいにめぐるの服装を見直す。

その視線を感じためぐるはわざわざパクに見せるようにスカートを掴んでひらひらと揺らして見せる。確かに、筋肉の少ないめぐるの腕は、そうしているのを見れば細白くて女のようでもある。

僕ね、とらんすじぇんだーってやつに、なるんだ

はぁ?

男を卒業するんだ。あんな重たい鎧、僕には着こなせない。にはドレスのほうが似合ってるって、思わない?

男か女かどちらかを選べと言われたら、間違いなくだ。めぐるは、祈りでもするかのように、自分に弁解する。僕が男になれないのは精神的な問題だ。僕が女になれないのは肉体的な問題だ。心も体も足りない半端者、どっちにもなれないことくらい、本当はわかっていた。

好きな女にフられてイジケてんのかよ、ダッサ

もー、そんな言い方しなくたっていいじゃん。今、なんていうか、すごく気分が軽いんだ。こっちが本当の自分だったんだって

好きな女にフられて、自分は男として負け犬になったから、じゃあ今度は女になるってか?男から逃げただけのお前に、女なんかできるかよ。どうせ〝女の子も出来ませんでした〟って悲劇のヒロインさえ演じられずに泣くんだろ。男の出来損ない、女のなりそこね今のお前は、それだよ。そんなくだらねーやつだと思ってなかっ……

パクくんになにがわかるのさ

ぱたり、スカートを掴むめぐるの手が落ちる。スカートの端を翻してくるりと回ったときの楽しそうな表情が、突然彩度を失って灰色に沈んだ。

めぐるの頭の中を吹き荒れる、過去の記憶・映像・感情・後悔と重圧。そう、本当は、フリフリの服なんか着せられて、泣き出したいほど嫌だったのに。どうして一体、いつの間にこうなった。勇者ごっこで女の子に呆れられるのが似合いな、気持ちの悪いオカマ男。どうして?そんなの決まってる。

お前は女になりたいんじゃない、女として扱われたいだけの臆病な男だ。気持ち悪いぜ

男が女のカッコしてるから気持ち悪いんじゃない、ただ逃げてそのカッコしてるのがキモいんだよ。

え、なに、なに?そんなに言われなききゃだめ?

思ったこと言ってるだけだ。

気持ち、わるい?

……ああ、きもちわりーよ、今のお前。見た目がどんなに上手く出来ててもな

気持ち悪いから。気持ち悪い?僕は気持ち悪い。きもちわるい。

トラウマ、なんて大層なものではないと思っていた。めぐるにその自覚がなかったにせよ、だがその言葉がこれほどに重荷となって心臓に絡みついていたのかと、初めて思い知ったのだ。白石の顔は浮かんでこない、だのに圧迫感と不安感、それに強迫的な嫌悪感だけが、無用な思い出を絡め取るようにつなぎ合わされて一気に襲いかかってくる。心臓を締め上げられるような感覚にえづくめぐる。悪い形に昇華しているようだった。

お、お説教しないでよ。どうしたの?やけに突っかかるじゃない?いつものクールなパクくんは、どーしたの、かな?

フラレてトチ狂ってるやつを見て笑う代わりに、イタいものをイタいって指摘してやってるんだよ。なにが〝トランスジェンダーになる〟だよ。そういうのはなりたくてなるもんじゃなくて元々

そこまで言って、パクは言葉を止めた。失敗した、とでもいいたげに苦い表情で唇を噛む。一方のめぐるは、パクの言葉に声を荒げて抗議する。

の気も知らないで!

……まあ、わかんねーな

気持ち悪いって何だよ!どうせ僕はオカマだよ、気持ち悪いなんてもう言われ慣れてる!だからなにさ!!みんなが押し着せるを、みんなじゃない、僕自身で肯定してやろうっていってるだけだ!周りのせいにするのは弱さの証拠で責任転嫁だって言うから、だから自分のせいにしてんじゃないか!!

あげた?何様だよお前。お前がなりたがってる悲劇のヒロインってのはな、別になんにも偉くねーんだよ。勘違いすんな

がたん!

もともとめぐるに、パクに乱暴する気なんてなかった。だがあまりにも挑発的な言葉で、やっと自己を取り戻したと思い込んでいる自分を愚弄してくる彼に向けて、我を忘れかけためぐるは易々と激高してしまい、勢い余ったのだ。つまり、「怒った」。

だが殴りかかる、胸ぐらを掴む、そうした堪忍袋の緒が切れたときの男の仕草さえ、彼には上手く出来ていなかった。そのやり方が分からず爆発する感情は、ただ両手で相手を押すような情けない動作にしかならなかったのだ。これもめぐるの「足りなさ」であった。男がキレたときの乱暴な仕草が出来ない。わかっているのに恥ずかしさや理性の箍のせいで出来ないのとは違う体の底に備わっていないし、本能の次くらいに深い無意識がそうした動きを制限してしまう。めぐる自身にも自覚はあったが、直せなかった。そうした情けなく歪んで出力される行動一つ一つの積み重ねが、めぐるへ「女みたい」という記号を被せていく。

押し倒すなんて。やるじゃんか?

ふざけ、ないで

そうしてしまって出来上がった位置関係は、二人の体が密着する形。美形の男友達を押し倒して、その顔をまじまじと見せられることになっためぐるの脳に、不意に声が響く。「男同士じゃない、は女だ」。自分の肉体の性のことなど頭からすっ飛んでいた。女になることそのものを目的に挿げ替えためぐるにとって、初めてパクに「男」を意識した瞬間だったかもしれない。事故とは言えパクに馬乗りになった姿勢で接近し、めぐるパクの整った顔立ちを意識してしまう。

それを察したパクは、皮肉った表情で煽る。

女が男を犯すってのも、悪いシチュじゃないよな?

やめてってば

怒るポイントがあるとするなら、そんなところではなかったろう。だが今のめぐるは、いっぱいいっぱいだった。女子の恰好をして登校するだけでも周囲の目、振る舞いに気をつけて、周囲の目、言動に配慮して、周囲の目、失敗しないように、周囲の目、頭の中がいっぱいで歩くだけでも脳リソースをバカ食いしていた。そこに、深いところを抉ってくるようなパクとのやり取りは、余裕を欠いていて転倒も暴走もする。煮詰まった頭で歪な思考ルートに入り、破綻した理路に迷い込んで、非理性的な結論を意図的に掴んでしまう。

慣れない行動でテンパって混乱し、図星を突かれて取り乱すめぐるは、冷静に物事を判断できなくなっていた。

みんな、僕のこと男らしくないって言ってたじゃん。私が男らしくないことくらいわかってる、言動の何をとってもオカマみたいになっちゃうって。男らしく振る舞おうとしてもなんか気持ち悪くて、恥ずかしくて、みんなが使ってる〝俺〟だってどうしても使えない

しらねーよ。一人称がなんだって関係ねーだろ

関係あるよ。わかんないんだ。でも、だから、可愛くなろうと思ったの、女の子になればなんにも問題なくなる。だってみんながそう言うから。男なんか似合わないって、みんなが言うから……!

男の逆が女だってか。ばか言ってんじゃねえよ。男の逆は女じゃねえんだよ

男の逆は、女でしょ!?みんな僕のことを〝男のくせに女みたいで気持ち悪い〟って、言ってる

誰が言ってるんだよ

みんなだよ、みんなみんなみんなみんなみんなみんな、

誰?

みんな。

みんなって誰だよ

みんな!

だからみんなって、誰だよ

みんなは、みんなだよ!!みんな僕のことをオカマみたいで気持ち悪いって、いってるじゃん!!

声を荒げるめぐるに向けて、パクはじっと見返したまま一言強く、返す。

オレそんなこと、言ったことない

めぐるの目が泳いだ、記憶を探っているのだ。だがどんなに思い返しても、記憶の中にそんな言葉をかけられた記憶は見つからない。

い、言ってなくったって、ほんとは思ってるくせに!どうせ僕なんて、男の出来損ないだよ!だからほら、女の子だよ。これなら文句ないでしょ。可愛いでしょ?

で、なに?女になって、オレを押し倒して。お前の女性証明にオレを利用するなよ?

流石のめぐるとていきなりパクとこの場でえっちなことをするつもりなんかない。この距離から逃げる機会だと察したのか飛び跳ねるように立ち上がって、だがパクの綺麗な顔立ちと言葉に、噛み付く。

パクくんには、僕のことなんてわからないんだ。パクくんくらいかっこよければ、僕だって男として……!

男として、なに?

噛み付かれたパクが、すっくと立ち上がってめぐるの前に詰め寄る。そして、自分のカーディガンとブラウスを脱ぎ捨てる。更にシャツもたくし上げて見せつけたものに、めぐるは絶句した。

え……

ゆったりとしたサイズ感のブラウスの下に着たシャツの更に下には、きつく締め付けるようなタイトなスポーツブラがあった。パクは躊躇なくそれも一気にまくりあげる。解放された胸部は、女性の特徴を備えているつまり、女性の乳房だった。

ぱく、く……

飛び退くように逃げようとするめぐる。一歩、と引いたつもりだったが、パクは剣道で鍛えた踏み込み足でそれを追いかけて、追い詰める。胸ぐらを掴まれためぐるは目を泳がせるようにしてパクから目を逸らした。彼は空いた方の手でめぐるの手を握り、その手を自分の股間へ導いて触らせる。そこに男性特有の膨らみはなかった。

オレ、女なんだよね

そのままシャツもブラも脱ぎ捨てた上に、ひょい、とズボンも脱ぎ捨てた。ショーツ一枚になったパクは紛れもない女子、それもほぼ裸の姿だった。

え……あ……なんで

狼狽えるめぐるを嘲笑うように見ながら最後の一枚、ショーツも脱ぎ去っていよいよ全裸になったパクが、めぐるの変化に気付いた。めぐるのスカートのまんなかあたりが、膨らんで持ち上がっていた。

お前、なんでちんこデカくしてんの?女なんだろ?

だ、だって

慌ててスカートの上から股間を押さえるめぐるの全裸を見て股間をふくらませる姿を、もうパク自身に見られている。もう遅い。

誰もいねーし、抱かせてやろうか。ほら、おっぱいだぞ。風間みたいにおっきくなくて悪かったけどよ、出来損ないの男には、これでもありがたいだろ?教えてやるよ。女が見てる男ってのはな、顔ばっかじゃねえんだよ。服とか言葉遣いだけじゃねえんだよ。それだけ入れ替えてもお前は女にはなれない。手首とか、指とか、鎖骨とかそういう細かいところに男を見てる。その一つ一つを消さないと女になんてなれない。お前が思ってるほど簡単じゃねーんだよ。女装したくらいでいい気になるなよ、男を捨てた気になっても、全然、男なんだよ、お前!

パクは逃げようとするめぐるを捕まえて、体を押し付けたり顔を近づけたり、あるいは彼の手を無理やり引っ張って自分の乳房を触らせたりする。

目を逸らすめぐる、だがその視線はすぐにの肢体に吸い寄せられ、捕まった手に感じる肌理が余りにもなめらかなことに気付かされてしまう。女であることを、痛烈に見せつけられてしまった。

パクく、ん……やめて……

ほら、おまんこだ。女のまんこ見るの、初めてなんだろ?ちんぽ入れさせてやろうか?めぐるも男を取り戻せるかもな。ハハハハ!!

パクめぐるの頭を掴んで自分の胸に押し付ける。一方でスカートの布地の上から彼のペニスの形を掴むように確かめていた。その刺激が、一層めぐるを追い詰める。彼のペニスはより強く、固く、スカートの中で勃起していた。

うう、うっ……

こんだけ言われてまだ勃ってんの?変態かよ。女はどうしたんだよ、女はよ、ああ!?

あ、う

パクの手がスカートの上からめぐるのペニスを触り回す。びく、びく、と跳ねるのが、掌に感じられた。女装して登校してきたのに、自分の全裸を見て勃起がやまない男友達に向けて、パクは苛立ったように挑発の言葉を投げつける。

オレの裸見てちんこおっ立てて、何が〝男を卒業する〟だよ。男としての自信を失ったことに言い訳してるだけの、ただの弱虫オカマ野……っぐ!

だが突然、その言葉はめぐるの手で止められてしまった。パクの股間を触らせられていためぐるは逆にパクの両腕を掴み返し、もう片方の手でパクの肩を掴んでいる。

ばかに、しないでよ

振り払おうとするパク。だが、男のような姿をしていたと言っても剣道をやっている程度でそれ以上の筋トレをしているわけでもない本来女の体は、実際は男の体のめぐるの腕力に、押されてしまう。

ちから、つよ……やっぱ男って……

予てより自分のことをめぐるよりは非力ではないだろうと踏んでいたが、そんなことはないのだと思い知らされてしまう。パクはすぐに捻り上げられて、めぐるに押し込まれてしまうそして彼は彼女を再び押し倒した。今度は、男として、女を。

バカにしないでよ!

めぐるの目は、大粒の涙をぼろぼろとこぼしている。その一方で、スカートの中でいきり立つ肉棒を、パクの股間にあてがった。

§

結局、ヤんのかよ

入れるべき穴の場所を正確にわかっていないせいで、腰を引いたり押し出したりを繰り返すめぐる。その度にスカートの布地の下では陰茎の先端や裏側あるいは逸れた側部が、パクの陰部に擦り付けられている。

はっ、はっ

サカッてんなよ、メス野郎

誰もいない教室だが、電気は点きっぱなしだ。下校時刻をとうに過ぎているのだから、誰かが様子を見に来たとしてもおかしくない。だが、二人とも目の前にある切実な問題を選んでいた。かたや、仲の良い友人だと思っていた相手に、一度ならず再び、自分の性をバカにされたことへの怒りと悔しさ。かたや、自分の迷いを肩代わりするようにことごとくに痛々しい姿を晒す友人への、共感性の羞恥。そのふたつが細い糸のように撚り合っている。これを途中でやめるのは、相手からだけでなく自分にさえ負けて逃げ出すことと、同じように思えていたから。

そっちが……ばかにしたんだ

いいぜ、ヤってみろよ、

女になるつもりでしてきた格好なのに。男としても女としてもバカにされて激高した自分が頼る拠り所は、結局男としての肉体になってしまうのかと、後悔とも失望とも付かない感情が目の端から溢れ出すのを止められないでいる。

だからといってその反面で、めぐるのレイプは決して弱々しいものではなくなっていた。涙になって溢れ出す負の感情は、今や制御不能に衝動化している。仲良くしていた友人への親愛の感情が突然反転して、喧嘩で暴発したその残り香だけでも、どきどきする感情を掻き立てるに十分だった。パクがどうしてそうしているのかはわからないけれど、めぐるにとって、接触までの距離に横たわる障壁が、どうしても低い。すぐに触れてしまえる異性の体、それに、自分はなりたかったはずなのに。今は欲しいと思ってしまう、邪に。

どうして

知るかよ、お前の問題だろ。自分で片付けろ、ボケ

〜〜〜っ!

つぷ

堪忍袋の緒が切れる音では、なかった。上手くぬるりと入り込んでしまったペニスの先端が、パクの内側で何か薄いものを突き破った感触だった。初めての感覚、当たり前だ。だが、初めてでもそれが何なのか、さすがのめぐるでも理解できた。

処……

だ、だったら何だよ、女のを奪って興奮したか?立派な男じゃねえか、女が聞いて呆れるな

あ……あ

うろたえバランスを崩しためぐるの手は、パクの乳房を強く握り込んでしまう。柔らかな肉に埋まる指。湿った肌、体温。押し出される薄色の梅花。少しだけ歪む、パクの表情。それを認識しためぐるは、情けなく果てた。

びゅっ、びゅっ……びゅっ

あーあ、こいつ、膣内に出しやがった

あ、あ、あっ……!

慌てて腰を引いて逃げるめぐるを、パクはもう追いかけない。女装スカートの下で行われたレイプ。抜け去る肉棒、割れ残った女陰、溢れ垂れる精液。破瓜の血。後ろに飛び跳ねて逃げ、机に激突してすぐに転ぶ。机と机、椅子と椅子の狭間の狭い谷間に囚われたまま降り掛かってきた情報の重圧に耐えかねて、めぐるはその場で腰を抜かしたように動けなくなる。たった今犯した相手に向けて、まるで助けを求めるような表情で、狼狽していた。

童貞卒業、おめでとう?

パクはすっくと立ち上がって裸体の肌についた教室の砂埃を払う。股の間から垂れるめぐるの精液をすくって、舐めた。一瞬だけ味わうように口を動かすが、すぐにぺっ、と吐き出した。「まっず」。彼女は脱ぎ捨てたスポブラだけをひょいと拾い上げて身に着け、てきとうな椅子を引く。ゆっくりと足を組んで、座った。ひんやりとした木製の椅子。座った圧で、もう少し零れるザーメン。床にうずくまるめぐるを、パクはただ黙って見下ろしていた。

§

……なんでレイプされたオレじゃなくて、お前が泣いてんだよ。オレがヤったみたいじゃんか。〝オレのほうが、言い過ぎた。ゴメン〟とか言えばいいわけ?

適当に手についた椅子を引いて腰を投げ出し脚を組み、椅子の背もたれで頬杖を付きながら、まだ蹲ったままのめぐるを椅子の上から見下ろすパク、大きくため息を吐いた。

パクはもう元通りに服を着ている。めぐるに押し倒され乱された様子はもうない。めぐるを見下ろす態度には、もう彼からレイプされたなんてなかったみたいに見える。パクの言う通りこの場面だけを見るのなら、犯されたのはまるでめぐるのように見える。

……あー、なんかごめんって

妙な状況に耐えかねたパクが、茶化すように謝ると

なんでパクくんが、あやまるのさ。変じゃないか

わかってたけど、お前めんどくせえなあ💢

余計に苛立ちを増す結果になった。もう一つ、深いため息をつくパク

だってパクく……あ、じゃないか

もう今更なんでもいいわ、男の方が生きやすいから自分で選んでこのカッコしてるだけだし。

パクくんは……男になりたいの?

違うな、オレもお前の言うやつとだいたい同じだよ、〝どっちにもなれない〟ってやつ。アセクなんだ

アセ……?

大雑把に言うと、性欲がないんだよ。男に対しても、女に対しても

好きな人ができないってこと?

恋愛感情はある。でもセックスしたいわけじゃない。だから、お前とだって別にしたくなんてなかった

その、ごめんなさい。あやまって、済むことじゃないけど、責

責任取られたらたまんないっつうの

うぐ

ああ、オレ、別に処女なんて大切にしてねえから。アセクなのも関係してるのかもしれないけど、こんなもんにこだわる奴らのアタマん中が全然わからねえ方。アセクがみんな自分の体の性に無頓着なわけじゃないだろうけど、オレは別に、お前になんかを奪われたとか、汚されたとか、感じてねーから。ただ、やっぱり駄目だったなって

〝だめ〟って?

めぐるの疑問に、パクは答えない。ただ目を逸らすように暗い窓の向こうの家々の光の方へ視線を流した。めぐるはそれ以上問うことを避けられていると感じて、言葉を濁す。

でも……アセクって、そういうのも、あるんだ

いくらでもある。性別なんて〝男と女だけじゃない〟だけじゃない。3つになれば4つになるし、4つになれば5つになる。多分どんなに増えても足りない。自分が少しでも当てはまらないと思えば、新しい性別を作り出して自分はこれだと叫ぶんだ。人間の数だけ増やしてもまだ満足しないだろうさ、バカなもんだよ。オレもそうだしそれに、お前も、たぶんそうなる。

どういうこと?

仮に女になったって、また違和感を覚えるってこと。お前みたいにただ逃げ回ってるやつは、特にさ

パクくんは、もう、違和感を覚えないの?

どうだろうな。少なくとも医者はを付けてくれてる。もしそれが医者の言う通りだっていうのなら、これ以上変わらないんだろうな。アセクはオレの生まれつきの特性だってさ。

ふうん

生まれつき。少なくともめぐるは生まれつきだったとは、思っていなかった。自身に起こったあまり普通とは言えない変化に対して、何らかの過去の出来事が契機になっていると、思っている。生まれつきそうだったと、誰か他人がお墨付きをくれるというのは、自分のそうした変化を、ただ自分の内的なものとして扱わざるを得なかっためぐるにとっては、羨ましくさえあった。

でも正直、生まれつきだなんてことないって思ってんだよね。単にどっかで折れたんだよ、性欲につながる自我が、どこかで。

折れた?

こう、刀の先端だけがぱきっと折れたみたいな感じ。他の部分は無事でさ、だから恋愛感情くらいまではあるってわけ。最初から先端が折れてる刀として生まれたなんてこと、ないだろって思う。そっちの方がよっぽど人を馬鹿にしてるよな。何でもかんでも生まれつきってわけじゃない、これはオレの体感だけどさ

折れた、ってタイミングが……あるの?

診断書があるとの言葉から一転したパクの反応。その回答が、もしかしたら自分を弁護してくれるかもしれない。自分がになってしまった過去の経験は、自分にだけある劣等な現象ではなく誰にでもあることなんじゃないか。めぐるはある種の期待を抱きながらパクの返答を待つ。

ある。……って、思わないとやってらんないだろ。過去の自分に言い訳できずに今を生きていけるほど、オレは強くない。

そう、だよね

期待外れ……というほど、めぐるはその回答に落胆しなかった。言い訳が欲しいと内省しているそれ自体は、肯定されたのだから。

パクは椅子から立ち上がって、すっかり暗い外に点々と灯る車通りと家の光を眺めながら、呟いた。

この学校は、おかしい。意図的にオレとかめぐるとか、あと恵谷みたいなやつが、集められてる。

意図的に?

めぐるもうっすら感じていた。恵谷のこともそうだが、風間優香のことも、それにパクのこともそう。性的マイノリティの人間は周りに普通にいるとは言え、そんなに連続してに遭遇するなんて滅多なことではないんじゃないか。だけど、この学校は、この通りだ。

そうとしか思えねえよ。オレ達みたいのはイレギュラーだ。決して異常者じゃないが少数者なんだ、こんなに気軽にエンカウントしない。そうだろ?

……うん

まあ、この学校の運営方針なのかもしれないけど。オレ達には与り知らぬところで大人どもが何やってようと知ったこっちゃないんだけどさ。こういうややこしい人間関係作らせるのは、勘弁してほしいよな

苦い顔でめぐるを振り返るパク

セックスしたいと思わない、だけだったんだけどな、お前とは

え?

オレが噛み付いたのが悪いんだ。もうないから、安心しろ。軟弱オカマ野郎なんて、もうまっぴらだよ

苦々しく、笑っていた。

§

幽香との変則兜合わせで無惨に射精敗北し、容赦ない肢体射精したいうちを浴びせられるリグル。頭からつま先まで余すところなく精液の白で塗り込められ、それどころかアクメ余韻の白痴アヘ顔のまま幽香の精液を嬉々として受け止めている。白い肌に弾け返した精液が、返り血の如く幽香にも跳ねる。それを拭いながら幽香は敗北オスを見下し嘲笑している。

ふうっ……そのメスづら、ホントちんぽにクるわ。男のくせに顔面がちんぽ向けポルノなのよね。はー、シコれる

負け……ちゃった……やっぱり幽香さんの前では、ボク、メスなんだ……

砕けた腰が、まだ快感で震えている。ザーメンシャワーを浴びせられ、その状況と匂いそれに、目の前で幽香がペニスを自分に向けている光景で、発情しているらしい。精液で塗りつぶされる感触と立ち込める強烈なオス汁臭で発情し、自分のペニスではなく乳首を捏ね回していた。

男にねじ伏せられ征服される女の快感で、雑魚男としての漏精を繰り返している。精液まみれになった蕩け顔で幽香の方を見ているが、目の焦点はどこにもあっておらず、断続アクメに揺蕩っているのが誰の目にも明らかだった。

ほっと、ちんぽに悪いツラね……また勃起させられたんだけど?

射精して一旦半勃ちサイズまで戻った幽香のペニスが、すぐにまたフル勃起サイズへ復活してしまう。リグルの顔をみての反応だ、それを察したリグルは嬉しそうに、えへへ、と締まりのない笑みを浮かべる。

調子に乗ってるんじゃないわよ。いつまで休んでるの?さっさと壁に手ついてケツマンこっち向けなさいよ!

まるで空腹で機嫌が悪い子供のように、幽香は不機嫌な声でリグルにハメ待ちポーズを要求する。不機嫌なのは間違いない、リグルのいやらしい負けポーズで再び発情してしまったこととそれに

まただわ

その発情がペニスだけではなく下腹部の奥にも生まれていたからだ。

散々メス仕草を教え込み、そのとおりメスとして淫らに仕上がっていくリグルに向けて、女としての興奮が生まれることは、幽香にとって受け入れがたい事実だ。

私は女が好き、今までセックスの相手はずっと女だった。ペニスが付いてるのもずっと好都合だった。そうでしょう?なのに

ヨロヨロと壁に手を付き再び赤いハイヒールの踵を立て、開発されきった縦割れ肛門を晒し、無力にぶら下がる陰茎と萎縮する玉袋から自分のではなく幽香の精液を垂らしながら、幽香に向かって股を開くリグル。

いよいよ敗者制裁の陵辱アナルセックスが始まると期待してアナルマンコの皺筋をヒクつかせているリグルの尻タブに、幽香は思い切りビンタをくれる。今のリグルからは見えないが、ペニスをフルボッキさせ先走りさえたらしながらしかし、幽香の表情は興奮で紅潮しているにも拘わらず、咬牙切歯の表情に歪んでいた。

なのに、なんで今さらが疼くのよ。しかも、こんなメス男相手に……!

バシッ!ベシッ!!バチンッ!!

あぎゅっ!!

苛立つ幽香の尻ビンタは、容赦がなくなっている。振り下ろす腕が空を切るだけで太い音を鳴らす。一発一発が皮膚を破る鞭ほどに強く、衝撃は鈍器のごとく腰骨まで震わせている。普通の感覚であればただ痛いだけ、それも並の痛さではない。興奮など以ての外だというのに。

バズンッ!ブシュッ!

!!いた、い!痛いですっ!

泣け。この私に、赦しを乞いなさい。

バンッ!バシッッ!ズバンッ!ドスッ!

ごめんなさいっ!

もっと謝れ!

ごめんなさい、ごめんなさい!ごめんなさい!!

ブシャッ!ビチッ!バシンッ!バシッ!

尻の皮膚が裂けて血が出ているというのに、リグルの表情は恍惚に染まっている。幽香の怪力を以て振り下ろされるビンタの激痛に頭を振り、涙を流してヨダレを垂らして喜悦していた。

ただ〝ごめんなさい〟って言えばいいってもんじゃないわよ!何を謝ってるの?何が悪いのか理解してないんじゃないの?もっとちゃんと謝りなさい!!

ビシャッ!ベシィッ!ドスッ!!ベシッ!ズバン!ズビッ!

あうっ!ごっ、ごめんなさい!可愛すぎる男でごめんなさいっメスすぎて、ごめんなさいぃっっっ!!

そうよ、このクソムシが!もっと謝れ!赦しを乞え!偽メスの罪を自覚しろ!このメス詐欺野郎!!私に謝罪しろ、私のちんぽに詫びろ!!

バシィッ!ズバシッ!ザシュッ!ザリッ!ゾリュッ!!

仮にも妖怪である、それも繁殖力と生命力〝だけ〟で生きてきた蟲の妖怪は、尻肉をずたずたに刻まれる程度の損傷はみるみる再生してしまう。傷の治りだけで言えば幻想郷に名の轟く大妖怪の幽香よりも早い。おまけに仮に単体が死んでも、あっという間に世代交代を完了させ、何事もなかったかのようにが「リグル・ナイトバグ」を再形成する。

幽香にとっては暴力を振るうのにこんなに都合のいい相手はいなかった暴力性の他をおいても。

こんなヤツと……相性が、いいっていうの?こんな雑魚妖怪が、この私と!

幽香さんのおちんちん誘惑する生意気メス男子で、ごめんなさい!!責任取りますおちんぽ誘惑罪でメスとして責任取りますからっ!

っはあ、はあっ、はあっ……ったりまえよ。こんな男野放しにしておいたら、世界中のちんぽが人生狂わされるわ。存在性犯罪よ。

自然治癒を続ける上から更に尻肉を嫐り裂き続けた幽香も、流石に短気が収まったかその手を止める。痛みに尻と腰を震わせながらも、変態赤ハイヒールでつま先立ちを続けるリグルの股の間の床に、血の赤だけではなく白い飛沫が残っている。幽香に暴力的なケツビンタ張られながら、射精していたらしい。

鞭の如きを手を休めると、その傍から裂けた組織が再生していく。そこに残るのは、幽香に与えられた尋常ではない痛みの記憶と、耐性、それに開発された経験値だけ。

白くなめらかな姿を取り戻した尻を見て幽香は、あふれる愉悦を落ち着けようとする表情と声色で、改めて桃尻を撫で回すように触る。

……ふふ、ごめんねリグル?私、興奮すると、ちょっとだけ相手に優しくできなくなちゃうのよ。特にあんたみたいなスケベ女顔の男みてると、余計にね!

ふきゅっ!

殴るのではなく掌全体で尻の肉を抓るように掴みんだ幽香。興奮に浅く刻む呼吸と汗ばんだ肌、それに完全勃起姿になったペニスをひっさげてリグルの尻へ一歩詰め寄る。

幽香に向いて無防備に晒される、背中から腰、尻に続く曲線。包む輪郭。確かに男の持ち物らしい括れきれない腰回りの太さと幾許かの筋肉質な硬さを備えながら、だが太腿に向かって面長に連なる輪郭線と柔らかな尻は女の色香を纏っている。この背中を上から見下ろすのが、幽香気に入りの光景だった。

男のくせに腰回りが安産型すぎんのよ……今すぐここでに孕まされたいって訳ね?

は……ひ……ボクは、男じゃ、ありませんでしたぁ……ちんぽが、チン負けしちゃいましたぁ

幽香の手で尻肌を撫でられるだけで、かくん、かくん、と膝を笑わせるリグル。尾骶骨のあたりを、とん、とん、と指先で叩くように刺激されると、ペニスに触れることなく、負けペニスからはオス本気汁がぽとぽとと床に滴った。尾骶骨のあたりを軽くノックするのは、幽香に教え込まれたケツハメの合図だ。

その子宮埋まってそうなヘソ下、今すぐぶち抜いてあげる。メスホルモンぶちまけて喜びなさい?

は、はい……!

幽香に指示されることなくリグルは、自分の指を口に運んで唾液をたっぷりとまぶす。その指で、縦に割れたて肉厚に変形した尻穴の周りを、円を描くように揉み撫で回す。皺を刻んだアヌスに唾液を塗り込められて、ぷく、と膨らんだ肛門肉。柔らかい襞肉と化した肛門を広げて、唾液に濡れた指を3本、その中に差し込んだ。中は既に、空洞を生じるほど膨らんで肉棒の挿入を待ち侘びていた。中は子作りモードに突入した膣のようにうねり、ねっとりと糸を引く粘液を垂らしている。腸液さえ愛液か何かのように分泌し、膣とも子宮ともつかない牡媚器官に変化しているリグルのオス膣。

ケツハメ交尾を期待して備えるリグルを見ながら、幽香もヨダレを垂らす巨根を扱いて準備していた。

私はずっとレズビアンだった。今だってそう。そのはず、だわ。私のペニスはその証拠、これを使って女を食うのはその証明。

やはり口惜しそうな表情を浮かべながら、準備が整いました、と二本指で左右に押し広げられたリグルの肛門にペニスの先端を当てる幽香。勃起の硬さを先走りの量は幽香の興奮を裏付けているが、表情はその興奮と不一致だ。

自らの矛盾した状態を、無理矢理に振り払おうとするように幽香は、リグルの中へ一気にペニスを沈めた。

おうッッッ!

ぴゅっ!ぴゅっ!ぴぴっ……!どろぉ……っとくん、とくんっ……

幽香の巨根を一気に腸膣に受け止めたリグルは、潰れたような嬌声を上げるとともに、それだけで射精した。飛沫として飛んだのはほんの少ない雫、それ以降、まるで水をたっぷり含んだスポンジから溢れ落ちるみたいに、勢いなくだが大量の精液が真下へ吐き出された。

幽香のペニスから与えられたケツ絶頂に痙攣する脈動と同じリズムで、吐精を繰り返すリグル。

は……んへ……っ

入れただけでイッたの?メスとしても弱すぎなんじゃない?ま、私のペニスを突っ込まれた女は大体そんなふうに……気味のいい顔で飛ぶんだけど

壁に手をついたまま頭を落として絶頂痙攣するリグルの髪の毛を掴み、喉を反らせるように上向かせる、その上から被さるようにリグルのイき顔を覗き込む幽香。

リグルは陸に打ち上げられた魚のように口をパクパクさせ、泡まで吹きそうな勢いだ。待ち望んでいた快感にぶっ飛んで意識を手放しかけている。

まだ始まったばっかりなんだけど。私がイくまで生きてなさいよ?

ふが……ィひ……

ぱ、と幽香がリグルの頭を離すと、リグルはハイヒールの踵さえ浮くほど高くつま先立ちになり、尻穴を幽香のペニスに媚びた高さへ向ける。満足そうに目を細めた幽香が、その腰を掴み直した。

楽しませなさいね

ずっ……ずっ……ずっ、ずっ、ずっ、ずっ、ずっずっずっ、ずぼっずぼっずぼっずぼっぐちょっっぐちょん、ぶちゅ、ぐちょ、ぐちょっぐちゅっぐちゅっぐちょっ!

反り返った巨根をリグル穴に埋めたまま、腰を前後に許し始める。幽香がペニスを埋める度にリグルの下腹部がぼごっと膨らみ、幽香がペニスを引き抜く度にリグルの菊門肉はペニスにしゃぶりつくように伸びた。

んぉぉっゆ、幽香さんの、ちんちんっおっきぃおなかに、幽香さん感じるっボクのおまんこ、幽香さんの言いなりになってる

当たり前のことゆってるんじゃないわよ、あんたみたいな雑魚、私に隷従するのが当然なのよ。対等だなんて思わないことね。男のくせにちんぽ負けしたんだから、マンコで応えなさい。ほら、ケツマンコちゃんと締めろ!

ひあいっっっしめますっオマンコ締めますっ幽香さんのおちんぽに、お尻マンコでご奉仕っ

ずぼっ、ずるっ、ぐちょっ、ぐちょっ、ぐちょっ、ずろろろっっ、どちゅんっ!

ぶちゅっ、ぶちょっ、ぐちゅぐちゅぐちゅっ、ごりっ、ぐりぐりぐりっ、ずぼぉおぉっ!

っっっしゅ、っっご……ぉほぉこれが、これが本物のおちんぽぉっボクのにせもの雑魚ちんぽと全然ちがうぅっおっきぃあちゅいたくましいっちゅよぃっちんぽに男女なんか関係ないんだぁっ男でも女でも、強いちんぽは、ちゅよぃんらぁっ

詭弁で自己防衛するな。あんたが私のチンポに負けたのは、あんたが男としてなっっっさけ無いからでしょ!何が〝ちんぽに男も女も関係ない〟よ。男女平等を自分の保身に使うな、不能!てめえがメスづらしてるから、私のチンポが男になんか反応したのよ!

ごべんだざひ……メス過ぎてごべんなしゃひ……

ずぼっぐちょっずぼずぼずぼっっっずりゅるるるるっっずぼぉっ

ぐりっぐりぐりぐりっずろろろろ……ばちゅっ、べちんっずぼっずぼっずぼっずぼっずぼっずぼっずぼっずぼっずぼっ

おぉぉおおおっっぢんぼぉ幽香さんのぢんぼぉぉっメスになるっっお尻でメスにさりぇるぅっっオマンコおしりのおまんこ扱いっオナホみたいにじゅぼじゅぼされて、メス堕ちぃっ

ふ、んっふうっちんぽにねっとり絡みついてきて、こんなんじゃオスの風上にも置けないわねスケベ語もいいけどちゃんと締めろよ、この淫乱マンコ男!あんたなんて、メスも出来ないでしょ、オスにもなれてないのに。あんたに残されてるのはもうだけよ。こんな、ふうっこんな、ちんぽをたらしこむ、チン媚に一生懸命のマンコが、1ミリだって男なわけないっオラ、しめろっマンコ締めろ女にしてやるから、オスの尊厳かなぐり捨てて、ケツ穴メスマンコにしろっ!

はぃっしめ、ますっおちんぽに、オマンコでご奉仕女の子のお勤めっふごぉっふっ、ふひっしゅき大好きな幽香さんのおちんぽに喜んでほしいから気持ちよくなってほしいからケツまんこ締めましゅらいしゅき幽香さんのおちんぽらいしゅきぃぃっラブなのボク幽香さんおちんぽラヴなのぉっおちんぽにケツマンコでだきついちゃいまひゅっ

ふっ、ふっ……キモ男が言っていいセリフじゃないわよそれ

だって、ボク女の子だもん幽香さんに女の子にされちゃったんだもん……

はあ?人のせいにすんじゃないわよあんたが女の子になりたいって望んでたんでしょう?メスにしてメスにしてってあんたのカラダが訴えてたから、仕方なくメスにしてやったのよ!

ぱしんっ!

楽しいのか!女のちんぽ煽って楽しいのかこのメスヅラオメガオス!!

ケツにビンタを張る幽香。乾いた音が一つ鳴ると、リグルの直腸が大きくウネり、襞付きのちん媚び粘膜が幽香のペニスを舐めるように締め上げた。

はきゅうぅぅうっっっんおっふ……

っくんっ相変わらずいいマン肉ね。打てば響くマンコ嫌いじゃないわよ男がこんなちんぽ用の穴になれるわけないものねこのメスやろうおうっちんこに絡みついてくる、なんてスケベなマンコなのよ、これいいわ、わかったあんたの望み通り、ここで終わらせてあげるこれがほしいでしょっ!!

ぐちゅっ、ごりっっ、ごりごりごりっっっっ!

…………っ、っ、っ、〜〜〜〜〜〜〜〜!!ほへ……えぇしょしょれしょこぉぉっ女の子スイッチっ男の子自爆用の男の子終了ボタンっ

狙いを定めたように、リグルの雄膣内の一点を連続して突きまくる幽香。そこにはこりこりとした小さなしこりが埋まっていて、幽香のペニスがそこを押し込むと、リグルの反応は覿面だった。

ふっーーーっ……へぁっは、へぇっっっ

ぶしっぶしゅっぷしゃっどろどろっ……びゅっっぶしゃあっ

そのしこり上がったポイントを幽香のペニスの先が、仮首の引っ掛かりが、強く、あるいは連続して押し上げ、突き込み、轢き擦るたび、リグルのペニスは射精とも放尿ともつかない放出を断続的に繰り返す。

ねえこれほんとに前立腺?もうスキーン腺になってるんじゃない?

わっわかりまひぇんっっっもうなんにもぉわかりゃにゃいぃれひゅぅっっ

私は女としてのリグルを欲しているのよ。男として認めてなんかいない。私は、レズだもの。周囲もちんぽがついた私のことをそういう風に見てた。何も間違いなんかない。私は、レズビアン

リグルがメスになってよがり狂うのを見て、リグルをメスとしてヨガらせ、狂わせ、自分に向けてメス快楽堕ちさせているのが自分だと自覚して、幽香は自分に言い聞かせるように思巡しじゅんする。

じゃあもう、ぶら下がってるキンタマいらないわよね?ぶっ潰して本当のメスにしてあげましょうか

幽香は、リグルの股間に手を潜り込ませ、情けなく垂れ下がったままの陰嚢を触ろうとした。だが、そこは幽香の想像に反して、ひっきりなしにうごめいている。掌に含んでみると陰嚢の中で、リグルの睾丸が動いているのが伝わってきた。決して速い動きではないが、キンタマにしては十分に必死な速さだ。迫り上がって震え、そして何より、幽香が思っていたよりも重量がある。

手に含んだ陰嚢の重さみに、幽香は不意に心臓が跳ねるのを感じた。この中に、メスに向けて放つ精液が、まだたっぷりと入っている。幽香自身の陰嚢の重さに比べれば晩白柚と橘ほどの差がある。それでも、さっきから自分のペニスに前立腺を突きまくられて絞り出されるように無駄撃ちしまくっているのに、この中にはまだこんなにもずっしりと精液が溜まっているのだと思うと、下半身のがイライラと焦れるのを感じた。

ちがう……ちがう!

や、やら……いやれすっふおふぐっいやぁキンタマいりますっまだ、ボクまだちんぽもキンタマもいらなくないですっまだ完全に女の子になれてないからっんっぐっぎゅうっっ

こんなものぶら下がってるから、女になりきれないんじゃないの!?私が断ち切ってあげるわよ!

いや……れす……ちんぽいりましゅ……

あんたの睾丸なんて、廃棄物生産するだけの不用品でしょう?何に使うってのよ!!

ゆ、幽香さんのこと考えながら、ひとりで……つかいま……す

っ、は、はあ!?不要っ、不要だって、ことじゃないの、それ!やっぱ要らないわね。今すぐもぎ取ってあげる。果物をもぐようなものだわ、すぐに終わるから。

いや!いやです!!締めますから!!幽香さんのおちんぽ様に、ご奉仕ちゃんとしますから!ボクがメスになっても、不要ちんぽでも、おちんちんは残してください……お願いします……!

なん……だってのよ……こいつ……!

ぎゅうううっっっっ!

ぎ、ああああ!!!!!!おねがい、おねがいじまず、なんでもじまずがらぁあああっっっっっ!!

幽香はリグルの陰嚢を、握り込む。だが、握りつぶすつもりはなかった。ただ苛立ちを前にして、リグルに向かって苦痛を与えたくなっただけだ。

びゅっびゅっぶゅっ

睾丸がポンプのように押し込まれて精液を発射するものではないのを、自分にも備わっている幽香は知っている。それでも、握りつぶされる直前で、リグルのペニスから今までで一番オス臭い精液が放たれた。量こそ少ないが、匂いだけで幽香にはそれがわかった。何度も嗅いでいる、リグルの精液の匂い。

幽香は陰嚢から手を離した。情けなのか、いや、違うもっと別な感情が

ちがう!

幽香は自分の周囲にまとわり付いて飛び回る小虫を払うように頭を振って、何らかの言葉を振り切ろうとする。元々自分に備わったを、目の前の野郎のせいで、元に戻されてしまいそうな、不安、いや恐怖かもしれない。

ふん。今更キンタマの何が惜しいのよ。ああそう、ならあの妖蝶に、他の男達みたいにもぎってもらえばいいわ。

あ、ありがとうございます!

その代わり、もっと根性いれてマンコ締めなさい。私のチンポくらい満足させなさいよ、この雄マンコ使って!……早く!!そのメスヅラ見てると、チンポ我慢キッツいのよ!!さっきからチンポの責任取れって言ってんでしょ!?マンコの真似も出来ない男なんて要らないのよ、ぶっ殺すわよ!

は、はいっっ!チンポご奉仕しますボクのメス部分で、精一杯幽香さんのおちんぽ様のお世話、しますっっ……んギぃっっ

この〝不一致〟をあきらめ正当化するのに、何年かかったと思っているのよ!だのに、こいつのせいで、全部台無しになるっていうの……?!こんなやつのせいで!

ゾブンッぶぼっぶちゅぼっごりっごりごりごりごりっっっっっ

ずろろろっっずぼっ、ずぼっ、ずぼっぼごっっぼごぉおっっずるっぼごっ

ごりごりっっっ

〜〜〜〜っっげっっひゅひっっゆうかひゃんのぢんぼ、もっとおっきメススイッチ押しすぎっっこわれるっおささりっぱなしになって、ボクこわれりゅっっ

あんたのオスなんて壊れても誰も困らないのよ!むしろ壊れろ、消えろ、女になれそんなにそのお粗末なちんぽが惜しいなら、そのまんまにしといてやるわ。無様な不能チンポぶら下げたまま完メスしたら、その内に自分から〝ボクのおちんちん、壊してください〟って言うようになるわ。今から楽しみね!ほら、ほらほらほら!その日を夢見てマンコしなさい!ちんぽに媚びるだけのペニススリーブになりなさい!

なりゅっなりまふゅぅっ幽香さん専用のペニススリーブになりまひゅっっチンポ容れが歩いてるだけのクソムシ希望ですっよわよわちんちんぶらぶらさせて、惨めなケツ穴チンポケースになりまひゅぅっっ

そうよ!ほら、前立腺?スキーン腺?ぶっ潰してあげる!メスアクメでぶっとびなさい、このメス野郎!あんたがチンポ廃棄希望するまでに、ケツの中に立派な子宮作ってあげるわ。

ごべんなざい男のくせにメス臭くてごめんなざい可愛すぎるちんぽ受け男でごめざぃぃっんほぉっン、ぢんぼ、ゆうかさんのぢんぼ、しゅっご……こんなのメスになるっどんな男でも絶対メスになっちゃうぅっ

なんで今さら、こんな男に……こんなこと、受け入れられないわ!こいつが悪い、この腑抜け男が女みたいな顔してるから、ちんぽが女だって勘違いしているだけだわ。だったら

こっちはあんたのせいでレズ卒業させられそうなのよ!女に欲情する体でふたなりはギフトだと思っていたのに、今更こんな男に発情させられて、迷惑なの!!ちんぽの責任取りなさいよ!!

はい……おしりをオマンコにして、幽香さんのおちんぽに責任取りましゅ……

ったく、ガキも孕めないケツマンコで〝責任〟なんて言葉軽々しく使うんじゃないわよ!女舐めてんのか!?

が、がんばります……!妊娠できるまで毎日毎日セックスしてください毎日朝までメス化調教セックスお願いしましゅっっ

よくゆったわ。あんたの無能なキンタマ袋が立派な卵巣ケースになるまで犯してやるから、覚悟することね。

は……はひ……

だったら、こいつを、女にしてしまえばいいのよ。私の〝女〟の疼きは……無視すればいい。こんなもの、もう、要らないのよ

膣内で射精してあげるわあんたをメスにしてやったチンポの射精よ、嬉しいでしょう?妊娠しろメスザーメンで受精してみろこのメス男!!直腸子宮にぶちまけてあげるから、ケツイきしなさい!特別に断末ウェットも許してあげるわ男の尊厳をその粗末なちんぽから吐き出して捨てなさい!そんなもの、メスには不要だろ!?私があんたみたいな穴とセックスしてやってるだけでもありがたいと思いなさいその上、膣内なかに射精してやるんだから、光栄に思いなさい射精すわよ射精すわよあんたのザコキンタマじゃ絶対作れない量のザーメン一気に打ち込んであげるわ!!

うれしいれすっふっ、んっっほ、んぃんもぢぃいっっセックスありがとうございいます幽香さんのちんぽきもちいいですっセックスしてくださってボクみたいな半端者と、セックスありがとうございます膣内射精なかだしお願いします膣内射精なかだし、膣内射精なかだしっっ幽香さんのおちんぽ様から、膣内射精なかだしっ幸せになれるっ幽香さんのザーメンケツマンコでごくごくさせてください

いいわ私の射精で幸せになりなさい!射精すわよ!……っ、ほっ、お、リグルのケツマンコに、ザーメン、だすわよぉっイけ、あんたも、イけ、リグルっっ、クソメス野郎っっっ

びゅっ……びゅーーーーーっっどばっどぼぼぼぼぼっっぼちゅっびゅーーーーっ、びゅーーーーっっっっっっ

あっんあ、あっっっしゅっご、しゅごぉぉっっザーメン幽香さんのザーメン妊娠汁っいっっっっぱい、はいってくるぅっ射精の勢い

、んぉっ……すっごい……射精るっっ……このケツマンコ、ザーメンに吸い付いてっっ……ふうやっっば、この、メス男、やっぱチンポに有害っっふううっ、あ、あっっっっまだ射精るっオス膣、チンポをバキュームしてくるっこのドスケベメスショタっちんぽの、敵っっっ射精る……っまた、射精るっ

びゅーーーーーーーーーっっっびゅるっっ、びゅるるるるっっびゅっ、びゅううっっっどぶっ、どぶどぶどぶっったぷんっ、ごぼっこぷっこぽぽっっ

射精の勢いだけで、膣内のメスイキスイッチ、おされちゃうっっ

イッて、ろ、メス男っ……

びくんっ、びくっ、びくびくっっっ

幽香に容赦ない腸内射精を受けて、リグルは何度もメスイキを繰り返す。ペニスはほとんど勃起していない、ただ、力ない漏精を続けている。勢いのない射精は、まるでチンポの先から〝男性〟を排泄しているかのよう。押し出され漏れるだけの放精は、男を失って女へ転がり落ちる様を表しているようだ。

一方で幽香の射精は勢いを失わない。射精を繰り返す巨根の付け根からつながるムチムチの肉尻も、てらてらと黒光するスーツの下では射精痙攣を秘めていた。アクメを決めるリグルを蔑む暴言を吐きながら、だが幽香自身も鼻の下を伸ばし、弛緩した口の端からは舌を垂らしている。溢れそうな唾液を舐めずるようにしているのは、誰にともないプライドのごまかしだろう。

本物のオスよりも強烈な、大量で雄性な幽香のふたなりペニス射精。リグルをメスと見做して、本気の射精を続けている。種付というよりも、メスに向けてオスを思い知らせるための、セックスと射精。幽香のリグルに対する欲求はまさにそれであった幽香自身に対しても。

は……へ……っ……おなかのなか、幽香さんのせーしれ……いっぱいぃぃボク、妊娠、れきらかなぁ……おなか、こんらに、ふくらんりゃったぁぁ……

……っ、はっ、はあっ、はあ……っだして、やったわよお望み通り、あんたの内で、ぜんっぶね妊娠なさい今からでも精巣で卵子作って、自分のケツに打ち込むことね

は、はひ……メス化したちんぽから、卵子、らしましゅっ……

ぴゅっとぴゅっ……

情けなく、それでも精一杯振り絞ったのかと想像できるいじらしい飛沫が、リグルのペニスから飛んだ。リグルはそれを自分の手で受け止めて、あさましく自分の尻の穴に押し込む。壊れたように開きっぱなしになった肛門からは、幽香の精液がぼこぼこと溢れ出している。その中にあんな少量の自分の負け犬精液想像卵子を入れたところで押し流されるだけだと言うのに、リグルは必死に自分の精液を救っては自分のケツ穴に運ぶ。

はあっ、はあっ……無様ね。せいぜい想像妊娠でもすることね……

幽香はその辺に放ってあるリグルのブラウスを拾い上げて、ザーメンまみれになった自分のペニスを拭う。あんなやつほっといて、風呂にでも入ろう。そう思って浴室へ向かおうとする。

だったら

だが、二、三歩と進んでから、舌打ちをして引き返す。〝大〟の字とも〝出〟の字ともつかない形でひっくり返ったまま正気を失ったように尻穴をいじり続けるリグルに、一発蹴りを入れて失神させてから、比喩なく引きずってゆく。

そしてどこか影の差す表情で、ひとりごちた。

こいつを女にしてしまえば、私は、私のままでいられる

§

リグル・ナイトバグの目の前で、二人一組の舞手が煽情的な舞踏を披露している演目は、聞かされたが、覚えていない。

あ、あの、これ

ああ、客人が来たので用意した宴の席だ。飯も酒も、遠慮せずに食べてくれ。

いえ、その、できれば二人でお話がしたいのですが

おやおや、可愛らしい顔をして、女性に向かっていきなり大胆だね

そそそそうじゃなくて!その、このは……気が散っちゃって

この空間がどうして作り出されているのかはわからないが、三本の細い円柱が床から天井へ突き刺さっている。柱それぞれに舞手が、粘りつくように絡み腰をくねらせ、欲情を誘う表情でリグルへ、それにもうひとりの方へ視線を送り、またすぐにその視線を剥ぎ取って柱にねっとりと抱きつく。

気に召さなければ見なくてもいいよ。あの二人の踊りはこの席の形式的なものだ、空気だと思ってくれていい

は、はい……

空気と称された舞子達は、まるでその肉体で男を誘惑する女のように柱に腕を回し、太腿で挟んで、腰を波打たせて擦る。その柳腰のくねる様を、煽情的に揺れる尻と太股を、巧妙に見せつける角度に置いて。上下に体を揺らして、柱が男であれば男根に肉体をこすりつけているような動き。かと思えばリグルと、並んで座るもうひとりへ見せつけるように正対し、自らの体の輪郭を手で撫でなぞって細く濡れた曲線を強調してみせた。

奇妙な舞だろう

はぁ

ああして二人が空の一本と入れ替わって踊る度に、世界の終焉に近づくんだ

随分と不吉な舞なんですね

大丈夫、あれらは一生あの踊りのシーケンスを進めるが、我々が生きている間に終劇を迎えることはない。気にしなくていいよ

はあ

三本の内、中央にあり一歩前にせり出した一本には誰も絡みついていない。だが時折どちらかがダンスの舞台を残りの一本に移して「ここからは自分のターン」とばかりに前に出る。二人の視線を自分一身に受ける場所で、身を激しく揺らし腰を波打たせてあられもない股間を二人に晒す。それを、交互に繰り返していた。

(よくわからないなあ)リグルが流石に声には出さず表情だけで唸っていると、しかし当の本人は興味なさげに話題を切り上げ……途端に本題に切り込んでくる。

で。つまり紫に言われたからここにきた、と

踊り子の一人が空いた柱に躍り出て絡み付きリグルに向かって股を開いて見せ、腰を左右上下にねっとりと揺らしている。妖しい流し目がリグルの瞳を射んと向けられていた。リグルはその視線を認めるやすぐに逸すが、逸らすように下へ逃れるとその先にはもっと気恥ずかしい光景がある。いよいよ視線の逃げ場を失う。

……え、えっと、そうではなくてですね。いや言われてないわけではないんですが

リグル・ナイトバグの目の前には、可憐な容姿に卑猥な装束でポールダンスに狂う、二人の踊り子。揺れる腰、胸元を隠す布は全く膨らんでおらず、代わりに開かれた股の間の布は突起を膨らんでいた。見ないようにしても目の前で踊られれば否応なく視界に入る。懇願する視線を逃した隣に座っていたのは、この席の主宰、摩多羅隠岐奈だ。この娼年ポールダンスはこの人の趣味なのか。

困惑するリグルが視線を向けるよりも先に、彼女はリグル・ナイトバグの方を見ていた。

キミが来たのは、倭文偽神シトリの件だろう

しと……ラルバのことですか?

幼虫ラルバ、そう名乗っているのか。全く皮肉じゃないか、リグル・ナイトバグの前で幼虫とはね?

彼女は、どうしてここに来たんですか?彼女はボクにあったことがあるような口ぶりですが、ボクにとっては初対面です。紫太妃は、何かあればあなたに聞けと……

あれは人の心に忍び這い入る、決して甘言に耳を貸してはならないよ

はあ。ああ、いえ、つまりその甘言にあたるのかも知れませんが……彼女は里の人間を誑かして、生命をさせているんです。彼女も神妖ならば当然なんですが、余りに度が過ぎると対処せざるを得ない。だから〝話を聞いてこい〟って言われて……

で、なんて言ってた?

風見辺境伯TheSleepingDandeLionに向かって、挑発するような発言ばかり

それじゃあないね。風見幽香は確かに鍵だが、錠でも箱でもない。キミについてだ

久しぶりって

それはさっき聞いたね

目を覚まさせてくれたのが、ボクだと

近い、が、それでもない

Voidの崇高

それは今は関係ないな

なんなんだ、この人。答えを知っていてボクに言わせたいのだろうか。

摩多羅隠岐奈は、淫猥な舞踏を目の前に置きながら意識をリグルの方に向け、食事を口にしている。「キミも食いたまえよ、キミのための席だ、リグル・ナイトバグ」と紫太妃に引けを取らない胡散臭さを滲ませた笑みでリグルに言う。

たしかに上等な膳が並んでいる、そもそもこんなにもてなされる理由がリグルにはわからなかったが、それらの事実を含んだとしても、今の彼にはこの馳走を味わう余裕などなかった。目の前には煽情的な舞が、横には自分など吹けば消し飛ばせる程の巨大な神妖がいて、自分を詰問してきているのだ。敵意こそ感じられないが、回答を一つ誤ればどんな目に遭うか想像もできない。

取って食いやしないよ。が、風見幽香と真正面からやり合いたいヤツなんかこの世界にいるものか

えう

心を読まれでもしたのだろうか、リグルは青くなりながら記憶をたどる。ラルバと名乗った蝶の神妖は、他に一体何を言っていただろうか。

悪夢

それも後日だ。だが、近いかも知れない

後日?

他にはなんて言っていた

えっと

実際のところ、リグルは一つの言葉をとうに思い描いている。だが他が答えであって欲しいと願う故に、その周辺を掘りすぎたかもしれない。いよいよその言葉を口にすることを避けられなさそうだ。

さあ、なんと言っていた?

……変態

摩多羅隠岐奈は満足そうに目を開き、箸を置いて手を打った。

ああ、そう、それだよ。王にして幼虫、リグル・ナイトバグ。キミの変態を、待ち望むものと、避けたい者がいる。倭文偽神は前者そして

幽香さんは、望んでない

何も言わない摩多羅隠岐奈。手を上げて、舞台上で柱相手に淫売じみた動きで絡みつく、少年二人を呼んだ。「もういい。白酒を持て」

ニ童舞子は世界の終わりを告げるという踊りを中断し、ぺこりと頭を垂れて奥へ去った。汗の滴を湛えた体だというのに、体臭は気味が悪いほど馨しい。

リグル・ナイトバグ。キミは、あれを従える立場だ。そうだね?

え?

蟲の王、今は雌伏しているがキミが成体となるとき、多くの神妖はキミの麾下に戻る。違うかな?

わかりません。そうなるかも知れないし、そうじゃないかも知れない。〝ムシ〟の概念は、ヒト文明の進歩とコトバの有り様に従って大きく変質していますから……何を、お考えです?

何も言わぬ摩多羅隠岐奈がじっとりとした沈黙を保つと、二童子が白酒を携えて戻ってきた。

甘い水が好きと聞いた、普段一人ではやれない酒を用意させてもらったよ。呑んでくれ。

い、いただきます

摩多羅隠岐奈ほどの巨魁が、なぜ自分をこれほどに買うのか。注がれる酒の芳しさは、口を付ける前から極上の品だと物語っている。

リグル・ナイトバグの変態。なるほど倭文偽神あれは、それにひかれてやってきたか。キミと面識があるというのは?

基本的に、は記録と体験を共有しています。ですがそれは、事実と記号に分解された記録で、記憶は個に閉じています。記録は記憶と違い感情との連結は薄れていますし、個体によっては記録供出せず抱えたまま死ぬことで立ち消える記憶もあります。だから

会っているかもしれない?

昔はそんな風に考えることはなかった。でもこの個体ボクには、そういうことが妙に多い。人間によって幻想郷に、コトバが溢れ始めたからかもしれません

ならば過去に会っていたとしよう、記録になくともだ。一つ頼まれてくれないか

なん、でしょうか

§

きた、と、リグルは心臓の上に重たい分銅が降りるのを感じた。紫太妃は最初からこれが目的だったのだ。八雲紫もそれに摩多羅隠岐奈も、彼に向けて企みを持っていた。いま憂慮するのは、この謀ての輪の中に、風見幽香が含まれてしまっていることだった。

八雲紫は、風見幽香へそれなりに大きな執着を持っていた。さすがのリグル・ナイトバグでも察するに易い。それがどんな執着であるのかはわからないし、恐らく唯一のものではないだろうことも予想はつくが、それ故に八雲紫は、厄介なことを風見幽香や博麗の巫女もろとも巻き添えて自分にふっかけてくる事が多いと、リグル・ナイトバグは自覚していた。これも、その一環なのだろう。

……紫太妃は、最初からこのつもりでボクをここへ向かわせたんですよね

さてね。困ったら来るようにと言われていただけではなかったのか?

折り込み済みなのでしょう、お二人で何を企んでらっしゃるのか

私と紫の間に申し合わせなんかないよ。疑り過ぎではないか?

それさえ不要な、共有した目的が、あるんじゃないんですか。……これでも、在籍年数だけは長いんですよ、ボク

この地が現世から幻想郷として切り出される前からここにいて、今なおここに残る数少ない存在、承知しているよ。だからこそ、倭文偽神を呼び込むしるしとなる。

話が見えません。

勿体ぶった言い方に焦れたリグル・ナイトバグは少々ぶっきらぼうに言い捨てる。摩多羅隠岐奈はリグルを宥めるように手をひらひらと動かし、そこに座っていろといいたげなジェスチャーを見せ、口を開いた。

頼まれてほしいのはな、こういうことだ。つまり、あれをさっぱり綺麗に平らげてくれ

……どういうことですか?

あれは自由にしておいては面倒を起こす厄神だ。だから虫の王の名の下に、倭文偽神を従えて欲しい。飼い慣らすと同時に、それなりの神格として扱って欲しい

飼い慣らす、なんて。

できるのでしょう?〝蟲〟のシュを持つ存在は総てキミの、〝王命〟に逆らえない

今このリグル・ナイトバグには、想像されているほど強い王命を発報する力はありません。先程もいいましたけど、人間文明と言語の拡大によってもう、ムシの概念は変質しているのです。ボクの力はすっかり弱くなってこの通り、妖精たちと大差ない一介の自然構成要素でしかありません。

それは随分控え目な言い方だね?全生物の6割を占めるのが虫だ。キミの言う通り〝ムシ〟の意味を遡るのならもっと多い。キミはその頂点にいる。世界の大多数はキミの支配下にある。いわば世界の支配者だ

ニンゲンでさえ、本気になれば虫なんて一人で1万匹でも殺せますよ。現に、あなただって世界の王を前にした態度ではないですよね?

……これは失礼した

失礼なんかじゃありませんよ、支配者なんて言葉のほうが間違っているんですから

しかしそこまで謙虚だと、逆に疑ってしまうわねえ

今更何を疑うっていうんですか……現に別に何の力も発揮出来てないじゃないですか。仮に、エタニティ・ラルバを支配出来るとして。彼女に、一体何をさせろと。倭文シトリ、とは大層な呼び名を与えているみたいですけど、また星でも狩るのですか?

いやいや。何もさせなくていいのよ、ただ大人しくしていてほしい。この世界を蚕食し始めたなら私は、再び討伐しなければならないからね

酒を進めるリグルの盃に、隠岐奈は矢継ぎ早に甘く香り立つ貴酒を注ぐ。

キミが今請け負っている仕事にも、利害が合うだろう?それに、過去に何か因縁がありそうじゃないか、益々以て好都合。〝力〟が足りないようなら風見幽香を使っても構わない

摩多羅隠岐奈の申し入れに、リグルが急に語気を強めた。

なんであなたが、幽香さ……風見辺境伯TheSleepingDandeLionに対して〝使って構わない〟だなんて言い方ができるのです?越権行為ですよ、摩多羅神。

正直、あの生粋の化け物と良好な関係を築いていることに疑問が尽きないのよね。キミが自称するように、何の力もないとしたら、それが最も不明で不自然な事実だわ。

ボクが、風見辺境伯TheSleepingDandeLionより上の立場だって言うんですか?

〝辺境伯〟は、博麗が勝手に与えた官職だ。私はは見ていないというのは、流石に想像力が豊かすぎたわね?エタニティ・ラルバは現在、彼女のテリトリに巣食っていると聞いたのでね、必然、アレの対処は風見幽香の役目になるかと

それは事実だろう。だから博麗は風見幽香とリグル・ナイトバグに、エタニティ・ラルバの対応を求めた。「対応」それが一体何を指しているのか、リグルには示されていない。恐らく、風見幽香にも。

§

ところで、これは、どうだい?

え?

この二人のポールダンスだよ。私個人の趣味を兼ねてはいるが、キミの趣向にあわせて演らせたつもりだったんだがね

これが、ですか?

あれが男児なのは私の趣味だ、キミのとは、少々違うが。私は少々いてね。

そういう意味か。リグルは少しだけ眉をしかめる。

これは元々ただのニンゲンだったのだけれどな、もっと幼い性に目覚める前に私が拾ってすっかり染め直したんだよ。可愛いだろう?

ニンゲンを拾って、力を与えた?

そ。可愛かったから

摩多羅隠岐奈が目配せを送ると、二童子はその左右に侍るように移動する。主である隠岐奈の左右で、再びステップを刻み、ポールを使わないダンスを始めた。鏡に写したような完全な左右対称。ポールを相手にしていなくとも、その腰のくねり、手足のゆらぎ、それに流し見る目は〝男に対して〟煽情的だ。

キミは自分には力がないとゆったけれど……力なら、簡単に手に入るよ。キミにはその器が、元々備わっているからね

風見辺境伯TheSleepingDandeLionの助力のことでしたら

キミ自身の力よ。

ですからそれは

私がキミに力を授けてあげる。

えっ

摩多羅隠岐奈の左右で踊っていた二人の少年が、その軽快なステップを崩さぬまま、いつの間にかリグルの後方左右へ移動していた。二人から目を離したつもりはなかったのに、まるでするりと扉でもくぐるように背後へ移動したのだ。

いや、力をくれるのは、彼らだ

§

「里乃でぇ〜す」「舞だよ」

えっ、ちょっ……

こんな夜更けに誰だろう、と客である手前狸寝入りで無視するわけにも行かず寝入り前の気分を押して扉を開くと、そこにいたのは終末の踊りとやらを続けていたポールダンサーの二人だった。

リグルには入っていいと答えたつもりはなかったが、二人はズカズカと部屋に入り込もうとしている。「え、あの、ちょっと」リグルの制止する声もなんのその。滑り込むような仕草だけはしながら、真正面から押し入ってくる。

え、もしかして寝ようとしてたの?普通流れで、あるってわかるだろ

激しく体をくねらせるポールダンスで白い肌に玉の汗を浮かべる乱れ姿も魅惑的だったが、こうしてめかしこんで整った姿で立っている姿にも匂い立つ女の魅力があった。光沢のある生地に多彩な褸を織り込んだ中華風の衣装だが、わざと肌の露出が多めに調整してある。男とは思えない柳腰、その高さまでざっくりとスリットの入ったレイヤードのスカートは、そもそもスリットを入れなくとも少し歩くだけでも股間が見えそうなくらいに短い。豪奢な薄布の下からは、密着した乳首や形よくくぼんだへその穴それに、存在感のある股間の膨らみ。意図的に男性器の存在を見せつける、女性デザインの服。

舞踏を見ていたときではこんなに近くなかったし、酌をしてもらったときは視線を露骨に向けるわけには行かなかった。こうして間近で見ると、まるで男とは思えないくらいに可愛らしい。そして、この姿は強烈に淫猥だ……男に対して。

この二人が女ならば、健常な男なら真っ先に下半身に血液が集まるに違いない。いや、男であってもなお、男の下半身に訴えかける色香が、この二人には備わっていた。

その色香を、しかし色香として使わないくらいの勢いでグイグイ押し通らんとする圧力でこられたのもあって、リグルは二人をすんなりと部屋に上げてしまった。

そうそう、こんな大きいベッド、一人で使う為に置いてあるわけないですよねえ?

そう。客室だと言って通された部屋で最も存在感を示していたのは、この円形ベッドだった。それはつまり、こうした形で複数人使用が見込まれていたということらしい。リグルはそれに気づかずただ大の字になって寝るものだと浮かれていたのだが、こうして二人がデリバリーされてきたところでようやく理解した。だがもう遅い。

はいはーい、僕らも仕事なんで、テキパキいきますね

こらこら舞、そんなふうに言っちゃだめだよぉ

なんて言いながら二人は、部屋の戸を締めた玄関先でリグルを左右から挟み込む。足を器用に絡めてすべすべの太腿を擦り付けるが、リグルの足を自由に動かさせない拘束になっている。ポールダンスのときのように艶めかしく腰をくねらせ、煽情的な表情でリグルを見る二人。

右から接近した里乃が、リグルのシャツの下に手を忍び込ませ、躊躇なく乳首にふれる。彼の口にに寄って、柔らかい唇を吸った。

左から接近した舞は、リグルのズボンに手を入れて事態を察して準備を整えつつあったペニスに指を絡ませる。彼の耳に口を付け、敏感な耳朶を吸った

あ、あのっ……んぁっ

まあまあ

僕達に任せてよ

泊まっているリグルよりも勝手知ったる家の中、戸惑うリグルをごまかしたりあるいは無理やり引っ張ったりしながら、あっという間に彼を円形ベッドの上に横たえる。

何も取って喰おうっていうんじゃないんだ。お師匠様が可愛がってこいって

可愛がってもらって、でしょ?

可愛がってもらうってなんだよ、それじゃおかしいだろ。僕と里乃で、リグルさんを可愛がるって話だろ?

うーん、そうだったっけぇ?

どっちでもいいです!じゃなくて、どっちも結構です!

リグルが断りの言葉を叫ぶが、時既に遅し。里乃と舞の二人はベッドの中央に横たえられたりぐるを左右からしっかり抑え込んでいる。「や、やめてくださいってば……わ、わわ」二人のチームワークは完璧で、まるで4本の手と4本の足をもった一つの生き物みたいにリグルの手足を押さえつけながら、同時にリグルのシャツのボタンを外し、ズボンを下ろしてくる。あっという間に、靴下だけを身に着けた全裸にされてしまった。

ふーん、これは……

僕達から見ても感心しちゃうくらいだね

靴下だけを残して全裸に向かれたリグルの体を見下ろしながら、舞と里乃は偽らざる感心の表情を浮かべる。

性に目覚め始めた女児の膨らみ始めた幼い乳房が、女性にしては少し肩の張った上半身に備わっている。乳輪は小さな乳房に不似合いなほど大きく色が濃い。乳首は大きく育っていた。

細いには細いが女性のようには括れていない腰回りから、道でも間違ったかのように女性らしい梨型の尻へ繋がっていくボディライン。ペニスはしっかりと存在しており、今置かれている状況で大きくなっていいのかどうかわからず戸惑いを見せている。この股間に淫唇が備わっていないのが、なにかの間違いのようだ。

世の女装男さんってだいたい、細くなろうとしすぎてガリガリになっちゃうんですけどぉ……リグルさんは違いますね

ほんと、やば。男の骨格に女の肉付きしてる。えっろ。見て見て、太腿とか、えっち過ぎるじゃん。舐めてぇー

ボク女装とかしてませんけどね!?

え、は?嘘だぁ?これはしてるカラダだろ?

こんな可愛いのに女装しないなんて、もったいないですよぉ

左右から分けのわからないことを言われて、リグルは何をどう答えていいのかわからない。こういうことを確かに、チルノやルーミアに言われたことはあるし、犬走椛や魂魄妖夢とのやり取りをエスカレートさせればこうした内容にならなくもないかも知れない。だがそう言われてみればと、リグルは一つ意外にも今まで気にしていなかったことに、気付いた。

そういえば、幽香さんに女の子の服を着せられたこと、ないな

リグルには「メス、メス」と罵りながら合意済レイプされた記憶こそ山ほどあれど、異性装を強いられた記憶は一度もなかった。何ならチルノやルーミアに着せられそうになったことの方がある。

そ、そういうあなた達は、女の子になりたくてそういう格好をしているの?

あー、これ?

可愛いでしょ、と舞が透けチャイナの裾をピンと張って見せる。シワが伸びたその衣装の下には、女性的な曲線のカラダに男性のシンボルが浮かび上がっている。それをまるで自慢のアイテムみたいに、リグルに見せつけた。

僕らはもう、男じゃないから

勿論、女の子でもないけど

男であることをやめて、でも女にもなれない。そのことをこんなふうに肯定的に捉えて笑っている二人の顔が、リグルには奇妙なものに思えた。そして、羨ましくもある。その理由を知りたいと思った。

僕達はお師匠様にこうしてもらったんだ。男とか女とかそういう人間の下らない迷いを超越した存在にしてもらったのさ

もう人間じゃなくなっちゃってますけどねぇ

摩多羅さまに、そういう体にしてって、お願いしたの?

無理矢理かな

……え

まあ最初は無理矢理でしたけど……

激しかったよね、お師匠様

そうだろう、本人達がわざわざ望んで、こんな〝中途半端〟を望むわけがない。摩多羅神の力があれば、完全に女性の体に作り替えることだってできただろう。リグルは不審を覚える。

無理矢理って……もし女の子になりたいなら、こんなモノ

こんなモノ、とリグルが示したのは、二人の夜向け衣装の股間部でもう臨戦態勢にある男性器。二人はリグルの体をまさぐり愛撫しながら、その服の上から自らの股間をまさぐっている。リグル隠す様子はない。もうじんわりと先端からトロみが滲み出ていて、勃起で持ち上げられた豪華な衣装の股間部に濡れシミを作っていた。

僕たちこの体が好きなんだ。これを取っちゃうなんてもったいないよ

おまんこはおまんこで、お尻に作ってもらいましたし

メスアクメはケツで幾らでもできるんだし、チンポもついてりゃ射精イきもできて、お得ってワケ

こんなふうに楽しめるしさ、と言って舞は、小さく下を出してリグルのペニスの脇をつつく。里乃もそれに合わせて同じように、リグルのペニスの逆サイドを舌で撫でた。

ふぁ……ちょっ、

たちまち、二人の口から出る舌は、下品な大ベロ出しに変わる。唾液がだらだら溢れ出し舌を伝ってリグルのペニスへ注がれる。左右から可愛らしい男の子の顔が覗き込み、その舌はペニスを左右から挟むように舐めている。下から上へ、上から下へ、亀頭と雁首をいじめる舌先と、竿をねっぷりと包み撫でるさらざらの舌。

リズム感も舐めるコースも一緒じゃないのは敢えてだろう、里乃の舌が亀頭と竿の縫い目をなぞるとき、舞の舌は鈴口をほじっている。じゅわ、と滲み出すカウパーを吸って唇で亀頭を包むように愛撫すると、里乃の舌はリグルの陰嚢を口に含んで皮越しに精巣を追いかけている。

れろっ、れろおっ

ちゅぱっ、ちゅっ、ちゅっ

左右から絶妙な崩しリズムでフェラチオを続ける里乃と舞。鼻を鳴らし、上目でリグルを見ながら口奉仕を続ける舞と里乃。思い切りペニスを口に含んだヒョットコ顔でリグルを表情で誘い、ふぐりに思い切り舌を伸ばす下品な顔を、恍惚で彩っている。

「ふふ、可愛い」「おちんちん」 「まだこんなに固いんですねえ」「ちょっと羨ましいな」

ベロを出し、唇で吸い付き、口の中に含む。舞と里乃の体温は少し高くて、手も口も、唾液までも温かく心地よい。的確なテクニックがその心地で緩んだ隙間へ快感を刷り込んでくる。強い刺激ばかりではない、緩急つけた細かい焦らしと攻めで階段を一歩ずつ上がっていくような、男色快感エスカレーションがリグルを包み込んでいた。

こんな可愛い男なら、えっちな言葉を投げかけながらフェラ顔を見せつけてやれば、どんな男でも興奮するだろう。一度興奮してエレクトしてしまえば、的確な技術で攻められるだけで射精まではあっという間。男の体の性反応なんて、単純なものだ。

あふ……んっす、すご、い……

まずはぼくらひの、れ、いっぱひゅしゃせーさせへあげゆね

舞ったらはりきっちゃってぇ……私もがんばろっとれろっ、ちゅっ。ちゅっっっっ

り、両方から……きもちいぃ

じゅっ、じゅるっ、ちゅっちゅっ……

れろぉっ、ぬりゅ、くりくりっ……

舞が亀頭をイジメへる……ちゅっ、あいらぁ……

はほのが……ぷは、キンタマ食べてさ。僕がこうやって、れろっ……さおをなめへ、くらっへくと

それと入れ替わりで私が、れろっ、ちゅっ、さおをのほっへ、かりくひ、いじめひゃいまひゅ

りゅっ、ちゅぱっ、にゅろっっ……

れろぉぉっ……ちゅっちゅっ

は、ふぁ……すっご、い……

左右から二本の舌と四枚の唇、倍の唾蜜でペニスを攻められるリグル。

ふたりエッチで受けるフェラチオと全然違う、焦らして高ぶらせる唇舌愛撫の段階で縦横無尽の粘膜愛撫が肉棒中を這い回る。射精に到達するには扱きピストンが必要だが、ペニスからくる快感だけは急激に上りあがっていく。

ちゅるちゅるっ、ぺろっ

ちゅっちゅっ、れろぉぉっっ

竿の両サイドから容赦なく舐め回すキスフェラと舌愛撫。唾液は亀頭のてっぺんから滴るように、必ずペニスを上にねぶりあげて、舌先で雁首の溝をほじり亀頭の赤ぷにを弾いてから、上から垂らす。舞が垂らせば里乃が、里乃が垂らせば舞が、その唾液を下で受けて、リグルのペニスへ塗りつけて撫で回す。

っ……ふぉっ……フーッフーッッちんぽ、きもひいっはへっ、はへっっフーッッ

左右から同時に、雁首の溝を舌先でホジるように動き、そのまま縦に細かく震わせながら、二人の舌先がちょうど直径上に来るように器用に円周を舐め回している。時折広げた舌ビラの表面全体で亀頭を擦り、裏筋全体をコソぎあげると、リグルの腰が、かくっかくっ、と揺れる。いつの間にかリグルの股は自らの意志で大きく開かれ、二人はリグルの脚を抱くようにしてフェラにいそしんでいた。

オス同士のフェラ、たまんねえよな

ほんとの女の子じゃ、欲しいものが、わかんないですもんねえ……

ふぁ、ふっ……ぅんっ全部バレてるおちんちんの気持ちいところ、男には隠せないっ女の子の顔で男の子のちんちん知識、ズルいっ

可愛くなってきたないつ射精してもいいんだぞ?僕たち、顔にぶっかけられるの好きだから

うーん、声はメスなのに男の子の臭い、きゅんきゅんしちゃいますねぇ

ダブルフェラでペニス全体を唾液ぬるぬるまみれにされ、濡れた粘膜摩擦の快感刺激を絶え間なく四方八方から注ぎ込まれる。でも……締め付けて扱く感じがないから射精には到達できない。膨れ上がる快感と、それに反して絶頂に上りきれない焦れに、リグルは段々と堪らなくなっていく。快感と言うよりも、射精に向かって走り出したい欲求が暴れ出そうとしていた。

どうだい、僕らのダブルフェラ

ノンケの人も、あっという間に音を上げるんですよぉ

「も、もっと、してぇ……」「「もっとして、って」」 「男に向かってフェラ懇願、男の子としてはクツジョクですねぇん」ちゅぱっ、れろおっ 「男にしゃぶられるなんて、リグルさんなら普通かな」ちゅっちゅっちゅっ

はうっ、んおちんちん吸ってぇもっと強くしてえっ

「でも、こんな可愛いメス顔男子、ほんとならフェラする方がえっちですよね」はむっ、はむふにゅっ 「僕らは違うよ、リグルさんのちんぽ、いっぱい可愛がったげるから」じゅるるるっ

っ……きもちいぃっちんちん気持ちいいっぁっ……可愛い男の子二人にちんちん可愛がられて、射精したくなってるっ、もっと、もっとつよくぅっ

「だって、舞、もっと強くしてあげたらぁ?」じゅるっ、じゅるっ 「えー、どうしよー」じゅろろ、ぺろっぺろっ

す、するつもりなんでしょ?二人がかりでおちんちんして、ボクに射精させる気なんでしょおっ?

「それは本人の意思って言うか、僕も無理強いはしたくないし」ちゅっちゅっちゅっ

えっ、えっ……

「どうしてもってお願いされたら、めっちゃくちゃ強く吸ってあげてもいいですよ」はむっ、ぺろぺろっ

おっ、おねがいって、こんなサービス、ボクが頼んでる訳じゃ……んぉっ……ち、ちんちん、もう焦らさないでっ

「おちんぽおねだり、できるかな」れろっ、ぺろっ、はむっ

リグルの腰が浮き、へこっ、へこっと空中の何もない場所をペニスで突くように動く。二人の焦らしフェラから逃げるようでもあり、ありもしない想像上の女性器を求める浅ましい動きでもあった。すっかりちんぽ焦らしに陥落している

もうっ、もうっ……ねえ、もうボクっ

もう、なんですか?リグルさんは虫さんじゃなくて、牛さんなのかな?

大丈夫大丈夫、これから僕たち二人で一晩かけて、じっっっっっくり、リグルさんの潜在能力を引き出してあげるからな

当然、私達もいっぱい楽しませてもらいますけどね

そういって舞と里乃は、二人とも同時にシックスナインのように頭と足をリグルと逆に入れ替えて、左右に並ぶ。頭をリグルの左右の太股に乗っけて勃起したペニスを左右から見上げて、舐め回す。そして左右からリグルの顔の前へ、ドレスの前垂れを被った自分達のペニスをかざした。

おちんちんの匂いと、女の人の香り、両方する……

左右からに本目の前に現れた、女装ペニス。先走りで濡れた部分が、光沢のある生地を一層にヌメ照らせている。だのに、この下に男のシンボルが隠れてるなんて、にわかに信じ難いほどの女の色香が、体中から、何より股間から、漂っている。汗の香りが既に、女の子の芳しいそれなのだ。なのに、ペニスの先からは生臭い男の獣臭する。なんてあべこべで、いびつで、でも完全なんだろう。

ペニスが絶頂を迎えられぬ臨界でとろけそうになっているリグル。もとより自身の性体験から男女の境界に曖昧なところがあるせいで、差し出された両性な淫猥行為に、素直に興奮を示す。それも、男女両方の、二倍に。

はっ、はっ……お、おちんちん……男の子のメスちんちん

うっわー、ドスケベセリフじゃん、しかも僕達に刺さる〜

私たちのおちんちん見て、もっと固くしてくれる……ねえ、先走り、ドバだよ

ちんぽ見てカウパー漏らすって、へへっ、〝わかってる〟人とするのって久しぶり

だって、えっちこんなにされて、こんなの見せられたら、これエッチすぎて……ふーっ、ふーっ

鼻息、あらーいリグルさんって、やっぱ男の子なんですねえじゃあ、こういうことしても、どきどきしてくれますかあ?

ずりっずりっ

二人の腰がゆらゆらと動いて、ヌル透けになった前垂れを貼りつかせたままのペニスが、リグルの顔の上に乗っかった。

ふぁ……

ほぉら、メス化済男子のチンポだぞぉ興奮してちょっとヨダレ垂らしちゃってるリグルさんのチンポに比べるとちょっとメス化が進みすぎちゃってるけど……射精くらいならまだできるから安心して

リグルの顔の上に乗っかったペニスをすりっ、すりっ、と動かしながら、舞はリグルのペニスにもキスの雨を降らせる。

ちゅっ、ちゅっちゅっ

里乃も同じように、リグルの顔の上に載せたペニスを揺らしながら、リグルのふぐりを舌で舐め回す。

きゅっ、きゅっ、とリグルの尻穴が強くすぼまる。快感のやり場のない肉棒に力を入れて、腰を浮かせて空中とセックスしようとしている。二人は上下に波打つリグルの腰の動きに上半身を任せて揺れて、リグルが焦れる様子を楽しんだ。

射精っ……射精したいっお願い、おちんちん、シコシコして、射精させてっ……!

お願いします、でしょ?

お願いしますちんちん射精させてくださいっボクのちんちん、シコシコして射精っ、射精っっっ

じゃあどうしてほしいのか……僕達のおちんちんに、やって見せてよ

ぺちっ、ぺちぺちっ、二振りの肉棒がリグルの顔面を叩いた。リグルは切羽詰まった様子で、左右から顔に乗っかってきた肉棒を、左右の手でそれぞれ持ち上げた。彼等のペニスを隠すように垂れたスカート前垂れの布地ごと、むんずと勃起ペニスを握る。

「おふっ……」「やぁんっ

リグルの股の間から、二人の少年のメス声が聞こえた。

してほしいことをしろという舞と里乃の命令に応じて、リグルは、眼前にチン先が届くように二人のペニスを握って、それを被さった布地ごと一緒に、シゴき始めた。

ずっ、ずるっ、ずるっにゅるっ

シコッ、シコシコシコっ

んふっ、結構激しい、手コキっ射精したくて遠慮なくなってるっ

ふうっ、ふうっっじゃあ、してもらった通りに、お返ししますねっ……

二人の口が、リグルの射精欲を満たす、いや、精液をヌキ去るための動きに変わる。

「いただきまぁす」あむっ、もぐっ、もぐっ……じゅるるっ 「こっちはシコシコしますねぇしこっ、しゅこしゅこっ

ふあぁぁぁっ?!しゅっご、しゅごいっっおクチっ、これおクチっ

「んふふークチマンコでせーし、吸い出しちゃうかんねじゅるるるうっちゅっちゅっ 「根本のところからしっかり扱き上げてあげますねぎゅむシコッシコシコッ

ぉ……っほわぁぁしゅご、いぃダブルフェラ、きもちぃぃっっ

リグルにとっても、ホモ3Pは初めての経験だし、二人から同時に熱烈なフェラチオを受けるのも初めて。一人を相手にするのとは、意識の仕方が全然違う。まして、二人から同時に攻められるなんて。

ほぉらぁリグルさん、私たちのおちんちんもぉ

手ぇ抜いたら、ヌいてやんないよぉ?

そう言って舞は、リグルのペニスを完全に飲み込んで唇肉の輪っかで雁首を窄め扱きする。リグルは要求通りに舞のペニスに口をつけた。布地の上からまるごと口に含んで、彼のペニスを甘噛みする。

おうんっこ、高等テクじゃんっ……亀頭、布越しに歯が当たって、し、シゴきまで来てっ……

ええっ、舞そんなことしてもらってるんですか?いいなあ、いいなあっ私はオチンチン、生手掴みでシコシコしてもらってますっん、ふぅふうっンシコシコ、は、激しっ

な、生かよぉっ僕は布越しなのにっり、リグルさんっ、僕のも生のおクチと手っ……

仰向けになった顔面の左右に現れたペニス2本を両手で夢中でシゴキながら、リグルは自分のペニスに与えられる快感に集中している。無意識に腰を揺らして、二人の強フェラを待ち望んでいた。

舞と里乃も、リグルの顔の上にオナホでもあるように腰を前後に動かして、リグルのフェラと手コキに陶酔していく。

ほらあっ、ガチフェラして欲しければ……ぁうんっっ僕のちんぽも、ちゃんとしゃぶってよっ後悔させないからさぁっ

舞がそう言うと、リグルは布越し亀頭甘噛みを強くして根本を一層強くしごいた。舞のちんぽから、じゅわぁっと布を染み出して溢れてくるカウパー。舌先でずりずりこそぎ取るように、布越しチン先を舐め回す。窄めた口をチン先に付けて吸い付き、そのまま口の中へと押し込んでいく。布越しのペニスを口の中に迎え入れた後も、やはりペニスを甘く噛み締めて舌で撫で回した。

やばっ、いそれヤバいからっ布越しで先っちょはみはみされるの、チンポの芯にひびくっメス化して、不能になりかけてる僕のチンポが、オス本能思い出しちゃいそうっね、根本まで扱かれっ……わかった、わかったってぇおんなじことすりゃいいんでしょ?……あみゅぅっ

舞はリグルのペニスを口に含み、同じように先走りを滲ませている亀頭に柔らかく優しく歯を立てた。舌で亀頭全体を舐め回して唾液を塗り拡げつつザラザラ刺激愛撫を加える。

ふぁぁっもっとおちんちん、もっと強く吸ってっボクも舞ちゃんちんぽに、いっぱいちゅっちゅするからっ

じゅるっ、じゅぼぼぼっ、はむっ、じゅっ、ちゅーーーーーっっ!

舞のペニスにかかっていた布を抜き去って、リグルは舞の生ペニスにしゃぶりついた。〝ちゅっちゅ〟なんていう生易しい吸い付き方ではない、二人にされているホモフェラに負けない、いやそれ以上に貪欲な牡しゃぶり。

ふっ、おすっご、ぉヤバいって、リグルさん、マジチンポしゃぶり慣れてるでしょっ男がしていいチンポしゃぶりじゃないってそれっ……

じゅろっ、ちゅっ、ちゅちゅっきゅっ、きゅうっっ

にゅろ、にゅろっっ、ずちゅっぶぼっ、ぶぼっれろっ

シコシコシコシコっ、ぎゅうっっずりっ、ズリズリっっ

強烈なバキュームと、唇全体で雁首をガッチリ引っ掛けて弾き抜くクチズリ。舌が細かく震えて、細い溝や筋を撫で回して、亀頭を舐め回す。

手で竿を扱き回したり、ずっしり精液を溜め込んだ金玉を持ち上げたり包み込んで揉む。

リグルのフェラチオは幽香に仕込まれ、彼女のふたなりペニスへの奉仕で鍛えられたものだった。

んっ、やばっ、このフェラやばっマジで、男のしゃぶり方じゃないっホモ慣れしてるっっンやば、っ先に、ヌかれっ……い、イく、ちょっとまって、リグルさん、ちょっと、これじゃ僕が先に、っ先にイかされちゃうからっイく、イくイく、射精る、せーしでる、リグルさんのホモフェラでチン負け、するっぉっ、ひぁっっっっっっっ〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ

びゅっ、びゅびゅっ、びゅーーーーっっ、どぴゅっ、びゅびゅっ、ぴゅっっ

崩れそうになるのを必死に持ち直してガクガク震える舞の膝、イキ痙攣で腰回りが跳ねる。精子を吹き出しながら、リグルの手の中でペニスが脈打っている。

射精をなんとか我慢しようとしたせいで、枚はイく寸前で腰を引いてしまった。フェラくちからペニスが抜けて、リグルの顔面に向けてザーメンをぶっかけていく。

ぴゅっ……びゅっっ……びくびくっ……

大の男でも顔負けの大量放精をリグルの顔面に見舞った後、目の焦点がふらつく恍惚の表情を見せている舞。

ほ、ほひっ……ふーっ、ふへっ……す、すっげ、でた……僕、オスを、思い出しちゃいそうっ……

あーあリグルさん、そっからじゃ見えないでしょうけど、舞がすっごいエロ顔してますよ。女がオスイキして鼻の下だらしなく伸ばしてる、無様な射精メスの顔

ぴくんっ、舞のアクメ顔報告をした里乃の言葉を聞いて、リグルのペニスが跳ねたのを里乃は物欲しそうに見た。〝射精メス〟。リグルがその言葉で想像したのは、リグルのアナルに溺れて射精を堪えきれなくなっている幽香の顔だった。リグルに決して負けない下手したてになんか出ない強気の態度を崩さないまま、射精恍惚のユルんだ顔でリグルの尻膣に必死にペニスを突き込む顔。決して逆らえない被虐の会館の奥底に、自分を「抱かせている」という妄想を芽生えさせている。

舞ったら、射精一発だけですっごいアヘ顔ちんぽアクメ、久しぶりだったもんねいいなあいいなあ。リグルさぁん、私もして欲しいですっこういう、ふうにっ、おちんちんっ……

じゅろっ、じゅぼぼっ、ぶちゅっ、ぶちゅうぅうっ

舞がアクメでリグルのペニスから口を離したのを見計らって、今度は里乃がそれを口に飲み込んだ。里乃のペニスはリグルの手がずっとズリ回していたが、舞の精液を顔に浴びたリグルはすぐに里乃のペニスに口を移した。

は、話がはやくて助かります……んっやだ、ほんと、吸い付きが……っおうわかりますっ、これ舞がすぐにダメになっちゃったの、一口だけですぐ理解しちゃいますっ

幽香への奉仕で鍛えられた、犬走楓や魂魄妖夢にも見舞う、リグルのバキュームフェラに、里乃はすぐにヤバみを感じて音を上げる。

唾からもう違うっ、ねっろねろのローションみたいなフェラ用唾っ……、ホぉおおっんっ!わ、私のちんちんの固さ瞬時に判断して、的確な亀頭甘噛みっ男の子なのに唇ふわふわで……ふあぁっ、んほぉっ、ほぉぉっン

ちゅばっ、じゅろろっ、ぬちょあっっ

れろっ、れろぉっ……はむっ、はむっ

しっ、舌の先がっ、弱いところイジメてくるのぉっ男の子相手に、ちんちんの弱点は隠し立てできませんっっは、反撃しないと……このまま言いようにされちゃ、

「ぷ、はっ、ね、ねえっ里乃ちゃんっ、もっとボクのもっ……これじゃ話が違うよおっ!」じゅぼっ、じゅボじゅボっ

だっ、だって、ダメムリ、これリグルさんのおちんちんに反撃してる余裕ありまひぇんっほ、へぇェェぁっ……おちんちんとけるっホモ慣れしたメス男子のフェラ、よすぎゆっ

「手、手も使ってシゴいてっ……!喉の奥まで飲み込みながら、たまたま触って……!やらしいツバ音たてながらボクのちんちんしゃぶってよぉっ、イかせてくれるってゆったでょおっ!」ぶじゅ、ちゅうううううっっっっ!ぶぼっ、ぐちょっ

ふぇ……っ、要求がスケベ過ぎますっこんなの舞と二人じゃないと勝ち目ないよぉ……一人で立ち向かえるホモショタじゃありませんでしたぁあ、や、やあぁっんぉっ、バキュームフェラえっぐい吸い付きながら舌が亀頭こねくり回してくるっ柔らか唇がカリのとこで締まって、ヲっんんぶっっ!

もおっ!二人がかりで焦らしといて、お預けなんか酷いよ!

「んぐっっ!!んごぉっ……!(の、喉の奥までつっこまれ……ッ)ぶっ、ふごっ、んっっ(喉をオナホにされながら、おちんちん吸われてるっ……)」

ずぼっ、ぐぶぶっ!げほっ、ぐぼっ……

じゅるっっ!じゅぱっ……ぶっちゅっ

の、喉マンコにされながら、強烈バキュームフェラっ上も下も、きもちぃぃっ……イく、オンナノコなのに、私オンナノコなのに、喉とおちんちんで、射精しちゃいますっ

びゅっ

びゅーーっ

びゅるるるっっっ

かくっ、かくっ、へこっ

じゅるっ、じゅるるっ

ぴゅっ、ぴゅっぴゅっ

わぷ……っ

リグルの顔面に、舞に続いて里乃の精液までぶちまけられる。イけてないリグルは欲求不満な半泣き顔で、二人分の精液を顔面から垂らしたまま、里乃のペニスを舐め続けている。アクメ余韻にふわついている舞と、たった今射精を終えて体中からメス蒸気を漂わせる里乃。

むぅ……里乃さんまで先にぃ……ボクのこれ、どうしてくれるんですかぁ?

口技だけで、一発目とは思えないオスイキ満足感を与えられてしまった二人は、半勃ちペニスから残り汁を垂らしながら横たわったままリグルを見つめている。

誘ってきたのはそっちだからね。付き合ってもらうから。

川の字になって並ぶメスショタ3人。

彼等の夜は、まだ終わらなさそうだった。

§

漆塗りで艶の照った天面に雲雷紋が抜かれた装飾、幻想郷とは違う「東方」を醸し出すテーブルに肘をついた摩多羅隠岐奈が、現れたリグル・ナイトバグへねっとりとした視線を送る。昨晩は結局、散々に舞と里乃との3Pに耽ってしまったリグル。差し向けたのが摩多羅隠岐奈であれば、こうして遅い朝になった理由は承知済みなのだろう。リグルは少々バツが悪そうに朝(昼)の挨拶を交わす。

お、おはようございます

朝寝も楽しんだようで何よりだね。で、どうだったかしら、ウチの子たちの具合は?

どうだった、とはどういう回答を期待されているだろうか。選択肢だけなら無限にある、答えあぐねた末に「どうしてあんなことを」と的を外した言葉を投げてしまう。

あんなこと、とは?

……ふたりとも、自分のことを〝女の子ではない〟って

肩をすくめて見せる隠岐奈。悪意を滲ませたような笑みを浮かべて、長い鉄箸で摘んだ肉を口に含む。品がないことを承知しながら敢えてだろう、噛みながらそれを口にする「豚のペニスだって」。

そりゃそうよ、ふたりとも男だったでしょう。昨日、見たんじゃないの?

〝男でもない〟って

そりゃそうよ、ふたりとも可愛かったでしょう。昨日、楽しんだんじゃないの?

〝お師匠さまにしてもらった〟って

ああそうさ。よくいたでしょう?いかにも、彼等の心身を作り変えたのは、私だよ。

まるで気に入りの着せ替え人形を自慢でもするように、摩多羅隠岐奈は、左右に侍る二童子へ餌付けでもするように箸で食物を与えながら言った。

肉体の性別はそう変わらないけれどね、頭の中の性指向は簡単に変わるものだ。幼い頃の教育と環境。初めて覚えた絶頂。共に過ごす仲間。繰り返し刷り込まれた絶頂。恋心と比較する機会のない友情。自我成長中の成功あるいは敗北の体験と密結合した性意識。そして自ら求める絶頂。簡単なものさ。

簡、単

気づいているだろう、お前は。性別なんてものは、思春期の承認欲求の結果に過ぎない解剖学的な意味を捨てようというのなら

摩多羅隠岐奈は箸を置いた。過剰なほどに装飾を施された、だが直線的なフォルムの椅子のアームレストに肘をつき、侮蔑と愛情が半々、否、双方とも満額に重ね合わせた目を、リグルに向ける。

自己愛こそ、性別の正体さ。

その証明がこの子達だ、摩多羅隠岐奈は二童子を視線で示す。里乃も舞も、自分自身の境遇を嘆いてはいないようだ。むしろ一見歪に崩れた性を、謳歌さえしているようにリグルには思えた。

肉体の特徴も、脳の形質も、精神の傾向も、関係ない。自己形成の一貫なのさ

言っていることは、理解できる。でも、ただの、自己愛だなんて

私はね。自我は、経験に基づいて選別的に養われるものだと思っている。勿論それぞれ生得の個性もあろうが、生まれ持った肉体の形、脳の器質によって予約的に決まるわけではない。そして性自認はそれに密着して育つ、性器や脳によって先天的に決められるものではない。この二人はそれを示してくれた。

人体実験だ、っていうんですか

そうでなければ、性別についてフェアな思考ができるわけがない。

人二人の人格と人生を使って、実験したのか。あまりにも幸せそうに笑いながら摩多羅隠岐奈に体を絡ませる、二童子。あの短いスカートの下に確かにペニスが備わっていた、だが機能していなかった。「実験、そうだね。むしろ証明したかったのかな、別の可能性を」摩多羅隠岐奈は、残忍ささえ漂わせた笑いでそれを口にした。

だが、多くの者はそうしない。結局の所、性別を自我の拠り所として利用しているに過ぎないからさ。そうして性の本質を解き明かしてしまって、自分自身の意味を危うくするのが怖いからさ。でも実態は、これだ。性の自由を求めながら実際にはそれを放棄し、放任主義な性の上に幼稚で潔癖な自我を生やす。無理な話さ。木の上に鉢植えを乗せるような愚かな思想だよ。

滔々とした口調の中に罵りの言葉を織り込んだ隠岐奈の声、その思想を体現し肯定する二童子さえその声色に動揺している。だがそれに対峙するリグルは隠岐奈の方を見据えたまま動じていない、それまでの態度と全く違ったのは、隠岐奈の言葉を耳にしてからだ。

そんなこと、今更過ぎて笑えないんですけど

……キミにとっては、そうかも知れないな

あなたは、ボクに力を与えるとおっしゃった。でもバックドア付きの能力なんて……

確かに。必要な能力は既に、開かれていそうだ。

はい?

キミの自我は性に汚染されていない。キミの性は自我に食われていない。故に、真に自由の性を望みうる者だ。真に欲する自分自身を目指して選択すればいい

そんな能力、別に望んでません

そうかな?

風見幽香との関係、魂魄妖夢へ口にした内容を、思い出す。それに、長年一緒にいる四則同盟カルテットの3人。長年着地点を見いだせないままの、自分自身。相手との関係。

倭文偽神あれとの決着に、は必要なものだ。覚えておきなさい

リグル・ナイトバグは苦々しい表情で隠岐奈を見る。その意味を想像して。

あなたの目的は、何なのですか。なんでボクにこんなことを

選択を間違えた者からの、せめてものアドバイスだよ。言葉くらいは受け取っておきたまえ

……気に留めておきます

§

ふーん。そんなの今更気にするんだな

ふぇっ

突然声をかけられた、女装姿のめぐる。声は聞き慣れたものだったが、場所が悪かった。

そ、そりゃするよ。パクくんだって気にするでしょ、学籍上は……

と、そこまで言って口を噤んだ。めぐるパクに声をかけられたのは、トイレの前。ちょうど男女の入り口が並んだその場所だった。女子トイレに入っていいものなのか、めぐるが決意できずにウロウロとしているのをパクが見つけたというところだった。

申請すりゃいいじゃんかよ。普通は学校生活の途中でそういう事すると芋蔓にCOカミングアウトになっちゃうから変更なんてしないけどよ。お前は違うだろ。

親には言ってないんだ

こじれてんな……。でも、校内じゃ公然の事実だろ。あんな衝撃の登校をして見せたら。もうみんな知ってる

だからって、ボクが女子トイレに入るわけには

お前その格好で男子トイレはいんの?レイプされてーわけ?学校中の非モテ男子がお前にあらぬ希望をいだいてるぜ

そ、そそそそんなわけないじゃん!

冗談だよ……なんで顔赤くなってんだ、度し難い奴だな

1年もこの学校の生徒をしているのだ、めぐるにとっては学校のトイレなんて行き慣れたものだったが、女装をしてからいこうと思ったのは初めてだった。学校のというよりも、家以外の男女別になったトイレに入るのは、初めて。教室からここまでの慣れたはずの道のりにも、どことなく緊張を感じていた。

ま、好きにしろよ

散々煽った挙げ句、パクはすてすてと躊躇なく男子トイレに入っていった。曰く、そういう道具があって、竿がなくても男性用小便器で用を足せるのだとか。

ぱ、パクくんがゆってたんだ

めぐるは自分に言い聞かせるように胸中反復しながら、女子トイレに突入(?)しようとする。その時。

おい。お前女子トイレはいるんじゃないだろうな

えぅ……って、茅野ちの

白石だ

今度は後ろに立っていたのは、白石だった。女子トイレに入ろうとするめぐるを、割と大きな声で呼び止めた。小さい頃の記憶ではいつもだったように記憶しているが、この学校で再会してからは、めぐるにとって白石はあまり大声を出すような印象はなかった。

女のカッコしたってお前は男だろ、男子トイレいけよ。

でも、ぱ……恵谷だって

危うくパクのことを口にしそうになってしまったが、すんでのところで止めて別の例にすり替えることが出来た。

あいつは、生まれつきああなんだよ。お前みたいに途中で思いついたみたいにトランスジェンダーの真似してる奴とは違うんだよ

お、思いつきでやってるんじゃないよ

はぁん?

白石の目つきが沈んだように鋭ぐ。

お前さ、女子トイレに行けたら女として認められた証拠、みたいな勘違いしてる?

そんなんじゃないけど、パクくんが……

ハァ?

もともとは男子トイレに行くべきかと迷っていたのに、パクに言われて女子トイレにしようかと、まだ迷っていただけだ。めぐるは理不尽な扱いに腹立たしさを感じた。だがパクに言われてきたことを茅野ちのに言ったところで言い訳にしかならない。

とはいえ。パクに言われて女子トイレに来る経緯には、白石の指摘が刺さる部分も確かにあった。男女が明確に区別された場所へ、望んだ性として立ち入る。使う。それこそが、望んだ性として認められたという実感になるだろうし、めぐるもそうしたいとの思いがあって迷っていたのだ。それが、余計に腹立たしい。

だが白石はそんなめぐるを一蹴にする。

ちんちんついてる奴は便器の前では男なんだよ。トイレなんて心を持たないただの物質だろ。物質ってことは体と同じなんだ。便器の前では心は関係ない。妙なお気持ちを持ち込むな

恵谷はいいの?

だから

呆れたように溜息を吐く白石。次に出る言葉はめぐるには想像がついた恵谷は昔から……生まれつきそうだからいいんだ、と。

昔っから心身の性が不一致だったって診断があればOKで、自我を以て女の子になりたいと願うのはただの甘えだからダメって、そんなのずるい。

生まれたときからトランスジェンダーなんて、どこも幸せなんかじゃないだろ。馬鹿か?

馬鹿って、だったら……

白石に指摘されたことは正しくその通りだとめぐるにも理解できたが、その道理を理解してさえ、彼の胸中に沈殿した泥濘はその無理の筋に流れ込んできて、思考を覆い尽くしてしまう。

だったらボクのこの常に崖っぷちに立つような焦燥は、日に日にどうしようもなく磨り減っていくこの消耗は、どんなに心を砕いて体を折り畳んでもどうしても社会と噛み合わない障壁は、生得でないから偽物で、ボクが自分で作り出したファッションだっていうの?

言葉や理性で整理の出来ない、それは呪のような欲求。この歳に至るまで処理できない、腐敗させてしまった非常識な彼の要求。

知らないよ。昔っからそうだよね。自分のことを周りのせいにして、自分を受け入れてないのは自分自身でしょ

そんなの、差別だ。ボクだって……こんなに……

吐き出したいのはめぐる自身だったのかもしれないが、それは彼にとって既に全き異物ではなくなっていた。拒絶と同化の双方を思い知り、病巣への嫌悪と共存を受け入れるしかなくなった心身を、彼が一番問いかけたいと願っている。世界に。

あの人達が望んでるのは、生まれたときからだってことじゃないでしょ。ってこと。つまり、こうなる前の、普通の男だったお前だよ。血迷ってんのか?

じゃあどうしてボクのはただの〝甘え〟になるのさ、おんなじなのに!そんなものまで早い者勝ちなの!?

そうだよ

そんなの……!

手遅れなんだよ、性別を決めるのに、あたいらの歳はもう。

……不平等だ

ああ、平等なもんか。お前が捨てたがってる〝男〟を欲しがってる奴だって、きっといるんだ。平等なもんかよ。もし世界が平等なら、訳あり生徒だらけのこんな夜間学校なんて、ないだろ。人間は元から不平等にできてるんだよ。

乱れた感情は撚り合わせても紡ぐべき言葉にならず、めぐるは失語のように声の無い喉を開いて苦しそうに表情を歪めている。

この学校来て、お前がいたときは面食らったけどさ。かわってねーのなー、って思ったよ。あーあ、よかったよ、あたいは身も心も女で一致しててさ。

元はと言えば、茅野ちのが……

あたいが、何したっていうんだよ

だっ、しょうがっ……茅野ちのが、だって、ボクっ……

めぐるが暗に指しているのは、彼の記憶に突き刺さったままの、幼い頃の出来事だ。白石も記憶には残っているようだがその捉え方は全く違うらしい。

そんな経験なぁ、別にお前の心ん中がどうとか関係なく、多かれ少なかれ誰でも喰らってんだよ。あたいだって喰らったよ。でも、誰かとか何かのせいにしても、なんにも変わんなかった。だからこんな場所にいる。そいつは自分の問題だ、自分で処理しろ。毎晩、してんだろ?

恨みとも呪ともつかない思念を抱き続けてきためぐるに対し、白石は幼い頃のただの馬鹿な出来事の一つとしか捉えていないようだった。それが一層にめぐるを追い詰める。彼の理性の中にも理解はあるのだ、いつまでもそれを〝今〟に置いておくべきことではないことくらい。だが彼は未だそれを整理しきれていないし、その理性と感情の錯誤が彼の沈降を後押ししていた。

統一への欲求、分離と反転への希望、混乱、恨みと諦め。女の格好をしながら、めぐるはとうの昔に声変わりを通り過ぎてしまった軟骨塊の突起が上下する喉を、両手で隠すように押さえる。言葉として形成されない感情を喉につまらせて咽いでいた。

折れ曲がったその背中に白石は、一言吐き付ける。

甘ったれんなよ、量産型メンヘラもどき

彼女の顔こそ彼の方を向いているが、視線はその方へ向けられていない、避けるように。苦々しい表情、もう一言追い打ちをしようと開かれかけて、小さく閉じた口。わずかに悲しげな目。それは単にめぐるを気味の悪い性不全男子と嫌悪するものではなかったが、めぐるはそんな白石の様子を知る由もなかった。

§

だって、だって、僕は……わた、しが欲しいんだもん

白石がいなくなり、人の目がない僅かな隙にめぐるは、女子トイレの個室に飛び込むように入り込んだ。そのままトイレの個室の簡素な鍵をまるで命でも委ねるかのように、もう何分もずっと、押さえ続けている。誰にも入ってきてほしくない、自分がここにいることを誰にも知られたくない。入ってしまったことに後ろめたく、だが同時に外に出ることさえ出来ずに縮こまるしかなくなっている。こんなはずではなかったのに。

どうして、こんなに

怖いのだろうか、ここにいることが。望んでいたはずなのに。望んで女子トイレに飛び込んだはずなのに、女子トイレの個室にいることが酷く惨めに思えていた。逃げるようにここへ飛び込んでしまったことに、まるであとには引けない悪事に手を染めたみたいな冷や汗を流している。震えている。恐怖が、ここにあるなんて彼はつゆも想像していなかった。

茅野ちのの、せい……茅野ちののせいで……

この恐怖を自分に植え付けたのは、またしても白石だと、めぐるは自分に言い聞かせるように胸中反芻していた。そうして自分に言い聞かせないと、自分の欲求にさえ自身をなくしてしまいそうだったから。

女の子になりたいと、曇った空が急に晴れ渡るような鮮烈な納得感があったはずなのに、それでもこれは間違った行為だと自分の理性は未だに拒絶している、自分で言い聞かせないと、自分で誰かを敵として定義しないと、それを維持できないくらいに。白石を、その〝敵〟にしてしまうのか。

どうしてこんなに、泣けてくるのだろうか。めぐるは鍵を手で抑えながら、肩を震わせて声を殺し、噴き上がろうとする感情にどうにか蓋をして……殺してしまいたいと願っていた。

この迷いも打撃も確かに白石のせいだが、白石の言うことが間違っていないことも、理解している。理解してしまっている故に、自分の抱いた要求を自ら非人道的なものと捉えてしまっている歪さを、整理できない。

ここに入れればきっと新しい自分の扉が開けるだろうと思っていた。いや、確かに開けたのだ。だがその扉の向こうにめぐるが見出したのは、楽園ではなかった。

履いてきたスカートが、急に冒涜的なものに思えてきていた。白石が言ったとおり、世のMtFの願望は、MtFとしてパスすることなどではなく、女性として自己を確立することだ。トランスジェンダーになることを望む人なんて、いないだろう。

僕は、また、中途半端なのか

でも、今更、引き返せない。女装して登校したとか女子トイレに入ったとかそのことではない。

僕は、こんな僕に、なってしまったんだ。もう、引き返せるわけがない。

半端者としての自分を、許容してしまった。逆になりたいと願いながら、望んでいたのは結局、半端者の成れ果てであったと痛感する

個室の隅においてあるゴミ箱のような小さな箱。女の子達にとっては手のかかる面倒事でしかなかろうが、めぐるにとっては、その箱が手の届かない宝箱のように思えた。同時に、こんな物まで美化してしまう自分を、女性を侮蔑する存在であり汚らわしく認識している。

……別の場所に行かなきゃ、ダメなんだ

こんな中途半端な自分を、隠しきれる場所に。過去も、自分の中身も、全部隠しきれる別の場所で、生まれ変わらないと。

過去の自分、今の自分を知っている誰かがいる世界では、白石の言う通り自分が「トランスジェンダーのマネを始めた甘ったれ」でしかないことが知れてしまうのだと、めぐるは思い至る。女性化願望が真性であるのかの疑問が拭えていないこともそうだ。人間関係と過去を全く関知しない新しい世界で、過去や履歴が綺麗さっぱり存在しない、隠しおおせる、全く新しい自分として生きていかないと「中途半端ではない存在」へ飛躍できない。そんなふうに考えてしまう。

学校社会は、そういう点では、最悪だった。

学校は、ダメだ……もう、居場所が……

トイレの個室に駆け込んでなりたい自分を証明するつもりだったのに、扉の外は自分を甘えたガキだと見ている剣山地獄だと気づいてしまった。ここから出る勇気がない。この狭い場所に引きこもりたかっただけなのか。めぐるはずるずると崩れ落ちる。

恵谷という王者がいて、事情を知ってしまっているパクがいる。自分の過去をすっかり知っている白石もいる。そして、自分を男とバッサリ切り捨てた、風間。学校という閉鎖社会は、変化を受け入れない。たった数年という短いスパンだが学校という社会は、人の時間を連綿と続く消えない線で描いてしまうし、人にもそれを求める。知れ渡ってしまう。新しい自分での再出発は、出来ない。

ここではないどこかを、生きなくちゃ……

トイレの床であることも厭わずうずくまりながらも、恐怖に似た感情が手を伸ばし鍵を押さえる続ける。震えと涙が収まってトイレの個室を出られたのはそれから随分と経ってからだったが、めぐるの足は教室へは戻らず、そのまま新宿へと向いていた。

そうして今、彼は自分を女として買ってくれる男の間を点々としながら、躊躇なく既に幾つかの夜を過ごしていた。

§

……なんて過去は、もう振り返る必要がないんだ、ここでは

男にケツ穴をくつろげ見せつけて、淫蕩に唇を舐め濡らしながら少年めぐるは、救いにさえ近い安堵感を覚える。ストレスから解放されたセックスは、麻薬のように彼の脳髄に染み入ってくる。何度目かにもなる男娼行為は、女子トイレに入るのなんかじゃないくらいに彼の自己肯定感を満たし、全能感を刺激した。

僕を、女として欲しがってくれる人がいる。優しいし、お金までくれる。僕を認めてくれる

法的に犯罪であることを差し置いても、売春が道徳的に望ましいことではないことくらい、彼も理解している。だが、その道徳とやらが自分を全く救ってくれないことにも気付いていた。救いをくれぬ神を信仰することはできない。

彼にとってはラブホテルのベッドの上の僅かな空間が、それ以外の世界全てをあわせたよりも圧倒的に広いように、完璧な世界に思えた。そしてその上では、自分こそが神なのではないかとさえ、思えてしまう。抑圧されていたからこそ解放された陶酔は深く、泥濘んでいる。それでも、その泥の中に潜む疑いの種は頻繁に顔を覗かせその度に、彼の心臓に冷や水を浴びせる。それを意図して無視するのが、今や彼の取り得る最後の選択肢だった。

おしりおまんこ、どぉお?

自己陶酔を許される場所、彼は安息の地をここに定めた。ここから出たくない、この上にいる自分と、自分を認める誰かとの、極端で明確なそして肯定的で甘い関係。

めぐるの姿勢は股を開いた四つん這い、勃起したペニスから期待の涎が溢れている。だがその肉棒が期待するのは自身への摩擦ではない、尻穴越しに沸き上がるように内側から届けられる、マグマのようなメス快感への期待だ。全能感への、逃避。

細いのにすとんと落ちたメス男子特有の柳腰、少年を買った男のごつごつした岩のような手指が、白い腰から延びる、こちらは男らしからぬ豊満な曲線で描かれた桃尻を掴み、割れ目を押し広げている。「クンニ、して」と裏返ったメス男声で男を誘うと、誘われるように割れ目の奥に見えるオス淫唇に舌を延ばした、男は躊躇なく吸い付き舐め回す。

敏感に育った肛門は、男の舌の動きを逐一理解できるほど。そしてその一つ一つに快感を覚えるように発達していた。

あぁん

蕩けるような表情で目を細め、自分の尻に口付けるようとする男の方を振り返り見る少年。ホモセックスにすっかり慣れて肉厚な縦割れ肉スジに育った少年のアヌスは、あっという間に男の愛撫の前に媚び始めた。括約筋を揺らしてヒクついたヒダ肉は柔らかくほぐれ、呼吸をするように蠢いて男の性を誘っている。それどころか

うわ、愛液みたい

男の舌がほんの少しほじっただけで、その穴は自ら蠢き口を開閉させる。まるで別の生き物がそこに潜んでいるようにヌメり動くと、くち、と小さな水音が聞こえた。

欲肉を詰め込んだ女みたいな淫らな梨型の尻、まるで男のそれではない。尻たぶ肉が柔らかく左右に開き、中央にはヒクついて焦がれる穴。大きな穴は広がれば丸、閉じたときには縦筋に姿を変え、少し肉がはみ出した入り口は淫乱女のハミ肉ラヴィアのよう、乱暴に使い込んでいる正真正銘のオスまんこだ。

リグルちゃん、まだ○学生だよね?○学生男子がこんなしてていいと思ってんの?

お尻デビュー1年でビラビラケツまんこの完全淫乱メス男子になっちゃっててごめんなさぁ〜い

少年の縦に割れた肛門を押し広げた男の舌に、自分の唾液ではないヌメりのある液体が絡みついた。腸液、なのだろうが、それは本来こうして糸を引くほど潤い濡れるものではない。こうして若い男を他にも買ったことがある男でも、こんな女陰じみたアヌスは初めてだった。

少年の、特異体質とでも言うものだろうか。彼の菊門は男の愛撫にいっそう過剰に応える。まるで本当の、性欲に濡れそぼった女性の陰部、いやそれ以上のだ。

でも、私これのおかげで色んなおじさんにリピしてもらってるんだあ

カイく……リグルちゃん、〝ケーケンホーフじゃない〟んじゃなかったの?

経験は少ないけど……才能ってやつ?

スケベ才能じゃん?

やぁん

でも確かに、これ、すっげ……女よりエロいわ

男は、しつこく執拗に、少年の肛門を愛撫し続けた。唇をつけ舌を這わせ、指でつついてはほじる。とろりと溢れ出す偽愛液を、わざと鼻を鳴らして嗅いでみせる。

やだぁ、ヘンタイ

こいつは完全に牝のにおいですわ

でぇ……このを、おじさんはどうしちゃうんですかぁ?

挑発するように男を見るリグルに、男は「じゃあ」といって人差し指を一本、彼の肛門に触れる。異物モノの挿入に備えていたその端肉は、本物の女の淫唇のように柔らかくほぐれ内側の粘膜で締まっている。男は、縦割れに変形し偽愛液でぬめった牡ラヴィアのびらつきを触り回しながら、時折その中央の穴へ指先を押し込もうと突く。まるで扉の内側に、開けてもいいかノックするように。

んっソコぉ……はやく、欲しいよぉっ

めぐるは猫撫で声でノックに応えた。声だけではない、突かれた尻穴に力を込め、奥に広がる牡膣を開いて晒して受け入れ体制をアピールして見せる。偽愛液で潤い糸を引くピンクの粘膜肉がヒクついている。幾度も男を買ったり家出少年を食べている男でも、こんなに仕上がったオスマンコは見たことがない。極上に違いないアヌスが、男を誘った。

このケツマンコ、エロすぎでしょ。マジでメス売りするためのオトコノコって感じ

えへへ

男が指を押し込むとリグルのアヌスは抵抗なくそれを、舐め回すようにヌメ摩擦しながら飲み込んでいく。

入り口から浅いところまでは柔らかく抵抗のない肉ビラだというのに、指の第一関節ほどまで入ると指先に急に弾力のある窄まりが現れる。奥はくんっ、くんっ、と跳ねるように動いていた。男は指先を小さく動かして指を更に押し込んでいく。

んっ……

僅かな抵抗を見せた後、弾力肉の隙間がぬるりと奥へ指を導いた。通り抜けた指を、強烈な締め付けが迎える。肛門括約筋の動きが常軌を逸している、女性化の妄念が彼の体をこうまでしたのだろうか。

リグルがそう望んだのがこの空間だ、彼の過去や望みの深さやその崇愚など男には関係がなかった。男の関心はは、ただ目の前にあるオナホが過去にないほど上等だということにしか向いていない。

うわ、前立腺、浅っ……ていうかでかい?形わかるわ

でしょ〜……ぅん

男の指が第二関節ほどまで埋まると、そこに埋まるようにシコり膨らんだものがあった。前立腺と察した男は過剰発達した腺姿を撫で回し揉み込む。

っんそ、そこばっかりぃ……っ

ここイジメてほしいんだろ?

イジメてほしいんじゃないよぅ、可愛がってほしいの

おーおー、こんなビッチショタみたことねーわこんなコスプレまでして、男に掘られたいわけ?

……うんあっ、そ、そこっ

男の指はリグルの様子を窺いながら、徐々にその力を強くしていく。乱暴に、だが的確に少年リグルGスポット前立腺への刺激を強める。

このおじさん、指、上手っ……慣れてる……っ

ケツ穴をホジられながら、リグルの吐息はピンク色に染まり、湯気立つほどに熱を帯びて犬の呼吸のように浅く細かくリズムを刻んでいる。四つん這いで尻を上げた姿もまた発情した犬のようで、見えないだけの尻尾を振っていた。頬を染め、鼻の下をのばし、ペニスを床にブラ下げながらオスを欲するメス犬少年

リグルちゃんのアナル、女の子のまんこよりエロいよ。こんな膨らんだ前立腺じゃ、ケツにちんぽ入れてなくても、もういっつもケツイラしてるんじゃない?

うん四六時中おちんぽハメてもらうことばっかり考えてるよね、女の子でしょでも、早くもっともっと女の子にしてくれないと、今ここで男に戻っちゃうかも……ねえ、早くを女の子にしてよぉ〜は・や・く・ぅ

わかった、わかったって。ああ、こんなスケベ穴見せられたらこっちだってもう我慢キツイしもう入れるわ

ペニスの先端からはとろとろと先走りが垂れ滴っている、前立腺を刺激されたメス快感で、溢れ出していた。メスを自称する少年の小さなペニスの先端から糸をひくほど大量に分泌された透明な液体は、勢いこそ無いが止めどなく溢れ、ベッドへ断続的に幾筋も糸を落としている。白い布地にはちんぽ愛液のヌメ溜まりが幾つも出来上がっていた。

前戯は終わり、と男はリグルを四つん這いに倒したままバックから少年の尻肉をかき分け、中央でピンクの舌をはみ出すほど発達した肉菊へ、フルサイズ勃起したペニスを無遠慮に押し込んだ。

〜〜〜〜きた、きたきたぁアツアツのおちんぽ、私のオマンコの中に入ってきたぁ

熱いのはリグルちゃんのオマンコの方だって……ヌルヌルなのにうっは、締付けやっば

どーお?私のオマンコ、本物の女の子よりずっと気持ちいいでしょ?

指のときと同様に、にゅるん、と先端は抵抗なく、そして中程でキツイ締付けを見舞うリグルのオトコマンコ。きゅっ、きゅっ、と締付けと弛緩を交互に繰り返しながら、男との結合を喜んで見せる。

中でなんかビラビラしたのが引っかかって、カリんところに絡みついてくるんだけど……フェラで舐め回されてるみたいだし、なのに肛門締め付けマンコよりエグ……。これ、チンポ用射精に作ったオナホとおんなじだって、ケツハメ用の尻だわ

オスホモセックスって、ヘテロセックスより気持ち〜よね私のおまんこ知っちゃったら、もう女の子とのセックスに戻れないよ私のお尻、セックス用の性器なんだからもっとオマンコ締めちゃうね

ハイハイ、性器性器……うぉっ……やっば……

あ、出そう?もう出そう?ねえ今射精我慢したでしょ??

正直、めちゃ気持ちいいわ

遠慮しないで中ドピュしていいのに〜今日安全日だからぁ、なんてね

あんまチョーシ乗るんじゃないぞ?

え〜、調子ってぇ?私のおまんこにオチンチン飲み込まれてもう早漏キメそうだったおじさんが、今完全にアドとってる私のオマンコを、どうするっていうんですかあ?ううん、いいんですよ?私は、早漏おちんちんでもぜんぜん大好きですから

ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ!

ひゅっ……は、あっ、あ

じゃあ、大好きなチンポでメスイキしとこうか

男は声のトーンを一つ下げ、だがその低い声からは雄々しい獣性が滲んでいる。それの声を耳に流し込まれたリグルは、きゅんっと心臓を高鳴らせる。

おじさんの、逞しい男姿。それを期待して体をひねるようにして男の方を見ようとする。だが、彼が振り返り切る前に男の腰が暴れ始めた。

どすっ、どすんっ!ばすっ、ばすっ、ばすっ、ばすっ、ばすっ!

ごりゅっっっっ!!

っ……?

ずぼっ、ずぼっ、ずぼっ、ずぼっ、ずぼっ、ずぼっ!!

指でそうしたように、彼の前立腺を探り当てて的確に攻める、ようなやり方ではない。ただ自身のチンポ摩擦を優先して腰を振り、打ち付け、リグルの快感など二の次。乱暴に行き来するペニスが偶然前立腺の膨らみを擦っているだけの、射精に猛然と向かう腰振りだ。でもその無遠慮で思慮のない横暴な腰使いで前立腺を下方向に打ち付けてくる男のペニスに、リグルは爆発するメス快感を注ぎ込まれた。

びくんっっ!びくっ、びくびくっ!!

一瞬でメスアクメに達する、少年の脳。

〜〜〜っは、へはっ……い、イッちゃ……っ

だが男は腰振りをやめない、イッていないからだ。先にアクメをキメたのは、挑発していたリグルのケツ穴の方だった。

ぬちゃあぁぁぁ……

男に掘られ、激しいチンポ撹拌で開いたままになった肛門が、偽愛液で泡立っている。

半勃ちのまま先走りを垂れ流し、剰えベッドに軽く亀頭を擦った刺激で薄い精液を吹き出していた。

幸せの絶頂とはこのマヌケ顔を言うのか、そう思えるほど心地よさそうな表情。知性を欠落させ、顔面の筋肉が弛緩しタルんだ白痴顔を晒すリグルは男のペニスピストンを尻穴で、前立腺で、ありもしない想像上の子宮で、卵子を作れると信じ切っている睾丸で、感じ悦んでいる。アクメ波の引かない痙攣に、さらにメスイキ快感を上被せてくる男に向かって、理性をすっ飛ばした本能が〝すき〟をぶちまけ続ける。

ぴゅっぴゅるっぴゅっっ

男がペニスを突き入れる度、それに押し出されるように、ほとんど透明な薄い精液が噴き出す。女を孕ませる意志を失ったメス化済ザーメン、粘性の低いカウパーとさほど変わらないサラサラの精液は、男へのメス媚宣言だった。

好きっおじさん、しゅきぃっ私、セックスでおじさんのこと好きになっちゃいましたっだいしゅきっおちんちん、ラヴなのぉっ

ケツマンコでマジイキするスケベショタ、おじさんもすきだよマジでリグルちゃんみたいなのが少子化推進してるわ。繁殖力ゼロのちんぽで、繁殖欲旺盛な男のちんぽを誘惑して受精機会を喪失させてるんだからさ。犯罪でしょ。リグルちゃんみたいな可愛いショタってさ、社会悪だよ。

男はリグルのアヌスからペニスを抜き取る。にゅちゅっ、と音を立てて、少年のケツ穴をオナホ代わりにしていたペニスが抜けると、その後の尻オナホの穴から、こぽ、と真っ白く濃密な精液が溢れ出した。少年のペニスから溢れ出している薄い精液とは全く別物のように見える。この圧倒的な濃度が精子の数すなわち女を孕ませる力の証だとしたら、リグルのペニスから情けなく溢れ出している薄い液体には男らしさのかけらもない。

これが〝可愛い〟の代償なのだろうか、しかし彼はそれを受け入れているようだ。

可愛いことって、悪いことなの?

リグルちゃんは、度が過ぎるんだわ。男の子がこんなに可愛いってこと自体がさ、高齢化社会を加速させる性犯罪ってこと

そんなぁ……私、ちゃんと妊娠できるもん……おじさんの繁殖本能無駄にしないもん

「いや無理でしょ(笑)ここで潰しとかないと。このスケベすぎるGスポット前立腺も、男の目の前で睾丸チリンチリンして淫乱誘惑するキンタマも、クリトリスみたいに勃起する性感帯乳首も、もう調子に乗らないように

つ、潰しちゃうの……?

クリトリスみたいに勃起した乳首、ガッシガシにしごいてさ

ちく、びっ……

男の言葉に反応して、リグルは鼻の下を伸ばした間抜け顔で自分の乳首をくりくりといじり始める。

ケツ穴の奥でぷっくり膨れ上がってスキーン腺の真似してる前立腺、ゴリゴリ押しつぶして

男の言葉に反応して、リグルは乳首をイジる手を左手だけにして、右手の指を自分のアヌスに差し込んで、ぬちゃぬちゃとかき回し始める。

ほら、そんなふうにメスオナ始める男が、性犯罪ってことだよ。ダメダメそんなあまっちょろいいじり方じゃ。今、おじさんが使い物にならなくしてやるからな。全部ぶっ壊れて、明日からリグルちゃんは男でも女でもなくなるよ。大丈夫、最後にぶっ飛ぶくらい気持ちよくなれるから

そ、そんなの……女の子やめるまえに、女の子になっちゃうよぉっ

酷いことを言われているというのに、リグルの乳首ケツ穴オナニーは乱暴が過ぎるというほど激しく速く、それに深く変化した。乳首は摘むだけではなく、痛々しく伸ばすように引っ張ってねじり、爪を立てている。尻穴に突っ込んだ指は3本に増え、まるで砂場で砂山に穴をあけるような苛烈な動きで自分の肛門を虐待していた。触れてもいないペニスから透明な汁が吹き出し、特異体質の過剰腸液尻愛液もぽたぽた垂れている。

ぐりっ、ぐりぐり、ぎゅううううっ!

ずぼっ、ずぼっ、じゅぶ、びゅぶっっ!!

はーっはあぁぁっいいよおじさんっ、私をおわらせていいよおじさんのちんちんではーっはーっガチホモセックス……

この、ビッチショタが……!

どちゅっどちゅんっ、ずぼっ、ずぼずぼずぼずぼっ!

ぐりっ、ごりっごりっ、ぐぐぐっっ、ずるっ、ごりゅんっ!

んおっっっ、ほぉんんまって、まっで……イってる、イッてる最中に、ピストンアクセルベタ踏みぃっっ壊れるっほんとに前立腺壊れて女の子のGスポットにされるっ

ぷつんっ、ぶつんっっ

額の上のあたりの頭の中で、リグルは、小さな気泡が弾けたり細い筋が千切れるような音を感じた。あるいは物理的な組織ではなく、常識やまともな思考回路、精神的な何かが弾け切れたのか。

っ、へあたまっアタマっ、なんか、終っっ……

ナマイキぶって即堕ち、振りかよって。完全にイキアヘしてんじゃん……まだ終わる気、ねーけど。おじさんイッてねーし

ふっおじさん、すっごんぁっガチガチのおちんちん……ふぁっあたってる、前立腺ゴリゴリしてくるっおじさんのちんちんしゅごいっ

男も女も関係ねえんだよ、メスはメスらしくチンポに肉媚びしてればいいんだよ、オラッ、オラッ、マンコ締めろ!

バスっ、じゅぼっ、ぱちゅん、じゅぼっじゅぼじゅぼっっっ!

ゴリゴリゴリゴリゴリっっ!

ぶしゅっ。ぶしゃあっ、ピュッ

ふぎゅっはひぇっっとぶっアタマ飛ぶっキモチイイの続きすぎて、アタマ破裂しゅるっ

ガチのヨガり泣き、いい顔じゃん顔見せろ。ほら、自分を使ってくれる男様と、正常位だ。嬉しいだろ?あー、いい顔してんな、美少女ショタコスプレイヤーが完全にマンコ顔。こうなったら男も女もねえわ。チンポに媚びたメスの立場、わかってきただろ?

そんなの、そんなのもう知ってますっ私、メスだからっおちんぽ様に媚びるメスになるのが人生の幸せだって、悟っちゃってますっグっメスにっ

このおしりおまんこがたった1年の賜物なの?

1にぇんたってまひぇんぅっぃんらんケツれ、ごべんだだい

経験少ないとか絶対ウソでしょ。ホモセ中毒なんでしょ?

ずるぅぅぅっっ……ぶぼっ、ぶずぼっっ、ずばんっ!

ぶちゅ、ぬちゅぬちゅっ、ずりゅっっ、パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!

んおおぉおおぉおんっっっ締めましゅおまんこ女の子になったおまんこ、締めまひゅっイくっ、そんな乱暴にケツハメされたら、すぐイくっ、前立腺ブッ壊されて、メスイキすりゅっっ

ずるるっ、ばんっ、ばん、ばんばん、ばんっっ!!

ぐちょっ、ぶちゅっ、ぐちゃっ、ぐちゃっ……ずぼっ!

びくっ、びくびくっ……ビクンッ

ぴゅるっ……!

気持ちよさそうだな、メス男子!そんなにメス顔してもなあ、メスイキキメまくってもお前は妊娠できないんだよ!メスってのは女じゃねえんだよ!可愛い男ってのは、可愛い男っていう性別なんだよ、メスっていう生き物なんだよ!産む機械にさえ慣れない劣等膣なんだよ、わかってんのか!?わかってんならその分チンポに応えろ、マンコしてくれる男に媚びて、チンポ乞食してろ!

はひっ……チンポに媚びますっ男様にかわいがってもらいますっ私は○学生で性癖ぶっ壊れちゃったダメ男ですっ進路指導で将来の夢に〝女の子〟って書きましたぁっ

それは引くわw

だから、だからもっとオマンコして元男のケツマンコ、ケツマンコしてくださぃっ

ったく、頭も体も、完全に仕上がってんじゃん今まで何十人のちんぽここに入れたんだよ?女のマンコなんかよりよっぽどスケベだわ

ふぅ、と腰振りを一旦止めて男は、ペニスを家出オナホから抜く。さっきよりもより絶望的に開きっぱなしになった尻穴が、もう精液なのか腸液なのか分からない粘液を泡立たせている。ごぼ、ごぼ、それは下痢便のようにだらだらと尻の穴から溢れ出してベッドを汚した。

呼吸を荒くして薄い胸板を上下に揺らしながらメスイキ余韻で動けないリグル。彼をよそに、ベッドに放ったまま休憩がてらタバコに手を伸ばして火を点ける。

部屋の壁や天井に、まだ少年の嬌声がべったりと染み付いているように見える。男は満足そうにリグルと部屋の中を見渡しながら、煙を吐き出す。

「一休みしたらまたヤるぞ」男がそう言うと、ベッドの上の少年がもぞ、と動いて男の方へ顔を向ける。まだオーガズムでふわついたままの意識と、弛緩しただらしない表情を直せていない。そのメス顔で、作ったような女声を掠れさせながら、リグルは恐る恐るな様子で、訊く。

ねえ、私っ……女の子より、女の子より気持ちいい?

え?ああ、女の子より可愛い上に、も女の穴よりよっぽどイイ

女の子よりっ、女の子よりっ可愛くて気持ちよくて、女の子よりえらいっ

連続メスアクメで脳細胞が過呼吸している、リグルはオーガズムの多幸感に溺死したままオスメスの境界を抹消しようとしている。脳内麻薬快楽で麻痺した脳はぶっ飛んだ理性と常識をしばらく取り戻すことはない。陶酔と酩酊と全能感が男への被虐思考と悪性結合して、男様を崇拝するマンコ脳に改造されていく。

おっぱいとまんこついた女より、ちんぽついた男を可愛いっていってくれるなんて……うれしいよぉ

いや僕は。学校を飛び出したときからこうなっていたのかも知れない。これが望みだったのだ。女性に対する強烈な劣等感。男に対する劣等感よりも巨大なネガティビティを、ついに御せなかった。自身が女性化すれば追いつけると思っていた。「女性以上」という甘言に、その内容を無視して縋ってしまうほどに。

僕は

もう、男も女もどうでもいいっそんなの、なんにも役に立たないっセックスすればおんなじキモチよくなれるし、求めてもらえるし、だったらその人のこと、男でも女でも好きになれるもん

ただ、負けたんだろう。

何か遠くの方で、自分の声のようなものが悲しく響くのが聞こえた。でもそれはすぐに、脳みその奥の宇宙へかき消えた。絶頂の末の失神が、それ以上の無駄な思考を切り捨てた。

彼は負けたのだろう。逃げたのか、諦めたのか。努力でどうにかできたのか、最初から無駄だったのか、わからないけど。

§

何度目かのホモセックス、何度目かの連続メスイキ失神からめぐるが意識を取り戻すと、男が別の部屋で電話をしている声がめぐるの耳に入った。人の電話を盗み聞きするような趣味があるわけではなかったが、否応なく耳が拾ってしまう単語が登場するのでどうしても汲み取ってしまう。

今日泊めた子、めっちゃ可愛いし何よりエロすぎて最高だったわ。

どうやら仕事相手や家族ではなく、知り合い、それも男と同じような趣向の人間らしい。

「可愛い」「エロい」という評価が自分に向いているものだと察して、めぐるは嬉しくなる。それを嬉しいと思う心を、体の方が、作り上げていた。

だが、嬉しく思える言葉の登場も、ここまでだった。

やっぱ男だよな、女みたいにめんどくさくねーし、生でヤっても妊娠しねーし。大体、穴の締まり方なんてマンコの比じゃねーしさ。ケツ穴しかねえから、女と違って絶対アナルさせてくれるしよ。女の代用品として最高。

女の代用品……

彼は女になることを望んでいた。代用品にしかならないことも、おそらくはそうなのだと、わかってはいた。でも隠すことなくその言葉が飛んでくると、その覚悟がまだ薄いものだったと痛感してしまう。こうして自分の体と夜の時間を金を出してまで買う男達は、自分を正真正銘の女、もしくは可愛い男として確立された別の存在として嗜好されているものだと、信じたかったのだ。

それが、少年が、自分の性を自分のものとして捉え、その上に自己認識を確立するための、いわば〝最後の手段〟だったから。その歪さに気付きながらも敢えて無視して、この数ヶ月をやってきたのだ。

ま、可愛い男なんて賞味期限短いけどさ。家出ガキなんて長く付き合うわけじゃないから、むしろ丁度いいわ

……賞味期限、か

自分が、他人から可愛いと評価してもらえる外見を維持できる時間が、そう長くないだろうことも、男性同性愛のweb情報や本を見て、想像していたことだ。若くて新鮮なうちは女の子に見えていた人も、年老いると「おじさん」へと変貌してしまう。いくら取り繕っても、隠しきれないのだ。せめて「おばさん」であってくれればまだ救いだったというのに、女性らしい外見を維持したまま「おばさん」へと歳を経る「男の娘」は、ほとんどいない。それも、今という刹那を必死に生きるめぐるにとっては、目を背けてきた都合の悪い事実だ。

僕の〝性〟には、時限がある。そんなのは、わかってることだ。それでも、それでもなんだ……

めぐるは精液臭い布団を被って、男の電話の内容を効かないように耳を塞ぐ。だが、最後に聞こえた言葉はもう、決定的に彼の心を叩きのめしてしまう。

紹介しとこうか、まだ絶賛家出中だってさ。大丈夫だって。女の子だね女の子だね、っておだてとけば何でも言うこと聞くからチョロいしwww

もうこのとは、セックスできそうにない。その夜、電話を聞かれていたとは知らない男がもう一度リグルを求めてきたが、めぐるは「もう疲れた」「お尻が痛い」と適当にそれを断った。

疲れていたのは嘘から出た真だったようで、男が要求を諦めたのに安堵した瞬間、めぐるは急激に睡魔に誘われた。それに抗う理由はない。

寝れば……忘れられる。また明日からやり直すんだ。別の人なら、また僕を、買ってくれる……認めてくれる……から……

「可愛い」を克服するのにはもう少し時間が必要だめぐるはそのまま眠りにおちた。

§

〝カイ〟って、あんたのアダ名?

身元確認連絡の映像通話を終えたときに、不意に声をかけられた。

……風間?

彼女だとわかったのは、辛うじて声と特徴的な目のおかげだった。それ以外に今、目の前にいるのが風間優香だと知らせる要素は、なにもない。ストンと落ちた厚めシルエットのボトム、オーバーサイズアレンジされたシンプルなジャケットの下には、ラフなTシャツ。短めだけど重さを残したマッシュは、襟足を刈り上げるほど短い。化粧っ気はなく、鋭いのに気怠げな目にだけうっすら囲い込みメイクを落としてある。どう見ても、男の人だ。胸も何かを巻いて潰してあるらしい、肩幅が女性である以外は、胸板がある男性の上半身のように見えた。

しばらく学校来てないと思ったら、こんなとこにいたんだ

関係なくない?

無いけど

虚勢を張るめぐる。ここでキョドっては、自分が後ろめたいことをしている自覚があると申告するようなものだ。せめて言葉尻だけでもと跳ね返すように返答するが、器が違いすぎた。先に相手から目を逸らせてしまったのはめぐるで、風間優香はめぐるのことを品定めでもするように頭の上からつま先まで舐めるように見が。

ふーん、可愛いじゃん

え……あ、ありがと

スカートはいて女装して、地雷じみたメイクまでして、剰え男に体を売った後、更に次の男と連絡を取っていた自分をクラスメイトが……好きな女子が、まっすぐに見ている。自分を可愛いとまで言った。しかも、どう見ても意図的に男の格好をしている。結局虚勢を張ることも出来ず、すぐに動揺してしまうめぐる

か、風間、も、えと

可愛いって?

ち、ちがくて!その、男子っぽい

……もう少し言い方あるだろ

腕を組んで、呆れ顔の風間。なんだそれ、と自分でも思うような言葉が口を出てしまい、めぐるは慌てふためいた。

この姿を一番見られたくない人だったかも知れない。その反面で「もっとこの姿を見て」と思っている。振られたあのあとから、めぐるは風間の方を直視さえ出来ず、その姿から逃げるようにさえしていた。だのに、今はこうして、向き合うことが出来ている。それは、自分が欲しかった自分の姿を、今は望み通り着ているからだ。ある意味で自信を得た、歪んだ自信であることくらいは彼も承知している。

風間は、なんでこんなところにいるの?

あんたとおんなじだよ

えっ、風間も、ウリしてるの?

はあ!?そんなことやってるの?!私はデートだけだよ。うわー、売ってるのかよ。引くわー……

え、ひど……

はははははは、冗談だって!誰だって買ってもらえるなら、それくらいするよなあ!?引いてねー、引いてねー!まあ、私はカラダは売んないけど

え、あ、うん

彼女ほど一本軸が通っていそうな人は、自分の居場所を確認するためのセックスなんて必要ないのだろう。僕とは人間そのもののが違う、めぐるは風間を見て素直にそう思った。

〝カイ〟かあ。ありふれてて案外特定されないのか。私はユウカでやってるよ、そのままだろ

え、でも、それって男の人の格好でしょ?

別に中身まで男になるつもりはないし。私は女として、女が好きなんだよ。

デート時間のレンタルが終わって、もう家に帰ろうというところなのだという。相手は当然女性なのだろう。

中身を変えずに、女性を好く。それをさも当然のように言う風間が、めぐるには驚きであった。自分の尺度で考えて、レズを自称する風見は当然性転換を望んでいるのだろうと思っていたのだ、自分と同じように。だが、そうではない、という。ヘテロセクシュアルの神話からこぼれ落ちた自己をそのまま保ちながらアブノーマルな性指向も同時に認めることは、今のめぐるにとっては矛盾にも等しいことだからだ。

だが風間との差異に対してめぐるには、敵対心や嫌悪感はまるで生まれなかった。むしろその逆、尊敬の念さえ湧き上がっている。

すごい、ね

すごくねーし

すごいよ

めぐるがあまりにも真っ直ぐにそう言うものだから、風間は面映そうに目を逸らし慌てて話も切り替えた。

た、たまには学校来いよ?パクが寂しそーにしてるし

全体的に辛い学校生活だけど、めぐるにとってパクとの友好関係だけは救いだった。あんな事があって、まもなくこうして登校をやめてしまったのだが、彼(女)に余計な心配をかけていないかだけは、少々気掛かりだった。

あと、恵谷も残念がってる。

恵谷かぁ

なに。あいつ苦手なの?

そういうわけじゃないけど

ああ、嫉妬してるのか

……っ!

図星を突かれて、しかし何か言い返す言葉を持ち合わせていたわけではないめぐるは、そのまま唇を噛みしめるように俯く。今の自分なら恵谷とも向き合えるのではないかと内心思っていたが、嫉妬から悪性変化した苦手意識は、彼の心臓に棘のように抜けない。

し、白石は……

白石?影薄いからよくわかんないわ

風間より、恵谷よりパクより、本当に後ろめたいのは、白石に対してだった。こうして登校拒否を続けている直接の原因は白石とのやり取りだったことに間違いはないが、それは彼女に非があることではないことくらいは、めぐるも理解していた。

だが心のどこかでは、登校出来なくなった自分に対して申し訳なく思う感情を抱いて欲しいという歪んだ感情も蠢いている。白石の状況を聞いたのは、恵谷が残念がったり、パクが寂しそうにしているというのと同じように、自分の消失で変化が生じていて欲しかったからだ。つまり「ああ、なんか知らないけど、あいつも学校に来なくなったな」などという回答を期待してしまっていたのだ。めぐるはその気持ちの悪い復讐心を自覚して、胃の中の物が遡ってくるような感覚に襲われる。

……ていうか、人に聞かねえで自分で確かめろよ

わるかったな、呼び止めて。と風間は話を切って、切り上げようとする。その背中を、めぐるは声一つ、呼び止めた。

風間!

風間が振り返る。以外そうな顔、恐らくめぐる自身が想像していたよりもずっと、大きな声になっていたようだ。

なに?

……女とだったら、付き合える?

は?

私が、女だったら

ああ、少し昔を思い出すような仕草でめぐるの言葉を受け取る風間。「自分と付き合えるのか」めぐるが最後まで口にする前に、彼女は拍子抜けするほどそっけない口調で、返答を割り込ませた。

いいよ

ほんとに女ならな

う……

風間はめぐるを再び値踏みするように見る。さっきは女装姿の出で立ちを、そして今度は、内面まで試そうという怜悧な目線で。からかっているような表情では、なかった。この目は、知っている。白石がめぐるを見るときのめと同じだった。だが、その視線が彼を焚き付けた。それは意外にも、怒りだった。

風間だって、ニセモノじゃないか

あんだって?

中身まで男になるつもりはないなんて、女として女が好きなんて、逃げてるだけじゃないか。だったらなんで、男の格好しているのさ。女の子の格好のまま、女の子と付き合えばいいじゃないか

めぐるからニセモノ呼ばわりされた風間は語気を荒らげて反論する。

一緒に歩く女が、この方がいいっていうんだよ。私一人の問題じゃない。お前みたいな自己満野郎と一緒にするな!女と付き合うには、男の格好するしかないんだよ

なんで他人のせいにしてるの?自分で決めてない性別の方こそ、ニセモノじゃん。

知ったふうなことゆって……

知ったふうな。その通りだと、めぐるは思う。

男か女かなんて、ただの自己満足じゃないか。

知ってしまったのだ、この1、2年の間に。〝性はあっても、性別なんてものは存在しない、ただの思いこみだ〟と。

はぁ?何言って……

性別なんて自己愛の手段だ、他人に侵させて堪るか。風見のは、そうじゃないの?

めぐるが突然に語り始めた性別観を、風間は呆気にとられながら聞いている。同じ発音の言葉が、まるで全く違う意味をもっているのを交互に見比べているときのような、驚いたような戸惑ったような、そして僅かな呆れと。「えっと、あー……」風間はまとまらない感想を無理やり握り丸めて放り捨てるように、口を開いた。

おまえ……思ってた以上に、キモいな。

ははっ、めぐるはまるでその言葉が自分に向けられた侮蔑ではないかのように、他人事じみた笑い声を上げる。その様子もまた、風間にとっては一種異様な反応に見えてしまった。

だがそうして目の前の女装男がなにか宗教信心じみたものを唱える姿は、風間の目に、ただ自棄糞に賢しらぶっているようには映っていない。理解しがたいその信仰は、恐らくレールを外れた奈落の底に途切れたものではなく、自分にはまだ見えない透明な階段を登り終えた境地なのだと。

でも、すげえよ

すごいものか。こんなものはただの、逃げ続けた結果に残ったただ一本の退路にすぎない。めぐるは胸中自分を嗤う。

でもさ

うん

付き合うのは、やっぱ無理

……だよね

ぷっ、はははは。

あはははあ。

短い沈黙を置いてから、どちらからともなく、二人は急に笑い始める。

笑い以外に共有できるものは、二人の間にはそう多くはなかった。

§

アカボシゴマダラに窶すとは、常世神の凶事をなぞったつもりか

期待していた声ではなかった待っているのは男の声だ、こんな女の声ではない。しかしこの横柄な抑揚で飾った口調に女にしては低い声を、よく知っている。

リグル、じゃ、ないねあぁら、これはこれは

こんなところまで、何をしに来た。

枝から垂れ下がる果実に鼻先をつけその芳香を愉しむ姿を翻して声の方を向く。決して大柄ではない体をまるで聳える山のように感じさせるオーラは、どのような人間にも忽ちに崇心を芽生えさせるだろうがしかし、彼はそれが虚飾であることを知っている。尾はないが狐とも狸とも紛ういかがわしく猜疑を禁じえない目付きにあの声。「ふん」鼻で嗤う。

何をしに来たかと問われた蝶の羽が揺れ、振り返った姿は声の主をまるで迎え撃つかのように振る舞った。

それはこっちのセリフだよ。天寿国が、まさかこんなところだなんてねえ。もう少し綺羅びやかな場所だと思っていたなあ

ここは天寿国などではない尤も、皇子の魂を縛り付ける場所であることに変わりはないがな。呪詛だろう。

エタニティ・ラルバの前に現れたのは、期待していた少年の姿ではなかったそこにいたのは、『幻想郷の賢者』の一翼を担う神性摩多羅隠岐奈。

私のではないわ、織ったのは彼だもん。

世を乱す妖虫が、詭弁を弄すな。いいか、幻想郷この世界から手を引け、煩わせるな。

こわぁい、だっていうのに。女王の課す重い労役に民が不満を募らせ社会不安が高まっている時期に、政敵を一網打尽にしようと人造神への邪神信仰を捏ち上げるなんて、どちらが世を乱し人の道を外れてるのかなあ。しかもその混乱にまぎれて上宮王家を滅ぼし、歴史において蘇我と日嗣ひつぎを分離した。藤原中臣騙りに取り入るにはさぞかし効果があったんだろうね?

賢者はむっとした表情を浮かべてひととき黙すが、その憎々しげな表情は妖蚕の言葉を肯定していた。

確かに藤原の横暴が蘇我を上回る程とは私にも想像できていなかっただがそれ以上に、お前を倭文しとり神の再来にするわけにはいかなかった。

自分で勝手にやっておいて、勝手がすぎるんじゃない?常世虫産絹蝶を邪神にしたせいで倭文しとり神を乗っ取るのに失敗して、別に稲荷を立てたのね。蘇我と物部の連合を阻止しようとして藤原にお鉢を奪われるし。あなたは結局何もかも思い通りにはいかなかった自伝を、違う結果に美化したかっただけ賢者が聞いて呆れる、ただの器の小さい男じゃない。

言わせておけば……!

摩多羅隠岐奈の目が見開かれ、背後に人間の意識を一息に刈り取る威圧的な気配が差し込むまるで地獄とこの世を繋ぐための重厚な門扉のような姿で浮かび上がる禍々しい光背に、今は神のような神性は感じられなかったそれはただただ凶々しい示威の光。

「そこから何をヒリ出して、人造倭文神にどんな濡れたの、キングメイカーさん?」

エタニティ・ラルバは挑発的な目線を摩多羅神の方へ放り投げ、目を細めるあなたにとって相当ロクでもないんでしょうね、常世神って。受けた摩多羅も態とらしい溜息を吐く自覚はあるのだな。

自覚っていうか、オトナたちの身勝手な理路に対する解釈?ま、それでも結局、皇子の魂をこの世に繋ぎ止める織物は、人為の神の糸でできた絹の織物で、立派に仕上がったわけだけど。あなた、それが心残りでこの世界に、わざわざ女としてやってきたのぉ?

密かに尸解を経て神仙へ上られようとしていた皇子がしかし永きに渡って魂を封印されていたのが、お前の呪織物せいだと言えばあの二姫もお前の排除に頷こう皇子には幻想郷このような場所を早急に出て頂く

それはどうかなあ。その二もあなたの所業を知っている。何より皇子自身が、何て言うか

なに?

皇子が私に、頼んだのだとしたら?ていうか、ほんとは知ってるよね?知ってて改竄したんでしょ?私を解体したいなら、芋蔓式に、蘇我と物部、皇子にまつわる改竄を認めなければならないものね、都合が悪いんでしょ?

改竄などない、私はあるがままに歴史を編纂した。。それに

その威厳ある瞼の向こうに胡散臭い瞳を潜めた眼が三白に細まった。含み笑うように口元がくねり、愚弄が粘り付く、言葉。後背に負う扉の卑劣の面が浮き彫りになった表情。

あちら側の史実など、この世界ではもう、関係がないだろう?

それはその通りだった。この世界にあるものは、全てがの世界由来であり性質も敬意も含んではいるが、それは現実的に消しゴムで修正できる経歴書でしかないのだ。だが、そうした性質を創世者自身が悪用することには、恐らく誰もが反感を持とうまさしく目の前の『元・人造神』もそれを感じていた。

そうだね確かに、歴史はね。でも、人は、別。皇子は彼を愛していたよ、一番じゃなかったかもしれないし男同士だったけど。

本人が憶えていないと言っているのだ

どっかの誰かがわざわざ女の姿になってここに来たこと、答え合わせになっちゃってるけど。〝王〟が女にも用いられることか、橘大郎女と位奈部橘王が別人であるか、あるいは位奈部橘の称号が男女問わぬ世襲であることか、どれかを示すエピソードを書き加えるべきだったね。……悪い虫はすこうし、彼の背中を押しただけだよ

太媛の心を蟲喰むしばんだ、邪神の言葉など誰が聞き入れる

あなたがさっき言った通り、今更過去のことなんて誰も気にしないだろうね。彼の心を冒したのは認めるにせよ、あなたに神として造られた私には、でも神性なんてない。だって私を作ったあなた自身が、否定したんじゃん?

そしてお前は、この世界ではもう神ではなくなった。ただの虫けらの妖精だ。

エタニティ・ラルバは、命橘の実を一つ枝から捥ぎ取って、その柔らかい表皮に歯を立て齧り付く。血に見紛う赤い果汁が滴り、蝶妖の唇を染める血濡れたような口元が、怪しく歪んだ。

そう、私は確かにもう神じゃない私はただの、人心の輝きのひとかけら。男が男を愛してしまう、ほんのいっときの玻璃。私はだって、彼自身だったから。そして私は今ここで出来ることをするだけ。役者の去った歴史の舞台を幽仄ほのかに照らすゴースト・ライト。あなただって、そうでしょう?

賢者との会話を無視するように突然、くん、とまるで薫風の訪れでも察し迎えるかのように、エタニティ・ラルバは鼻を欹てた。間もなく現れたのは、その姿こそエタニティ・ラルバが待ち焦がれていた彼だったリグル・ナイトバグ。

やっときたね、あの女とはお別れできた?

……お別れなんてしないよ、って……

とそこで、リグル・ナイトバグは思いもかけない人物の姿に驚きの声を上げる。

摩多羅、さま、何でこんなところに

私を殺しに来たんだってさ!あはは!!

リグルの浮かべた疑問符にラルバは間髪入れずに答える自分を殺しに来たという言葉を口にしているとは到底思えない、気でも触れたような笑い声と共で。

いくらエタニティ・ラルバが底知れぬ妖力を秘めているにせよ、秘神を謳われる摩多羅隠岐奈の前で抵抗できる筈がないだが彼女は唯一笑っていない摩多羅隠岐奈を不遜な三白眼で見るこれがただの強がりではないのは信じ難い事だが、どうやらそのようだった。

そう望んでいるのなら、そうしてあげようか

エタニティ・ラルバの癲狂じみた笑いが自棄ではなく余裕の顕れであることは、摩多羅隠岐奈がここでその語気のままに目の前の蝶を処さないことが示している一体、何故?リグルは先日摩多羅隠岐奈に呼び出され持ち掛けられた話を思い出してみるが、その手がかりは掘り起こせそうになかった。そうしようと思えばひと思いにでも自らの手で出来てしまうことをわざわざ他者にさせようとすることの意図も、その前提であっても余裕を崩さないエタニティ・ラルバの言動の意図も、読めない。

そして確かに自らの手で処断するでもなく、それどころか忌々しいそれこそ苦虫でも噛み潰したように吐き捨てて摩多羅隠岐奈は、エタニティ・ラルバに返す。

模造神レプリカ風情が、こうも煩わしい

いいえ秦河勝、私はね、もう解き放たれているんだよ彼のお陰で、閉ざされた宇宙を突き破って、あなたの拵えた檻を破って、私は本当にんだ。ただの模造神レプリカなんかじゃ、もう、ないわ

ああ、下手に長命なことも面倒なことだ、蟲が眷魁ナイトバグ。嘗てのキミの横槍は非常に厄介な事態を招いたその産物が、だよ

ボクが、一体何をしたって

助けてくれたじゃん!

何を今更、とでも書いてあるような表情でリグル・ナイトバグを見るエタニティ・ラルバ。視線を受けたリグルはバツが悪そうに目を伏せる。

そういうつもりじゃ、なかったんだ

そうだ、リグル・ナイトバグ。小さな者等の大いなる眷魁ロード。だからキミには責任をもってを手伝ってもらいたい。先日の話は、そういうことだよ

責任って言われても、ボクは……彼女が何者なのかも……あのときだって

先代の霊的存在根レジストリをマージしたばかり、蟲の眷魁ロードをとしてまだ若かった彼にとっては、ただ地べたに墜ちていた蝶の一羽を存命させたに過ぎなかったしかもただ、若気の、徒に。

私はね、摩多羅に応じて造られ摩多羅に追われた人の手で造られた神なんだまあ、神なんてすべてが人為だけどね。

神、君が

元々は原始的な養蚕を行っていた集落の、小さな願いとささやかな祈りでしかなかったそこにいる野郎が、私をこんな存在に作り上げたんだ。その副産物として〝聖徳太子〟なんて非実在青少年も出来上がった……その後は、リグルも知ってるよね?

聖徳太子このまえ騒ぎになった豊聡耳神子の、同一矢Identityなんの関係が

つい先日この世界にやってきて危険な存在感を高めている妖怪が、摩多羅神との因縁を感じさせるだけでなく、豊聡耳神子との関係もちらつかせる。ここ最近で連続した流入は、個別のものではなく大きく一つの流れなのだろうかリグルは、豊聡耳神子が幻想入りしたときそれに反応するように異変をまとったルーミアのことを考えた。

今の私は、この男が作り出したイメージで出来上がってる。って、今は女をやってるんだね。0か1かしかないこの世界の喜劇だ、賢者ってのはこれだから。男か女かなんて両極端しか描けない、時代遅れの創造者。結局、摩多羅そいつは旧態依然の旧い神なのよ。境界性の神でありながら、多義を受け入れきれていない。そして、それこそが、今私がここに現れた宿命。

それこそが宿命、とのエタニティ・ラルバの言葉にリグルは身構える。全容の知れない、エタニティ・ラルバ摩多羅隠岐奈豊聡耳神子を絡げて包む大きな織物の姿。それこそが、博麗から命ぜられた調査の要点だろうから。

宿命って、何?境界だとか多義だとか、どういう意味

もちろん私達のことじゃん、ね?

彼女はリグルをまるで当事者に同意を得るように……いや、肯定を迫るように語りかけてくる。普段は敏感な割には役に立たない触覚アンテナが、彼女の言う「私達」に強く反応を示していた。その感受はキチン質の奥に仕舞われた中核を伝って彼の分散神経に発散した後、リグルの心中を不穏な圧で苛んだ何故?

元々この世界を作った賢者達はね、ええそこにも一人いるけれど、おつむが粗悪な二元論ディジタルなの。境界の彼我障碍壁の彼我月の裏表本当に安っぽくて、愚かな二元論でしかものを考えられない。それに今更彼らが幾ら自らの愚かさを悟って正そうとしても、もはやこの量子化は世界の劣化抽出でしか無い。彼らご自慢の分割・分析・分離・分別ふんべつに任せてどんなに多くの境界を引いて見せても、私達割り切れない者無理数へは到達できないもの。そうでしょ?

彼女の言うことは何一つ理解はできない。だが煌めく鱗粉を舞わせながら自分を見据えてくるエタニティ・ラルバに、リグルの視線は吸い込まれて剥がせない。ざわざわと落ち着かないみぞおちの奥を宥めながら、滔々と続けられる彼女の自分語りに、構えた。

ほおら見て、これちゃんちゃらおかしいわ。これが、奴らが私をこの世界に封入するために離散した認識へ束縛したカタチ。大人と子供、神と妖精、それに男と女、こんなモザイクでツギハギみたいな具象化になるなんて、賢者が笑わせるわね!二元論でしか思考できない、これが奴らの限界なんだわ。旧い哲学、時代遅れの回路、劣化を正当化する、老害。

そう言って、自分の姿をひけらかすように、ふわりとその場で回って見せるエタニティ・ラルバ。幼虫の角と成虫の揚羽妖気に混じって溢れ出す透明な魔力それに、少女のかんばせの首元を隠すチョーカーの下に潜む突起。幼体を示す緑色のスカートを全円に広げて回った後「これ、グロすぎでしょ」と大笑いする声は……男のように低い。だが、たちまち再び少女の声色に戻り、摩多羅神への冒涜を続けた。摩多羅神だけではない、その矛先は紫太妃、博麗やがては幻想郷そのものに向かった。

摩多羅や八雲の謳う〝サカ〟の実態は、ではない。大人と子供も、男と女も、夢と現実も、空と大地も、有罪と無罪の2つに分けようとして失敗して、その間に沢山の存在を挟み込んでいる。奴らの能力で切断された空間同士は、連続どころか隣接もしていないのよ。ほら見て、この幻想郷そのものが広大な〝空間を有する〟なのだもの。ああ、なんて不完全でグロテスクな世界!賢者達は本来、この幻想郷を実在させるために私達の存在を認めなければいけない。有理の間隙を稠密に埋める必要があるから。

エタニティ・ラルバは、手近な歪橘の実をもぎった。悶えるようにくねり病んだ橘の木には、一本につきひとつ実が成っているだけ。その他には、葉も、花も無い。その木をして幹枝以外である唯一の実を失った木は瞬く間に腐り崩れ、生臭さを漂わせる赤黒い腐葉土となった。あれは、ニンゲンだったものだ。リグル・ナイトバグは思い出す。彼とて妖怪の端くれ、ニンゲンの一人や二人が妖怪の餌食になることに心を痛めたりはしない。だが、その腐れて崩れた人木の表面に浮かび上がっていた人面相にはどこか覚えがあるように思えて、喉の付け根がくくっと窮屈に収縮するのを感じた。

リグル。私達は、世界を出し抜けるよ。優れてるんだ、よりたったふたつに分けただけで物知り顔に振る舞う恥知らずな快感に濁っていくような世界分割Demarcaciónを、今度は私達は嘲笑ってやれるんだ!

世界分割Demarcación、ルーミィが言ってた言葉だ

私達は実在するにも拘らず私達は〝無理〟と貶められ非有理な線空間に押し込まれた、理解不能なイレギュラーへの処理としてね。そして少なくとも私は、消された。リグル、あなたがあの狭間から、助けてくれたのじゃない。

……ボクは、そんなことしてない

そんなこと、言わないで。私にとっては、リグル、あなたが神様のようなものなんだから。

可愛らしい顔に似合わない大口を開けて、脈打つ橘に齧りつき頬張る。前歯が柔らかな皮にぞぶりと突き刺さった瞬間、赤い果汁が滴り落ちると同時に果実全体が血のように赤く変色する、そして果実全体がどろりと過熟し落ちるようにぐずりと歪んだと思うとゼリーのように形を失って地面に落ちた。「賢者共はさぁ、」エタニティ・ラルバの指には未練のように絡みつく蜜糸、彼女はそれを舌で舐めずっては笑った。

崩れて土に変わった木肌に浮き上がっていた何かを訴えるような人面模様、あれは、同級生達の顔ではなかったか。それを確かめるために他の木立の表面にシミュラクラを探してしまいそうになるが、理性が制止するそれを見つけたからって、どうするのだ。

最近になってようやく気付き始めたのよ、可分な単位で表現可能な、純粋単純過ぎる有理な存在の方こそ、例外的な異常者だってことにね。奴等が境界という線空間に押し込んだ無理の者達の方が、圧倒的にだった。今までは、私達を少数の異常者だって弾圧していたくせにね!だから今は賢者たちは、自分達の特権化に躍起になっているわ情けないこと

エタニティ・ラルバの口調と視線は、リグル・ナイトバグには同志へ語りかけるようであり、摩多羅隠岐奈に向けては全く逆だ。

そしてリグル・ナイトバグには、エタニティ・ラルバの住む世界のことが少しだけわかったような気がしてきた、既視感と言ってもいい。そこは確かに、かつて自分も住まいそして〝こここそが世界の全てだ〟と思っていた場所と一致しているのかも知れない。

彼女は、昔にボクが助けたカンダタにでもなった気分の自分が全てで、救われる方の相手のことは少しも考えずに。そっと木の枝に戻したつもりだったけれど、その枝は、良い枝ではなかったのかも知れない

おそらく、エタニティ・ラルバと摩多羅隠岐奈の因縁の間に挟まる砂粒のような存在になってしまっただろう自分のことを考えながら、リグル・ナイトバグは、自分とエタニティ・ラルバとの間にはもっと別の因縁があることも、感じ取っていた。

救われたのは、ボクの方もだったって、いうのに。そんなところに……

だが一方で、リグルは違和感を覚える。エタニティ・ラルバという妖蝶の意図や豊聡耳神子との関係、豊聡耳神子が各方面に抱える係争の背景には想像が及ばないものの……先日、自分を陣営に抱き込もうとした摩多羅隠岐奈は、少なくとも驚くほどにように記憶している。摩多羅隠岐奈が傑作と称した二人の少年は、見事にそのしがらみを飛び越えていたようであったし、それをしたのは摩多羅隠岐奈本人ということらしかった。そしてその摩多羅隠岐奈が口を開く。

お前が一体何をあてにそれを言うのかは知らんが、この世界にはたった一つ動かぬ掟がある。〝異変は、解決される〟。認められない動機も経緯も酌量も例外も。

流石、でっち上げの異変を解決して見せてまで保身に走った秦河勝サマは、覚悟が違うね。

自分の体を相手に当てつけるように両腕を広げ、笑っているようには見えない笑みを貼り付けた顔面で、摩多羅隠岐奈を名指すエタニティ・ラルバ。

あんたは常世神を担いだ人間が起こした宗教的騒乱をでっち上げて大生部おおうべを討つフリをすることで上宮王家・蘇我との関係断絶を演じてみせた。一方で、中臣には、〝蘇我の政治的功績を厩戸皇子のものであったことにし、その厩戸皇子を蘇我の娘が毒殺した〟という歴史の捏造を売り込んだ。これによって聖徳太子という架空の大聖人が生まれ、藤原中臣騙りには奸臣を討ったという大義が与えられる。ついでにあんたも蘇我と連座されるのを免れる筈だったが、思惑通りにはいかず、命からがら西へ逃げたんだ。そして今は……幻想郷ここにいる。

よく出来た話だな、感心するよ。だがお前は依然として異変だ異変であればされそして、事実とは異変の語る事物の対立軸の換言に他ならない。必要以上に徒にニンゲンの命を浪費することは、人妖の紳士協定に反している彼には仲介役を頼んだつもりだったけど、酌み取ってもらえなかったようだね

摩多羅さま、ボクは……

〝彼〟が自分の事であることを自覚しているリグル・ナイトバグは弁明を試みるだが割り込んだのはエタニティ・ラルバだった。

この実彼等はね、自らすすんで命を擲ったのよ財も、心も、命も。私が差し出せと求めたわけじゃないわかってるでしょ、秦河勝。あんたは私達を手懐けられると勘違いしたんだ、あの二人みたいにね。でも、そんなヤワな哲学で生きてないヤツが、いっぱいいたんだよリグル、あなたもよく知っているでしょう、彼等が、何に賭けたのか

やはりだ、リグル・ナイトバグは顔を顰める。あの木々は同級生や同類たちとているのだ、自分や、エタニティ・ラルバと同じように。そして、賭けに負けたんだ。

賭けた?誑かされた、の間違いでしょう?

誑かされた摩多羅隠岐奈の言も尤もだった。この世界で立派に姿形を得て意思を持っている自分やエタニティ・ラルバは、勝った側なのだこのザマであっても。リグル・ナイトバグは罪悪感とも安堵感ともつかない泥濘んだ表情を、エタニティ・ラルバへ向ける。そうして彼の目に返されてきたエタニティ・ラルバの表情は、彼を絶望にも近い感情へ突き落とすものだった。

これも、救いだったから

これの、どこが救いだと言うのだ。

だって、あのときの私は、神なんだよ……あんたが、そうあれと、言ったから

だめだよ、そんなの、もう

何を止めようというのか、リグル自身にも明確なビジョンはなかっただが、〝止めなければ〟という差し迫った感情だけが心臓を突き破って出てきそうなほどに騒がしい。彼がエタニティ・ラルバの方へ弱々しい足を運んでいたとき、エタニティ・ラルバは一歩だけ退き掌をリグル・ナイトバグの方へ向けてそれを制す。同時に彼女の目は空中の何処かを見上げている。それと同じ方へ、摩多羅隠岐奈も視線を向けていた。

きた

厄介者のお出ましだな

二人が空にある何を見ていたのか察するのに、リグル・ナイトバグには視線を向ける必要さえない。この気配の持ち主を、彼が間違えよう筈がなかった。

リグル・ナイトバグ、君に平和的に解決を願いたかったが……まさか既に懐柔されているとは思わなかった一歩遅かったというところね。

誤解です。懐柔されているということも、そもそもボクに彼女を止められるということも。ボクはボクという唯一つの意思として、ここに、こうしている。彼女の願いでもなければ、あなたの企みでもない。それに風見辺境伯TheSleepingDandeLionの遣いでもない。

まあ、なんだっていいわ、役に立たなかったのなら。

摩多羅隠岐奈の興味が、薄氷が瞬く間に溶けて消えるときのように引いていくのが感じられた。利用価値なし、と見做されたのだろう。

秦河勝。成長してないねやってること、あの頃とおんなじだよ。

お互い様ね、お前の思想もまだ死んでいないようじゃないか。安心し給えよ、あの頃同様うまくやって、今度は本当に神の仕立て屋にでもなるさ。〝禁惟縦走路デザイアドライブ〟とやらに、〝実体化した皇子〟を迎えに行かないと行けないんだ。せっかく復活したのに、あんなところに押し込められていたんじゃあ堪らない。あとは、害虫駆除係の奮戦を見守ることにするよ。リグル・ナイトバグ、君も、ご苦労だったわね。

ふわ、と浮かび上がったと思うと、その背後から突然現れた二人の少彼女達が手を伸ばすと、何もないところに忽然と、鈍い光をで縁取られたガラスのような扉が顕れる。二童子がその扉を観音開きに開け放つと、扉の向こうには接続次元PATHの断面が見えている摩多羅隠岐奈は好き勝手に穿ったバックドアを通って禁惟縦走路デザイアドライブの終端へ、そしてその発言の通り『聖徳太子』を解放しようというのだ。

それでは、御機嫌よう。精々、異変解決の茶番を見

余裕と嘲笑の声色でこの場を退場しようとした摩多羅隠岐奈の顔面が突然、歪むずどん、轟音が響いたのはそこから一拍を置いた後だったそれは摩多羅隠岐奈が元立っていた座標を中心に丁度円形を描くように数メートルサイズのクレーターが抉られた音。しかしそこにいたのは摩多羅隠岐奈ではなく。

ゆ……

偉そうに。もしかして、人を農薬か何かだと思ってる?

高速飛翔加速の運動エネルギーをそのまま乗せた大質量拳撃を外部サポートなしでぶちかましておきながら、自ら抉り出したクレーターの中央に涼しい顔で立っているのは、摩多羅隠岐奈をして〝バケモノ〟と言わしめる、風見幽香本人であった。

一方、派手な土煙のグラウンド・ゼロにいたにも拘らず土煙幕の晴れた向こうに再び姿が浮かんだ摩多羅隠岐奈は、軽く頬を押さえるようにしてこともなげに立っていた。ダメージはほとんどなさそうだが、まさか一言の挨拶もなくぶん殴られるとは、思っていなかったらしい。何より、ターゲットに取られたわけでもないのに巻き込まれる形となった二童子は、幾つかの破片に散った赤黒い襤褸雑巾となって動かなくなっており、それを確認した摩多羅隠岐奈は怒り心頭と言った様子である。

使い物になるニンゲンを調達するのは骨が折れるのよ……無駄遣いさせやがって

人を殺虫剤呼ばわりしたことも気に食わないけど、人のおもちゃリグルを勝手に使おうとしたこともムカつく。だから代わりにあんたのおもちゃを壊しておいたわ、おあいこでしょう?

短絡で暴虐風見幽香のそんなもリグルにとっては見慣れたものだったし、二童子が改造されたニンゲンであることもよくわかっていた。これから訪れる修羅場の方こそ、彼の心配事だ。そしてこれが、遠回りには結局幾重かに重ねられた博麗神社の思惑であることも。

幻想郷におけるの対処は、博麗の巫女の意志よ。聞くに、反対しているのはあなただけだっていうじゃない。いいの、風見幽香?

私一人?鏡で自分のツラでも見たほうがいいんじゃない?それにしても、賢者を謳われるくせに新人みたいなことを言うのね?出戻りの新参者には、先輩からよく教えておいてあげる。

風見幽香は、リグル・ナイトバグの傍まで歩いていき「賢者の一柱であるあんたも動かされ、このクソムシも動かされ、やれやれ私も動かされている。」何事かと戸惑っているリグル・ナイトバグの首根っこを掴んで「これらすべてが上手く調整されているだなんて、そんな都合のいい話、ないでしょう?」遠くに放り投げた。

ハクレイってのはいっこの意思でもないし、単独の機能でもない。数え切れないほど重ねられた思惑や利害、指向や情念が、相互に干渉して偶然に導き出される〝結果〟を言うのよ。博麗神社と巫女はその微調整をしているだけ。れいm博麗の委嘱を受けた、なんて思い上がっているんなら……可愛いものだわ。この世界はね、もっと残酷なのよ。安易な陰謀論に染まる老人になるには、些か早過ぎやしないかしら摩多羅神サマ?

知ったことではないわ、私は

「私を処分するのに、自分の手は汚したくない。そして新たな神『聖徳太子』を背後で操る影の能力者になりたい。昔からそうよ、あなた。」

エタニティ・ラルバがわらう。

そして前みたいに失敗するのよ。あっはは!!

低さと艶の共存する蠱惑的な声で摩多羅隠岐奈を指弾しながらふわりひらりと踊るエタニティ・ラルバを、風見幽香は鋭く見やる。

それでも、〝異変は、解決される〟これは確かに、絶対なのよ、特定外来神妖さん。それは、博麗の掌の上であっても覆らない。

やっぱり。最終的にやり合うのはあなただと思っていたわ、風間

ふん、誰、それ?

エタニティラルバの周りで光を反射する鱗粉は、急激にその密度を高めている。反射しているだけのはずなのだが、彼女の周囲で散らされ煌めく光の眩さは、周囲の光量に比べて不自然に多いように思える。それは彼女の臨戦状態を示している。

たとえ幻想郷が賢者共の作品で、今は博麗の支配下だったとしても関係ないこの花園は私の王国よ。住人は、私が選ぶわ。

リグルは、合格だったんだ?

演者たる当のリグル・ナイトバグは彼方へ投げ飛ばされて既に退場、そしてもう一人の摩多羅隠岐奈はもはやこの状況には興味がないと言った様子だった。摩多羅隠岐奈にとっては、エタニティラルバの持ち込んだ問題が誰の手によって解決されても、それは目的の達成だからだろう。今の彼女にとっては、エタニティラルバとの決着よりも、豊聡耳神子と接触し彼を真に聖徳太子と為すことの方が重要なのだ。

一方で、豊聡耳神子と摩多羅隠岐奈の接触が、より俯瞰的な観点でどのような意味を持つのか、それを裁定するのは本来摩多羅隠岐奈と同じ立場にある八雲紫ひいては八博体制の総意によるのだと、風見幽香はいう付け加えるのなら、それさえも今の自分には関係ないと。

浅はかな、勝手に潰し合っているがいいわ。私はでかい魚の方を貰いに行くから

いいの、行かせて?

好きにすれば。私には、の方が重要だから

それでも、エタニティラルバも風見幽香も、今この場の出来事の方を、優先すると言う。片や目的は不明、片やエタニティラルバを退治する立場にあるがやはり真意は不明。

買い被られたものね、でも、そうね。社会だ政治だ構造のせいだ、未来だ理想だ正しくは、なんて言ってる奴らって……本当につまらないわ

同感。大人って、つまらないよね!昔からそこは一致してたもんね!

エタニティラルバの周囲を満たす鱗粉が、反射ではなく自ら光を放った。

§

日本でも最大を誇る繁華街の只中にあるというのに堂々未成年が屯うここは、どんな切り口からメディアに取り上げられようともそれは碌な見出しではなかった。踊る題字はセンセーショナルでありながらどこかしらスパイシーで、ゴシップで隠微、エンタメ化された背徳感に貶められた、ただの商品だった。こんな場所に集まる子供と憐れむ白々しさ、親を刺す無責任な罵倒、自分には関係のない世界だという冷めた無関心が、この青天井の場末を日売の娯楽情報に仕立てている。

案件、いってらっしゃーい、とかってさ イヤイヤやってたんじゃないっての

この世を笑うためのドリンクと錠剤、大人を笑うための清涼飲料水とタブレット菓子をかっくらいながら、ここでゲラゲラ笑ったり肩を寄せ合って傷を舐め合う子供達の切実さはネットニュースに配置された画像テレビ画面に閃く映像雑誌面に踊る文字列どこにでも書かれているのに、それは欠片さえもそれを見た人間の心には届かない商品化された情報は、そうした傍観者の世界を1ミリだって動かしはしなかった。そして子供達は、そんな事実は重々承知で、そんなものに期待なんてしていなかった。

大人であれば帰りに一杯と酒で溶かすこともできよう、会社の恨みつらみは家に持ち込まぬこともできよう、自分の裁量を以て社会をスケールしたりマイグレーションもできよう、要不要と取捨選択を実行できよう。だが子供にはそれらが一切ない、出来ない、許されていない。

調達してきたぜー大漁大漁、とか、いつもんとこ確認入るようになったわ、とか言ってさ 命削ってるなんてわかってたけど、即死ぬより遥かにいいだろって

煌々と照るネオン塔の麓で、ぽかんと切り取られたように陰り湿気った空間がある。猥雑とした往来と古さと新しさが綯い交ぜになったコンクリートの迷宮だった場所が、薄気味悪いほど小綺麗な観光客向けのホテルになり、少し前とは明らかに毛色の違う外国人が〝クリーンな〟観光地を見物している、そのすぐ脇だ。何が建っているわけでもない置き去りにされた空間には、ただぽつねんとプレハブ小屋が一つ置かれており、中には人の気配もない。それを囲うようにフェンスが並べられご丁寧に忍び返しには有刺鉄線も備わっている。

名前も知らない、一日限りの関係でも、必要な友達だったのに 私達、どこに行けばいいっていうの?

聖域は閉ざされた。大人たちの都合で押し付けられている学校地獄家庭地獄かしかない世界のギリギリのシェルターだったこの場所は、大人たちの都合で壊された。

幾人か、この場所に空間ではないネットワークを残した者だけが、次の聖域を探す猶予をここで過ごしている。

西新久保には幾つか候補があると噂になっているが、どうなるかはわからない。一日一日を食いつないでいた子は、一体どこに行ったのだろう。

……ここ、なくなっちゃったんだなあ

勝手なもんだな、大人が子供の首絞めてるから出来た場所なのに

キモい、とぶっちゃけられたのに。カイ……めぐるはどことなく解放されたような感覚だった。自分の性表現が自己愛の手段だと、に向かって口にしたのは初めてだったし、それを、受け止めてもらえたような気がしたからだ。〝キモい〟という言葉に、額面通りの感情がこもっていないことは理解できたから。

私はガッコーセーカツに上手く溶け込んでるから、別に痛くないけど

上手く溶け込んでるかは、ちょっと

きてねーやつにいわれたくねーよ

きゅう

……ボクは、ちょっとキツイな、ここがなくなったの。これからは、どこにいればいいんだろう

あんな場所がなくなった今でも、あんたは今ここにいるんじゃん。あのフェンスの内側そのものが必要だったわけじゃないってことじゃないか。同じような奴ら、結構いるだろ

周囲を改めて見回せば、あの頃のようにこの空間に我が物顔で座り込んでいたのとは少し違う、少々の居心地の悪さを抱えバツが悪そうな表情で、鉄条網に閉ざされた旧楽園の周囲を付かず離れず繰り返しながら彷徨いている面々が、少なくないようだった。

今のこの場所には、未だに残り香のような引力はあるのだだが、集める核がない。

ボクは、今日は偶然、ここの事情知らない人からの案件があったから来ただけ。そのうち誰も居なくなるよ

隣に聳え立ち、裕福な外国人観光客を吸い込んでは吐き出し続ける綺羅びやかなタワーこんな場所で、買ってもらえるわけでもない。失楽園と同時に突然隣に現れた現実の巨大さが、行き場のない閉塞感を強くする。めぐるは指をかけた金網を、きゅ、と握るようにしながら、ぽっかりと光の抜け落ちた聖域の亡骸に、虚めいた視線を投げ込んでいる。

また、ガッコ、来たら?別に私も好きなわけじゃないけどさ。居場所が一つしかないってのは、危なっかしいもんだぞ

学校一つしか居場所がなくて求めたのが、ここだった。その言い分は、オトナ達と同じでしょ

……違いない、ゴメン

謝ってほしいわけじゃないし。何も変わらないから

いつの間にか取り出していたVAPEをフカして蒸気を風に流している風間。旧楽園に向いてもの惜しげに金網に齧りついているめぐるとは対象的に金網に凭れるようにして、視線も声も感情さえも衝突しないように言葉を投げる。香気を頭上へ燻らせる風間に、めぐるは、うん、と曖昧な返事を地面へ零した。

女の姿に着られるめぐると、男の服で武装する風間。

でもあんたには、多くはなくったって、友達がいただろ。どんな形であれ、言葉を投げれば返ってくる相手が。パクにせよ、白石にせよ

今は風間も、入ってる?

さあな

パクくんくん、でいいのだろうかのことを出されて、後ろめたさが大きくなる。茅野ちのにしてもそうだ。彼女達のことをぼくの方から「友達」やそれ以外の親しい何らかの間柄だと呼ぶのは、酷くおこがましい気がしてしまう。それきり、ぼくは何も言えなくなってしまった。

しばらく二人の間には、時計と針が捻れたような沈黙が流れ、繁華街の喧騒が溶けた樹脂のように溜まっていく。風間のVAPEの匂いがめぐるの鼻を潜る、他のどこでも嗅いだことのないような奇妙な味がして、二人の間を浸す音に色が付き、時間には穏やかな光が揺らいでいる。

黙って差し出されたそれをめぐるは抵抗なく受け取って、口付ける。男装してると思ったのに、その唇の場所にはしっとりとした温もりが残っていた。不思議と、水を打ったように落ち着いた感情で息を吸うと、傾れ込んで鮮やかな香りで後頭部がちりちりと弾けるのがわかった。

このリキッド、なにがはいっているの。めぐるはしかし、それを問うことはしなかった。風間もそれを伝えない。そんな些細な接続でさえ、今は心地よくて。楽園を閉じられ当所を失った心に、繁華街の空気が酷く寒く感じられて。

いきなり、風間が沈黙を破った。半開きになった口の橋からVAPEの蒸気がだらしなく立ち上っている何かを見つけたようだ。めぐるがその視線の先を探り回すように、彼女の顔の向く方へ合わせて視界を広げる。そして、見つけた。

薬売りだ……

見つけたのは、そう呼ばれるレア人物。それが誰なのか、誰も知らない。どこから来るのかもわかっていない。いつ来るかなんて見当もつかない。どうして現れるのか、目的だって不明。自分の事をほとんど語らず、身元もわからない。サラサラに長い髪の毛に女性的な顔立ち透き通るような肌にほっそりとした体のラインにも拘らずれっきとした男だということ以外、素性を知るものも居ない。だが一つだけはっきりしていることがある。

あの人物が、だったのだ。

家にも学校にも居場所がなくこの場所に居着いた家出少女に、最初にをしたのは、この〝薬売り〟だと言われている。食事を買い与え、一晩中少女の話を聞き、そうして一緒にいることで流れ着いた少女は無事に夜を明かしたのだと。痛みを訴える少女に、誰もが名前を知っている市販薬を渡して大量に飲むことを教えたのが〝薬売り〟の由来だと聞く。だが彼は薬をことはないという金は取らないそうだ。食事と、安全と、聞く耳とそして薬を与えられた孤独な兎は、別の兎を引き寄せた。同じく異端者の匂いを纏う薬売りへの興味とある種の安心感から、その存在はSNSと口コミで広がって、間もなくあの聖所は楽園となった。薬売りの模倣者はいくらでもいたが、そのオリジンは、あの人物。

そういう伝説だ。

伝説ではあるが、薬売りの姿は多くの家出民が見かけ、実際に会話し、誰もが一度は施しを受けている。ぼくにせよ風間にせよ、この場所にいる人間はお互いがお互いのことを必ず知っているわけではない。いつでも誰かはいるが誰でもいるわけではない。そのユルい同室感がここを聖地とした要因の一つだが、薬売りとて例外ではない。一度は見たことはあっても、必ずいるわけではないむしろいないことの方が多い。中には個人的なつながりを勝ち取ったとして連絡を取れる人もいるようだが、それでもその返答は確実ではないようだった。しかし、しかしだが、彼はお伽噺ではなく実在である。引力だけでは人が定着しなかったこの場所に、実際に人を留める核となったのは、まさに薬売りとその伝説だった。

だからこうして現れたのが本人であることは誰の目にも明らかであるし、それは、ここにいる彷徨える子供達にとっては復活の光景にも思えた。

薬売りが、ここに来たってことは

ハーメルンの笛吹き男じゃないだろうな

いいよ、どこかに連れて行ってくれるのならそれでも

お前、まだそんなこと……

薬売り、とめぐるが男の方へ向かおうとしたとき、二人はもう一つ意外な人物の姿を目にする。

あれって……

恵谷、かな

はっきり言って、見間違える訳が無い。黒とシアンとパステルアカムラサキ、フリルとリボンと血とカプセル錠。ボロ布をパッチワークしたみたいなスカートと、ゴシックな蝶をプリントしたタイツ。夢カワ系の毒寄りファッションだが、目を引くのはその長身だ。めぐるがそうであるように、あるいは風間がそうであるように、女の格好をした男や男の姿をした女など、この場所では珍しくない。恵谷は肉体的には男であったしその中でも背が高い方だった、目立つ。だが背丈があることを、恵谷はデメリットにしていない。ざっくりと切り開いた夢色カットソーの襟元から覗いた硬い鎖骨と広い肩幅は骨ばっていて、デカ瞳カラコンに下瞼と涙袋を盛りまくったメイクのエキゾチズムは女がするそれの何倍も毒々しくて、可愛い。

カワイイなあ

鋭く尖った、自己目的化の極まった〝カワイイ〟の記号。めぐるが欲しくて欲しくて堪らない、ものだった。

比較的身近な憧れである恵谷が、伝説の人物薬売りへアプローチしている。何か会話をするんだろうか。どんな話?二人はどんな共通点があるの?実は仲良しだったりするのだろうか?めぐるにとってはスターとも言える人物同士のツーショットは、眺めているだけで宝物のようであるし……唇を噛みちぎるほど嫉妬対象でもある。その光景に興味津々と浮かれていためぐるは、すぐ横で呟かれた「あんたのほうがかわいいとおもうけど」という言葉がVAPEの水蒸気とともに夜風に消えたことに気付いていない。

§

きゃっ!

突然薬売りを取り巻く人混みの中から、驚きを表すような甲高い声が響いた。

なんだ?

驚きの声を上げてその場で尻餅をついてしまう子がいたり、立ち竦んで動けなくなっている子もいる。だがその至近にいる取り巻き達も、半分は理解が追いついていないようだった。

一方の恵谷は、ハグはしごを続けている。抱きついて、一呼吸をおいて、また隣の人へ。何かに驚きの声を上げているセーラー服の少女にも抱きついて、また開放する。ロリータ趣味だが安物感が強いティピカルな出で立ちの女の子にも密着している。そして、また離れる。なにかに驚き、戸惑い、声を上げる中、恵谷があまりにも淡々と他の子への接近と離脱を繰り返していることに、めぐると風間は違和感を覚えた。

なんか、また様子が変じゃねえか?

不審に思った二人が足を向けたとき、いよいよ自体に気づいた何人かが悲鳴を上げた。

きゃあああああああああ!!

さ、刺され……!

地面に蹲っている子の足元に、赤い滴りが見えた。一人だけではない。尻込みして動けなくなっている子も、腹から血を流している。立ったまま目を見開いて脇腹を押さえて狼狽えている少女の手の下からも服に赤いシミが広がっていた。薬売りは横たわっている。同じように腹から大量に出血していた。

ギラつく繁華街現世の照明も、ただ今この場所には隔界のように遠い。遠光に照らされたその赤は、闇に蝕まれて黒くくすんでいて、当事者感を狂わせる。

何者かが、薬売りの周囲に集まっていた家出娘達を次から次に刺しているめぐるや風間には容易に想像できた。そしてその疑いがかかるのは明らかに。

え、恵谷……?

周囲に突然現れた流血の事態をようやくに察した家出民達は、蜘蛛の子を散らすようにその場から走り出す。恵谷は。散り散りに走り去ろうとする一人を猛然と追いかけ出した。

速い。

長身故の歩幅もあるし、肉体的に男であることも寄与している。

一方で逃げる少女はふりふりと動きづらい服装に阻まれて速度が出ない。

可愛らしくフリルをあしらった少女趣味な出で立ちの少女は、あっという間に捕まり、恵谷に引き寄せられる。叫び声を上げる暇もなかった。流れるように無駄のない動きで、恵谷の手が少女の喉元を撫でたと思うと、鈴のついたチョーカーが千切れ落ちるのといっしょに赤いものが吹き出した。信じられないという表情で自分の首を押さえる少女は口から赤い泡を立てながら、そのままその場に崩れ落ちて赤い水溜りを広げ始めた。

恵谷はその様子を見届けもせず、首を掻っ切った次の瞬間には別の獲物を追いかけて走り出していた。今度は少年だったが、酔っていたのだろうかすぐに転倒し簡単に捕まってしまう。幾許かの抵抗は見せたものの体格差に逆らえず、腹にナイフを何度か抜き差しされ、倒れた。うめき声を上げながら地面を這い回り、その軌跡を描くように赤い擦り跡が残る。そしてやがて動かなくなる。

恵谷は逃げ回る元住人達を執拗に追い回し、次から次に確実に致命傷を与えていく。野次馬には目もくれず、旧楽園の住人だった家出子をターゲットにして、ナイフのようなものでその腹を、首を、胸を、切り裂いていく。

瞬く間にあちこちに赤い水溜りに倒れる人形が出来上がり、啜り泣くような痛みの声と、力なく消え入る断末魔が、悲鳴の奥底に通底している。阿鼻叫喚と恐怖がその場を支配していた。

通り魔とも違うおそらく聖域の子供に目標を絞った意図的な犯行。しかも、だ。

十を超えるほどの子供が、閉じられた楽園の前の往来で、血溜まりに浮くように倒れている。今でも息がある何人かが蠢いているが長くはもたないだろう。事態を察した誰かが通報したようで、遠巻きなサイレンが虚しく響いている。警察官はまだ、到着しそうにない。

な……なんで……

遠巻きに見ていたこと、慌てて逃げ出さなかったことが刺激せずに済んだのか、めぐるも風間も今はまだ恵谷のターゲットに選ばれることはなく外野の野次馬で居続けることが出来たが、しかしいよいよ、その注意が二人に向いた。睨みつけるようなぎらつき、だが何も見ていないような虚ろさを落とし込んだ、鋭利にくらがる瞳が、めぐるを射抜いた。

っ……!

逃げないと。理解はしていただが、めぐるの脚は凍り付いたように固まり震え、逃げ出そうにも動けない。何か憑き物でも憑いたような異様な雰囲気と血臭をまとった恵谷が、錆びたブリキ細工のような軋んだ動きでめぐるに向く。すぐさまにでも先程までの肉食獣じみた俊敏さでこちらに刃を向けるかも知れない、距離はあるが逃げきれるのかめぐるには確信が持てなかった。

何人もの肉を裂いた刃物が、同様に自分の肉を切り裂く。血は流れ出て薄い皮の下に納められた肉が覗く、そしてその更に奥に潜んだ汚らわしい思想までを僕の体から引きずり出して、白日の下に晒すかも知れない。

血脂でにばんだ刃物が、めぐるにとって奇妙な引力を放っていることに気付いた。恵谷のナイフは、何重にも肉の巻き付けられた呪の刃だ。はっきりとした呪の形はわからない、だが、きっとそれは自分の中にも確かにあるものと同じで、恵谷は何らかの理由でそれを一番良くない形で吐き出してしまったのだと、わかる。その呪の制御不可能性は、彼自身がよくわかっていた。

恵谷でも、ダメだったの?

彼の中に渦巻いていた呪の正体まではわからないが、手綱を引き千切ったそれが宿主をどうするのか、めぐるにはうっすらと想像できていた。

それは、知りたくない、結末のひとつの姿。

恵谷の視線がこちらに向いていることに気づいた風間が、まるで猛獣でも眼の前にしたときのように目線を外さぬまま声だけをめぐるに向ける。

逃げよう。もし、あれが追ってきたら二手に

だが、めぐるは拒否した。その必要はないと、わかっていたから。

来ないよ

なんでわかるんだ

風間の言葉は疑問形だったが、その実は否定だろう。知り合いがここにいるとわかれば恵谷は、真っ先に殺りに来るその想像自体は至極妥当なものだ。

でも、そうはならなかった。めぐるの想像通り。

恵谷はその場にとどまったまま目線を二人にめぐるに向けている。彼を非難しているようではなかったさっきまで人を刺して回っていた鬼気迫る表情でもなくただ穏やかな無表情に一滴だけ笑みを滲ませた貌で、ひとこと何かを、言っただがその声はここまで届かない。

何?恵谷、なんてゆったの?

おい!

近寄ろうとするめぐるを風間が止め、その手が彼の肩を掴んで制止した瞬間。

恵谷が、動いた足ではない、その切っ先だ。

!?

だめ!!

彼の呪のナイフは、自らの喉元に突き立てられた。

女の子のような可愛らしい服装に反するように確かに存在する喉仏に弾かれて、それは中央から少しずれて突き刺さった。誰でもない自らの力で軟骨を割り、気道を切り裂いて、何らかの重要な血管も自ら断ち切る恵谷。まもなく血雨が飛び散り、彼が手をかけてきた何人かと同じこととなるだが彼がその被害者と異なるのは、藻掻いたり傷を抑えようとしたりしないことだった。自傷なのだから当然ではあるが、出血をして慌てた様子がないのは異様な姿で、めぐると風間以外にもその場に居合わせた誰もが、言葉を失った。

首元から噴血が続くその最中さえ、彼はめぐるの方を見ている。最期にもう一言を発したようだったが、口からは声ではなく赤い泡が溢れ出した。それを最後に、苦痛の表情もなく彼は、その場に倒れる。

信じられないもの見るように目を見開く風間、周囲の誰もが同じだ。

だが、横たわる恵谷の体から〝それ〟が飛び上がるのを、めぐるだけは感じていた。

§

行くぞ。お互い綺麗な身じゃないだろオマワリが来てとっ捕まったら厄介だ

冷静な判断を見出した風間だったが、心中は冷静ではないことはその表情を見ればわかった。自死に至った恵谷の元へ寄ろうとする僕の腕を、風間は掴んで乱暴に引きずるようにして歩き出す。振りほどこうとするが、思っていた以上に強く、強く掴まれていて。

でも、恵谷が……

いいから!

風間の表情に浮かぶ焦りそれにぼくを力づくでもこの場所から引き剥がそうとする行動は「綺麗な身じゃない」の言葉から導けるものには到底見えない、それきり何も言えなくなってしまって、彼女の引き回すままに細い路へ入り込んでいく。

人の流れは、ことごとくと僕らとは逆だった。野次馬がぞろぞろと、聖域跡地へと向かっていく。これまで自分達になんかほんの少しだって理解を示そうともしなかった者が、冒涜された王国にいや、商品化されたその形骸に、死体蹴りを加えに行くのだ。あの場所にいなくてよかった今は、風間の判断に素直に感謝する。

声色は明るく、笑いさえ混じり、まるでピクニックにでも向かうようなすれ違う人々は、僕らの内心とはまさしく真逆だったぼくらを見世物小屋の畸形者だとでも思っているみたい。その扱いに耐えかねて主人に牙を向き殺したのだとでも言いたげな「通り魔だってよ」「自殺したって」の声。僕らを虐げるのは、お前らだというのに……!

誰も僕らの逆走を疑う者はいない。でも、まるで自分がやったみたいな強烈な後ろめたさが足を鉛みたいに重くして、同時にその後ろめたさが無理矢理に僕らを進ませる。累々と重なった流血死体、自殺したキチガイ自分が〝そう〟だったかも知れない〝そう〟とはだ?

ふと風間の足が止まった。息の上がった顔だが、その表情がここで留まるわけには行かないと、言っている。風間は知らない場所のようだったが、僕はこのあたりを偶然知っていた。今はただ、人のいない場所に行きたい。それは、僕も、風間も同じだった。

こっち

この街で、この時間、人のいない場所など限られている。今度は僕が、風間の手を引く番だった。

複数のサイレンが、まるで自分たちを探しているみたいに鳴り響いている。右から左に流れ後ろから迫ってくる音が自分達を引き止めずに前の方へ去っていくことに、罪悪感のような色をした安堵を感じてしまう二人共、同じだった。

あの殺人事件を、自分がやったわけでもないのに、どうしても他人事に出来ない。恵谷がやったその行為を、自分がやったわけではないのに、理解の出来ない不可解な行動とは思えない。世界中が自分達を犯罪者だと探して狩りに来ているようなそんな恐怖はしかし、初めて感じるものではなかった。

行くアテ、あるのか

わからない

風間の声は、とっさの判断で自分をあの場所から退避させた人と同一人物のものとは思えないほど弱々しい。

辿り着いたのは、主立った通りと通りの間にある、忘れられたような細長い、ポケットのような空間だった。ちょうど両端がクランク型に曲がっていて表通りからの目線の流れ弾はない。なにより、空調機器やゴミによって細った入口はここが路だという顔をしていなくて人が入ってこない。事実、元は表に向いた雑居ビルの裏口が幾つかはあったのだろうが今は一つを残して壁になっているその残りひとつも消防法違反な物置きで封鎖されており出入りはなく、今やそのくうはんは路としての機能を捨てていた。住人はエアコンの室外機や排気ダクト、それにおそらくは害獣(虫)だけだろう今の僕らには相応しい。

振り返ってはいけないという強迫まで感じながら足早に人の流れを逆流してきたせいで、ふたりの胸中では感情と呼吸がミキサーにかかっている。距離にすれば十メートルもない向こう側では、通り魔殺人事件の喧騒で大騒ぎだというのに、人の声もサイレンも、全てがヘッドフォンの向こう側から聞こえるみたいにカットされていてここはまるで別世界のように静かだ。

静かだな

うん

やっと、安心できる。安心?僕らは何から逃げているのだろう。

僕も風間も一言も言葉を発さない発せなかった。誰もいないこの空間だけが元の世界からポッカリとくり抜かれてフォーカスされているみたいな重苦しい充溢感は、僕と風間の間にある腕を伸ばす程度の距離を歪に圧縮する。ミドルをカットされた遠くてスカスカの環境音は壁に張り付いた空調設備の騒音で更に遠ざけられているのにぼくら自身の音は、僅かな身じろぎさえバイノーラルに耳を撫でる。最低腕くらいは離れた距離さえ、まるで密着みたい。凝集された空気を伝って知られてしまいそうな思考は……今は、ただの恐怖と焦燥だ。

警察なのか救急なのか、拡声器を使って人を遠ざけているのが聞こえる。ああ、楽園は直ぐそこだったのに、今やそれは崩壊して犯されていた。その音だけが、結界の向こう側から響いてくる。家と、学校、その二点を繋ぐだけの、ゆるしのない時間に、また削ぎ落とされてしまうのか。

どうなってしまうのだろう、という言葉に直せば余りにも平易で表現しきれない、この漠然とした不安と絶望と、それに滲むような怒り。何に?誰に?

偶然底に居合わせた目撃者でしかないというのに他人事に出来ない、心臓の底皮がまだあの場所に繋がっているみたいな息苦しさが消えない。恵谷の目線。何かを言っていた、その言葉は何だったのだろう。一音も聞こえなかったそれは、だからこそ全ての言葉になって、あの場所から心臓を通ってぼくの中に流れ込んできている。

苦しい。

恵谷は、あの世界に最後の引導を渡しに来たのか。違う。あの呪はもっと内向きで、外に向かって外に出るのではなく、内側に深く、深く、深く深く深く突き刺さった向こう側に、内側に突き抜けた向こう側からようやく見える外。自分の肉を巻き込んでようやく通り抜けた外は、自分の呪に塗れてる。外向きに外に出ていける人達にとって、この言葉に血が通うことはないだろう。恵谷が見ていた世界は、きっとそういうものだ。あの突き抜けた明るさと誰にも邪魔をさせない自己の軸は、それ故だったし、それ故に崩壊を前提にしていた。きっと。その自己は、もしかしたら、僕が憧れていて……僕も少しだけなら持っているものだったのかも知れない。

だからこそ、他人事に思えないのだろうか。僕も、加害者のように、感じてしまうのだろうか。何もかも被害者のつもりだったのに、どうしてこんなに後ろめたいのだろう。

静かすぎて、世界から責められてるみたい、だよね。〝黙ってないでなんとか言え〟って……っ!?

僕がそう漏らすと風間の体が大きく動いて、覆いかぶさってきた。そして僕のその言葉を口から直接もぎ取るみたいに、風間の唇が重なった。

突然のことだったが僕は……どこかでこれを予感していた、風間に手を引かれて繁華街の人波を逆流しているときから。すれ違う人と人の間から溢れ出してきて僕らを飲み込もうとする罪悪感を、震えながら泳ぎ、僕のこの感情には共犯者がいることを感じていた。立ち止まった彼女の手を今度は僕が引いたとき、彼女の手の温度、汗、そして震えが、その共犯者の存在を、こんなふうになることを、確信に変えた。

僕は、共犯者の唇を受け入れた。巧いやり方なんて知らない、いつもはおっさんが勝手に吸い付いてくるから。でも今は……風間の口遣いも、似たようなものだったそんなに、臆病なやり方を、するなんて。

僕よりも背が高い風間の、宝塚俳優みたいに整った顔を見上げて、彼女の注いでくる接吻を受け止め、食み返す。舌を伸ばして誘えば、彼女はそれを赤い唇と舌で迎え入れた。

風間、これ、ちがう

黙って

薄汚い壁に押し当てられて、獲物を追い詰めた獣みたいに睨みつけてくる風間。怯えと恐れを塗り潰さんとする憎々しげな顔には、憎悪さえ感じる。好意のひとひらだってそこには浮いていないように見えるのに、彼女が僕を逃す様子はなかった。

それきり、言葉は邪魔だから追い出しただってこんな正しさのかけらもないキスなんて、言葉を持ち出せば嘘に消える。代わりに交わらない視線と、混じり合う荒い吐息が、接続している。

もう一度、貪られた。彼女は麗しい男装のレズビアンで、僕は女装に逃げたいだけの弱者男性自分が彼女が求める人間じゃないことくらいはわかっている。でも、死の気配に包まれた的外れな罪悪感が、何かを狂わせていた。これ以上逃げるる場所がないのに逃げるように口を重ねて、舌先と唇に潤んだ肉を感じるほど。

はっ……はっ

ふうっ

吐息が不意にでも何かの言葉になるのを用心深く避けるみたいに、息遣いまで選びながら、恐怖の代わりに相手の体を押し込めようとする。

遠く近く薄っぺらく残響するサイレン、拡声器の声、怒号と悲鳴。それら全てが僕らを探して罪を追及しようとしている。僕らの奥底に熾火する悪意を暴き、断罪せんと嗅ぎ回っている。僕達が、やったわけじゃないのに。僕達は、ただそこにいただけなのに。でも、そこからズルズルと、胸の奥底に隠した罪を引きずり出されてしまうような恐怖があった。

僕らを嗅ぎ回って追い詰める音は、すっかり周りを取り囲んでいる。声を殺して身を潜め、奴らから逃げなければならない、隠れなければならない。その一方で、崖からたった一本のロープでぶら下がりるふたつの体みたいに、僕らはくっついてキスし合った体に触れ合った。

ちゃんと異性愛者みたいに出来ている。性指向はお互いに噛み合わないはずなのに、恋愛感情云々なんかよりも生き延びるために迫られているみたいに、性に縋った。きっと、こんなのはお互いへの冒涜でしかないというのに。隔絶された現実世界の音、その音を掻き消したくて、口と舌を吸いあい粘膜から漏れ出す粘った水音をわざと大きくする。

風間と体を弄りあい唇を溶かしあっている間、風間のことなんて見えていなかった。彼女も僕のことなんか見ていない。風間を目の前に目を閉じても開いても、恵谷が被害者を追い回すシーンと、血の海が広がるシーン、それに、僕の方を見ながら自刃した恵谷の映像が、何回も何回も何回も繰り返し再生されている。その切っ先が自分に向くかも知れないという恐怖心がまるで今起こってることのように蘇る。その映像は反復するたびに血濡れフィルタを被せたように赤く変色し、一方で血の匂いを鼻の奥に差し込んでくるような生々しさを獲得していくようだった。

脳裏で延々と反復する流血の映像、記憶、脳内で勝手に膨らむ恐怖の感覚、それから逃げ惑うように隠れるように、互いの唇を貪り合う。

僕の口から言い訳を吸い出そうとするみたいに繰り返す、彼女の口から余計な言葉が出てこないように押し込むただそれだけの倒錯した口づけ。

ひび割れたコンクリ壁に押し付けられて冷たさを背中に感じる一方で、僕を壁に追い詰める風間の体の体の熱さが、伝わってきている。

そして、突然。

か……ひゅっ

その密着から、今度は彼女の手が僕の首を絞めた。すごい力、息が掠れるほども通れない。指が僕の首肉にめり込んで呼吸だけでなく、血流も遮られる。

このまま死なせてくれるのではないか。呼吸が出来ず血流が阻害され、苦しいよりも……気持ちいい。

ひ、ヒュッ……くげ

このまま彼女に裁いてもらえるのなら、なんて甘美なことだろう。彼女の柔らかい唇の感覚がこの体が感じる現実世界の最後の感覚なら、地獄に堕ちたっていい。そのためになら、確かに誰だって殺すかも知れない、恵谷みたいに。

でもそうはならなかった失神一歩手前かというところで彼女の手は緩み、僕は甘い終わりを取り上げられる。

せき止められていた呼吸が通り、急激に脳みそへ酸素が行き渡る。溶けて消えそうに薄れていた世界が、急速に姿を取り戻してしまう。このまま消えてくれれば、楽だったのに。視界がクリアになり世界が明るさと輪郭を取り戻し醜悪な姿を描き直すのと同時に、強烈な快感が襲ってきた。

飢えていた酸素を取り戻そうと呼吸をすると、鼻では足りない。口付けられたままの彼女の口を吸うことになるけれど、それを簡単にはゆるしてくれなかった。唇と、舌と唾液、それに隙間を通る空気を一緒くたに貪る。鼻からも、酸素と一緒に彼女の香り。全ての感覚が、酸素を取り込もうと防御を捨てた脳細胞一つ一つへ、ダイレクトに突き刺さってくる。頭の中でばちばち火花が弾けるみたいに、風間に脳を犯される。

醜悪な世界と、風間の感触が、両方、快感になって入ってくる。

い、イきそ……

彼女にそのつもりがあったとは思えない。でも急に首絞めセックスみたいな快感をブチ込まれて、寸前でそれを取り上げられて、頭の中がぐちゃぐちゃだ。呼吸もめちゃくちゃ。感情はドロドロ。

弛緩した先で、溺れる水中で浮き輪にでも縋るみたいに、彼女の頭を腕で包む形になった。彼女の口から嗚咽のようなものが漏れ出ているのを、聞こえないふりをする。

ごめん

酸素を使って意識が再構築される中、重なりゆくレンガとレンガの間に滑り込むように混じり込んでくる、罪悪感と薄らな怒り。

迫ってくるのだ、恵谷が恵谷に殺された家出子たちが罪悪感と後ろめたさそれに、僕らが出来ないことに怒る世界が。僕はそれらに向かって逆に殺意を叫んでいて、それはいつの間にか声になって口をついていた。風間がそれを、言葉になる前に口移しで食べている。彼女の目が赤く潤んでいる。やがて彼女も怒りのようなものを叫び漏らして、今度は僕がそれを食べた。

恵谷は、僕らの代わりに殺したのか。僕らの代わりに死んだのか。ただの発狂通り魔だったのか。その答えから、逃げたかった。体から漏れ出ているのが涙なのか声なのか、怒りなのか悲しみなのか、罪悪感なのか恐怖なのか、性欲なのか逃避なのか、もうわからない。

感情配線がめちゃくちゃに絡み合っている、正しいかどうかも確認せずに目に付いた出鱈目な順に先端を焦げた思考の穴に刺していく。辻褄が合ってるとか、理論的には正しいとか、そんなことで整理がつくのなら、僕らはこんな隙間の空間に逃げ込んだりせずに済んだはずだ。

か、風間?

その格好でも、男、できるだろ

えっ

僕、男なんだけど

私も、女だよ

知っている、と答えるには自分の行動は矛盾していて、違う、と答える自信は既になかったお互いに。

そんな女みたいな顔でオス見せるから、こっちまでバグってくる。男なんて願い下げのはずなのに

でも、に勝手に逃げ込んだのは、僕だ。

風間こそ。そんな綺麗な〝男〟なんて、そうそういないから。そんなのズルい、男装の女とか卑怯だよ。それなのに、あんな……

恵谷が成し遂げた血の儀式のせいで、混線した感情配線と短絡だらけの思考回路が、風間にだけは言うべきじゃない鬱屈した妬みを口にしてしまう。でも、そんなのは今はお互い様だ。

あんな、なんだってんだよ

今度は強く口を噤んだ。僕に手を引かれているときの風間が、一体どんなふうだったかなんて、僕だけが知っていればいい。彼女自身にだって知ってほしくない。

なんでもない

僕が黙ったのを見て、追及を諦める。代わりに、ワンピースのスカートの端から風間の手が無遠慮に入り込んできた。細いと言えば聞こえがいいがただけただけの僕の脚と、そして腹の下に彼女の冷たい指が触れた。疑問も制止も聞かない、邪魔するなとでも言いたげにもう一度、唇。

どういうつもりなのか、わからない。わからないけど、想像はできた。ただ、その想像を言葉としてはっきりさせるのは彼女に対しておこがましく思えて僕は、〝理由〟を考えるのを辞めた。代わりに、彼女の手が僕の体を触るのを拒否せず、僕の方からも風間の胸に手を乗せる。男装のために胸をつぶすインナーで平らにしようとしているのだろう上からでも、風間のそれは重量があった。

男って結局、胸好きなんだな

か、風間がそんなとこ触るか、ひぁっ

カバーパンツの上から見透かしたように僕のペニスを指で弾かれて変な声が出てしまう。

女みたいな声出して……

呆れたように言ってから、風間はジャケットを脱ぎシャツをはだける。圧縮ブラジャーのフロントに設けられたファスナーを下げると、左右に弾けるように開けた。

この空間には街灯らしい街灯がないからそのディティールなんて暗くてわからないけれど、多分、とても大きい。

触ってろ

まるで子供をあやすために玩具でも与えるみたいに、僕の手を取って胸の上に被せてきた。なんだか癪だけれど、指に力を入れると、僅かな力で指先が柔らかなものに埋まっていくのを感じた。

一方で、風間の手も僕のスカートの中に潜り込み直すカバーパンツの形を確かめるようにして、いよいよそれをするすると下げた。一瞬の躊躇を見せてから、スカートの中で裸になったペニスに触れた。レズビアンを称してるからには男性経験は少ないのかと思っていたけれど……大きくなった僕のペニスを触る手つきに迷いはないようだった。

全体を包むように握って、裏側を指で撫で、亀頭の凸部をなぞる。指で輪を作って前後に潜らせて、指先で先端をトントンとはたく。

んっ……な、慣れてる?

どうだろうな

からかうように言う風間だけど、目を合わせてくれなかった。その言い訳みたいに、手の動きを早くする。

好きな人のおっぱいを触りながら、そんなふうにおちんちんを触られて、平気でいられるわけがない。女になりきれなかった僕が、情けなく男を取り戻そうとする。

ふぁ、ぁ……

あっという間にカウパーで湿った先端を、風間は見逃さなかった。滲み出したオス性欲の涎を指先で、鈴口の周り、そして亀頭へ、円を描くように撫で付ける。その刺激に引っ張り出されるみたいに、次から次に、先走りが溢れてくる。

風間に触られているオス性器の粘膜が、炙られるみたいにジリジリ熱い、そしてキモチイイ。痺れるような快感が先端から下って根本にまとわりつき、お尻の穴と陰嚢の間くらいにじっとりと溜まっていく。

射精していないのに、勝手に腰とおちんちんがびくびく跳ねてしまう。お尻の穴にキュッと力がこもって、そのたびにとろとろカウパーが溢れてくるのが自分でもわかる。

これ、知ってる。オナニーのときに、カウパーが増えてくやつ。ぬるぬるが気持ちよくて、もっとたくさんカウパーが出てきて、それがもっと気持ちよくなる、無限ループ。それを、自分ではなくて……風間がしてくれてるなんて。

ぁ、くぅん、あぁ

女みたいな顔で、女みたいな声、出してろよ

う、うんっ、はぅ……っきも、ちっ……

ちっ、お前、ガチで……

睨みつけるみたいだった風間が、顔を外らした。風間のきれいな顔、もっと見てたいのに。睨みつけるような目でもいいから見てくれているのを、感じていたかったのに。

かざまぁ……

クソっ。男のくせに、チンポはこんなだってのに、そのメスつら、メス声、メス仕草っ!イラつく、あぁ〜、こっちこそ、ありもしねえチンポがイラつくわ!!

喉輪を掴んで僕の頭を壁に押し付けながら、噛みつくみたいにキスされる。すごい、乱暴なキス。多分、風間のセフレ女子みんながコレでヤられて、躾キス唇から僕の中が全部貪られてるみたい

んぶ、ほぉっ……ぶちゅっ、ちゅうっ

んっ、んっ、ちゅっ、女よりよっぽどメスだよ、お前。なのに、こっちはガッチガチなんて、完全に性犯罪虎ッ!

僕のスカートを乱暴にめくりあげ、風間はその中に潜り込んだ。

くっせ……完全にオスの匂いしてんぞ、フリフリのスカートの中でよ。

スカートの中から風間の声が聞こえる、女子が、僕の女の子の中に入ってきて、消しきれないオスを暴いていた。どっちにもなれない僕が、好きな女の子の前で、オスとメスを情けなく行き来している。脳みその中が、めちゃくちゃになっていた。

スカートの中で勃起したペニス。好きになった女の子はレズビアンで、だというのに今、僕のペニスを目と鼻の先に迎えている。性別とか、一体なんだっていうんだ。

スカートの中でいきり立つペニスの先端に、風間の手が触れた。

ぬるりとした感触の奥から襲ってくる鋭い快感。自分でするのと違う、制御不能な快楽リズム。その感触の中には、手で握り擦るのとは別の、もっと柔らかい湿った感触が混じっていた。

えっ……こ、これ、って

スカートの中の様子はここからでは見えない。でも、股間から注ぎ込まれる刺激は柔らかく滑るものに変わっていた。亀頭の周りを円を描くように踊るのは、指ではなくてもっと熱くてもっと柔らかい……これは。

く、口……舌ぁっ……

スカートの中で、フェラされている。女装姿で、女の子から。おじさんにされるのとぜんぜん違う、もっと柔らかくて、優しくて、だのにすごく気持ちいい。

女の子の唇と舌は、おじさんのよりも柔らかくて、シリコンのおもちゃよりももっと柔らかくて、おちんちんの凹凸全部余す所なく絡みついて吸い付いてくる。

か、かざま、かざま、それって、ねえ、それぇっ

うっふぇぇな、なまえよぶら。らまってあえぇれろ

うんふあぁっ、きもち、いおぢとぜんぜんちがっおちんちんっおちんちんきもち

ちゅっ、ちゅぷ、じゅるるっっ……じゅぱっ

スカートの中は見えない。次にどこにされるのかも全然わからない。お気に入りのスカートが膨らんで……その下でオス快感をねじ込まれている。女の子の股間に見せるためのパンツを剥ぎ取られて、むき出しの男になったおちんちんを触られている。開発済みの条件反応乳首が固くハリ上がって、偽乳ブラの下でコリコリ擦れる。

背中をコンクリ壁に任せて股を開いて腰を前にせり出し、ペニスを空に向けて振り回すように、下半身がヘコヘコと勝手にスケベダンスを始める。風間はスカートの中でそのペニスをおもちゃのように舐め回して弄んでくる。

ふぉっおちんちん、とけるっ

へー、いいのか?これ、ちんぽで。お前は女なんだろ?これ、クリトリスじゃなくてもいいのか?ああ?

そ、そうっ、クリトリス勃起しちゃってる女体化下半身が、本物の女の子に嫐られて負けるっメスの根性見せないとダメなのに中途半端にオス返りして、クリちゃんきもちよくなってるぅっ風間のフェ……クンニ、きもちいっ

じゅるるるっっっ!!

風間の口の中へ、とろとろ染み出す先走りが止まらない。唇と舌、口の中の粘膜壁、吸引刺激と圧迫。舌が一本とは思えない、上と下、右と左、鈴口と雁首縫い目が、複数同時に刺激されているような錯覚。その感覚は根本と先端を嫐るようにゆっくりと行き来して、快感唾液をまんべんなくまぶしつけてくる。

んぁ、ぁぁ……

んく、だへよっ……ちゅぽっ、ほら、射精しちまえよ。だ、ん、し

スカートの中の風間の頭が横に移動して、ハーモニカみたいに滑られているのが分った。先端がねぶり回されているのは、だとすると、手だ。手でしこしこするのと、時折口に含んではたっぷりの唾液を加える。

指は、巧みに増えたり減ったり、刺激と摩擦が絶え間なく変化する。一方の手が玉袋をやわやわと揉みしだき、もう一方の手は亀頭を包みこんだまま滑る先走りでたっぷり潤んだ風間の手が、めちゃくちゃに動き回る。存在を疎んだこともあるその場所から得も言われぬ快感が弾けて、悔しさと気恥ずかしさと後ろめたさと、それを包摂するほどの性欲が膨らんでしまう。

……スカート履いてメイクしてウィッグまでつけたバッチリ女装姿で、ちんぽ吸われてガチガチにオス勃起してる気分はどうよ?女の子になりたいとか言ってたのに自分のチンポに負けてる雑魚オスが、殺人現場帰りにメス顔晒してチンポおっ立てて、気持ちいいか?

は、ひっ……きもちぃ、っんいこ、こすりしゅぎっ、さきっちょ、ダメそんなふうに乱暴っ

ダメ?よさそうじゃん?射精したいんだろ?ん?殺人現場帰りに女装で射精とはいい身分だなあ?

亀頭殺しのメスちん手コキっこれ、僕がいつもおじさんにしてあげるヤツっ女の子を買えない哀れなオジ豚に、女の子の代わりに僕がしてあげて、オジ豚泣かすためのやつ……ッあれされたら、どうなるのか、知ってるチンポぐずぐずにされた惨めなオトコがどんな風になるのか知ってる……僕が、そうなっちゃうんだぁ

あー、派手に腰ヘコってんぞ?フリフリのスカートの中でフル勃起したチンポ、どくどく先走り吐いて、もっと苛めてくれっつってんなぁ?

ち、ちぁう……も、らめ、おちん……クリ、あちゅぃっ風間、それ以上、されたらっっ

むぐっ、ちゅっ、れろっっ……どう、なるんらよ、このメス野郎?じゅるっっっクリでアクメしたって、女は射精なんかしないけどなぁ?

やだ……男やだ……っ僕は、男を卒業して、女の子になって……やり直すって、決めたのに

ちん……クリトリスへの刺激に負けないように、僕は自分で、自分のメス化スイッチを押す乳首。

クリクリクリっ。

女装ドレスの前を開けて、偽ブラの下に手を滑り込ませて、その下で勃ってる乳首を捏ねる。先端に触れるだけでも痺れるみたいにメス快感、普段から触りすぎて膨らんだ先端を、中指で押すように、そして回して撫でるように自慰愛撫する。おちんちんからのオス快感をごまかすつもりだったけど、まあ、そんなワケがなくって。

びりびりっ、クるっ……おちんぽ刺激と、混じるっ

両方の快感が混じって共闘で脳みそをぶん殴ってくる。女の子の格好しながら、手コキされて、チクニー。オス性欲もメス性欲もない、ただ脳みそがオーガズムに達したいだけ。透明な性欲がアクメ目指して脳髄の理性回路を焼き潰す。

はーっはーっ風間っ、風間、好き、すきぃっ

うるへーよ、メス面ぶら下げた可愛い自分と、自分の雑魚チンポが好きなだけだろ。ふはっ、乳首弄りも好きなのか?ド変態だなたしかにお前は男じゃねえよ。こいつは劣等オスだ。

スカートから顔を出した風間は、僕を見て舌なめずりする。宝塚俳優みたいな綺麗な顔の口の端に、僕のチン毛がついてた。汚物でも見るような目で、でもべったり舐めるように僕を見ている。

スカートの中に残したままの手は、僕のペニスを潰すくらいの強さで握り、削り落とすくらいの強さで扱いている。痛いでも、亀頭への摩擦が強制的に射精を促してくる。しかも痛みが限界に達する寸前で力が緩み、今度は高まった射精欲を焦らすように撫でてくる。腰が勝手にヘコって、ちんぽで風間の手を追いかけてしまう。そして与えられるのは、また容赦のない摩擦。

うっすら眉間にしわ寄せて嫌悪感を湛えたジト目で僕の情けない顔を見ている風間。そんな彼女の、はだけて露出した乳房に、目が行ってしまう。

自分の乳首弄りながら女の胸見る男がいるかよ、雑魚。好きな女の胸触るより自分の乳首のほうが可愛いかよ、男としても女としても、クソ雑魚か

ぐ……はひ……ご、ごめんっ……僕……

シコっシコシコシコッ

ぐちゅっにゅる、ずるっ、ずるずるっ

っ……!ちん……クリ、だめっ……も、感じすぎれっ

この状況でまだクリとか言ってんのかよ、見上げたもんだな。お望み通り、オスクリ磨きあげてやるよ

っっっっっひっぎ……キツイ、熱いっおちんちん、焼けるっシコシコダメ、壊れる、ちんちん、おツライのに、腰、うごいちゃ……痛いのに、んもぢいぃっ

ははっ、もうはもう諦めたのかぁ?

ぢん

ぶびゅっ!どぶっっ!どぽっ、どぽぽっ……

射精。

女装姿で、好きな女の子に手コキされて到達する、オーガズム。腰が震えて、膝が笑う。

ぽぉっ……

びゅっ!びくんっ、びくびくっとぷっっ

ぼゔっ!ぶふっっ!

お気に入りの女装用スカートの内側に射精精液が叩きつけられる音が聞こえてくるほど。

ゴンッ!がんっ!!ゴツっ……ごりごりっ……

快感に全身を焼かれて神経が狂い筋肉が誤動作している。

仰け反り痙攣アクメでも逃がしきれない大きすぎる快感を注ぎ込まれて、背後のコンクリ壁へ何度も頭を打ち付け続ける。結像の義務を捨てた網膜の裏に白い星が飛来しては弾け、その衝撃から逃げるように壁に頭を擦り付けてしまう。コンクリートの壁に頭部をぶつけたり擦ったりしていることは遥か遠い理性の奥底から薄っすらと眺めていたが、それでも脳内麻薬がドバってて痛みなんか全然感じない。

っ、っぎゅ……ぉ……ンっ

こんなに深くイくの、何年ぶりだろ。頭の中で白い閃光が何度も明滅して、それが意識そのものの断続だと分かるのはアクメが引いて理性が帰ってきてからようやくだった。

はーっ……はーーーっ……おンっ……し、しぬかとおもった……

は、はは、すっげー射精るじゃん

僕のイキザマに引いた風間が、スカートから引き抜いた手を僕の眼の前に近づける臭い、オスの精液の匂いがむわっと鼻先を撫でる。アクメ余韻で定まらない視界をようやく整えると、風間の手は僕の先走りと精液でべっとりと汚れていた。

ザーメンの匂い、男の匂い。女の子になりたかったはずの僕の、敗北の匂い。鼻が曲がりそう。僕が男だっていう証拠の匂いだと思うと、一層嫌だ。

だっていうのに、わかっちゃう。今の自分の顔が、鼻の下を伸ばして犬みたいにベロを出しながら口で息をしてる、みったくない事になってるのが。目の焦点が、眼の前の風間に合わない。僕のザーメンまみれの手がぎりぎり分かるだけで、眼筋が言うことを聞かない。頭の中でまだアクメ泡が小さくぷちぷち弾けているのを感じる。

はっ、はへ……

ひっどいマヌケ面

はっ……はあっ……す、すごかった、ょぉ……

なに終わった気でいるんだ?

んへ……?っっひっっまっれ、まっれえっっらめ、イッたあと、らめ……っぎぎっっっ

雑魚オスはの本領は、ここからだろ?さっきのすごかったから、もっぺん見せてくれよ?

風間は僕の精液でベタベタになったてをスカートの上に被せて……今度はスカートの布地ごと僕のおちんちんを掴んだ。そのまま乱暴に、亀頭を握り撫でる。

ザーメンでグチョ濡れになったパニエの布地が、亀頭をぞりぞり擦り上げてくる。風間の手はその上から被さって、亀頭を握り潰す位の力で掴んでぎゅるぎゅる磨き回す。

ひぁあまっれ、まっれとまめっへ……お

強すぎるチンポ粘膜への刺激に思わず腰を引こうとするけど、腰にはもう逃げ場がない。ビルの壁に追い詰められるみたいに……股を開かされて、自分の精液ローションで亀頭布責めを完成させてしまっている。

んぎ……っっ、おほっっ……あっぎ、んぉぉおっっだめ、これらめっ、ちんぽこわれ……いぎっっっあがっげぎぎっっっこわれるっとめてっ、シコシコとめてぇっ

だめだ

ほぉっっぎっちんちんやけるっやげへええええっっひぁあああああああとめて、とめてとめてとめてとめてぇぇぇ

風間の手から無駄な逃避を試みながらあえなく捕まり亀頭責めで、地獄の快感を注ぎ込まれ続ける。

ぶしゅっっぶしゃっっ

オス潮噴き……瞬殺させら、れっ……

スカートの布地にぴっちり亀頭と鈴口を押し付けられた状態で勢いよく吹き出したオス潮は、布地を越えてスカートの前の部分をじんわりと濡らしてしまう。

女装スカートの前が、おちんぽ潮吹きでぬれてるなんて……えっちすぎて……また、キちゃうっ

風間も、ひと噴きふた噴きした程度では終わらせてくれない。ガクガク震えながらスカートの中で余り汁を噴き出し続けているおちんちんに、容赦ない追い討ちを加えてくる。追い討ち?違う、まだ、〝最中〟なんだっ

ずるっ、ずっ、ガシッ、ガシッ

シコっ、シコシコシコシコシコ……ッ

ぎぃぃっっっっっもうっ、もうダメっ風間、ゆるしッ……ひへっ……あっがぉぉっっちんぽ削れるっ、けじゅれて、なくなっ……っっっぎぃぃっ

なくしたいんだろ?男のシンボル。このまま削り取ってやるよ

しぬっっぢぬぅっちんちん爆発してひぬぅっっ

おー、じゃあ、死ね

ガシッガシッガシッガシッガシッガシッガシッガシッ!

ぐりっ、ぐりぐりっっっ

しゅっしゅっ、シコッシコッ

シコシコシコシコシコシコシコシコシコシコ

っっっっっん、っぎ、が、がががががっっっっっちんちんしぬばくはつしゅるかってにビクビクするっお腹の奥、はねるのおわんにゃいっ無理、むりむりむりむりむりもうむりっっっっっが、ひゅぃ……あがっがっががががががぎぎっぎぎたしゅけて、死ぬっ、マジで、のうみそとけて死ぬっ

びくっ、びくっ、ガクッガクガクんッっ

びゅっっ、びゅるるっっっ

ゴンッ!ゴンッゴンッ!ガンッ!!

ぶしゃっ!びしゅっ、びしゅっっっっ!!

敏感になりすぎっっ潮がおちんちんの中通る感触だけで、尿道イキするっおちんちん戻らなくなるっイキっぱなしの女装チンポになるッッッ

完全に地面に崩れ落ち、大きく股を開いて風間の手コキに股間を委ねている。一方で手コキ快感を最大に受け止めたい一心か腰が無意識の内に前後に振るが、倒れているせいで空を突き上げるような動きになってしまう。全身が波打つように震え、スカート纏いのチンポがありもしない受精確率を錯覚して、撃ち出す精液もないのに透明な汁を噴出して震えている。仰け反り痙攣が続いて後頭部は地面をガンガン打ち付けていている。

とぷっ……とぷっ……

もう潮も噴けない。亀頭はおそらく擦れ過ぎていて痛いはずなのに、痛覚はただの熱と射精反射に直結する電気信号にしかなっていなかった。勃起がまだ収まらないのは、亀頭に乗っかったパニエの裏地が刺激を送り続けてきているからだった。射精なんかもうできないのに。

風間は手を離したみたいだけど、そんなこともうわからない。

あぇ……

今になってコンクリにぶつけまくっていた頭が痛くなってきた。涙でグシャグシャになった顔面には、血圧が上がりすぎたせいか鼻血も出ている。

幸福感が一気に引いて消えていった。痛覚と疲労、それに自己嫌悪が巨大な口を開けて僕を飲み込む。

街中の逃避行でズレかけていたウィッグが、いよいよズルリと外れた。風間はそれを見逃さず、メッシュネットと一緒に掴んで剥ぎ取りった。

や……

ウィッグが外れた下から出てくるのは、化粧とカラコンで取り繕っただけの惨めな弱者男性(亀頭責めで絶叫)の顔。

やだ、見ないで

素の顔なんて別にもう知ってるけど

それでも、やだ。こんな姿

風間は倒れている僕の上に覆いかぶさって僕の顔を見て、一瞬だけ怒るように僕を睨み、汚物でも見るように眉を顰めて、目を逸らして、そして……その唇で、僕の唇に齧り付いて来た。めちゃくちゃに吸い付いて、舌で僕の口の中を弄り回す。射精のことしか考えていない男のセックスのときのチンポみたいに身勝手で幼稚な舌使いのディープキスが、僕の頭の中までぐちゃぐちゃに掻き回す。

あー、このメス野郎。イラつく💢お前見てたら、ガチでイライラする💢

ご、ごめ……

お前の情けない顔が私ん中のオスを煽ってきて、チンポねえのに想像勃起で下半身イラついてんだよ。……あーこのホモケツ掘るためだけに、チンポほしいわ💢

ひゅぇ……

このメス男💢なあ、お前のそれ、よこせよ……💢使いたくないんなら、よこせよこのペニス💢今すぐお前を女にしてやるから、この場で、お前を、私のオンナにしてやるから、そのチンポくれよ!💢

さっきから風間の行動が全く理解できない。でも、僕はされること一つ一つに悦んで反応してしまう。彼女の、おもちゃにでもなったような気分。

メスの顔のまんま、一人で気持ちよく男に戻ってんじゃねえよ!!私はどうなるんだよ!?

風間は上半身を起こし膝立ちになったまま少しズボンを下ろした。ここからでもわかるくらい、ぱんつが濡れている。僕の手を掴み上げて無理矢理引っ張り、その上から触らせる。ぬるり、と感触が伝わってきた。

男にしてやった代わりに、私を、女にしろ

スカートを捲りあげて、まだ半勃ちのままのペニスを剥き出しにする。

悪いけど、指コンしかないから

え、ちょっ……

にゅるんっ

有無を言わさず僕のペニスを数度扱いて硬さを取り戻させて、そのまますぐに、挿入。これがセックスだなんて、後から思い出すくらいの呆気なさだった。

ふ、ぁ、あっ……

入ったぞ

わ、わかってる、けどぉっ……んぁぁっ、なか、すご……いっ

お前は何もするなよ

そう言うと、風間の体が僕の上でくねり始めた。前後に、左右に、大きく波打つように動いているのに、体の軸がぶれていない。動きの波打ちは全部挿入部に叩きつけられる。

風間の中は、ぬめりを帯びた軟体生物みたいにぬるぬるに塗れていて、うねっている。しかも不規則に強く締め付けてくる。そのぬかるんだ肉筒自体がランダムな腰の動きで角度が変わって、時折少しざらついた感触で僕のものを責め立ててくる。

せっ、せっくすっ、なん、で

うる、さい。黙って犯されてろ……っ

ぱんっ、ぱんっぱんっぱんっ、ぱんっぱんっ

にゅじゅっ、にぎゅっ、ぐぽっ、にゅちゅっ

きも、ち、ナカっ

ほらっ、ほらほらっ、女の中はどうだよ、女装男クン?はっ、はっ、はあっ……顔、見せろ、情けないメストロ顔っ

や、だぁ

見せろっつってんだよ

情けないべちゃべちゃの顔を覗き込まれて慌てて腕で隠すけれど、剥ぎ取られる。眼の前で腰を振っている風間の姿。接合部から溢れ出す、ヌメった淫音と、ヌメ汁、それと、快感。その大きさと比例して膨れ上がる、自己嫌悪と呵責と請赦の念。腕を剥ぎ取られても風間の方を見ることができずに顔を背けるが、ウィッグのない地毛の前髪を引っ張られて前を向かせられる。

私を見ろ……見ろよ!

今にも馬乗りで顔面を殴ってきそうな怒りにしか見えない形相で、風間は僕を凝視している。そう言って、もう一度唇を貪られた。

僕の性自立なかみがこのザマなのと同じく、風間の言動なかみも呆れるほどめちゃくちゃだった。

イけ。イけよ、ほら、イけよ💢私の中で、オスイキしてみろよ、顔面メスの雑魚男💢チンポ震えてるぞ?女にレイプされてイキそうなんだろ?ほら、射精せよ。お前に女なんか無理なんだよ。おとなしく弱オスに戻って、私を女にしろよ。このまま膣内で射精すればいいんだよ。ほら、ほら、ほらほらほらほらほらほらッ💢イけ。イけ。イけ、イけイけイけイけイけっっ💢

ぱんっ、ぱんぱんぱんぱんっ

ぐちゅっちゅっっぐちょっぐちょっぐちょっ

ばすんっばすんっばすんばすんばすんばすんっっ

っ、んおっおっおっおっあッおぐ!ぐ、イぐイぐイぐぅっっっぐイぐイぐイぐイぐちんぽイく、ちんぽイく、女の子にレイプされてイく女装しながらストレートのセックスでイくちんぽイくっちんぽイぐちんぽイぐちんぽイぐちんぽイぐちんぽイぐちんぽイっっっっッ……っぐぅぅうぅぅっっ

びゅっっ!びゅるっっっ!どっっぶぶしゅっ

風間の膣肉に暴力的に扱かれて、殆ど残っていないと思っていた精液をぶっこ抜かれる。射精た量は自分でも想像していた以上で、きっと寿命か、あるいはもっと別のだいじなものが精液に変換されて吸い出されたんだと思う。

おまえ、あんだけ手でコキ捨てたのに、まだ、こんなっすっげりょ、量だけは、男らし、ぃっやっべ、い、イく……男相手に、イけ、るっ……んっ……〜〜〜〜〜っっっ

びくっ……びく、びくっ

っっっっはあっ、はあっ、はあっ、はあっ……

か、じゃまぁ……んぅほ……へぁ……っくぴっ

風間が僕の上で中出しアクメに震えているが、そんなことを認識する余裕がない。オーガズムの波はまだ断続的に押し寄せてきていて、不意にアクメの衝撃が心身を打つ。レイプ射精の余韻は脳髄の深いところを焼き潰してしまったみたいに、眼球が真っ直ぐに前を見られなくなっていた。瞳孔の開閉を制御できないのか、街灯のないこの空間の僅かな光さえ目が痛くなるほど眩しく思える。口をうまく閉じられなくて涎が垂れる。止まりかけていた鼻血が再び溢れ出していた。

にゅぽっ

風間の膣からペニスが抜ける僅かな摩擦でさえ、アクメを呼ぶ。ぶしゅ、とごく小さな潮吹きを見せて、ガクガク笑う腰と痙攣して全身をのけぞらせたままの僕を、風間が抱き起こした。流石に頭をぶつけ続けているのを無視できなくなったんだと思う。後、鼻血が酷かったからかも。

おい?おい、帰ってこい?おーい?

はへ……

風間は風俗広告の入ったポケットティッシュを取り出して、何枚かをまとめて僕の鼻に当てる。

ごめん、じぶんでするよ……

声を出そうと思ったけれどうまく出せない。ティッシュを受け取ろうとおぼつかない手を伸ばしたが、風間は赦してくれなかった。

えっと……後の首筋叩けばいいんだっけ

それ、だめな民間療法だから……

叩かれた。勢いを増す鼻血。

あー、もー、悪かったって。同級生の男子をレイプとかあんまりだったわ、反省してる。反省してるから、血とめて

マズイなあ、あんまり血の跡が残るようだと、無駄に疑われちゃったりするのかな。鼻血だってその場でわかる、鼻血検査薬みたいなの、あるんだろうか。

オーガズムの波が引き切ってたのに、意識の焦点がなかなか合わなくって、暫く風間にされるがままになってしまった。

あたま、いたい……

§

ゴムなら、僕、持ってたのに

ハァ!?

いや、だって

鼻血は割と派手に地面に痕跡を残したここで誰かが刺されたと言われたなら、信じてしまうかも知れない位には盛大な血痕になっている。オーガズムの波が引いても心拍数はすぐには下がらず、出血も暫く続いた。

青姦で興奮しすぎて、鼻血で救急車を呼んで、逃走は終わりなんてことにならなかっただけマシだ。

ようやく正体を取り戻した頃には、風間の方も少しバツが悪そうに態度を変えていた。あれは……カノジョもできないんじゃなかろうか。人のことを言えた義理ではないけれど。

あーあー、こりゃあ……

すごいことになっちゃった

地面に血痕を残しただけなら素知らぬ顔でここから去ればいいのだけれど、ドレスにもそのスカートにも、派手に赤い色が飛び散っている。酸素に触れて黒ずんでいるが、誰がどう見ても血痕だこの騒ぎの中こんな姿で歩けば明らかに職質を受けてしまう。

着替え、ないのかよ

東口のロッカーまで行けば

はあ?ここから何キロあると思ってるんだよ……

ごめん

そんなにないけど……この格好だと、体感それくらいかも知れない。

この街路ポケットに逃げ込んで、精神迷わせの性行為に没入してから、もう小一時間が経っている。それでも、外の世界は通り魔殺人の後のヒリついた喧騒が続いていた。僕らはまだ包囲されている。

これ着てろ

風間が、地面に脱ぎ捨てたジャケットを拾って僕の方に放り投げる。前を閉めれば血痕の大半は隠せるけれど、僕の女装服にはかなりのミスマッチだった。風間は胸潰しブラを付け直している。潰しても潰しきれていない胸囲の上からシャツを閉じて……その上からこのジャケットを着れば胸が目立たなくなる、ということだったのだろうが、当のジャケットを僕が占有すれば、胸は隠しきれない。一方で、僕がコレを着て風間の隣を歩いていれば、彼女のジャケットを羽織らせてもらっていることがすぐに分かる。スカートとのミスマッチの言い訳にはなるが、だからといって女装した男が女から服を借りている理由を探しても、そう簡単に見つかるようには思えなかった。

風間はジャケットを僕に投げてよこしたついでと言わんばかりに、僕の頭から外れたウィッグも放ってよこした。

要るか?それ

なきゃ、辛いでしょ

そんな女のアイコンみたいなで武装しようとしてるからバランス取れないんだろ。もっとやりようがあるんじゃないの?

それじゃ、足りないじゃん、男から遠ざかるには

風間のそのブラと同じだよそんな言葉も喉をついたが、口に出しても虚しいだけなので、飲み込んだ。

……スカートの中、冷たい

きったねえな

そんなこと言わないでよお!風間がやったんじゃないか!

わ、わるかったって。やりすぎたと思ってるから

血痕ではなくただ濡れているだけであれば、まあ、夜の空気にはそう目立たない。ここは大人しく我慢するしかなさそうだった。

僕がウィッグを付け直し、顔についた汁やら鼻血の跡を拭い、メイクを直している間、風間はVAPEを燻らせて僕の身だしなみを、じっ、と見ていた。あんまりにも視線を隠すことなく見てくるので、かなり居住まいが悪い。顔がグシャグシャになったので、正直もうどう取り繕ってもまともにはならない。精々BB塗ってファンデを叩いてから言い訳程度に目を描き直すくらい。そんな雑なメイクさえ風間は黙ってみているのだ。

女装メイクなんて誰かがしているところを、風間は見たことはないだろう単に物珍しいのかも知れないけれど。

目を描いているとき、無言を強いるような空気を割って、風間がポツリと呟いた。

今更、男に欲情するなんて……思わなかった。ストレートかよ……ちくしょう

言葉尻だけを取り出してノートにでも書きつければ、こんな滑稽な文はない。でも、その中に押し込められている、細かく裁断された感情の凝集のこと、僕はそれに似たものを知っていた。安易に返す言葉なんて、思いつかない。風間だって、慰めの言葉が欲しくてそれを口にしたわけではないだろう思わず、出てしまっただけなんだ。

言葉を返す代わりに、ただ黙ってアイメイクを続ける。

殺人現場に居合わせてさ

うん

私らなんも悪くないのに逃げ出してさ

うん

挙句の果てにこんなところでセックスだってよ

うん

好きでもない相手とさ

……サラッと振るね?

いっぺんフっただろ

そうだけど。ねえ、コンシーラーとか持ってない?

あ?

持ってるけどさあ呆れたようにそう言って、カバンの中からスティック型のコンシーラーを取り出して、貸してくれた。僕の肌には少し緑が強いけど、贅沢は言ってられない。

思ったより図太いよな、お前。空気読めないだけかも知れないけど

なんか、どうでも良くなっちゃった。どうせもうフられたあとだし?

ははっ、お互いにこんな状況の自分達を嘲り笑うみたいに冷めた笑いと溜息を吐いて。

私ら、どうかしてんな

今更でしょ

……それなー

VAPEのスモークを深く吐き出して、立ち上がる風間。なんていうか……力強いっていうか、たくましいっていうか。そうやってすっくと立ち上がる動作、引く後ろ髪を引き千切るような強さが滲み出ているような気がして、羨ましさと眩しさと、それにやっぱり好きだなあ。

つまるところ

風間はため息を付く。立ち上がったまま、全身で伸びをするような仕草で、四角く切り取られ不夜城の光で夜にさえなりきれない明るい夜空に星を探すように、天を仰いで言う。

タイムアップなのか。時間までにゴールできなかった私らは、ここで脱落ってことか

風間は僕よりも背が高い。仮に僕が地面に崩れていなくて自分の足で立っていたとしても、彼女が天を仰いで顔を上向けているとき、彼女がどんな表情なのかを僕が知る由はない。

……普通の路に戻ったって、周回遅れなのにね

戻らなくても行き止まりだ、ここみたいに

恵谷みたいに?

が、結末なんだろうな。なんとなくわかってた。ただ、見たくなかった。それを否応なく見せつけられてさ

そう言って振り返った風間は……とんでもなく、女子だった。

追いつけない、こうはなれない。顔面を殴りつけられたような、小気味よいほどの失望。

僕は、信じてたんだ、〝男に抱かれれば、女だから〟って。結末なんてものは、見ないフリしてた

キモ

ははっ!……だよね

もう笑うしかない。明確にそんなふうに言葉にして信じていたわけじゃないけど。言い逃れの出来ない状況証拠。

でも、才能がさ、要ったんだよ。男の体で女になるなんて、嗜好や努力じゃ限界でさ。あれって天才みたいなものなんだと思う。うんっっと可愛いとか、生まれつきそういう特性を持っていますとか、限られた特性。それってもう才能だし、天才のことじゃん。僕にはその才能がない。でも、引き返すにはもう、いろんな物を捨てすぎちゃった

お前が女装を始めたのなんて、つい最近だろ

その前から、ずうっとだから。毎日、毎日毎日、少しずつ少しずつ、捨ててきた。自分の嫌なところを少しずつナイフで切って捨てるみたいにね。嫌いだけど、必要だったものも。それってもう、取り返せないんだ

なんで、こんなことを風間に吐露しているんだろう。

セックスしたから?ばかみたい。ただ肉をハメただけでそれと同じようにハマり合う心の凹凸なんか、あってたまるか。もっと、これはもっと深刻で、死に至る呪のようなものだったはずなのに。

私も、そうなのか。いや、そうなんだろうな

どうだろ。風間は……顔がいいから

顔関係ないだろ

大事でしょ

わかるけどさ

外見が良ければ、周回遅れになんかならないよ。あー、ズルい。女はズルい。

はあ!?なんでそうなるんだよ!?

わかんないだろうなー、ちくしょー

殺すぞ

あーもー殺せー、いっそ殺せー、こんな弱者男性殺してくれー

うっざ

げしっ

ひとつ、蹴り飛ばされた。

でもなんか、それが妙に心地よくって、どうしようもなく笑けてきて。

きっと、風間が吸ってたVAPEの副流煙のせいだ。あれに、何か、入ってたんだ。そうでなきゃ、こんなことで、泣きたくなるほど笑えてしまう筈がない。風間も、おんなじ顔をしていた。

そろそろ、ロッカー行ったら?

ああ、うん。そうだね。途中でおまわりさんに捕まったら、ごめんね

血痕抱えて歩いてる女装男なんて、そりゃ職質するよな。遠くから祈っててやるよ

えっ?一緒に来てくれないの?

甘えんなよ、行かねえよ

えーっ、こんな変な格好、ジャケット貸してくれた人が隣りにいないと言い訳できないよ

そもそも〝女装〟が変な格好だっつうの

ひどい!差別!

あー、こいつ結構うぜーわー

とかなんとか言って、僕がこの空間を出てロッカーまで警察ステルスゲームを始めようとしたら、結局吐いてきてくれたジャケット返してもらわないと困る、って。

外に出てみたら、人のざわめきは収まっていないものの、救急はもうここからいなくなっていて、警察は事故現場に密集している。この辺りには目もくれていないようだった。

それでも目立つのは避けたい。なるべく人が多くない方の路を回って、東口を目指す。ロッカーまで行ければ、あとはトイレでもどこでも着替えられる。

もう何事もなかったかのように日常の繁華街の姿を取り戻そうとしている店舗、往来、街。それを騙すように、隙間を駆け抜けるように、通り抜ける僕と風間。ふと、手が、触れた。どちらからともなく、指が絡まる。

さっき、恵谷からさ

もう、その話はやめないか

風間の手を、少しだけ強く握ると、小さく舌打ちさっさと言えって顔。

恵谷の背中から、出てったのが見えたんだ

あ?

何かはわからないけど。

霊とか魂とか言うつもりかよ

そう、かも知れないけど、そういうんじゃないと思う

はっきりしねえなあ

蝶に、見えたんだ

喉を切り裂いた血飛沫の中、まるで煙雲をライトで照らしたときのような曖昧な輪郭が、恵谷の体から這い出ていったように見えた。丁度、それは蝶のように見えたのだ。変化と新生を象徴する、蝶のはためきそれが腥さの中から浮かび上がることの悍ましさと同時に、どこかで〝そうでなければいけない〟という強迫が、心臓を締め上げてきたのを今でも生々しく思い出せてしまう。

……蝶って、あいつが着てた服だろそれ

風間の言う通り、かも知れない。そうだと、思うことにした。

§

リグル、戻ってこないね

風見幽香の手には、いつもの日傘が握られているだがこの傘、柄が妙に太い。赤白黒にアクセントのイエロー。この日はタータンチェックのスカートではなく、黒のパンツスタイルだった。今では比較的大人しくなった風見幽香が、かつて夢幻館の女王として暴虐を振るった頃の出で立ちに近い。

ロマンチックなロケーションじゃなくなったものね?誰かのせいで。

傘と同じチェック柄のベストとその下に着込んだ白ブラウスを、その上から締めるように交わる黒いハーネスベルトは、呪花符を格納するホルスターを備えていた。だが今はそのホルスターに符は装填されていない。チェーンで腰ベルトに接続された懐中時計を黒い指抜きグローブの手で弄ぶ素振りで、わざと目の前の女に視線を送らない風見幽香。

期待に添えなくて残念ね、私じゃ代わりにならないか知ら

魔橘の林には、これまでに実り熟し枝から落ちた橘が地面で割れて、赤い小海があちこちに広がっていた。その一つ一つが神妖かみさまに誑かされてここで魔橘の養分となった哀れなニンゲンの、液体へ具象化した〝死〟の有様である。この地に住み着いた神妖が平らげた命の絞りカスは、この地で再び魔橘の養分となる。風見幽香の支配する土地で、彼女の掌を無視した独自のライフサイクルを描こうとしていた。

代わりも何も。あなたに興味ないの、

林には既に新たな犠牲者があった。次々とあった。木の幹に抱きついて泣き喚くように声を上げ四六時中歪に枝をくねらせる枯れ木に抱きついている見れば手や頬、足、背中と、体の一部は既に木質に癒着している。彼等はここに来る前に、すべての富の蓄えを、自宅の周囲に打ち捨ててからここにやってきた。そうした〝神への布施〟は、元は権力者からの徴収に対する抵抗と社会への再配分を実行する〝作られた神意〟であったが、こうして幻想郷へ迷い込んだ以上はそうした本来的な目的も失っている。

今はただ、この魔蝶は人心を惑わせ命を貪る、正しく妖怪の有様を見せている。その点についてだけ言及すれば、八博体制はこの人造神エタニティ・ラルバの幻想入りを許容していた。

それでも、エタニティ・ラルバの神格付けが気に食わないと、反対する者もいる風見幽香だ。

彼はどうしているの、どうして来ないのぉ?

リグルのことを言っているの?

他に誰かいる?友達自体、少なそうだものねぇ

ちっ、露骨に舌打ちして目の前の新参エタニティ・ラルバを睨みつける、風見幽香。その視線が鋭ぐと同時に、エタニティ・ラルバの斜め後方の地面が大きく抉れた。コマを落としたような映像の変化を追いかけるように、地鳴らしの轟音が澱のように垂れ込めた空気を震わせた。思い出したかのようにぱらぱらと、降り注ぐ小石と土。

物理的に防いだ……?

いきなりご挨拶だね

エタニティ・ラルバが、それまでの掴みどころのないフワついた表情を忽ち邪悪に変貌させた。コマ落ちの映像はそこにもある、それまで手を後ろに組んでスラリと立ったシルエットに大仰な蝶羽を揺らしていた姿がいつの間にか両の腕を開きその右腕は横に一閃、伸ばされていた。一連の出来事はまさに一瞬で、そこに「動作」があったことを全く感じさせない。

風見幽香の背後には突如にして背を伸ばした巨大な蔦と花卉が聳えていた。獣の口と何ら変わらぬ形をした牙蘂を開き、眼前の人造神へ何かを放った後だ。2本いや2匹の魔界棲性植物を背に立たせた風見幽香は、腕を組んだまま、エタニティ・ラルバを嗤うように睨んでいる。

ならこの挨拶、どう訳せばいいか知ら?〝ごきげんよう〟それとも〝さようなら〟?

お別れには早いよ、まだ遊びに来たばかりだもの

魔界根鳳仙花はシードブリットの種殻薬莢を口元から地面へ吐き捨てる。地面に落ちた種殻薬莢からは射出エネルギーを取り出した後の廃棄化合物が気化し、有毒の霧が地面を這う。エタニティ・ラルバの腕で弾かれやや離れて着弾したその弾痕の周囲には、ユゴニオ弾性限界の喰い残しが飛沫していた。

それは種子が変質したものだが胚を持たない魔界で生き延びるために外敵を攻撃する武器として変化したそれは、胚の代わりに甚強な殺傷力と致命的な毒性を持つ弾を作り出す。だが妖蝶はそれを、片腕の払いで易々とその弾道を逸して無力化してしまった。

まだ幾らでも咲かせられるわよ、種はたくさん作ってあるから。

これを、いくらでも?私のなんかよりよっぽど凶悪じゃない?

国境警備やらされてるのよ、つくづく面倒なんだけど。これはその手間を省くために開発中の常備兵。あんたみたいなのが侵入してきたときに、いちいち私が出てこなくていいようにね

へえ〜、天寿国この世界は一枚岩ではないのね

自分自身を見てからいったらどう?

それもそうね、といい終える前にエタニティ・ラルバの体が、背負う蝶の羽の大きさに見合わない俊敏さで翻った。くるりと回り正面に向き直るときには、振り下ろす姿勢。

突如襲いかかった熱の塊を、幽香は受け止めるのをやめ後ろに飛び退いて回避した。炎をまとった蛇のようなものが、幽香の立っていたあたりを打つそこは瞬時に変色した。炭と、灰と、きらきら反射する何か。土壌成分が急激に加熱冷却され硝子化したもののようだ。制御減衰した熱波が幽香の体を撫でる。制御されなければ暴力的な高熱だっただろうことが、想像できる。「ちっ」幽香は舌を打った。

じゃあ私も仲間に入れてよ、そのの仲良しごっこにサ!

エタニティ・ラルバは人差し指を立てる仕草で、邪気のなさ過ぎる邪悪な笑顔を幽香に向けている。人差し指の先端から僅かな距離をおいて、蜷局とぐろ巻いた一重螺旋の形に閉じ込められたプラズマが、灼熱と光を抱いている。プラズマだけではなく、熱そのものも何らかの術で閉じ込められていた。それを変形させたり部分的に放出して線状に伸ばしたのが、幽香を襲った炎の蛇ファイアウィップの正体らしい。

不気味ささえ感じる冷たい無邪気さを貼り付けたエタニティ・ラルバの笑みに向けて、魔界根鳳仙花の弾種が放たれる。一発はふわりと浮き上がり身を翻して躱し、もう一発はファイアウィップで真二つに切り裂く。ひゅう、と白々しい焦り顔で、エタニティ・ラルバは幽香を見た。

仲間に混ぜてほしいのなら、まずは礼を尽くすことだわ

意地が悪いのね

何故彼女が頑なに、博麗神社によるエタニティ・ラルバの神格付けに反対するのか、周囲の者は誰も理解できていなかった。エタニティ・ラルバがこうして顕現した場所が彼女の広大な封地の中で、今もそこに居座り続けていることが影響しているかもしれないと噂こそされているが、真意は誰にも明かされていない兎に角、辺境伯として強い権限を与えられている風見幽香が反対したことで、神格付けは一旦保留されていた。

こうして戦闘向きの装いで現れたのはもう、風見幽香にとってその対応が決まっていたからだ。博麗と八雲がこの蝶に神格を一度与えてしまえば、私闘は事後に面倒な手続きを要するその前に、してしまおうとしてのことだ。

……博麗はお前を警戒している。お前が現れてから、禁惟縦走路デザイアドライブの奥に体よく押し込んだ新参共が急にザワつきだしたからよ蝿の湧いた死体をつついたときみたいにね

でざいあどらいぶ?

豊聡耳、蘇我、物部、それに摩多羅心当たり、あるんでしょう?

「ああ〜」言われて気付いたとでも言う様子で、エタニティ・ラルバは手を叩いた。そうして体を少し動かすだけではらはらと、その背の羽根から煌めく光の粒を返す鱗粉があたりを舞うこの輝きは、もし彼女が正式に神格を得た暁には、彼女に十分な神威を与えるに違いなかった。

ただ今はまだ神格を得ておらず、その状態で次々に無許可でニンゲンを狩っているのだ人妖のあわいの均衡を保ちたい博麗にとっては頭の痛い出来事だった。

皇子とそんな奴らもここに、来ていたのね

お前に妙に警戒心を抱いている

ええ、言いたいことはわかるよ。でも私の方には……皇子には今更会って言うことなんてないわ。

なら、摩多羅か。

確かに秦のやつに借りはある、私がこうして現れてはケツの座りが悪いでしょうね。でも、向こうが勝手に突っかかってきてるだけ、私からはもう用事はないわ。私に必要なのは

風見幽香の表情が、明らかにムッと曇る。リグル・ナイトバグが、それか。

あなたは随分と、リグル・ナイトバグにご執心なのね

それは、お前の方じゃないの?あの虫けらに随分と拘るようだけど

ええ、勿論。私は彼に会うために、天寿国くんだりまでやってきたのだから

天寿国?幻想郷ここのことかしら

天国でも、地獄でも異世界でも非現実の王国でも、呼び方は何でもいいわ。、あなたと彼が一緒にいてくれないと意味がないのよ。一人でここにきたってことは……なにか都合が悪いんだね

都合、そうね。あれは今ウチの店番をしてるわ。店を空けるわけにはいかないのよ。あんた、を知っているの?

はあ。そんなの、どれでも良くない?

自分の苛立ちを隠す必要がこれっぽっちもない人生を送る幽香の辞書に、ポーカーフェイスの文字はない。リグルの話を持ち出されるのが癪に障ると、露骨に態度にあらわれていた。

ええ、そうね、そうだわ全く関係ない。訂正ありがとう。博麗の疑念も道士たちとの関係も、摩多羅神との因縁も私には関係ない。そのどれだって、私をイラつかせていい理由にはならないわ

理由なら、幾らでも。この世界は、過去に拘泥した哀れな者達の世界なのでしょう?だったら理由は、幾らでもあるわ。、あなただってそうでしょ??

お前、まだわかっていないのね、リグルが無自覚に羽化するとどうなるのか。過去を見せ続けて、あれが一体どうなるのか

いいえ。いいえ、わかっているわ!彼は神の眠りと悪夢を知っている。柔らかく丸まった私の背腸せわたを切り捌いて、胎児の夢から現実を取り出したのは、彼だもの!……彼が自分の宿命に気付いていないはずがないわ

買いかぶり過ぎね。あれにそんな大それた機能があるわけがないでしょう。精々

そう。変態するだけ。今までの彼とは全く違う、別物に。

言っていることが支離滅裂よ、電波女はおっかないわね

風見辺境伯TheSleepingDandeLionは、配役を着直す。傘の石突きを蝶妖に向けて、死の宣告とでも言わんばかりに振る舞ってみせた。

まだ、彼の変態を、認めたくないのね

あいつは元々ヘンタイよ

はぐらかさないで

アイツのことをどれだけ分ってるんだか知らないけど、あんまり自分勝手な思想にはめて相手のことを決めつけると、嫌われるわよ?

あなたこそわかっていないよ、わかっていなかっただろう、風間優香!

ふん。永遠に幼生でいられるなんて舐めた思想で生きられなかった逆恨みを、あいつに向けるんじゃないわよ、アダチル女。

風見幽香は魔界棲性植物を後ろに率い、幻想郷へ新たに名を連ねんとする蝶妖エタニティ・ラルバに改めて対峙する。それは、幻想郷とその外を区切る境界の一部分の支配を任された、大妖怪の権能顕示とその宣誓。

博麗の決定がどうだか知らないけれど、エタニティ・ラルバ、私はお前の幻想入りを許さない。

§

掃射

風見幽香が命じると、魔界根鳳仙花はシードブリッドを撒き散らす。それはエタニティ・ラルバが生やした〝枯命の橘林〟を薙ぎ払い、その上でエタニティ・ラルバ本体へも攻撃として浴びせられる。

は。流石は八博の外縁暴力装置。これを見せられれば守矢も神奈備もちょっかいだそうとは思わないだろうね。

余裕ぶってていいの?

妖蝶はそれをふわりとした動きで避け、弾着からの衝撃や破片も危なげなく回避した宙返りざま、花卉兵器を従え悠然と立つ風見幽香へ炎の鞭を伸ばす。

空を切るのに加えて急激に熱膨張する空気の異様な音を鳴き声を響かせる魔鞭の一撃を、花妖は手持ちの傘で受け止める。振り下ろされたフレイム・ウィップの衝撃は傘を通じて風見幽香の身体、足、そして地面へと伝わり風見幽香の足元にクレーターを抉ったが、当の風見幽香は叩きつけられたその熱と衝撃に動じている様子はない。傘は砕けて中折れたが、引き上げた鞭を尻目に、まっさらな新品が映像ワイプのように現れた。

一発も耐えないか。見かけに似合わずキツイ攻めね、鞭なんて

他でもいいけど?

エタニティ・ラルバの掌から、油膜のような偏光色彩に包まれた、球形のエネルギー体が浮かび上がる。表面に蝶の翅のゆらめきに親和したような緩やかな波打ちを纏いながら上昇するそれを風見幽香は、視線はエタニティ・ラルバから剥がさず意識だけで追う。

それは太陽を目指すようにゆらゆらと空へ昇るが、おかしい、距離が離れていっているにも拘らず、ここから見える大きさは何一つ変わっていない。認識の距離感に違和感を覚えたその瞬間。

意識の裏返る音が聞こえる、耳からではない、音が聞こえたという認識を、インジェクションされる。どこから?あの、揺らめき鈍光る光球からだ。あたり一面を焼き払うような術式ではない、だが上空に登りきってからの領域の展開速度は風見幽香の反応速度を越えていた。妖しく揺らめく光は陽光に重なってしまえば全く視認できないが、展開された領域には既に術式が書き込まれている。

幽霊光ゴースト・ライト

拙いっ……

傘という特殊な得物は幸運であった。天に昇った光球に向けて、傘を展開する。そうして防げるのは直接の射線のみ。エタニティ・ラルバのこの光は反射を利用して既に空間に充溢している、地面に反射したそれは傘の裏側に回って風見幽香を曝露させた。

ぐっ

傘を持たぬもう片方の手から、乱暴に妖力を叩きつけ足元の地面を穿つ。地面で暴発した妖力は砂煙を上げそれにより反射光は薄れる。叩きつけ霧散する前の妖力滓を捕らえて再利用し防壁を形成した。

少し、入った

うえー、傘って私と相性最悪なんですけど

直接ダメージを及ぼすタイプの術ではないらしい、体には傷もなく服にさえ僅かな衝撃もなかった。だがそれは、風見幽香の精神を炙り始める。体にダメージはないのに、内奥が軋むように苦痛を訴える。妖怪の体内を血液のごとく循環する妖力がその流通を阻害され、瞬時にコンディションに影響し始めた。

防御自体は容易だが、時間差、しかも曲射を含んだ射線でアストラル側からのスリップダメージを強いる。

炎属性の攻撃をしてきたときは直接攻撃タイプかと思っていたけど、小賢しいわね

少し触れただけで戦力ダウンに繋がる訳では無いが、蓄積されるとジリ貧を強いられるかも知れない擦り減ったところに炎の鞭フレイム・ウィップが浴びせられれば、苦しい。

だが、エタニティ・ラルバの精神攻撃は相手の妖力霊力を擦り減らすだけでは無いらしい。

なぜ、彼を懐に置きながら、彼を否定するの

エタニティ・ラルバの声が、まるで耳元で囁かれているように、風見幽香の鼓膜を撫でた。そんな距離ではない、声を張って会話ができる精々の距離だ。だが、息遣い一つ一つのディティールまでが読み取れるような繊細な、そして至近な声色が、風見幽香には確かに聞こえている。

否定なんかしていないわよ。ああ在りたいと願っているのは、あいつ自身だもの

〝ああ在りたい〟。彼は、どうなりたいのかな

あいつは、自信がないのよ。

それは、幽霊光ゴースト・ライトの精神攻撃の一環らしい。よく見れば、エタニティ・ラルバは、流れてくる声の半分程度しか口を動かしていない。風見幽香の内奥を、小さな言霊で引きずり出している。

そんなものは、私が担保してやるって言っているのに

でも、彼はそれを拒否している

これは、何?何を言わされているの

うるさいっ!傘を傾け石突から光線を放ち、上空の光球を撃つ。貫かれた幽霊光ゴースト・ライトの光源はひび割れるようにして砕けて霧散した。

さっきから対応早っ……弾の編織時間が、無い?

一撃で撃ち落とされると思っていなかったエタニティ・ラルバはわずかに眉を顰ませる。だが、入り込んだ術式は相応に機能を続ける。

彼は、自分の足で立ちたいのよ。あなたなんかに頼らなくても。あなたが、子離れできない毒親みたいに振る舞うから

だまれ

シードブリッドの弾幕を掻い潜りながら、エタニティ・ラルバへ接近戦を仕掛ける。ひらひらと蝶が舞うように予測しづらい動きで距離を保つエタニティ・ラルバは、回避行動とともに第二、第三の幽霊光ゴースト・ライトを設置する。一方で、その回避行動後の軌道上には、陽光とそれに幽霊光ゴースト・ライトを反射してキラキラと煌めく粉のようなものが展開されていく。蝶の翅の鱗粉だ。

どうして、自立させてあげないの?さみしい?

ぬかせ

どこまでが本当の声だ、風見幽香は耳元から鼓膜を震わせずに脳そして精神に直接意味を注ぎ込んでくる煩わしい毒に注意を奪われながら、エタニティ・ラルバを追う。

追えばふわり右に逃げ、右に追えばふわりと左へ揺れる。風見幽香は自身で目に見える方を追い、一方でその逆方向へと牽制弾幕を置くことで回避選択肢を狭め、徐々に距離を詰めていく。

距離、だ

風見幽香はエタニティ・ラルバの回避選択肢が十分に減ったことを確信する。霊力を乗せた拳のリーチ内、だが近すぎて傘からのレーザーは小回りが効かない。

一発、妖力の余波で攻撃範囲を拡大した拳撃を放つ。ふわり、回避するエタニティ・ラルバ。拳を振るった風見幽香の動きには攻撃後ディレイが貼り付いている。

いつまでも保護者気取りなの?それとも

ラルバはその隙を刈り取るべく、ひらりと舞って宙返り背後に回った位置取りから

怖いのかなあ!?

牽制に火炎礫弾ファイアー・ボールを幾つも織り交ぜながら、火鞭を振りかざす。鞭がしなり先端が打撃前兆動作に入った。大振りの拳を空振った風見幽香の背中はガラ空き、防御動作は愚か緊急回避も間に合わない距離に見える。だが。

!?

風見幽香の手には、先程まで握られていた傘が、無い。

傘は、空中を舞っていた途中で放り投げたのだ。そして、炎の鞭フレイム・ウィップを振りかざしたエタニティ・ラルバの方へ、石突が向いている。

怖いものか、あんなやつが、どうなろうと!

キン!と空気が激甚に切り裂かれる音が響き、傘の先端からレーザーが放たれる。それを先見したエタニティ・ラルバは即座に鞭をキャンセルして身を翻した。

やっば。脳筋かと思ってたのに

察知するか

レーザを放った傘は、風見幽香の手から離れその庇護を失ったことで自出力に耐えきれずに自壊した。新たな傘が出現する。風見幽香の手と、更に空中に二本。

緊急回避行動で制動が崩れかけたエタニティ・ラルバへ、風見幽香は一気に肉薄する。脇のホルスターを弾き、いつもであれば呪符が格納されているそこから取り出したのは、何かの花びら。それを乱雑に周囲に撒き散らすと、それはひらひらと空中を舞う。風に吹かれているとは言え明らかに重力に逆らい高さを維持している。

あなた、案外、リグルが怖いんじゃなくって、リグルが変わってしまったことで自分が変わるのが、怖いんじゃないのお?

……案外余裕、あるのね?

これは、目眩まし?

ただの花びらである筈がない。展開された傘タレットを警戒しながらエタニティ・ラルバは退避行動を取る。タレットの回頭性能は正確だが、射撃時に一瞬のチャージがあるラルバは動き続けることで脅威がなくなると踏んだ。まるで無重力中を自由に泳ぎ回るように、天地左右の拘りなしに、予測しづらい動きで退避行動を取り続ける上、本体は火鞭、援護射撃に射線の概念がない幽霊光ゴースト・ライトを配置しながら逃げる蝶妖を、幽香は詰めあぐねる。

妖精にしては、賢しい……亜神エタニティ・ラルバラルヴァクィーン、か……

エタニティ・ラルバが移動した軌道上に拡散される妖蝶の鱗粉ミニット・スケールスが、幽霊光ゴースト・ライトを乱反射させる。展開後に時間差で迫る反射・曲射のそれを完全に防ぐには全方位防御するしかない。だが、そうすると距離を取られてエタニティ・ラルバの戦場が出来上がる。風見幽香にとっては被弾覚悟で距離を詰め続けるしかない。

彼に悪い虫が付いてはいけないから、私が払ってあげる。

どっちが悪い虫だか。お前はリグルを、どうしようというの。あいつを安易に刺激して

なに?新参者に、嫉妬?

ぎんっ!

突然、それまで丁寧に回避と防御を重ねながら距離を詰めていた幽香が、被弾を顧みずに大型レーザーを放つ。防御を捨ててはなったとは言え、その太さと威力に比較して発射モーションがあまりにも小さい。紙一重で回避するエタニティ・ラルバの顔から、余裕が消える。

僅かな射撃モーションを見逃していたら、半身を吹き飛ばす程の大型レーザーの餌食だった、それに被弾を意に介さずにその砲撃を行ったデタラメさに、声を上げる。

っちょ、図星ぃ?にしてもやっぱ展開早い、何なのよそれぇ!

今のを、躱すか

傘タレットからのレーザーと対称的に、今のレーザーは異様に射撃モーションが短かった。だからといって威力が低いわけではないことも、グレイズの瞬間に理解できた。エタニティ・ラルバは警戒を強める。何しろ、傘タレットは未だに建材で、花びらはまだ舞ったままなのだ、何をしてくるかわからない。

妖精に近い妖怪だって聞いてるから、能源はエレメンタリーだとばかり思っていたけど、術式の展開が早い。請願ではなく契約っぽいな……魔界の植物を使役しているのもそうだし

逃げてばかり。本当に、弾幕とは、内面を表すわね

何も考えずに攻めてばかりでは……リグルの想いを取り逃がすよ?

結構よ。私はあいつの何かが欲しいわけじゃない。

それって本心ん〜?

防御を捨てて速射した大型レーザーは、その出力故に周囲に魔素干渉を招き、被弾ダメージ自体は見た目ほどではない。それでも、レーザーの照射動作が終わるまでに幽霊光ゴースト・ライトに曝露し続けたのは少なくない影響を招く。

苦々しい表情を見せつつも、距離を離したくない風見幽香は畳み掛けるように追いかけた。傘タレットでエタニティ・ラルバの背後を牽制し、フラワーショットで左右の動きを狭めながら、蝶妖の正面を押し続ける。

一方のエタニティ・ラルバは追跡を困難にする、蝶のように舞いながら螺旋を描いて浮遊する低弾速の弾幕をばら撒いて距離を取る。傘に触れた蝶は接触物に取り付いて高エネルギーを放射して爆ぜる。接触こそしなくても、付近で爆発されるだけでも攻撃力を持つ。

あなたは結局、ただの傍観者だった。それを今更偉そうに。

今更だからよ。お前がわざわざここにやってきた理由と、そう変わらないっ!

不規則な蝶型弾の回避に手間取って距離が離れると、すぐさま炎の鞭フレイム・ウィップの一撃が見舞われる。傘を盾にして防御すると、逆方向から蝶弾や幽霊光ゴースト・ライトが入り込んでくる。

ただ追っていても密着距離に持っていけない

風見幽香としては、密着から妖力を直接叩き込む肉弾戦に持ち込みたいのだが、空中で大きく側転するように移動回転しながら、回避と移動、それに弾幕の展開を兼ねる動きがそれを易くは赦さない。エタニティ・ラルバは逆さまに泳ぎ弾幕を散らしながら風見幽香を挑発する。

リグルを羽化させることで、あなたの何に、都合が悪いの?可愛い庇護対象がいなくなっちゃうから?もしかしてあなた、彼に依存しているの?

違うわね。これはあいつの問題よ。〝痛み〟ってのはね、人と共有しないから価値があるのよ。理解されないから気持ちいいのよ。自らの手で解毒して我が物にするから意味があるのよ。誰かに手取り足取り教わって、他人の手で解きほぐしてもらう毒なんて、ただの中毒にしかならないわ。

どっちが電波女よ、あなたの倫理観のほうがよほど壊れていじゃない

中身がぐちゃぐちゃだってね、外が整っていれば生きていけるのよ。それができない幼虫に、その先のことを語る余地なんて、他人を救う力なんて、誰かと一緒に生きる資格なんて、毛ほどもないのよ。思い知りなさい、甘ったれたクソガキイモムシ

回避の精度を下げてでも、距離を詰めに行く風見幽香。肩に、足に、蝶が取り憑く。蝶の自爆を直に受けて、流石に損傷が増す。幽霊光ゴースト・ライトによるスリップダメージも嵩んできていた。

その時、自律行動時間が尽きそうな傘タレットが、一方向を封じた。そこに向かう直線距離に、蝶の隙間を見出す。フラワーショットの弾道はそれを孤立させることを予感させている。鳳仙花のシードブリッドは断続的にだが確実に退路を限定していた。偶然の賜物だが、風見幽香はこれを待ち続けていた。

あとは……

わかってるけどね。彼が何を内包しているのか。人間がその言葉によって無意識に削り続けている概念畏怖、それを彼が一度に取り戻したら

そこまで知っているのなら、話は早いわね。流石は、神になりかけた虫けら

それ、リグルにも言える?

いつも言ってるけど

正面からの蝶の被弾を諦めその場で静止する。

蝶が取り憑いた。翅をひらひらと数度動かして停止すると、爆発する。空中で無防備に停止して的になった風見幽香へ、蝶が次々に取り憑く。

何……?

渡り蝶に埋め尽くされた木のように、風見幽香の姿が蝶の翅ばたきに埋もれて見えなくなる。そしてそれが一斉に爆発した。生易しいものではない、直ぐ側で爆発性の魔薬瓶が爆ぜるようなものだ。

……何のつもり?

自殺行為とも思える空中静止をみて、エタニティ・ラルバは訝しんだ。爆裂閃光の残光から見えるものを油断なく見ようと目を凝らした刹那。

ヴンッ!

蝶弾の密集爆発による光が衰えぬ内にその側から、二本の大型照射弾が、放たれる。その照射元は、明らかに、風見幽香。

!?

残る退避ルートを封じるように、持続性の照射レーザーが設置される。

その光線が自身を直接狙っていなかったことに気づき、他の弾幕の配置を確認するエタニティ・ラルバ。

しまっ……

タレット、フラワーショット、それに二本のレーザー。それらが退路を封じたところに偶然、一瞬だけ生じる、蝶弾の密度が薄い導線。

蝶弾自爆の残光の中から機影を浮かび上がらせる、風見幽香。無傷ではない……どころか、戦闘用の装束には激しい損傷が見られる、肌にもただでは済んでいない焼け爛れた後と出血が見えるが、それを意に介さぬ不敵な表情を浮かべ、爆発的な速度でエタニティ・ラルバへ突き進む。

させるかッ……!

幽霊光ゴースト・ライトの光弾を予測軌道上に直接配置し、即応で蝶弾を追加する。退避軌道上にばら撒かれる妖蝶の鱗粉ミニット・スケールスは一つ一つが細かな毒機雷となって迎撃する。

はっ、そんなもので!いつかの覚悟が見えないわよ、メンヘラ女装男子!

逃げただけのやつに、言われるまでもないッ!!

幽霊光ゴースト・ライトは、向精神光波への曝露を無視して直進し拳で破砕。蝶弾の群れも取り憑かれるままに、自爆をもろに受け、体中に鱗粉の毒針を受けながら進む。蝶に取り憑かれた箇所は風見幽香の身体強度をしても肌が焼けその内側の肉を煮沸させる。所構わず突き刺さる毒鱗粉の細針は、激痛と麻痺それに壊死を招く。

それでも、突き進んでくる、風見幽香。血みどろの姿に、薄ら笑った顔。精神波で擦り減っているにも拘らず膨大な妖力を残した体躯。

それだけか、それだけか恵谷らる!

ふざっ、けるなァッ!

全身に被弾を受けながら直進する、そのルート上を一気に炎の鞭フレイム・ウィップで喰らい尽くそうと振りかざすエタニティ・ラルバ。触れたものを超高圧超加熱させる術式霊力線が伸び、ルート丸ごとを食い尽くされた風見幽香はそのさなかに突入してしまう。

は……ははっ、自殺願望でもあるっていうの!?

一撃をまともに食らった風見幽香の全身は、仮にもヒトに窶した身体の構成要素をブスブスと燃焼させ、炭化あるいは一部はダイヤ化して、勢いを失った。

…………。その程度で、あいつを連れていけると、思っているのか!!

なっ……

ほとんど黒焦げの人型の表層が割れ、その下から肉色が飛び出す。熱傷の表現では相応しくない致死的な状態だというのに速度を落とさぬまま、さっきまで駆け抜けていた最短ルートを、更に直進する。エタニティ・ラルバには、後ろに下がるルートも上下に避けるルートもない。いや、いずれかへの被弾を覚悟するのなら、ある。だが、躊躇った。風見幽香が言う〝いつかの覚悟〟が、無い。

いい加減、ヒーロー気取りも大概だァっ!

ヒロインであることさえ諦めた奴に、できるものではないわ!

炭と焼け爛れた肉だけになった風見幽香とエタニティ・ラルバの距離は、まだ幾許かある。炎の鞭フレイム・ウィップのもうひと薙が間に合ってしまう間合いだ。

それとて同じだ、偽善者!こんなものは、ぐちゃぐちゃにまじってるから、食えるんだよ。綺麗により分けられていたら、食えたものじゃない!

そうね。だから挽き肉にしてあげるわ。お望み通り、合い挽きに戻してあげる。その形もわからないほどにね

やってみろ、〝女〟ぁ!!

一撃目の鞭を返す形で、再び炎の鞭フレイム・ウィップ振りかざす。その範囲内から、風見幽香が逃げられるようには見えなかった。一撃目は驚異的な堅牢さで耐えきったらしいが、その姿から二回目の耐久があるようには到底見えない。

だが。

っつてんのよ、この程度の!自分の喉を切り裂いた、あの覚悟を忘れたお前なんて、取るに足らないわ!

振り抜かれたかと思った火鞭を、あろうことか、左手で直接握り止めている。まもなく人型の左腕はもろもろと崩れ落ちたが、それ以外の部位は苛烈な熱傷でいる。

こンの、バケモノが……!

炎の鞭を消去し、迎撃を諦めて退避行動に切り替えるエタニティ・ラルバ。熱風を置き捨てて追撃を防ぎながら、後方の傘タレットレーザーの中を突っ切る。

っぐ

削れてない……?

タレットレーザーが自動照準の設置兵器であるからと言って、威力に妥協があるわけではない。だが、その中を被弾しながら抜けたエタニティ・ラルバに想定通りの損傷がないことに、風見幽香は違和感を覚える。

動いたな

それでも本命の打撃はタレットではない。この機会を逸失しないよう、追撃の手を重ねる。

後手の回避行動を取らせた、ペースのバトンは入れ替わった。

満身創痍の木質妖怪ごとき、この波を凌げば距離はまた確保できるわ……!

後ろに下がりながら、蝶をばらまくエタニティ・ラルバ。追いかける風見幽香の方も左腕を損傷し、自然回復にはまだ時間がかかる、速度も低下していた。樹木の根のようなものに包まれた炭化した腕は、動く気配がない。それだけではない、全身の熱傷も決して軽いものではなく、血とも漿ともわからぬ液体を噴出している箇所は、再生中の線維性拍動を見せていた。

今のあなたに、追いかけきれるものではないよ!

……さあ、どう、かしら

風見幽香が、痛みを押し殺した笑みで、指を鳴らす。

エタニティ・ラルバは、周囲に浮かぶ違和感を見る……花びら。

これは

刹那、宙に漂う花びら一つ一つが細く丸まるように、しかし元のサイズに収まらないサイズに、細く長く鋭く伸びる針。

なっ……

ハクレイの真似だわ、これ

針の先端は一様にエタニティ・ラルバを向いている。レーザーの中を通り抜ける無理な退避行動の直後、制動を崩した蝶妖に素早い切り替えは、出来ない。

針一本一本を視認していながら、体を動かしきれないエタニティ・ラルバには、その刺突一つ一つが、スローモーションに見えた。

これ、が……あった

一本が、背中から突き刺さる。衝撃と同時に、その針はなにか重要な神経系を損傷した。防御行動が一層困難になる。

次いで脇腹。そのまま横隔膜から肺臓を貫いて逆側の胸部から先端が覗く。

腹、中途半端に貫通したそれは腹部内の臓器を捩じ切る。

あっ

喉の真横から突き刺さったそれは、衝撃の余り首の半分を吹き飛ばし、残った細い組織の断面からは液状組織が噴き出す。

ぁ……っ……っ

肩。脚。腕。腹、胸部、腹、胸部腕足鳩尾太腿肩背中腹胸腕腕腹腰。そして。

頭部。

ぶしゃっ。

止めになった頭部への一本。エタニティ・ラルバの小さな頭部は、破裂したように失われている。

じ……じ……と異様な音を立てているのは、翅の動きだ。蝶の翅だと言うのに、まるで蜂のように細かく痙攣し、デタラメに浮遊を続けていた。

多くの虫がそうであるように、集中神経節が頭部一つに限らないのだろうか。頭部の脳が中枢ではないのかも知れない。それでも、串刺しになったままフラフラと漂うそれが、既に生存可能には到底見えなかった。

それでも風見幽香はその浮遊する死体へ向けて飛翔するまだ、完殺を確信していない。

完全に、やらなければ

風見幽香が、ほぼ死体となり暴れる反射の電気信号で飛翔しているだけのエタニティ・ラルバだった物体へ到達しよう、とするとき。

浮遊を続けるエタニティ・ラルバの死体が、空中で静止した。ホバリングではない、翅の動きも一切が停止している。だと言うのに落下せず、何らかの力で空中にピン留め固定されたように、止まっていた。

やはり、まだ……っ!

スピードを上げようとするが、自身の損傷も安くはない。加速しきれずに、わずかに届かぬ距離でエタニティ・ラルバの身体に生じている異変を目にする。

全身が、灰褐色に変色した。柔らかそうだった人肌も針で貫かれた衝撃で飛び出した肉も、流れ出ていた体液も、それどころか突き刺さっている無数の針さえも巻き込んで、全身が石像か何かでもあるようにカサカサと乾いた質感の、灰褐色の物体へ変質した。

そしてまもなく、今は全く動いていない蝶の翅と翅の間、丁度脊髄に当たるだろうか背中の中央のあたりに亀裂が生じる。硬質な褐色の表面は割れたそばから剥がれ落ち、内側に生じた圧力に押し出されてひび割れは縦に広がっていく。

くそっ、ダメージが、引かない

が完了する前に、なんとか完殺を果たしたかった風見幽香だったが間に合わない。彼女の目の前で、〝脱皮〟が完了した。

背中から割れた古い体の内側から、全く新品のエタニティ・ラルバが、再び這い出してきたのだ。

体は糸を引くように保護液か何かで濡れている、翅も萎れているがそれ以外は全く無傷の姿だった。風見幽香は驚きと口惜しさを混ぜた表情で、睨みつけている。

っっっっはああっ、なん、なのよ、このバケモノ……!

こっちの科白だわ。確かに一度死んだわよね、お前

神に、そうした死はないよ

だったら、神も死ぬまで殺すだけだわ……!

やってみろ、その満身創痍で、バケモノ!

再誕したエタニティ・ラルバはくるり、と体を翻して周囲に妖蝶の鱗粉ミニット・スケールスを撒き散らす。まだ濡れて萎れた翅だが鱗粉の発生機能は残有し飛翔もできるようだ。

ちっ。

消耗している今、幽霊光ゴースト・ライトを受けるのは避けたい。風見幽香には、遠くからの砲撃一撃で決めるか、これまで同様に肉薄戦術で遠距離戦を封じるか、どちらかしかない。

ぶん殴らないと、気が済まない……!

跳ねるように加速して、インファイトを仕掛ける。距離を取りたいエタニティ・ラルバだが、翅が濡れているのか先程のような軽やかな動きではない、若干ぎこちない動作で退避を試みる。

おとなしくっ、しろ

あなたこそ、もう焼けていればよかったのに!

まだ生きているシードブリッドの牽制射撃を受けながら詰める。翅が乾いて元の機動性を取り戻す前に、なんとかしたい幽香。

逃がさない

うっざぁ!

拳撃のリーチに入れば、風見幽香のペースになる。ラルバはそれを避けるべく蝶弾を撒きながら凌ごうとする。

ひゅっ、しゅっ

幽香の拳、それに蹴りが、ラルバの体を捉えようと伸び、ラルバはそれを回避し続ける。密着した駆け引きは得意ではないエタニティ・ラルバが、徐々に押されていくかと思いきや、幽香の動きが悪い。

大振りの攻撃を回避できれば、その隙に脱出できる。その機会を窺い耐え続けるエタニティ・ラルバ。

年貢の納めどきね

年貢なら、散々払ったんだけど……!

別口だわ

何度も肉薄と回避をお互いに擦りながら、まだ風見幽香のリーチ内ではない。だがここで、彼女は無理にもう一歩踏み込み、明らかに大振りな強撃を構える。脇を締めて引いた拳を、捻りを入れるようにまっすぐに前へ突き出す。腕を一杯に伸ばして、リーチは最大、当たれば威力も十分だろうそれは、しかし例えそうだとしても、まだ届くようには見えなかった。

焦っている?明らかに届かない。これを振らせれば、距離が取れる……!

好機と見たエタニティ・ラルバが、防御を解いてスウェイし、そのまま後方へ離脱しようとする。幽香の拳撃はラルバに届くことなく、鋭い勢いが虚しく空を撃つ。

凌いだ……っ!

行動後ディレイが発生し、その隙に後方へ離脱が完了すると見たラルバだったが。

……甘いわね

拳は全く届いていない。だが。

ドスン!

っ……っが、あああ!?

距離にして腕自体のリーチの数倍、高さと幅は幽香の身長の倍ほどにもなる範囲に、爆発的なマナの摩擦ルミネッセンスが生じ、網膜を焼くほどの閃光の中から巨大な妖力衝撃波が伸びる防御を解いて後方へ逃げていたエタニティ・ラルバは、その範囲内だ。

妖力をそのまま運動エネルギーに化けさせて直接ぶつける、風見幽香の常套手段だ。

鈍い音が響き、エタニティ・ラルバの体がに後方へ大きく突き飛ばされる。防御行動を取っていないクリーンヒットだ、ダメージは計り知れない。

が……!ぎっ……おっ……

……?

思い切り後方へ突き飛ばされたエタニティ・ラルバだが、ダメージを受けつつも意識は保っている。

なんて、馬鹿力なの……でも、お陰で、距離が、とれたよっ……ありがとう?

ええ、礼には及ばないわ。これで、仕舞だから……ッ!!

風見幽香は、前方に先端を構える傘の脇に手を添えて、人差し指を傘の脇腹へ擦るようにスナップさせるぷらん、と何か紐のようなものが垂れ落ちた。セーフティだ。

ふゅんっ……、光線が空気を撫で裂く音がやむと、それまで畳まれていた傘がばさりと開いた。親骨からスラリと伸びた八本の曲線が露先を超えて伸びて、風見幽香の体を覆い隠す八角形を描く。

な、に?

甲高く響く金属音は、縮重状態から一気に解放され急激に質量化するエネルギーの鳴き声だった。呪術的に具象化された操作的なマナが不正なモナドを配列して傘体を流れると、空気中の自然マナと摩擦してアストラル光が励起される。飽和した色量が白色として輝き、傘体から展開された八角形アンテナからその先端の方向へ、放たれる。わずかに放射状に天空へ伸びる、これは照射予告だ。

チャージされている能源の性質を、亜神エタニティ・ラルバラルヴァクィーンは、亜神であるがゆえに察するこれは、通常の魔術ではない。

未分化・無属性の妖力を物理概念能源へ投機している?自然元素属性を帯びずに、妖力を妖力のまま誘導放出増幅……運動エネルギーレーザー、な、なんだよそれ?!

それまで幽香の傘から放たれていた照射レーザーに比して何百倍もの太さが宣告され、エタニティ・ラルバは息を呑んだ。

にげ、なきゃ

眼球を忙しなく動かし予告照射の範囲と自分の位置の関係を確認する。

まずい

どこが最短だ

まずい

どこが薄い

まずい、まずい!

遮蔽物は

まずいまずいまずいまずいまずい……!!

……矮いたまま翅で届くものは、何も無かった。

八本の予告光線の範囲からの脱出が間に合うようには到底見えない。

微々たる射角修正だけで用意に回避行動半径を飲み込む、超大口径の予告レーザーが宣言されていた。その巨大さには弾道という言葉も射線という言葉も適切ではない、空間制圧攻撃マップ兵器マナ鳴きキーニングが一層高鳴り鼓膜を劈くほどに叫んでいた。

距離を取ればそのまま有利を得られると踏んだエタニティ・ラルバが、突然の立場の反転に顔を歪める。

そして、風見幽香が、宣言した。

まだだぁあああああああああああああああああ!

宣言そのものを潰そうと、不安定な姿勢で炎の鞭フレイム・ウィップを振りかざすエタニティ・ラルバ。まだ、カットが間に合う用に思えた。小さくはないダメージを追っている、しかも砲撃姿勢で無防備な状態だ、風見幽香本人に火鞭の直撃を入れれば、このような巨大な魔砲は確実に中断できる。

だが。

-f">擦り潰れろexecute-f

!?起動早すぎるでしょ!何なのよそれ、さっきから……!!

恐らくこれが通常の元素魔術エレメンタリーであれば、エタニティ・ラルバの炎の鞭フレイム・ウィップでカットが十分に間に合った。だが、またしても風見幽香の魔砲は、エタニティ・ラルバの想定を上回る発生速度を見せようとしていた。

呪符スペルではないゲームではないこれは、純粋に破壊を目的にした、純粋なパワー。

風見幽香という妖怪がその凶悪さを語られる大妖怪と渾名されるのは、本人の気性に因るところもさることながら、純粋に、その妖力の特性故である、つまりそれは、その容量の膨大さ、その属性である物理的妖力。

魔界棲性植物を含んだ植物の動物的使役はこの世の常識から逸脱した異能ではあるが、それは風見幽香という妖怪を語るには、役不足である。

物理概念装纏ゆえに自然元素のいずれにも魔術的減免レジストを受けず、この世のいかなる存在エンティティの物理的抵抗に対しても単純計算な浸透を以て、対象を圧潰させる。運動エネルギーと空間の折り畳みこそ、真のパワーよ。アストラルからの迂回干渉なんて無駄に通行料が掛かるだけだわ、アホらしい。直接殴れば、早いのよ。

……ふざけるな……!

当然じゃない?物理は元素魔術じゃないのよ、下らない。手続きは簡便で高速ただ、力だけ。

腕力で素税回避……魔術師の債務を踏み倒すなんて……そんなデタラメなものを……!

信じられないものを見るような目を、風見幽香に向けるエタニティ・ラルバ。

もはや炎の鞭フレイム・ウィップをキャンセルしたところで、離脱は出来ない。エタニティ・ラルバはそれを振り抜くしかなかった……振り抜こうとして、間に合わぬ結果を受け入れるしかなかった。

対し、風見幽香からエタニティ・ラルバへ向ける視線は、冷ややかだ。

極光が、訪れる。天を穿つと言う表現では生ぬるい。空を覆って焼き尽くし、太陽を陰らせる、破滅的な破壊光線がエタニティ・ラルバのいる……いや、ただ、亜神を巻き込んだ。炎の鞭は振り抜かれようとしたが、砲撃中の風見幽香に届く途中で、崩れるように消える。

バケモノ、が……!

エタニティ・ラルバの呪わしい言葉もろとも、光が飲み込み掻き消した。

拒絶不可能な暴力。それを体現する巨大魔砲が、亜神を食い尽くし、しばしの残光を残したあとで、消えた。

あの日も、エタニティ・ラルバ、否、恵谷らるを目の前にしたとき、こうして毅然としていればよかったのだ幽香は胸中ひとりごちた。そして、こう言えばよかったのだ。

さよなら

§

質量煙ダイラタンシー……高密度妖蝶の鱗粉ミニット・スケールスで実装したっていうの!?

わたしは、しなない……まだ……

虎の子の魔砲で仕留めきれていなかったことに、風見幽香は流石に狼狽え、その防御方法がわかったときにはその色を一層濃くした。

それ自体は驚異的なことだが、亜神エタニティ・ラルバラルヴァクィーンが既に瀕死であることに変わりはない。

即応で展開し妖蝶の鱗粉ミニット・スケールスを剪断増粘性をもつ粉粒体として纏う防御行為は、しかし速成故に光線の破壊効果を完全遮ってはいなかった。部分的に通過したそれは確実に亜神エタニティ・ラルバラルヴァクィーンの体を貫通し、遮断した箇所では巨大な運動エネルギーと増加した体積を、緩衝せぬままにその身に受けることになる。

極光の引いた大天空に砂粒のように残った亜神は、破壊光線に随所を貫かれて空洞化し、あるいは瞬時に増大した巨大な質量圧縮に晒されて血肉の搾り後のように潰れてぶら下がっている。頭部と左腕以外はほとんど形を残していなかった。

それでも、生き延びている。

しなない……こんどこそ、わたしは……

トドメを、あげるわ。

風見幽香は、もう一度魔砲を構える。先の巨大魔砲ではないが、ああなった瀕死の亜神程度なら、今度こそ消し飛ばせる。

左腕はまだうまく動かない、右手に持った傘をの先端を真っ直ぐに瀕死の亜神エタニティ・ラルバラルヴァクィーンに向けて、砲撃姿勢を取る。

まだ……だよ

っ、な……なに……?

エタニティ・ラルバの言葉を警戒した風見幽香は、チャージが万全ではない魔砲を、即座に放つ。それは、本体に届く前に、なにか障壁のようなものに防がれた。

また質量煙ダイラタンシー?違う、これは

光線は蝶神の手前で弾かれるように消えたのではなく、自身の範囲から放たれる前に掻き消えたような形だった。幽香の回りに、なにか壁のようなものが、ある。目を凝らせばそれは、霞のように。

夥大質量魔術が……仇になったね……あなたほどの妖怪には微量じゃ何の効果もなかったろうけど、もう尋常じゃない量に触れてる。

なに、を……う、っ

この辺一帯ありったけの鱗粉が、あなたお得意の物理パワー質量で、尽く吸い寄せられてる。

鱗粉……っ!?

お前の命も、〝結実〟させてあげる。

退避行動を繰り返しその間に撒き散らされた妖蝶の鱗粉ミニット・スケールスが、巨大な物理魔砲の質量形成に誘引されて風見幽香の周囲に集まっていた。元々毒性のある鱗粉が風見幽香の周囲に濃密に浮遊している。霞のように浮遊していたそれは急激に可視化され、明らかに物理的な存在感を示す。

くそっ、これは……!

妖蝶の鱗粉ミニット・スケールスが毒鱗粉の形質を変化させ質量煙をなして風見幽香を包み込み、その範囲を狭めていく。内側からの拳撃や魔砲を放ち脱出を試みるが、鉄壁の煙となって通過を許さない。剪断を生じぬようゆっくりと通過しようとすると、妖蝶の鱗粉ミニット・スケールスの凝集速度に間に合わず、やがてはその全てが風見幽香の体に付着した。

尋常ではない量の粉粒体に体表の全てを覆われ、まるで鱗粉の塊出できた人形のような姿になる幽香。慌てて剥ぎ取ろうとしても剪断力が働き弾かれ、ゆっくり取るには余りにも、致命的な効果を持っている。

こんな、ことっ……!

粉粒体が体の輪郭をぴっちりと象るように固着し、石像のような形に風見幽香を捕らえてしまった。頭から爪先まで、全く隙間なく、粉粒体が表層を覆ってしまっている。

私の勝ちだよ

ボロ雑巾に頭と捻じ曲がった腕だけが辛うじて付いているような姿、虫の息の亜神エタニティ・ラルバラルヴァクィーンが血まみれの表情を震える笑みに変え、関節の可動域とは逆方向に曲がった腕を幽香に向けた。

非時香菓ライフスティール

粉粒体の圧縮石像に囚われたその内側で、毒鱗粉に戻った妖蝶の鱗粉ミニット・スケールスが体表から皮膚を食い破って皮下に入り込み、対象の生命エネルギーを吸い上げる。吸い上げられたエネルギーは粉粒体の容積を高圧で圧縮するためのエネルギーに転用され、余剰分は術者へ転送される。

これがあの橘林とその実の正体だ非時香菓の果皮に吸収圧縮されながら風見幽香は思い返すが、それを思い出したところで脱出の方法は、見つからない。もはや身を捩ろうとも微動だにせず、ぴっちりと自分の姿に象られた粉粒体圧縮石像が、自分を吸収しながら徐々に小さくなっていっているのを感じた。

終わりだよ、風間。めぐる君は、もらっていく。目覚めてもらうんだ

§

ナイトバグ・眷魁ロード・リグルの名において、エタニティ・ラルバに命ず

辺境風見幽香が警備を務める広大な花畑で繰り広げられる亜神と神の私闘に、割り込む風のように流れ込んでくる声があった。

能源尽く、行使能わず。

リグ、ル……?

生命力を根こそぎ奪われようとしていた風見幽香は、非時香菓の果皮の下でその声を聞いた。吸い取られていく生命力の奔流が停止し、急速に薄れゆく最中だった意識が、辛うじて繋ぎ止められた。だが、まだ身動きは取れない。視界も遮られており、外で何が起こっているのかはわからない。

一方、亜神エタニティ・ラルバラルヴァクィーンはリグルの〝王命〟によって術の一時停止を強いられていた。

リグル、戻ってきたんだ!見てよ、君を縛り付ける無理解な女を、捕えたよ。

あいつ、なんで戻って来ているのよ……くるみ仕事しろ……ッ!

風見幽香によって退場させられたリグル・ナイトバグが、戦場に戻ってきていた。彼の固有能力である〝王命〟は、今のところ亜神エタニティ・ラルバラルヴァクィーン非時香菓ライフスティールを一時停止させている。

ラルバ、これは一体

こんな暴力女、ほっとこう?リグル、こちら側に、来て。私を目覚めさせてくれたあなたには、変わる権利がある。この歪な量子化世界は、線という空間を認めていない。私達、境界性の存在を圧殺しようとしてる。〝王命〟を、解いて?

亜神となったエタニティ・ラルバにとっては、本来的にはリグルの〝王命〟は弾き飛ばせるものだろうが……頭部と折れ曲がった腕だけになった瀕死の状態では、それもままならないようだった。

君が幽香さんの安全を保証するなら

するわけない!

なら、それは、出来ない。

非時香菓ライフスティールさえ完了すればそれも回復する。しかし、エタニティ・ラルバにとっては、リグル・ナイトバグによってそれが阻止されることが心底理解できないようだった。

ね、ねえ、どうして?君は、私と同じだったじゃん。目を覚まして、リグル。あなたの痛みは、あなただけのものじゃない。この女が何を言ったのか知らないけど……こいつは、〝女〟だよ!?

恵谷。僕はもう、にはいないんだ。すべてが溶け合った、無差別の全体なんて世界を僕は、もう求めてない。

めぐる君……?

術を、解け。

リグルが命じると、エタニティ・ラルバは一時停止中だった非時香菓ライフスティールを解除する。したいわけでもないのに、今の状態では抵抗できない。

風見幽香の体を覆っていた果皮は、枯れたように萎れてぼろぼろと崩れ落ちる。地面に落ちた果皮は粒子がみるみる細かくなり、鱗粉に戻り、そしてそれもモナド崩壊して風に霧散した。

非時香菓ライフスティールから解放された風見幽香はほとんど全裸だったが、一方で吸収が本格的に開始される前だったためか一定程度肉体が再生していた。体中に樹根や葉脈上の凹凸があり不自然に脈打ってはいるが、皮下にまで到達していた妖蝶の鱗粉ミニット・スケールスは排出されたり、逆に幽香の霊力として吸収されている。

リグル・ナイトバグは自分の鞘翅マントを風見幽香に羽織らせる。

リグル……なんで戻ってきたの

助けに来ました、って言ったら、怒りますか?

自分の状態を鑑みて、それ以上リグルを避難することができなくなり、悔しそうに押し黙る風見幽香。

仲間はずれにしたからですよ。ボクを外して結論出そうとするなんて。

リグル!やっぱり、ダメだよその女は!君を外そうとしてる!

リグル・ナイトバグが珍しくぴしゃりと言い放つ。

ボクは自分を差別することにしたんだ男だとか、女だとかね。他人を差別することを肯定する側になったって、言ってもいいよ。

え……お、おかしいよ、君は、そんなヒトじゃなかったでしょ?

産まれて初めて自覚する、自己に関わる最初の岐路が、男か女かだというだけでしょ。だから、男か女かが、終着地点そのものを分けると思い込んでる。男じゃなきゃ到達できない場所、女じゃなきゃ届かない場所があるって、幻想。

そう。そうだよ。そんな二元論、くだらない!

そう、くだらない、関係ないんだよ、最後は誰でも、〝自分〟にたどり着くっていうのに。〝自分〟はね、男も女もぐちゃぐちゃに混じった、合挽き肉だよ。出来上がった〝自分〟に、元はどっちかだったかなんて関係ない。

どういう、こと?

「〝男か女かで分けられるか分けられないか〟じゃないんだ。『〝男か女かで分けられるか分けられないか〟なんて問題じゃない』んだ。そんなパラメーターに囚われている時点で、くだらないよ。」

リグル・ナイトバグは、力なく浮遊する擦り潰れたエタニティ・ラルバの体を、抱え込む。

風見辺境伯TheSleepingDandeLionへ、具申します。エタニティ・ラルバの幻想入りに際して、手続きに不足があります。博麗へ、エタニティ・ラルバの幻想入りに関する再審査の依頼を

……だめだわ、全然だめ。リグル、そんなんじゃ全然足りない、眷魁ロードの自覚が。お前自身の、性質についての自覚が。

彼女の発言内容は幻想入りの可否には関係ありません、これはそれ以前の問題です。彼女は幻想郷そのものに変成を来す目的を持ち込もうとしています、それ自体が許可されない。ですから

だからあんたはメスなのよ、このクソムシ。今は、この蛾女の発言内容を、あんたがどう捉えるかの話をしている。

その内容自体は関わりが

ボクが言っても、幽香さんは聞き入れない。なにか、怨念でもあるかのように執拗にラルバを、破壊しようとする。

どうしてそんなに声を上げたボクを、幽香さんは鋭く一瞥して、吐き捨てるように言う。

本当は、あんたは自分を否定したいのよ。ただ、過去からの連続性が、自己同一性と癒着してる。居心地がいいのね、過去と折り合いをつけてしまうのは。

風間……。

私の、エタニティ・ラルバ幻想入りへの異議は、博麗には認められないでしょう。遅かれ早かれ、こいつは幻想入りを果たすわ。秦河勝と常世神、物部布都と蘇我屠自古、それに豊聡耳神子との関係に比すれば、雲月めぐると風間優香、恵谷らるのことは、取るに足らぬ問題よ。それはあんたの言う通りだわ。そして、前者群への対応は、博麗がするでしょう。

だったら

だが。そのまま幻想入りさせれば、恵谷らるが、お前に影響を及ぼす。

それは、大丈夫です。彼女の誘惑は、ボクにはもう通用しない。

それでは足りないと言っているのよ

リグルのマントを脱ぎ捨て、半壊し再生中の体を晒し、エタニティ・ラルバと同じ満身創痍であることを見せながら、風見幽香はリグル・ナイトバグの方へ歩み寄る。

否定を、否定しなさい。もし本当に変わりたいのなら。

どういうことですか?

そいつを、殺しなさい。

……え

さもなくば、私を殺しなさい。

風見幽香からの予想だにしない言葉に、混乱するリグル・ナイトバグ。

今の私なら、お前でも十分殺せるでしょう。

な、なにを、言ってるんですか……訳わからないですよ

いいえ、どちらか一方よ。ふたりとも生かしておけば、私はあれを殺すわ。あれのほうが回復が早ければ、私が殺されるでしょう。お前が、選ぶときよ。

腕の中にいるエタニティ・ラルバを見る。風見幽香は、追い打ちをかけた。

リグル。そいつは、幻想入りに不適合なだけじゃない。あんたに甘言を投げかけているけど、その実、どうかしら。常世神として完成するために、お前を利用しているだけじゃないの。

そうじゃ、ない、でしょ?

お前は、気付いているはずよ。そいつの言うことが〝もう、間に合わない〟って。そいつは、もう遅いことをわかった上でお前を乗せようとしてる。個人的な恨みのために。

ラルバ、ボクを恨んでいるの?

あの日から、ずっと、気になっていたことだった。呪とも祝福ともとれる、トラウマを植え付けた、その言葉が、何だったのか。

だが、エタニティ・ラルバは答えない。

お前のムシを解放して、そいつがやりたかったのは、過去の復讐だけ。

それは……ボクも同じです。まだ、何も取り戻せていない。

なら、そいつから取り戻しなさい。それが出来なければ、私から奪い取れ。

風見幽香は、無防備であることを示すために、リグル・ナイトバグへ背中を向ける。

救いを求めるように、エタニティ・ラルバへ視線を向けるリグル・ナイトバグ。

……。さっさとやれよ、このメス野郎。私は、絶対に風間優香を赦さない。彼女を、殺しにいく。君が私のものにならないなら、君も殺す。次は、見逃さないから。

恵谷

救いはなかった。元々、なかったのかも知れない。その救いのない責任を、二人のどちらかに負わせようとしていただけかも知れない。元々、ボクの問題だと言うのにリグルは俯く。

そのまま、沈黙が続いた。

エタニティ・ラルバも、風見幽香も、リグル・ナイトバグも何も言わない。

ただ、沈黙の時間だけが、風に巻かれてこの場で踊り続けている。

誰かが何かを言う気配もなかった。

エタニティ・ラルバは体の大半が潰れたまま、風見幽香は再生が停止して満身創痍のまま。リグル・ナイトバグは、動けないまま。

どれくらいの時間が沈殿しているだろう、花畑を爽やかな春の花の匂いが満たしても、何も状況は変わらない。そのまま、ずっと、停止している。停止という時間が、流れ続けている。

遥か彼方に見える妖怪の山に、陽光が削られた。山の端が金色に燃え、雲が陰影を濃くする。花畑に流れる空気がわずかに冷たく変わり、満ちる花匂いに陰りがでたとき。

ぐしゃっ

リグル・ナイトバグは、エタニティ・ラルバの頭を、潰した。

小さく響いたその音以来、再び無音の空気が時間を埋めていく。

何も、変わっていない。

日が沈んでいく。大空を焼き尽くす赤色が激しくなって、それは終わりを示している。ただの終わりでしかない。恐らくまた繰り返される、ずっとずっと繰り返し訪れる終わりの、ただの一度でしかない。

リグルの目元に涙があったりは、しなかった。悲しいわけではない、ただ自分の残酷さを自覚して、それを胸の中に格納しようとしているだけだ。

リグルの腕の中から亜神の残骸が砂になって流れ去った頃、風見幽香が彼の元に歩み寄ってきた。夕焼けの逆光を受けて赤く激しく燃えている。

彼女は、ただ黙って腕の中を見続けているリグル・ナイトバグに、言葉を投げた。

リグル。男に、なりなさい。

彼は何も答えない。

私を、女にしたみたいに。

§

恵谷が、登校しない。

当たり前だ、彼は、僕の眼の前で。

あの事件は翌日早々ニュースで大々的に知れ渡った。僕らのような社会の爪弾き子供を取り扱う今までのワイドショーポルノと何も変わらなかった。こんな場所にたむろする異常で憐れむべき異常未成年たちが、いよいよデカいことをやらかした。メディアの扱いはそんなものだ。

どこの学校の何と言う学生であるか、は誰がリークしたのかSNSではすぐに拡散された。オールドメディアがいくら隠しても、人の口に戸は立てられぬというものだ、特に、このSNS時代には。恵谷の女装前の顔写真は、SNSのメディア欄で初めて見たかも知れない。

当のこの教室内でも、恵谷が登校してこなかったことが、全てを象徴している。教師たちも敢えて何も言わず、生徒たちも恵谷がどうして休みなのかなど聞きもしない。

彼は、一晩で、クラスの人気者からタブーへと変化した。今は誰一人その名を口にすることさえしない。この教室の暗部へと豹変した。その暗部を取り扱う学生全員もまた暗部だ。

そして、僕も、その一人。

恵谷は、家庭の事情で転校になった。卒業式に参加するかはわからない。

転校だなんて、嘘だ。

僕や風間でなくとも、教師が言うそれが嘘であることは教室中の誰もが分っていた。でも誰も触れない。

皆が帰った教室、何か喋りだしそうな机と椅子が、それでも押し黙ったように並んでいる。その中の一つは、恵谷のものだ。もちろん昼学では誰か別の人間が座っているのだろうけれど。

どうして、誰も、何も言わないの?

恵谷が座っていた机。脇にはいろんなものでギラギラに飾り付けられたカバンが下がっていたはずなのに。回りにはぎゃあぎゃあ騒がしいほど人が集まっていたはずなのに。今日の静けさはお葬式、だがその死を悼んでいるものではなく、まるで自分達が触れてはいけないものに触れていたのだと思い知らされたみたいな、怯れに近い重たい無音。亡霊の姿とはああして外部から作り上げられるのかも知れない。

彼の死を悼む言葉は、どこからも聞こえなかった。教師からも。

裏切り者達だ。僕も……風間も。

誰もいなくなった教室で、恵谷の机の間にぽつんと佇んでしまっていた。花でも飾ればいいのだろうか。でも、テレビなんかでよく見る机の上に置かれた一輪挿し、僕にはふざけているとしか思えなくて。だったら何を持って弔意を示せばいいのか、わからなかった。示さなければいけないのはただの弔意ではない、同時に、自分の潔白も示さなければならないような気がして。

そんなにみんなが憎いなら、いっそあたいも、殺したら?教室の闇に触れない手のひらクルーのクラスメイト代表として。

いきなり背中から声をかけられた。教室に入ってきたのは、茅野ちのだった。

ちの……白石

昨日の通り魔事件、絶対恵谷だよね。みんな分ってるよ。

そうだ、と答えることができる自分が、酷く恨めしい。だが、そうだと答える勇気がなく、口を噤んだ。それが、余計に自己嫌悪を呼び込んでしまう。

そうだとして、なんで、みんな何も言わないの?

そうすべきだと思ったからでしょ

そうすべきって、どういうこと

茅野ちのは自分の机に向かう。忘れ物を取りに来たのか、机の中から何かを取り出してカバンに収めながら、まるで面倒ごとを説明するときのように言う。いや、ちらりと見る視線は、明らかに

清々したよ、気持ちの悪いオカマがいなくなって。普段からメンヘラムーブかましまくってるなら、いっそそっちで憐れんでやれたのに。あいつは、いいやつだったから。

いいやつだったって、だったら、なんで無視するの?クラスの人気者だったのに、亡くなったらいきなり

死んだらじゃねーよ。人を殺したらだよ

そう言われてしまうと、反論できない。彼は、人を殺した。自分も含めて。

最後の最後で一番きついメンヘラかましたから、死んだ後でこうなってるだけだ。生きてる内にやりゃあ、生きてる内にこうなった。そうだろ

メンヘラムーブって

お前みたいなのだよ、気づいてないわけないでしょ

茅野ちのは僕の服装を指さして、それから付け足す恵谷も。

おかしいでしょ。男なのに女の格好して。それでなんっにも悪びれないの。しかもクラスに溶け込んでて人気者でさ。異常者は異常者らしくしてろっての

そんな言い方ないじゃん!

めぐるはなんとも思わなかったわけ?

すごいなって思ってたよ

ふん、本当にくだらないものでも見るように、鼻で嗤う。

お前、引っ張られたんだよ。アレに引っ張られて、そんな格好するようになったんでしょ?

違う

こんな服着て、可愛くなったと思ってんの!?可愛くない!メイクしたってぜんっぜん男だし、可愛くないし、気持ち悪いんだよ!見た目の話だけじゃない、他人に引っ張られて自分を捨てた事に気づいてないフリしてることが、キモいんだよ!!

違う!

違う、はずだった。そうであるなんて、認めるわけには行かない。これは、僕が僕の意志でやっていることだ。僕の過去は変わらない、過去に対する憎しみも変わらない。その憎しみへの復讐心であって、これは、ただ恵谷に影響されたミーハーな振る舞いでなんか、あるはずがない。

そう、決めつける以外に、僕は。

彼を見るまで、彼を見る前から、僕は、ずっと

知ってるよ。おまえ、昔からそうだ。偶然ここでまた一緒になって、なんにも変わってないのに驚いたよ。変わってなかった。最後の一線みたいなのは、ギリギリ踏み越えてなかった。

あんなのは、自分を取り繕う仮面だ。あれのせいで僕は苦しくて

それでも

茅野ちのは自分の忘れ物を回収し終えたらしい、カバンを閉じて立ち上がる。その流れで、彼女の目が僕を射抜いた。

ほとんどの人間にはな、外しちゃダメな仮面ってのも、あるんだよ。

風間は学校では、ただ言動がキツイだけで男の格好なんかしていない。パク君は徹底している、絶対に女だとバレないように行動してて〝逆であること〟なんて人間関係の中で何一つ使っていなかった。みんな、外していないんだ、仮面を。

そんなの、苦しいだけじゃないか。無意味だよ。

自分だけが苦しいと思ってるから、そういう発想になるんだろ

……茅野ちのも、そうなの?

ヒロイン病患者サマと一緒にするな

カバンを背負い、教室を出ようと出入り口に向かう茅野ちの。そこで、またしても入口の方から声がした。

風間だった。

放課後にこんなに人が多いとは珍しいな

王子様の登場だな

……私、そんなに嫌われるようなことしたっけ?

なにも?

僕から剥ぎ取った鋭い視線でそのまま風間を撫でるようにして教室を出ようとする。

精々〝とりかえばや〟でもやってろ

吐き捨てるように言ったちのの言葉を、むっとした表情で拾った風間が言い返す。

知らないのか?あれ、入れ替わった二人はもう一回入れ替わって、最後には二人ともすごく偉い職位に就くんだぞ。

あんたらが、元に戻りたいって願ってんなら、いい結果なんじゃないか?

元に戻りたいと、願っているのか。

あの夜に起こったことを、僕も、風間も、あれ以来一度も口に出していない。何かが変わってしまったような気がするのに、それを確かめることは、していなかった。

恵谷のことに触れることにもなるからじゃない。ただ、その〝何らかの変化〟の正体を見てしまう気がして……怖かった。

僕は勿論、風間もそれ以上茅野ちのに何も反論できていない。黙った僕ら二人をおいて、彼女は教室を出ていってしまった。

なんで怒ってんだ?

僕が怒らせたから

夫婦喧嘩か

そう見えるんなら、風間に女性のパートナーが出来ない理由がよく分かるよ

どーいう意味だよ

§

春だねー

花盛を予感させる、爽やかで仄温かい風が、芽吹きの水々しさを湛えた大地を撫でる。まだどこかに雪解け水の香りが残る中に、遠く予感させるような草いきれの先駆が絡まっていた。

卒業式と言っても、そう人数が多いわけではない夜学だ。体育館とかを使う規模ではなくて、集合ホール一つでちんまりと実施された。親なんか来るような家庭じゃない人もいて、うちもそうだ。

式も含めて服装が自由だから、コスプレで参加している人もいて見た目はカオス、そのメチャクチャさに救われている。

卒業だなんて、なんだか実感がないなあ

うん

パク君は相変わらず男装のままで、完全に男子生徒として卒業するらしかったいつも通り男子制服のままだ。

なんだよ、オレのセーラー服姿でも見たかったのか

ちがうよ。そもそもうちセーラー服じゃないじゃん

もう苦笑いするしかない。申し訳無さそうにしても彼の自尊心を傷つけるし、太々ふてぶてしくいるなんてのも以ての外だ。

結局女の格好で来たんだな

今更変えられないしね

友達同士で卒業を祝い合う方が、卒業という現在そのものの祝福には、いいと思った。友達は、僕には多くないけれども。

親とし合うのは、今現在の卒業そのものへの祝福ではなくて、過去の肯定と、感謝の表示、未来への門出の確認な気がする。親の気持ちは、僕にはわからないけれども。

パクくんは、数少ない友人の一人だ……今でも、友人でいてくれている。

女装、始めた頃に比べれば上手くなったよな。最初は酷かったぜ、ノーメイクで服だけ女物にしてくるバカが居るのかって思ったよ

思い出させないでよ、あれこそ黒歴史だよ。体が女だと、その辺は楽だよね……あ、怒らないで

事実だし、今更お前相手に怒ってもしょうがねえわ

いいなあ、と羨んだところでふと我に返る。僕は今でも他人を羨んでばかりだ。でもそれは、非難されることなんだろうか。自分が欲しいものがさっぱり自分の手にない人間には、それが自分の手の中に既にあることに無自覚な人間が憎らしく思える時がある。平たく言えば、嫉妬。

風間とは?

えっ

結局何もないのかよ?第二ボタンとかもらいに行けば?いや、お前渡すほうか。渡しに行くもんだっけ?

いつの時代の風習だよう。あ、じゃあパクくんのでももらっとこうかな

もうねーよ、後輩に引きちぎられて取られた。大体なんだよ〝もらっとこうかな〟って、おまけの玩具みたいに

パクくんのブレザーにはもうボタンが残っていなかった。恐るべし、モテ男……女子だけど。それを知っている人は、生徒ではもしかしたら僕だけなのかも知れない。でもそれを知った経緯を考えると罪悪感しかない。

風間とは、あの夜以来、ろくに話ができていない。話す必要ある?なんて突慳貪つっけんどんな空気は、告白しに行ったときのそれのままだ。セックスしたのなんか、嘘だったんじゃないかと思う。

ボタンなんてものじゃないけど、なにか、つながりになるものでも欲しいとは、思ってしまった。女々しいな。

卒業証書の入った筒をくるくると回しながら、パクくんは言う。

昼学に比べればきっといろんなもんが少なかったんだろうけど、それなりに色々あったよなあ

そう、だね

あのことは二度と思い出すなよ

ぇぅ

色々。一応全課程を修了したわけだけど(パクくんのとのことを除くのであれば)、恵谷の件があまりにも大きくて他の出来事はみんな霞んでしまっている。

自分が女装を始めたきっかけだって……茅野ちのには否定したけれど、彼がいなければ無いことだったから。風間とのことだって、結局はあの夜の一連に含まれてしまっている。

今でも、あの押し潰されそうな罪悪感と、そこから逃げるために、まるで窒息しそうな水中で酸素でも求めるみたいにした性行為のことが、忘れられない。思い出というよりは、傷痕だ。

後悔してるのか?

し、してないよ。

風間との間のことをパクくんが知っているわけがないのだけれど、どきりとしてしまった。それ以外についてだとすると……何について言われているのかは見当がつかない。でも、どれに対して言われていたのだとしても、後悔は感じていない。今更女装を始めたことだって後悔してないし、しなかった方が後悔してたかも知れない。

風間とのことだって、後悔をしているわけではない。

全部、生き残るためだったと思ってる。だって、今生きてるんだもん。だから、後悔とかそういうレベルの話じゃないかなって

生きていられなかった人を、知っている。

それの意味するところをパクくんも察したみたいだけれど、まさか僕があの現場に居合わせたなんて、恵谷から何事かの祝福のろいを得たなんてことまでは、知らないだろう。

彼は僕なんかよりも圧倒的に可愛くて、人気者で、僕が欲しいものを全部持っていた。代わりに僕は、まだ〝生〟とかいうものを抱えたまま、いきている。

彼は、この爆弾を抱え墜ちしなかっただけだ。使うべきときに、使ったのだ。死んだあとに、クラスでタブーとなったことなんて、生きていたときの彼には何の意味もないことだ。その生き様にさえ、憧れを禁じ得ない。

でも、今の僕は、少し違う思いも芽生えていた。

歳を重ねるほど、可愛く女装を続けられる可能性は、下がっていく。それは絶対だ。でも、それでも、いいと思っていた。恐らく茅野ちのの言う通りの異常者として生きていくしかないだろう。

生きて、いくしか。

生きてればいくらでも女装できるからね。ハゲて髪の毛がなくなったらウィッグ選び放題だもんね。可愛いおばあちゃんでも目指そうかな

開き直ってんな……。やっぱお前、キモチワルイよ

えへへ

褒めてねーから

みんな、式が終わってばらばらと散っていく。家族と一緒に帰る人もいれば、二次会と称してどこかに遊びに行く人もいた。

この教室に、多分みんな、何かを置いていく。新しい門出に向けて、この場所に、この時間に。それが余計なものなのか、置いていきたくないのに奪われてしまうものなのか、わかりはしないのだけど。

僕はこのあとどうなるだろう。

こんな自分は、親元を離れるだろうことは明らかだ。確かにトー横は前の姿を残していないけれど、似たような〝その〟はどこにでも出来上がる。大人と子供の境目を、くっきりと分けてどちらに所属するのかを迫るような、息苦しい社会が変わらない限り。

僕はあの〝その〟に戻るのだろうか。学校という軸足を失ってなおあの〝その〟に立ち入って、僕は無事に出てこられるだろうか。

不安だけがある、希望を感じない。

でも、生きていくしか無い。

死ぬのは、全部やり尽くしたあとでいい。

恵谷の最期を目の前にして、あのとき彼が僕に掛けた言葉が何だったのかわかりはしないけど、彼に掛けられた祝福のろいが、恐らくこの執着なのだろうことは、疑わなくなっていた。

卒業したら、多分もう会うことなんてないだろうから、この際言わせてもらうけどさ

えっ、うん。僕のこと好き?痛っったあああ!

竹刀袋に入った竹刀で思い切り脳天を割られた。何か、昔の恵谷っぽくなってきたなパクくんは複雑な表情で竹刀を抱え直す。深々溜息を吐いてから、頭を抱えてうずくまっている僕を見下ろすみたいに言う。

住む社会を変えることで過去を洗い流したい、ってのは、すげーわかる。過去は消えないなんて言うけど、そんな綺麗事は何も救ってくれないもんな。服装とキャラを変えて過去を払拭しようとしたお前は、正直すごいと思う。

それも、ただ、生き延びるためだったと、思う。……あんまりうまく行ってはいないけどね

オレにとっても、あの教室の中には、過去を断ち切る刃はなかった。結局、だから、お前の選択は、間違っていなかったかもしれないって、思うよ

パク先輩!と黄色い声とともに、誰かが追いかけてきた。後輩らしい。夜学にもそんなのあるのか、僕が見えていなかっただけだろうけれど。

ボタンください、とお辞儀をする後輩ちゃんだけど、パクくんはにべもなく断るもう無いよ。

それで引き下がるかと思ったら、カフスボタンをねだってそれを持っていった。逞しいなあ……。

……すごいね

二度と会うことはないんだろうから、どうでもいいけどな。

話の腰が折れちまった……と頭を掻く勢いで言おうと思ってたのに。

オレにはお前の悩みなんか半分もわからないけどさ。ただ、お前みたいにあっちとこっちをフラフラするやつもいれば、私みたいにフラフラするエネルギーさえ無いやつもいるんだってことは、覚えといてくれ。半人前でキツイなと思ってるのは、オレも同じだ。例えば医者から何か紙切れをもらって社会的なパスを得ていたって、何も変わらない。お前だけが悲劇のヒロインだと思うなよ

……ヒロインかあ

反応するところ、そこじゃねえから!

前に茅野ちのにも言われたな。まだ変わってないのか、色々あったのに、まだ。

ごめんって

ったく。その調子ならなんだかんだで、生きていけるんだろうさ、その虫ケラみたいな生命力でさ

誰かのお陰で、羽化できたのかもね

羽化したのなら、オスかメスか、はっきりしないといけない。

そんな自信までは、まだなかった。

今日でこの教室を、学生という立場を、僕は卒業してしまう。

女装という馬鹿な真似は、卒業できそうにない。

オレじゃねえだろうな

……違うよ、たぶん

あそ

僕はまだ、グラデーションを、信じている。

どちらでもない、名前もつけられていない、無段階の中に浮かぶ、無理数な、でも確かに存在する、この場所の色を。

§

風間

風間は式が終わったあとは一人で身辺を片付けて、そのまま一人で帰途につこうとしていた。イメージ通りと言うと怒られるだろうけど、イメージ通りだ。彼女も、卒業式に両親は来ていなかったらしい……やっぱり、この学校には子供が恣意的に集められている気がする。

よう。卒業おめでとう

おめでとう。……いやそうじゃないでしょ

今日は卒業式だが?

そうだけど

彼女は、普通にブレザースカート姿、今の僕と、同じ服装。

取ってはいけない仮面、という言葉が頭をよぎる。

やっと話してくれた

そうだっけ?

そうだよ、話しかけてもすぐどっか行っちゃうし、気がついたらいないし

……なんか話すことあるのかよ。にはもう、お互い触れないようにしようって感じだったと思ってたけど

他にも話すことならあるでしょ

何を?

話すこと。

風間と話すことなんて、話したいことなんていっぱいあると思っていたのに、〝何を?〟なんて言われたら……何もわからなくなってしまう。

そんな、さみしいこと、言わないでよ

ははっ、なんだよそれ。少女漫画のヒロインにでもなりたいのか?

みんながそういう。そうなのかも知れない。ヒロインになりたいんだろうと言われて、否定できるとは思えない。男のくせにヒロイン志望みたいな、痛々しさ。そんなも間違っている?でも、風間に言われたら、なんだか一周してしまった。

……そうだよ。なんか、悪い?

開き直った僕がそう言うと風間は、きょとん、と目を大きく開いた。そんなふうに意外を打ったような彼女の表情の変化を、初めて見たかも知れない。

悪くないよ。ごめん、意地が悪かった。いつもなんだ

しってる

僕の言葉で立ち止まってくれたところだけれど、彼女の言う通り、話す話題を持っていない。またトー横で会おう、なんて言えるわけもないし。

風間は、ご両親、いないの?

いるよ。仲悪いだけ。今日は一応来てたんだけど、なんかいつの間にかいなくなってたな。

はは、と笑っている。

先に帰っちゃっただけ、だよ、きっと

式が終わってから、グダグダしてたからな。教室に戻って

忘れ物でもしたんだ?いつぞやも確か白石と一緒にいるところに

ああ。花を、あげてきたよ。最後だし。

ぇ……

花をあげてきたよその言葉を、僕は一瞬理解できなかった。違う、すっぽりと即座にはまるいちが分っていたはずなのに、そこに納めることを拒絶してしまった。

恵谷、の?

ん。

あのことは、話さないって

お前が振ってきたんだろ、共通の話題なんかひとつもないから

そ、そうだけど

拙い嘘がバレたときみたいに、何も言えなくなる。あんなに、恵谷のことを引きずってたはずなのに、どうして僕は……。

風間は、そんなこと気にも留めずに言葉を続ける。

すげえよな、あの一晩で表と裏が入れ替わったみたいで。それまでどんなに仲良くしてた奴らも、一瞬だった。そりゃそうか、人殺したんだからな

茅野ちのも、そんな事を言っていた。

でもま、最後の最後くらいは、ってな

自分が、恥ずかしくなる。

結局、あれも過去のことになってしまって今は、ただ自分のことしか考えていない。あの日、クラスの対応に憤っていたはずなのに、今、僕は。

あ……あ……っ、ぼ、僕……

お前はいいんじゃねえの

は?

今のお前、恵谷そっくりだよ。いや、姿格好でなくてさ。なんかこう、言動とか、立ち居振る舞いとか。吹っ切れた感じ

どういうこと風間の言っている意味がわからない。仮にどうあったとしても、僕の失念は、赦されることではない。

恵谷、お前にン中にいるんじゃね。いい意味でさ。私はあいつに供養の意識を見せることでしか、あれを過去にできないと思ったからそうしたんだ。お前は、もっと違う意味で、恵谷に応えられてるんじゃねえの。まだ生きてるから、供養しない、みたいなさ。まだ過去じゃないんじゃないか。

そんな、都合の良いものじゃない

最期に僕に何かを言った。彼からの祝福のろい。僕に、取り憑いている?

お前さ、あの日ゆってただろ。恵谷から何か出てたって。

え……うん。気が動転してたし、目の錯覚だったんだと思うけど

案外本当だったのかもな

なおさら供養しないとダメじゃないか……

悪い感じはしねーけどな。ほら悪さしない霊ってのもいるらしいじゃん。守護霊っていうの?

うーん?

あの夜は死ぬほどキツかった。世界の何もかもから逃げなきゃって思って、もしちまった。私はなんだか後ろめたい気分をずっと引きずっててさ。だから、今更、花なんか持ってきた。今更だろ。

風間も、同じだったのか。あの後ろ暗さ罪悪感逃げなきゃいけないっていう強迫。世界に包囲されているという閉塞感。

どうして、話してくれなかったんだろう。同じだったのに。話すことが出来ていたら、きっと違っていた。僕も、風間も。

けど、お前は不思議と、あの日から明るくなってたよな。なんだかんだでクラスから排斥されてなかったし。あんなことがあったら普通、女装してるヤツを同じとみなして排除するだろ。むしなんかして。

そう言えば、そうかも知れない。

でも僕の体感で言えば……みんなの対応が少し、良くなった気がしていた。白石以外は。

あたいをころせば?白石は、確かにそう言った。

それが、クラスの空気だったのだろうか。

たたりでも恐れたんじゃないの

だったら守護霊だ

いやー……それはどうなんだろう

気が済まないなら手でも合わせてこれば?でも、それなら学校じゃないよな。花、机の上においてきたけどさ。あの場所に行った方がいいに決まってるだろ

そう、だね

トー横の跡地自体には、あの後も何度も行っている。あの場所は既に建物が立つのか何なのか、工事区画として封鎖されている。でもなんだか後ろめたくて、その方にはなるべく視線を送らないようにしていた。

彼女の言う通り〝過去にする〟のなら、向き合って、手を合わせて、花でも線香でもあげるのが筋だろう。

今夜にでも、行ってくるよ。卒業おめでとうって。僕の憧れだったってのも、この際だからゆっちゃおうかな。

いいんでないの、プラスに捉えられるのなら、何だって

あの一晩で、僕の世界は一度滅んだ。それくらいの大事件だった。何もかもが変わってしまって、きっと僕もどこかが変わってしまった。

メンタルケアの何某かが学校に来ていたけれど、僕は断った。風間も断っていた。

僕にとって恐ろしいのは、恵谷のしたことやそれを目の当たりにしたことではなかった。それによって、世界が僕を押しつぶそうとしていることが、まるで本当に姿を持ったバケモノのように見えるようになってしまったことだ。

それも事件を目にしたPTSDか何かだ、なんて言葉で片付けて、まるで病気みたいに綺麗に塞いでしまうことが、正しいとは思えなかったから。

僕に現れた変化が恵谷の遺志に因るものなのかどうかは、わからない。でも、そのバケモノに立ち向かおうと思う、後ろ向きな勇気みたいなものが生まれてきていたのは、確かだった。

こんなふうに、話したかったんだ、風間と

私は嫌だよ。本当はこんなこと、話したいわけじゃない

……ごめん

お前のせいじゃないよ。私の問題だ。私にとっても、恵谷は結構大きな存在だったからさ。

意外だった。全然意に介していないと思っていたのに。

でも、そうでなければ、あの夜の動揺は説明がつかなかったかも知れない。僕と同じように怯えて、僕とそれを逃げあった。

何ていうか、他人と痛みを共有して〝大変だったねー〟って言い合うのはさ、あいつに対して、冒涜に思えたんだ。そんなの供養でも弔意でもなんでもない。ただの生者の逃避だ。お互いに互いの無罪を認め合う、卑怯な談合だ。あの夜、お前とそれをしちまった。それが、怖くて。

あー、こんなこと話してもなんにもならねえっての頭を掻き毟るみたいに、何かを振り払う風間。

お前には恵谷がついてる。もしかしたら今のお前の方が、ずっと強いかも知れないけどな。

そんなこと、ないよ

現に、お前は生きてるじゃないか。生者は、死者より強いそれは絶対だ。死者が強いのは、物語の中だけだ。

それにさ僕がうろたえているところに、風間が付け足す。

ちょっと、かっこよかったぜ

えっ?

さっきの、啖呵。〝そうだよ悪い?〟って。

ヒロインになりたいって開き直ることが?

……やっぱ、なんか変だな。変だよ。何言ってんだお前

はぁ〜?

あんなにも……あの一晩で強い絆が出来上がったような気がしていた風間と、結局は会話もまともにできない。同じ教室で過ごしていたのに、同じ話題を何一つ持っていない。

僕は何を、やっていたのだろう。

そろそろ行くけど

え……あ、うん

まあ、もう会うこともないだろ。同窓会って感じの教室でもなかったしな。卒アルなんかもう見ないだろうし

見たって、プライバシー云々で、別に連絡先が書いてあるわけじゃない。風間と連絡先を交換だってしていない。クラスの誰とも。

僕のケータイは、買ってくれるおじさんの連絡先と、もう連絡が取れないトー横仲間のハンドルネームでいっぱいで、それ以外には入っていない。

……連絡先、交換しない?

嫌だよ。カレカノじゃあるまいし。仲の良いクラスメートってわけでもなかったろ。

仲が良くなくったって、別に

交換してもいいじゃないかそう言おうとした瞬間。

あ、と思い出したように声を上げる風間。

それより、これ、くれよ

えっ

ぶちっ、と服から何かを千切り取られた。

ボタンだ。

じゃあな

そう言って、ぶっきらぼうに背中を向けて歩き去る。僕はどうしていいのかわからなくて、ぽつん、と取り残されたまま立ち尽くしてしまった。

追いかければ良かったのかも知れない。でも、追いかけてどうするつもりなのかわからなかった。ボタンがどういう意味か聞く?ボタンの代わりにといって連絡先を交換する?……もう一度告白する?

ボタンを持っていく意味なんか聞いても〝せっかくだから〟とか言われてしまうんだろう。ボタンと連絡先を交換しようなんて言ったら、きっとボタンを投げて返してくるに゙違いない。ボタンを取っていったことにが、もし仮にあったとしても、彼女は絶対に認めない。でも、欲しいものだけは持って行く。その横暴な感じが、自分と解釈一致してしまっていて。

僕、キモいな……

キモい。けど、やっぱり、もうそれだけじゃいられない。

風間はふたつ向こうの道を折れた、バス停の方へ向かっているのだろう。

僕は走り出した。

追いかけてもう一度告白する。男がとか女がとかでなくて、どっちが彼氏でどっちが彼女とかでなくて、一緒にいてほしいと言う。馬鹿じゃねえのと言われても、馬鹿だからと食い下がる。

ひとつ目の角。ふたつ目の角からバス停までは、ここまでよりも少し距離があるくらい。バスを待っているのなら絶対に見えるはずだ。

ひとつ目の角を通り抜ける。あっという間の距離。

こんなに全力で走ったのは、久しぶりだ。足がもつれる。ああ、これ、男の走り方になってる。スカートのこととか全然気にできてない。付け焼き刃の〝女〟が、ぼろぼろと剥がれ落ちていく。風間の前では全然、体にくっついてくれなくなる。

もし彼女が僕の言葉を受け入れてくれるのなら、そこに彼女の背中が見える……!

祈るように願掛け。下手くそな全力疾走で、絡まって転びそうになる足を危うく運びながら。こんな走り方じゃスカートがめくれて、もし後ろに人がいればパンツが丸見えになっているだろう。でも気にならない。それどころじゃないから。

あと十数メートル。あと数メートル。後数歩。バスは通過していない。角を折れて、その先を見る。

風間!

そこに、風間の姿はなかった。

§

春だねー

花盛を予感させる、爽やかで仄温かい風が、芽吹きの水々しさを湛えた大地を撫でる。まだどこかに雪解け水の香りが残る中に、遠く予感させるような草いきれの先駆が絡まっていた。

多くの妖精はこうした自然のグラデーションをありのままに受け入れ、自らの中に取り込んでいく。殆どの場合、彼らはそれを拒絶するのではなく、嫌がりながらも受容する。夏の酷暑も冬の厳寒も、そんなものをは変えてしまえと言うことはせず、かくあるべしと、認めるのは、このまことに小さき妖精たちの心と体の中には広大な母性と慈愛が備わっていることを思い知らされる。

春、そして夏へと装いを新たにせんとする幻想郷。自然と生命力の投射である妖精の多くに取っては祝わしいことであるが、そうとは限らぬ者もいる。

春、だねえ……

来る気温上昇、招き入れられるは火勢を増した太陽、照りつける陽光は冷、氷、寒を残らず眠りにつかせる。自身も眠ればいいものを、徒に力を拡大した特殊な妖精で……当の氷と緒を繋いだ彼女は、眠ることなく春の訪れに一人憂鬱な表情を浮かべている。

あんなのの何がいいんだか……あたいはとけちゃうよ。大ちゃんは元気だね

まーまー、攻守交代ってことでさ。私だって、真夏にもなればチルノちゃんと同じだよお

春を寿ぐ人間の子供ほどの妖精は、春を呪うこれも同程度のサイズの妖精を慰めがてら手を引く。春を越えて夏まで活動を続ける氷雪、あるいは春節の妖精など、他の地域では決して見られない光景だ。それに、この巨大な姿である。妖精が、人間の子供と同じ背格好にまで大型化するのには、この土地特有の環境が影響している。

あっ、幽香だ

菜の花の開花につられて出てきたね。

この領域を支配する、大妖怪の存在だ。彼女はこの広大な草原地帯を中央からほとんど干渉されることなく治めている。ここから得られる自然のエネルギーを存分に我が物にし、この地帯を自由に治める権限を得る代わりに、この花畑の向う側にある博麗神社の権威の及ばない異世界からの侵入者に対する即応警備を担っている。

ガキンチョども、まずは挨拶でしょう。あんまりナマ言ってたら、取って食うわよ

「「こんにちは!」」

はいこんにちは。いい風、春が、来るわね。あなたの季節

うん

やだよう、春が来たらすぐ夏じゃん

夏は私も苦手だよう

誰にとっても、盛りの季節は短いものよ。精々謳歌なさい。

風見幽香の自治居領地ナワバリは、多くの妖精や妖怪の居領地ナワバリを包摂している。その中では、普段は流浪し知識や経験を放散させて蓄積しない妖精も、それらを積み重ねるようになる。あるいは風見幽香が庇護するこの花畑から常に湧き出す妖力が住まう妖精たちに高位化を促すのらしかった。

チルノと名もなき大型妖精が去った後、別の妖精がよたよたと遅れてやってきた。別段彼女達と知り合いという訳ではないらしく、行動は別のようだ。

風見幽香はその新参妖精に近付いて話しかける。

あなたも。自分の季節がいつなのか、どこで羽化するべきなのか、見つけなさいな

アゲハのような羽を背負い、同時にその幼虫の象徴のような角を額に生やした、新参の妖精風見幽香とはそれなりの因縁があるはずなのだが、声をかけられた当人はキョトンと、まるで知らない人に声をかけられたかのような反応をしていた。

ほら。仲間が行ってしまうわよ。馴染めるといいわね

コクリ、と頷いて蝶のような姿をした妖精は、チルノと大妖精の後を追いかける。妖精の輪は緩い、だが引き千切ろうとすればこの上なく強固だ。きっとあれもすぐに混じり、そしてこの花畑で季節を歌う自然の一つになるだろう幽香はそれを疑っていない、かつて自分がそうだったから。

記憶だけを濾過捨てるなんて。無粋な真似を

幻想入りを果たす多くの者達は、外にいた頃の記憶が朧げだ。それはこの世界で新たな生を得たときの自然な摂理ではあるのだが一方で、博麗大結界の恣意的な作用ではないかとも、一部知能の高い神妖かみさま達は考えている。

それは恐らくその通りで、だがそれは幻想郷に都合が良く、幻想郷の中に生きる者にとっても都合が良く、それを疑うことに意味はなく、誰もそれを非難などしないことも、ある種の紳士協定として運用されていた。

それでも、自分のあるいは隣人の、縁やさだめしがらみや呪について、誰もが幾許かの疑問を持ちながら生きている。風見幽香ほどの巨大な力を持ちながら、システムに組み込まれていない部外者であり続ける彼女にとって、それは幾つかの点で腹に据えかねるものとなっている。

嫌な過去を単に安易に捨てるだなんて、尊厳の破壊だわ。どんなに不幸で憎らしい過去であってもそれは、今を形作る個性の源泉だというのに。

恩着せがましく機能し続ける博麗大結界の濾過機能、それを背景に安定を見せる、幻想郷八博体制。風見幽香には、仄かな憎悪があった。

別に反乱を起こすだの、機能を破壊するだのというつもりはない。ただ、自分の中にある唾棄すべき幾つかの過去と感情それさえも、今の自分を確かに形作っているのだと自覚がある彼女にとって、そうした安易な過去の切り捨てが横行するこの社会は、逆説的に自分が否定されているような気持ちになるのだ。

その、過去とは。

幽香さん、こんにちは

えっ、ああ……こんにちは、リグル

結局この幻想郷に入ること、その活動範囲が自分の居領地ナワバリの中に収まることとなった(この花畑に住む他の多くの妖精達も同じく風見幽香のテリトリーに間借りしている)エタニティ・ラルバの豹変ぶりを目の当たりにした直後に現れた、リグル・ナイトバグ。得も言われぬ嫌な気分を覚えていたところを、急に刺されたムッとした表情を切り替えられない。

彼女と、仲良くしてあげてください

あんたが言うことじゃないでしょう、偉そうに。

はは……そうですね。ボクは彼から恨まれているかも知れないのに

覚えていないわよ。結界の濾過システムがやったことなんだそうよ、随分都合の良いことよね。霊夢も紫もシラを切って。豊聡耳と摩多羅のことは、なんとなく覚えている様子だったけれど風見幽香が悪態を垂れるのを、リグル・ナイトバグはまるで同僚の愚痴でも聞いているかのような表情。

ボクのことは、全くそうです

……そ。いいじゃない、別に。記憶があったにせよ、あれが、あんたを恨む筋合いなんてないでしょうし。

そうですね。でもリグルは苦笑う。

ここで生きててくれてるだけでも、嬉しいです、ボクは。

あんたが殺すと決めたんじゃないでしょう

幽香さんでもない

リグル・ナイトバグがそう言うと、風見幽香は、小さく目を泳がせた。何か口の中に生まれた異物を吐き出すか、そうすまいか迷っているようにした後で、それを飲み込む。

……当たり前でしょ

そう、ですね

腹立つわね軽く睨みつけられるリグル。送りつけられる鋭い視線とは裏腹に、彼の表情はどこかはにかんだように明るい。

もう一度あんな事が起こっても、またボクが彼女を殺さなきゃいけないんです。多分、彼は最期にそれを言っていた

……はあ?どうしてそうなるのよ。ほっとけばいいじゃない

ボクが、結局また男だから

男の考えることって、訳わかんないわ。バカみたいで。

ひっど(笑

リグルー遠くから、チルノが彼を呼んでいる。手を振り返すリグル・ナイトバグ。チルノの後ろには、早くも打ち解けたのらしい、エタニティ・ラルバの姿がある。彼女もまた、照れくさそうにリグルに向けて手を振っていた。

結局、アレの監視を、あんたがすることになるのね

……友達です。

そうね、そうしなさい。摩多羅神の算段通りになんて、なってやる必要はないわ

幽香さんだって、ボクの監視をしているでしょう

違うわ

自覚以上に強い口調で否定してしまった風見幽香は、小さく咳払いをして誤魔化す。

まあ、あれに害がないことはわかったし、もういいわ、どうでも。

はい

さっさと行きなさいよ、お友達が待っているわよ。

じゃあ、とペコリお辞儀をしてから、リグル・ナイトバグはチルノと、エタニティ・ラルバの元に駆け寄る。春を迎えて旺盛に茂った草花の上を駆け回って、笑い声を上げている。

ここは、異常だわ。意図的に、こういう奴らが集められている

風見幽香は、春の訪れに喜ぶ妖精と小妖怪達を遠目に見ながら独りごちる。それは希っていた光景だった、罪悪感と後ろめたさを覚えるほどに。

でもま、この世界って、そういう場所だものね

風見幽香は、風間優香を思い出す。ある日、目の前に現れた可愛らしい同級生。レズビアンだと思っていた自分の過去を一瞬で破壊し、今の自分さえ一撃で殺した男。遠くから見ているだけで体中から新芽がでて、新しい、認めたくない自分を引きずり出してくる。話しかけられた日にすべて、すべてが、こわれた。

それでも、何も解決なんかしなかった。こわれたものは、こわれたままだ。

それが出口だなんて、限らないわよね

彼も、自分との出会いで出口の扉を開いたりはしなかった。心も体も、言葉の上では、噛み合っていたのに。

パズルじゃないのよ。物事にはっきりとした輪郭があるなんてことも、境界ある輪郭同士が美しく噛み合うなんてことも、世界を分解しすぎた賢者阿呆達のただの思い上がりだわ。

次は彼女を殺さなければいけないリグル・ナイトバグが放ったその言葉に、胸が高鳴っている自分がいる。彼が蝶妖を殺すところなどが見たいわけではない。風見幽香は、既に一度、彼に殺されているのだ。あの日、自分が抵抗も出来ずに一撃で殺された記憶その記憶を不意にくすぐられて、生まれてきた嫌悪感と高揚感に、思わず唇を噛みながら自嘲する。

ふふ。あんたと私は、そういうものなのだわ。ずっとね

§

リグル・ナイトバグにとって、風見幽香は自分の居領地ナワバリを担保してくれる領主であり、同時に……

今日も立派に着飾っちゃって……。ねえ、オナホくん?

性処理ペットとしての自分の、主人でもある。

主人幽香の気が向いたときに、いつでも呼び出される情であり、彼にはそれを拒否する権利がない。

呼び出されたリグルは、水着とも下着とも見えるスパンデックス生地で出来た衣装を身にまとっている。到底男物には見えない……女性向けだとしても煽情的を通り越して下品なデザインだ。

エッロ、男がそんな服着るなんて、恥ずかしくないの?

ゆ、幽香さんが、着ろって……

セパレートされた上半身は白がベース、肩から手の甲までを包んでいるというのに、一方で胸部前方が全く覆い隠されておらず、鳩尾から乳首までが露出している。しかしその下に、紐のように細い赤いブラジャーが通っており、乳首だけをピンポイントで隠そうとするごく小さな布地が、辛うじてそれを覆っていた。リグルが男子であることを考えれば上半身が裸であっても何も問題がないはずなのに、中途半端に布地を纏っているせいで〝倒錯したて女の真似事をしている〟と自ら物語っている。特に、乳首だけをぎりぎり隠すブラジャーは、下品以外の形容詞が見当たらない。肩には装飾として肩甲骨辺りまでを隠すマントのような物がついているが、ひらひらとした動きと明らかに機能を満たさない装飾性は、単に性的であるためだけに付けられていることを物語っている。

オス乳、膨らみ始めてるじゃない。女性ホルモンのも調子がいいようね?

は、はい……ま、言われた通り、ご奉仕の日でなくても、毎日……乳首か、お尻で、シテます

よろしい

セパレートの間に覗く腰回りが女のウェストよりも寸胴なのは男だから仕方がないのだが、それでも贅肉がなく腹筋も薄いほっそりとした曲線が下半身へと連なっている様子は、男性らしさをひけらかしたまま女らしさを見せつけたいという倒錯した意思がはっきりと伝わってくる。

全く、そこいらの女より細い腰。可愛くて、見てるだけで、へし折りたくなってくるわ。でも……まだ男らしい形状が残ってるじゃない。竹林の医者にでも頼んで、肋骨取ってもらったほうがいいんじゃない?

えっ……それは……そうしろって、いうなら……

下半身は、紺色のプリーツスカートになっている……が、ウェストではなく尻に引っ掛けるほどのローライズに加えて異様なほど短い丈で、股間を全く隠していない。淫乱に短いスカートの下で隠れていない陰茎は、股間から知りに向かって鋭利に細まった白のスーパーハイレグショーツにギリギリ押し込まれており、その膨らみがスカートに隠れていない。ショーツにはワンポイントで小さな赤いリボンが付いており、丁度押し込められたペニスの裏側辺りを可愛らしく飾っていた。

男のくせに安産型の臀部、尻からつながる太腿はむっちりとしているが、太腿から爪先までが一続きに包まれた横縞のタイツのようなブーツのようなスケベボトムに包まれている。足部は、ハイヒールになっていて男尻をピンと引き締めると同時に全身のヘンタイじみた煽情フォルムを引き立てている。

「まだキンタマの形がわかるわね。もうそれ要らないでしょ?そのうち取るから、そのつもりでいなさい?(取らないけど)」

えっ……ぁ……はい……

言いつけどおり、ちゃんとローション風呂に浸かってから来たみたいね。あー、スケベな体。なんで男のくせにそんなにチンポにクる見た目してるのかしら

スパンデックス生地は元々高伸縮で体にピッタリとフィットしやすいが、これは特にリグルのために特注で作成されたものだ。加えて、今夜幽香に呼び出される際に注文を受けた通り、体にはたっぷりとローションを塗り込めてある。

幽香の寝室を仄明るく照らす間接照明を拾って、リグルの平たい男体が、テラテラと濡れ光っている。

そんなリグルの姿を見て、幽香は満足そうに目を細めた。立ち上がると同時に、羽織っていたバスローブを脱ぎ捨てる。現れた暴力的な性肉は、リグルの目を釘付けにし、ショーツの下にぎちぎちに収められたショタちんぽをキリキリと勃起させた。

ベッドに上がりなさい

は、い……

一山でリグルの頭のサイズを優に超える爆乳には、下品に張り詰めた乳輪が威容を見せている。乳首のサイズも尋常ではない、指程もあるそれは、招かれてやってきたリグルのセックスアピールダダ漏れ衣装を前にして勃起している。

その巨大な乳肉を乗せた胸板背中から腰へ流れるラインは華奢さを保ち、そこからつながる尻もその爆乳に負けないほどのボリュームで揺れている。

エタニティ・ラルバとの戦の際に戦闘衣装で締め付けていたボディラインからは想像もできない、ただそこにあるだけでオスを煽情する品性に欠いたエロボディ。しかし一点だけ、その強烈な女性性を否定するものが備わっていた。

ほんと、あんた見てるだけでイラついてくるわ。昼間っから可愛いメス顔して、チンポ公害だって自覚あるわけ?

シュッ、シュッ……

幽香の股間には、自らの乳房の間に挟まりこみそうなほどに長く太い、男根が備わっている。その下には、握りこぶし程もある巨大な陰嚢がふたつぶら下がっている。ローションまみれエロコンパニオン衣装を着て羞恥にモジツキながらも股間ではチンポを固くしているリグルの姿を舐め回すように見ながら、その巨大精液タンクは上下にゆっくりと蠢いている。既に射精に向けて準備が整い、その射精量を即座に埋める生産量がスタンバイしている。上下に射精スタンバイのスクワットを見せるキンタマに隠れるように、女性器もしっかり備わっている。

仮にリグルが挿入するとそれこそ三擦り半で射精するその女陰裂も、メスの匂いを漂わせてうねっていた。リグルオナホのケツまんこが擦り切れた後、ケツ側から押し出され切って精液のでなくなったペニスを、ここでしごき倒すのも幽香の楽しみの一つだ。

ベッドに登れと命じられて、男ハイヒールを鳴らして歩くリグルが歩く。一歩ごとにスケベに腰をくねらせ脚を逆の足の前に出して歩けと躾けられていた。薄い腹筋と程よく寸胴な腰回りを波打たせながら歩く足取り、腰振り、ベッドに登るのときの尻の膨らみを眺めながら、幽香は自慢のガチブトペニスをゆっくりと撫で回して暖機する。先走りがとろりと流れた。デカいからと言って感度が悪いわけではない。

見てるだけで我慢汁とまんないわ……今日も朝までパコるから、覚悟なさいね

は、はいっ

幽香に見られているのを意識してかせずか、リグルはしなやかで肌触りの良い在高級の寝具で満たされたベッドの上に登ると同時に、そのまま四つん這いの姿勢を取って、股を開く。尻と太股、ふくらはぎからハイヒールの足先で、見事にハートマークを作って、幽香主人に披露する。

男の割にがっしり広がった骨盤から滑らかに丸まる尻を、幽香に向かって小さくゆっくりと揺らして見せる。ローションを吸ったエロ衣装と、決めの細かいショタ肌が、テラテラと光を返して最高にエロい。

クソッ……なんてエロいガキなの。映像記録水晶に保存して毎日ズリネタにできる……っ

リグルの簡潔だが下品極まりないベッドパフォーマンス。四つん這いで腰と尻をくねらせるリグルに誘われるように、幽香もベッドに滑り込んだ。

バカね、まだよ。その縦割れケツ穴にいきなりブチ込むのも悪くはないけど、先に、コレをどうにかしてもらわないと……

承知、しましたぁ

リグルの横に寝そべった幽香は、仰向けになって天井を指したペニスを手で持ちリグルに向かって揺らすペニスに愛撫しろという合図だ。リグルは四つん這いの姿勢のまま幽香の股ぐらの間に入り込む。

幽香のむちむちの脚に挟まれながら太腿と爆尻を撫で、掴み、揉み回しているリグルは、股間で存在感を示す規格外の陰茎と、悠然とした様子で上下に蠕動するド金玉精子タンクをうっとりと見ていた。当然だ、その姿一つにメス発情するように、リグルは調教尽くなのだから。もう身も心も。

半開きの口から熱い発情ガスを漏らしながら幽香の尻を揉むリグルには、幽香の尻を女として見るオス欲情と、屹立した巨根に失神するまでケツまんこを犯される期待を抱くメス欲求が入り交じっている。

メス野郎のくせに、触り方が……ねちっこい、のよっ

女の子がして欲しい触り方、わかってますから……

キモっ

幽香さんのおちんぽ、オス臭すっご……鼻から脳みそぶっ刺さる……

幽香の陰嚢から亀頭にかけての、バキバキに力強い裏筋に、無意識に舌を這わせてしまうリグル。男にも拘らず、オスへ媚びるメス仕草が体に染み付いていた。

こんな極悪ふたなりクソデカちんぽを前にして、メス化しない男の子なんて、いないよう

コレまで数え切れないくらい自分のオスを殺してきたチンポ様に、ご挨拶のキス雨を降らせて唾液でどろどろに濡らしていくリグル。その目は恋する乙女と色情狂女ニンフォマニア・メスの両方の性質を併せ持っている。男性性は、欠片も感じられなかった。

はむっちゅっ、ちゅちゅっっれろっっ

じゅるっじゅぼっええおぉぉぉおっっッ

あー、いいわよぉ、男のくせに鼻の下伸ばしてメス顔でチンポにしゃぶりついてるの、めちゃくちゃ可愛い

可愛い……ボク、可愛い……幽香さんが可愛いってゆってくれる……

幽香の巨チンを夢中で舐め回し、キンタマを口に含んで舌で転がす。たまには女の子の方も愛撫して、幽香の股間性欲全部をまんべんなく高めていくリグル。そうして幽香に奉仕すればするほど、自分も気持ちよくしてもらえることを、記憶の深い部分に焼きつけられている。

うらしゅじ、しゅきれすよね

ええ、最初にそこで煽られるの、堪ンないわいきなり射精するなんてもったいないものね。そうやって……ふーっ、私の快感を、高めることも、ン、憶えてて、偉いわっあ、ソコっ、縫い目の真ん中っわ、わかってるじゃないっそこ舌でホジるのっチンポ煽られてイイわぁっ

いきなり射精感に向かうのではなく、お互いに性感を高め合うためのスケベの共通認識が得られている。リグルにとって、幽香主人の性欲処理を担うオナホ男子として幽香主人がどれくらい気持ちよく射精に到れるのかが大事であり、それはそのまま直後のに直結している。

もみっもみっさわっ、さわさわっ

れろっちゅっっちゅちゅっっ

掌に収まらない幽香のキンタマを、優しく撫で回しながら時折握り込んで刺激する。弱点とも言える陰嚢をあられもなく晒し無防備に触らせる、幽香にとってはリグルに全幅の信頼をおいているからこそできることだ。ここにただの主従ではないことが現れていた。

完全にチンポに奉仕するメスに堕ちてる、その顔。誰に見せても恥ずかしいわねねえ、そんなにチンポ好きなら、誰のチンポでもしゃぶってるんじゃないの?人里に降りれば、チンポなんていっぱい生えているじゃない。私が呼んでない夜は、他のチンポしゃぶって、他のチンポでケツアクメしてるんじゃないの?

し、してませんっ!ボク、この、幽香さんのおちんぽ一筋なんですからぁっ意地悪なこと言わないでくださいっ

嘘おっしゃい。知ってんのよ、この間、白玉楼の庭師のガキとヤってたでしょ

あ、あれはぁ……ちゅっ、ちゅっホモだからセーフってことでごべんなさい、この間、にとりくんとも、尻子玉とりあいっこしましたぁっちゅっじゅろろろおおおおっっれろっ、れろおおじゅぶびゅぶびじゅぼぼっっ

あ、くっ……チンポしゃぶりで浮気を誤魔化すなっおほっ、っイイっ、私のチンポの好きなとこ憶えてる専用フェラいいっ好きな顔面が自分のチンポにしゃぶりついてマンコ顔になってるの、堪んないっいいわ、ゆ、赦してあげるホモ浮気なら、ゆるすっ

ありがとうございばじゅぶぼぼっっっ

しょうもないホモガキね……。私が呼び出したときにちゃんとケツマンコ濡らしておきなさいよあと、女とはヤっちゃダメだからね

ふぁい

返事だけはいいリグルだが、一緒に住んでいるチルノやルーミアやミスティアには既にレイプされている。幽香ほど頻繁ではないが、彼女達に呼び出されてレンタルチンポとして奉仕することもしばしばだ。実際には幽香はそれも認知している。

いつか独り占めしてやるんだから💢

少しだけムッとした幽香は、自分の巨根を丁寧に舐め回しているリグルの頭を掴んで、ペニスをリグルの喉奥まで挿入する。

ごべっっ……ふーーっっぶごっふーっっっ

んっ……こら、一人で幸せになってないで、ちゃんと、喉まんこ、締めなさいっ

そういいながら、リグルの側頭部を掴んだまま、頭を上下にグライドさせる文字通りのオナホ遣いだ。リグルの食道を、幽香の規格外サイズの肉棒が抉じ開けて進み、また一気に引き抜かれる。

ぶっーーーっほぶっ……べぁぅ……ぐぼっ、ぐぼごっっ

っく、し、締まるっ、気持ちいいわよ、リグルの喉まんこっこんな乱暴に喉こじられてるのに、メスまんこの顔してっっぁああ最高よ、リグルっ

涙と鼻水、嗚咽を撒き散らしながらも、性欲と恍惚に塗れたスケベな顔を貼り付け、幽香のイラマチオを受け止めるリグル。しかも、そうして喉膣ブラシでチンポ奉仕を続けている間、彼は手を自分の股間に運んでスケベ下着の股ぐらを横にどけて取り出したチンポで手淫をしている。既に何度か射精しているみたいで、激しく喉を貫かれていることで目立たなかったが何度も腰を震わせて薄い精液を布団に垂らしている。

顔っ……顔見せろっ口まんこされて脳イきしてるホモ野郎の顔、見せろっ

ごぼっふぶっっーっっっぶぇぁんぎ、っばしゅっっおおんごッぐぶっあらまっばちばちっきひぇまひゅっ

ぴゅっぴゅっっ……

喉を貫かれ、性器ではない粘膜で興奮を憶えられるようになったリグルは、イラマチオを強いられながら、脳みそで雰囲気アクメをキメ、その副産物としてまた薄い精液を吐き出している。

リグルのフェラオナならぬイラマオナに気付いた幽香。

ぁによ、喉奥擦られながら、センズリ扱いてるのっ?本当に、ヘンタイね。女の子に喉奥犯されて興奮して、種無しの精液自分で絞っちゃうなんて。っぁ、ああ〜、こんなヘンタイスケベな男が私のものだなんて、最っ高ほら、喉にしながら、チンコキ射精するときの顔、見せなさいっ最高に無様なアクメ顔、男のくせに、男チンポでキメるくせに、アクメの顔だけメスになってる、顔面ポルノ、よこせっほら、ほら、ほらっ喉えぐってやるからちんこきしろちんこきでうっすい種無し精液、無駄撃ちしろっ

がくっがくがくっっ

ぴゅっ、とろぉ……

イラマチオされながらのちんこきオナニーを許可され、思い切りアクメを迎えて激しく腰を前後に痙攣させるが、射精量は悲しいほどに少ない。白さも微妙で、透明な液体の中に若干の白い濁りがあるだけ。完全にメスになるまでもう少しの、メス射精だった。

ふぶーっんぐっんゔぉぉっほぶっ

見なくても分かるわよ、もう女を孕ませる力もない薄い、メス潮みたいな情けない射精したんでしょ

こくっこくっ

リグル自身も自分の精液を見ているわけではないが、そうなっている自覚はああった。通り抜け手にかかる精液にも露骨にとろみがない。自分がオスの形質のままメスになっていくのを認識して、勝手に興奮する。

っぶふーーっぐぉぶべっ

男になれとかゆったけど、無理っこいつ、女として可愛すぎるこいつはやっぱりメスにするっ私専用のオナホ男っ私が責任持ってメス化させてやるっケツ穴子宮で孕ませてやるわっ

鬼気迫る表情でリグルの喉オナホを使い倒す幽香。リグルは律儀に喉膣を締めながら、窒息寸前の快感で溺れている。チンズリは虚しく透明な汁を飛ばすだけになってしまっている。

はあっ……もう、だめっそのオス煽りのマンコ顔、見てるだけでもチンポにキくってのに、おっっそんな丁寧に喉膣絞められたらちんぽイくわよ亀頭ががりがり喉膣に撫でられて、もうチンポ我慢無理なんだからっあー、キっく、ちんぽっていうか、精巣にクるのよね、あんたの顔っやっべ、ちんぽやっべ、もうイく、リグルのメス顔オナホに中射精しするわよっ喉締めろやっ私のキンタマから精子全部吸い出すつもりで、喉絞めて、チンポにしゃぶりつけっほぉ

んぶっはひっくだしゃいっふぶっじゅろろろっろっっっおちんぽ汁、ボクの喉まんこにたっぷり注いでくださいっぶぼっブボッれろぉぉぉっじゅぱっ喉でメス脳イきできる淫乱メス男子の喉にっじゅぽっちゅううううううっっれろれろれろっっ

エロすぎんのよ、このガキ💢こんなの、犯すに決まってるでしょ💢あぁー、とけるっこいつの喉膣ちんぽとけるっんぉこ、こいつ、メスのまんこよりヌけるって、どういうことよ💢

うれしっ本物の女の子より、ボクを選んでくれるっ本物の女の子より幽香さんにとって、メスになれてるっ本物の女の子より幽香さんの精子もらえるっ欲しい幽香さんの精子ほしいっ幽香さんの遺伝子欲しい幽香さんに孕ませて欲しいっ

あー、イく、もうイくわよ……チンポイく、っぉ、チンポイく、チンポイくチンポイくチンポイく、チンポイくチンポイくチンポイくチンポイくチンポイくチンポイくチンポイく、イくイくイくイくイくイくイくイく

幽香さんの精子幽香さんの精子幽香さんの精子幽香さんの精子幽香さんの精子幽香さんの精子幽香さんの精子幽香さんの精子幽香さんの精子幽香さんの精子っ幽香さんの精子幽香さんの精子っ幽香さんの精子っ

っほっっっっっ💢……っ……ーーーっっっ💢💢💢

びゅーーーーーーーーっっっっっっっ!

ぶぼおっっっ!

どぶっっっ、どぼぼっ、びゅうううううーーーーっ!

びゅうっっ、びゅびゅびゅびゅびゅっっっ!

どっぼおおおお、どばあっ、ごぼぼぼっっ、ぶしゅーーっっ!

っ、ま、まだ、射精っ……やっべ、リグルのメス顔見ながらの射精、とまんねっ

ごく、ごくごくごくごくっっっっ……っっ、ごくっ、ん、っごっ、……んぐっ、んっっっ………………んぶぼぼぼおおおおっっっっっっがじゃんぜ、ぇじっっぼべゔぁぁぁっっッっ、しゅぎっぶべっっっのびびればべっっんっっ

ちょっ、と、おふっな、に、こぼしてんの、よっ💢こっちは気持ちよくクソ長射精で気持ちよくなってんのに、詰まった便所みたいに吐き出してんじゃないわよっ💢っ、んおっ私のザーメンで真っ白になったリグルのマンコ顔、キくっ……顔面ポルノで、イけるっっっっ

シコシコシコッぎちゅっ、ぐちょっ、ずりゅシコシコっっ

口開けろっ💢ザーメン吐き出したお詫びに、マンコ顔で顔写受け止めろっ💢そう、その顔よっ💢その嬉しそうなチンポ媚のメス面のまま……っっやっべ、めっちゃシコい何よその顔っ、今まで何百兆も精虫殺してきた、凶悪犯の面してやがるっ💢口開けて舌だせっ💢笑えっ💢顔面、精子でパイ投げ食らった後みたいにデコレーションしてやるから、受け止めろ💢ダブピで受け止めなさいっ💢あーイく、またイく、リグルの顔面ポルノで射精するっイく、イく、っイく、イく、イく、イく、イくイくイくイくイくイくイくイくイくっっ、いぐううううううううううううっっっっっ

どぼっっ!ぼぐぼっっっっっ!

びゅーーーーーっっ、びゅるるるっ!

びゅっっっ、どばっっびゅしゅっっ!

びゅっ、びゅっ、びゅっ、びゅううっっっ!

わぷ……んっぴーすっぴーすぴーすぅっせーしキタ幽香さんせーし、顔、にいっぱい臭いっ幽香さんのせーし、濃すぎてくっっっっっっさああああしかもブリブリっボクのメス顔で興奮しすぎですっ体温高くなりすぎて、精液ゼリーになってるっぶりぶりマヨネーズみたいに吹き出て、ボクのスケベ顔面に乗っかるんゔぉっほんとにパイ投げされたみたいに、顔面に幽香さんのザーメンデコレーション、盛り付けられちゃうっっっおクチの中で、ゼリー状精液ぷるっぷるしてて、おいひいれすっっここにも、幽香さんの精虫、うじゃうじゃ、してるんだああぁっっ……ごくっっごくんっっ

なに、よ、その下品な、煽りっっっ💢こんだけ出したのに、ちんぽ収まんなくなるでしょっ💢あーくる、またくる、また勃起するっあーあ、またフルボッキしちゃったわよ、どっかのメスショタがあんまりにも淫乱だから、チンポがまた起きちゃったじゃない、どうしてくれんのよ💢

朝まで犯すと宣言したとおりではあるが、全く衰えることなくこの巨根が屹立し続けている。その男らしいペニスのあり方を眼前で見せつけられたリグルは、顔面に強烈なオス臭のゼリーを貼り付けたまま、体を震わせる。

がくっ、がくっっがくがくっっ

強いオスを目の前にして、脳が勝手にメスアクメを誘発した。在りもしない子宮が震え、女性ホルモンがドバドバ放出される。同時に、メスイキ幸福脳内麻薬も過剰に放出された。

幽香のチンポを眺めながら勝手にメスイきするショタリグルが、ベッドの上でちんちんポーズを取ったまま、メス顔で腰ヘコを繰り返していた。顔面から滑り落ちたゼラチンザーメンが胸に垂れ流れる。リグルはそれを手ですくってスケベブラをずらし、男なのに膨らみ続ける乳房の上に塗り拡げていく。チンポを空想マンコに受け入れるメス媚腰ヘコを続けながら、リグルは幽香のザーメンで濡れた自分の乳首を撫でる。

ふーっっふーーーーっっふーーーーっっ

なによ、目の前に主人がいるっていうのに、勝手にチクニーしてるの?

ふーっっ、ふーーっっ幽香さんのザーメンでっぬるぬるになった、乳首、きもちよすぎてっっごめんなさいっ、がまんできませんっ

こちとら勃起収まってないってのに……💢我慢できないなら、好きなだけ、乳首でイかせてやるわ💢

幽香はリグルの体を軽々と持ち上げて、抱き寄せる。仰向けの体に、更に同じ方向を向くようにリグルの体を乗せた。

小柄なリグルと、大柄な幽香。リグルの頭は幽香の超乳の間に埋もれ、一方でリグルの股の間からは幽香の巨根が屹立してリグルの不能化寸前のちんちんを裏側から擦り上げるように立ち上がった。足を絡めて、リグルの脚が自由にならないように固定し、脇の下から手を入れて、幽香はリグルの乳首に指を這わせる。

わ……ぁ……

期待してるのね、これから乳首で死ぬほど狂わされるの。わかってて嬉しそうな声出したわね?

は、はひっ

リグルの顔は、乳房に埋もれてしまって幽香からは見えない。だが、その顔面がマゾオスのメス顔でぐちゃぐちゃになっていることは容易に想像できた。幽香は背筋に快感の電流が流れるのを感じながら、舌舐めずりする。

今、指先に感じているリグルの乳首は、男のものとは思えないくらい膨らみ上がった胸部に屹立している。女の乳房と違って、メスイキで無理矢理吐き出させられた過剰女ホルで不自然に発達した男乳房は、ハリがなく小さく、だらしなく垂れている。一方で乳輪から乳首までは一人前に立ち上がっていた。

立派なチクニー癖乳首してるわね。こんな胸してたらもう男湯入れないでしょ

は、入りますっみんなからエッチな目で見られて、どきどきしてますっサウナに入ったら、おじさんからボディタッチされて……っ

はっ、ド変態ね

幽香が指先でリグルの膨らんだ乳輪を回し撫でる。それだけで、幽香の体の上でリグルの小さい体が跳ね上がるのが伝わってくる。

くっそ、可愛いわね……💢乳首で虐め抜く前に、こっちのチンポがまた限界になりそうっ💢

そのまま乳輪愛撫を続ける。幽香とて、自分の精液でさえ興奮材料にできるていどには性欲が歪んでいる。リグルの顔面と胸にべっとりと塗りたくられている自分の精液に触ることに、興奮こそすれ抵抗などない。精液ローションをリグルの胸に重ねて、ぬるべちょになったそれを、本格的に愛撫し始めた。

……っんっちくび、きもち……っ

本当にスケベな胸ね。これ、もう性器よ?

はいっ……もう、開発完了してるから、性器で、あってますっ

ふふ。じゃあ、チンポと乳首、どっちが好き?

ち、乳首……乳首のほうが、好きですっチクニーのほうがずっと気持ちよくってぇっっ

いいわ、ガチで最高よ、お前。一生オナホとして飼ってあげる。

い、一生……オナホ……

リグルの可愛いおちんちんが、ぴくん、と跳ねた。

幽香のペニスの根本にあたっているリグルの尻がきゅっとすぼまるのも感じられる。

この淫乱ショタがっ💢

ペニスが苛つくのをなんとか我慢しながら、幽香はリグルの乳首を愛撫する。張り詰めた乳輪が更に硬くなり、ぷつぷつの毛穴が敏感に指の感触をキャッチして快感を増幅させる。

ふーーーーーっふーーーーっっっ幽香さんっもっと、つよくっ

乳首イきに慣れたリグルにとって、このくらいの刺激では、快感を燻らせるばかりで絶頂には程遠い。むず痒く欲求不満が募る。より強い刺激を、幽香におねだりする。だが、幽香はそれに応じない。ゆっくり、じっとりと、乳輪を撫で回し、乳首には時折指先で触れるだけ。乳輪にも、あくまでもソフトタッチを続けている。

や……あ……幽香さんっおっぱいその触り方、おっぱい切ないですっもっとほしいんですっそれじゃ足りませんっあぅ、ん、ぁぁ……乳首でイきたいのに、それ、もっと切なくなっちゃいますっ

切実なリグルの訴えをしかし幽香は無視する。ゆっくり、やさしく、刺激が鋭くならないように。乳輪の周囲の膨らみを撫でて、快感を手で集めて寄せるように、回りから中心へ寄っていく。乳輪と肌の境界あたりを、爪先でカリカリカリカリと甘くひっかく。張り詰めて震える乳首の先端を、柔らかく一瞬だけ触る。

やだ、幽香さん、やだ、やさしいのやだっ💢もっと、もっと強くっ💢おっぱいっ男のくせにだらしなく膨らんだ、メス化おっぱい、もっと強く触って苛めてっ優しくしないで💢もっと、いつももっと強くいじめてくれるじゃないですか💢乳首も触ってっ回りだけじゃなくって、シコってる乳首、いつもみたいに強くいじめてくださいっっ早くっはやくっ強くしてっ早く、焦らさないで、焦らさないでってばあ💢💢💢

乳房に埋もれながら、頭を振り乱すリグル。手足をばたつかせるが、絡め取られていて身動きが取れない。乳首いじめは、完全に幽香の支配下にある。強い刺激が欲しくて欲求不満を爆発させつつあるリグルは、主人への口の聞き方を忘れて強めの口調で刺激を要求する。

普段なら躾の対象になる行為だが、幽香も流石にそこまで鬼ではない。むしろ、そのメチャクチャな様を見て、ゾクゾクと震え上がっている。

う、わぁ……リグル、余裕無くなってる……可愛い……エグ可愛い、何なのよこの野郎っ……💢

カリッカリカリカリカリカリっ

さわっ……さわっっ

ふわっ

つぅーーーっっっカリッ

ーーーっっ💢やだっっ💢やさしいのやだ💢強くっ💢おっぱいもっと強くしてよっっ💢毎日チクニーしろっていったの幽香さんでしょ💢足りないっ、足りないからっ💢ふーーーーっ💢ふーーーーっ💢乳首、オス乳首足りないからっ💢好きなだけイかせてやるって言ったくせに💢そんなんじゃイけないっ、もっと強くしてってば💢ねえっ💢乳首つよ……おほぉっっ!?

我慢が限界らしいと見た幽香が、前触れなくいきなりリグルの乳首を摘み上げた。思い切り潰して、引っ張り上げ、そして捻る。幽香の指の間でぷりぷりと固くシコった肉感が踊る。

っっっっっきたぁっぢぐびっっこれっ、これれすうっっごっっんぎっイグ、ぢぐびイグっっいきなりじゅるいれすっっっっっっっっっっ乳首シコシコっもぢっっイくっ乳首っおっぱいメスイキしましゅっメス化ホルモンでしゅぎるっ女の子の幸せクるっっ

びくっ、びくびくびくっっっっ

へこっっへこっっへこっっ

とろぉぉっっっ

リグルの背中が仰け反り、背中だけでブリッジを描く。腰がヘコ付いている。情けなくひょろ勃起したおちんちんが、透明な汁を垂らしていた。乳首でメスイキ、リグルが欲しがっていたものだったが、焦らされまくったせいで、アクメ深度がエグい。

ーーーーーーーっぐひっっイぐっっ乳首でイぐっっびりびりしゅごいっっっお腹あちゅいっっ乳首メスイキで、想像子宮が疼きまくってますっっ女の子にっ女の子になるっっおちんちん要らなくなっちゃう乳首だけでオス去勢しちゃいますっっ乳首きもちいっっイくっイくイくイくうぅっっ

どくんっ!

びくっ、びくびくっっっ!

リグルが乳首でメスイキをキメ、ヘコヘコと腰が前後に揺れている。退化ちんぽが情けなくトロ汁を垂らして、男としての無能さを告白していた。

だが、リグルがアクメをキメて絶頂を告白し快感に酔いしれているのがわかっても、幽香は乳首への愛撫を止めなかった。

焦らしていたときのようなソフトタッチの愛撫と、とどめを刺したときの苛烈な乳首苛めを、交互に組み合わせて、しかし、ずっと続ける。

オーガズムを迎えて全身が敏感になっているリグルは、継続される乳首責めの快感を拾い続けてしまう。

ひぎっっっっイッてます幽香さん、ボクもう、乳首イきましたっ乳首敏感でっ……んぎ、ひっっイグッ、乳首メスイキ、またクるっっっまって、まっっれくらひゃ……気持ちいいのおわっ、おわってぇっっおほぉっっっゆ、か、さ……も、らめ、乳首もっっイッっイくっ、イく……イくっ、ま、また……っっ

幽香の体の上で全身をくねらせ腰を跳ねさせながら、アクメ状態を維持させられるリグル。跳ね回る腰、情けない量しか出ない精液、伸びる乳首。電流、快楽、閃光、幸福、炸裂。

か、かわいい……やば……えっぐ……乳首イきで腰クネクネして悶えてるの、ガチでエロいっコレが男かよ💢男のくせにこのメスみは、何なんだよ💢あーこれ見ながら今すぐチンポオナりてえっっっっっ💢

っっっ、あ無理っコレ無理っっイぐっっぎもぢいぃッっ乳首ぎもぢぃの、とまんにゃっッ💢っほっっぢぐ……のほっっ💢

ぷちっ、ぷちぷちっっ

絶頂を継続させられおろしてもらえないリグルの頭の中で、気泡がはじけるような音が響き始める。

にゃんか、やばっっっひっぉっっぁっっく、まらいぐっっあたまのなか、ぷちぷちぃっっ乳首っコキ潰すのっしゅごしゅいでっっしゅきっっしゅきぃっっ死ぬ死ぬゅっっっイグっっまたいぐっっずっとイく、おっぱいずっとイくのぉっっ

ばちっぱちっっぷつっ

頭の中で響いていた弾けるような音に混じって、今度はなにか細いものがちぎれるような音が聞こえてくる。

ヤバいこれやばいっなんか、壊れるっのうみそなんかへんになるっイきすぎてアタマばかになるっなんかちぎれてるっ

乳首アクメを延々と重ね続けられて頭の中が沸騰し、なにかの繊維質が切れているような錯覚を覚えるリグル。そうした破滅的な空想さえ、絶頂のスパイスになっている。

血圧が上がりすぎて鼻血が噴き出す。汗と、薄い精液、涙と涎と、鼻血と喘ぎ声。震える眼球、脱力する眼筋。一方で反り返ったままこわばり張り詰める背筋。

快感と苦痛の境界が失われて、純粋な〝刺激〟へ反射的に反応して、それが包括されて悦楽に回帰する。

こわひてっゆうかひゃんっボクこわしてっおんなのこになりますからッ限界まれっっイかせへ、くららひっっっっひぁっっ

こんなちっちゃな肉突起だけで、お手軽なものねえ?こんなもので誰でも女になれるなら苦労しないのよ💢あんたは、メスの素質があったの最初から男なんか失格で、女にも慣れなくて、メスとして生きるために生まれてきた、弱者男性なのよっ💢そら、好きなだけメスイキめろ、このマゾホモ男っ💢💢

がくんっ!

がくんっっ!!

ぴゅっ、ぴゅぴゅっ

幽香の乳肉の間で暴れまわるリグルの頭の動きが、一層激しくなる。背筋は反り返り、アクメブリッジはより高くエグい曲がり方に。反り返った体でヘコ付いている腰の痙攣は、電気ショックで暴れているかのごとく細かく早くなる。

摘み捻られる乳首は充血度合いを増して真っ赤に膨らみ、神経を鋭敏に仕立てる。自ら感度を倍増させた乳首性器は、淫欲によって痛みさえ快感に変調された電流を増幅して全身に放流する。中枢神経と梯形神経を併せ持つリグルの全身の神経節に、終わらない地獄の快楽電流が膨れ上がっていく。

チカっ

チカチカっっ

リグルの目から視野が失われ、代わりに純白の閃光が明滅するだけの平原が現れる。絶え間なく炸裂する稲妻の電閃、枝分かれ、集まり、爆ぜ、移動して、再び爆ぜる。融合し、分離し、広がり、凝集して、再び爆ぜる。白い閃光が、周囲から滲み侵されていくように、赤く染まっていく。頭の奥で響く、ぷちぷちと泡立つようなちぎれるような音も、まだ静かに続いている。

……が……きひゅっ……

仰け反り激しく痙攣していた全身が、突然、止まってそのまま幽香の体の上に力なく落ちる。そのままピクリとも動かなくなった。

リグルの体が動かなくなったのと対象的に、幽香のペニスは行き場のない怒りを溜め込んだように震え、先端からはリグルの雑魚射精と同じくらいかそれ以上の量の先走りを垂らしている。イキり勃ったガチブト巨根の先端がムラつきに震えるたび、多すぎる我慢汁は噴き出すように飛び、リグルの可愛らしいおちんちんや平らな腹、垂れた乳に降りかかる。

だがリグルは全く動かない。ただ半開きになった瞼の下で眼球が裏返り、開きっぱなしになった口から舌と涎が垂れている。鼻血は流れ放題で幽香の乳房まで赤く染めていた。

はあ?ちょっと。人のチンポ煽りまくって、自分一人逝ってんじゃないわよ💢起きなさいよ💢

リグルの体をおろし、仰向けにさせる。イキ臨死している性奴隷の股ぐらを開いて間に収まり、頬を叩く。反応はない。

ったく、あんなの見せられて、こっちはえげつない程勃起してチンポ痛いのよ💢さっさと起きて、ヌかせろっての、よっ💢

垂れたオス乳の上に掌を起き、どむっ、となにか気のようなものを放つ。妖力だろうか、わずかに赤い光が閃いて小さな衝撃が走ったかと思うと、ややしばらくして、リグルが飛び起きた。

ーーーーっっはあぁっ!あ、っ、はーっっ、はーっっ、し、死んでました……

おかえり。じゃあ挿れるわね。

え、ちょっ……んぎっっちょっとやすませ……お

こちとら我慢出来ないのよっ💢

幽香はもう我慢が限界になって射精と間違うほどの我慢汁垂らしを見せているガチブトちんぽを、蘇生したばかりのリグルの尻肉をかき分けて押し込む。

男とは思えないふくよかな尻肉の間には、調教拡張済みの縦筋アヌスがひく付いていた。幽香のこめかみあたりで、理性がちぎれる音がする。

もう無理💢なんなのよこのメスボディ💢こんなのショタガキについてていいパーツじゃないだろ💢こんなメスショタに開発したの誰だよ💢私だったぅおっ、たまんねっっガキの体温あつっふわとろケツマンコにチンポ持って枯れるっこいつに会うまで女食い散らかしてたメス殺しチンポ、オスに呑まれて……ぉお、女のまんこより、イイっっふざけんな💢くそっ💢くそっっ💢この、穴野郎っ💢💢

おっきっっっあっっっおちんぽ様、おっきいぃっっオマンコ広がっちゃうっっふっ子宮に、子宮にあたるよぉっっ

クソがっ💢チンポ煽ってんのかこのメスっっ💢子宮なんかないだろ💢作れよ💢だったら子宮と卵巣作って、私のガキはらめよっ💢おらっ、これ男の証拠だろっ💢このコリコリしたやつ、女にはないんだよ💢男がメスイキするためにあるやつっ潰してやるからっ、なれるもんなら正真正銘の女になってみろよっ💢このマンコなら女になってもヤっていけるってそら、コリコリ前立腺っオスのGスポット、潰しまくってあげるからっイき散らせっ、オスのメス顔晒して、チンポからなけなしのオス分排泄しろっ💢💢💢

ごりっ、ごりごりっっ

ぶびっ、ぶぼぼっぶちゅっ

そこっそこぉっっっボクが女の子になっちゃうスイッチそこがっつんがっつんされるとっっっお腹の奥に子宮できちゃうっイイトコ、ごりごり、しゅごいっっ幽香さんの逞しいおちんぽ様、しゅごぃいっっそこいっぱいされたらっそこばっかり愛されちゃったらボクっ想像子宮で、思い込み排卵しちゃいますっ

自分のチンポ見なさいよ💢なによ、さっきまで乳首で勃起してたのに、まんこされたらもうフニャッてるじゃないどうするのこれ?ちんぽ、小さいまんまとろとろルーイン誌っぱなしじゃないオスとしての尊厳が流れでちゃってるじゃない少しは執着したらどうなの💢オスらしいチンポほしいって希うくらいの甲斐性とか、ないわけ?💢

ありませんっ……おぉぉ〜〜〜っゴリついてるっボクのオマンコの中で、幽香さんのチンポがゴリついてっふぐっおぉっ、んぎっっ気持ちいいスイッチ殴りまくってくるっボクのおちんちん、もう勃起諦めてるっ幽香さんのかっこいいチンポに勝てないって、さとっちゃってるーーーーーっっんぉーーーっっっっっぢんぼ、幽香さんのおぢんぼさま、しゅきっ、愛してゆっっこの無敵おちんぽに、一生従いましゅっ敗北オスはおとなしくメス化して強いおちんぽにご奉仕するのが、しあわせなのぉっ

淫らすぎるメス媚び科白を叫びまくって、幽香に穴奴隷アピールを繰り返すリグル。鼻水を垂らし、焦点の合わない瞳を寄り目に震わせながら、ケツアナで幽香への奉仕を叫んでいる。

幽香も幽香で、自分が望んでいる以上のスケベ女装男子に仕上がったリグルに、性癖を粉砕されている。理性はかき消されて、メスショタとかしたリグルに対して、チンポの制御ができない。勃起したそれはヌかなければ収まらず、抜くにはリグルのエロ誘い口上が必要で、間接的に射精管理されている。

スケベな共依存に陥っている主従関係は、他人からの介入を受けぬまま、倒錯したセックスに二人を沈めていく。

あー、ダメ、ダメだわこれ、この牡膣の肉襞、本物まんこより俄然気持ちいいわ。おちんぽが温泉に入ってるみたい。ぁ〜〜〜〜っっだめ、コリコリ前立腺、責めれば勝ちなのに、こっちのチンポも気持ち良すぎて、責めきれないっふぉっ腰溶けるっ、ちんぽなくなるっケツ膣の締め付けもまんこなんかよりキツくて、ザーメンぶっこ抜かれる

やだっもっと責めてっおうそ、しょれっしゅれれひゅっもっとそこ虐めてくださいっぷっくり膨らんで育っちゃった、ボクのメス化スイッチ、もっとガッツンガッツンおひてっこわひ……おぎょっっっへっ、へっ、へっっひへっっぎもぢいっおちんちんたたなくなっちゃった萎れたままとろとろれれるっボクのおちちん、幽香さんの本物おちんぽ様に殴られて、情けなく泣いちゃってるこのままっ、このまま、メスになったままもろれなくひれくらひゃぃっ

メス発情ガスを体中からむんむん放ちながら、幽香の雌性を煽りまくるリグル。ペニスを持った男の姿には微塵も見えない。幽香の体に脚を絡めたまま腰を動かして、情けなく垂れたふにゃチンをふるふると揺らす。どっしりとのしかかる幽香の女体と、爆乳。内臓をぐりぐり押し上げる、逞しすぎる巨チン。

ボクが男としても女としてもダメなぶん、幽香さんが男も女も全部カンペキっ……好き……好きです……惨めな去勢ガキが、万能アンドロギュヌスの女様を好きになって、申し訳ありませんっはへっ、はへっっ使ってっもっと使ってくださいっオナホ奴隷使い潰してくださいっ

いわれ、なくても……💢ふんっ、おふっっああもう我慢無理💢コリコリ自己主張していちいちチンポに引っかかってくる前立腺、マジでイラつくわっ💢潰すっ💢このコリコリしたヤツ、マジでぶっ潰すから💢💢勢いで中出しするかも知れないけど、いいわよね?💢

はい……っ潰してっ男のメス証拠、ぶっ潰して、ホントのメスにしてくださいっメスになったお腹の中に、幽香さんのぷりぷりザーメン、たっっくさん、注いでくださいっ幽香さんの遺伝子っ女としても男としても圧倒的に優秀な遺伝子、ボクにめぐんでくださいっ産ませてっ幽香さんの赤ちゃん、ボクに産ませてくださいっ

アナ奴隷にガキやるわけねーだろ、ばーか💢身の程わきまえろ💢私の遺伝子が欲しいんだったら、男見せろよ。無理だろ?子袋拵えてから出直してこい💢💢

ずぼっ、ずぼぼっ

ぶびっぶちゅっっっっ

ケツ穴からマン屁を鳴らしながら、リグルは幽香のペニスを受け入れ、絞めて奉仕する。マン汁の代わりに分泌されるようになったケツ汁が、受け入れた怒張の表面に絡みついてテラテラ光っている。

伸び切って肉ビラがはみ出したリグルのアヌスに向けて、幽香も夢中で腰を振る。牡膣の内側の腸肉ひだが亀頭に引っかかり、膨れ上がるほど発達した前立腺がコリコリと肉棒を刺激する。思い切り突き上げた先端にはふわふわとした腸壁の感触があり、しかしそれは性器化しておりうぞうぞ蠢いてチンポを喜ばせようとしてくる。

こんな、セックスすることしか考えてないホモ穴で、妊娠できるわけ無いだろ💢ぅっ……んっ、じょ、常識考えろ💢常識的に考えて、あんたはただのオナホでしょ💢男の体でオスのチンポに奉仕するだけの、ふぅーっ奉仕専用の、肉オナホ💢ああー、もう、自覚あんのか、そのスケベボディによ💢やっべ、マジでちんぽ、とまんねっ💢

自分できますっオス妊娠、できます、オス妊娠チャレンジ、やらせてくださいっふんっふひっっ幽香さんの優秀遺伝子残させてくらさいっほひっっ、はーっっ、はーっっボクのおまんこで、立派に育てますからっそれっ、しょこ、んもぢっぎもぢいぃっボク、ママになりたいっ

うっせ💢訳わかんないこと言ってないで、さっさと、イけよ、ホモ野郎💢そろそろマジ無理だから、ザーメンはくれてやるからっ妊娠したければ、ふぅっ、ふうぅうっっーーーんっ、好きにしたら?無理でしょ💢精々、中射精しされたザーメン便器穴ホジリまくって、想像妊娠オナニーでもしてろ💢

し……しましゅ……それ、きもちよさそぉ…………

こんのドスケベホモショタが……💢

ばすんっ!ばすんばすんっ!

どちゅっ、どちゅっどちゅっ、ぶ、ぶぶぶうぅ〜〜〜っ!

ずぼっ、ずぼっっずぼぼっ!

ずるっっ、ずろろろ、にゅるっ!

っっほぉおわるっボクの男が終わっちゃう音、するぅっ幽香さんの本物おちんぽ様で、ボクの偽物が、殺されてる音するぅっっ

何が終わるだ、とっくに終わってんだろ、メス野郎が💢男がまだ終わってないやつが、こんなスケベなオス乳してるわけねーだろ💢

ぎゅっっっ、ぎりっぎちぎちっ!

ばすん!ぱんぱんぱんぱん、っっずぼっっ!

ごりっ、ごりごりっっっ!

イけよ、ほら、コレだろ💢ここ潰してほしいんだろ💢オラ、オラっ💢イけオラ💢去勢オス、イけっ💢イけ、イけ、イけ、イけ……イけイけイけイけイけイけイけっっっっっ……💢っく、い、イくっ、イくから、イけ、イけよぉっ💢

ぉ……ッはへっ、はへぇぇぇっっおちんぽさま強いっかっこいいっっ、お、おい、イきますっオマンコイぎまずっごりごりっ、オマンコ肉削られてっっばかになりゅっ幽香さんのかっこいいガチブトおちんぽ様でっぐっ……ぐひっ……っっ……おぢんぼじゃまれぇっっ男の子潰されて、メスになりますっメスアクメ、ぎめまずっっイグ、イグ、イグイグ、まんこイく、まんこイく、まんこイくまんこイくまんこイくまんこイくまんこイくッッッっおっっへぎょっおしりの穴、まんこになっれ、イグおまんご、イっっっっっっ……っっグぅ

びぐっっ、びくびく、びぐんんっっ

ぞくっ、ぞくぞくっ

ぱちぱちっ、ぷちっ

ぞわっっ、ゾワッ……

びくっ、びくっっ

部屋中に響き渡る、リグルのメスアクメ宣言。仰け反り、やわらかちんちんから情けないトロ汁を垂らして、ケツまんこを腸の奥からゾワつかせて、自分をアクメに突き上げた幽香の巨チンに、奉仕痙攣する。前立腺の膨らみが、刺激を求めて一層大きく存在感を見せ、幽香はその膨れ上がった前立腺を徹底的に虐める、勿論自分のペニス刺激に振り回されての側面もあるが、メスイキスイッチを壊れるほど押しまくられた結果、リグルは

脳みそからペニス、ケツ穴につながる一本軸に快感をスパークさせて、盛大にアクメを迎えた。痙攣、汁、嬌声、媚顔。何もかもが、男らしさを失っており、メスのそれになっている。

幽香に両足を絡めて、精子をねだっているところなど完全にメス仕草だ。

こンの、主人より先にアクメするなんて、どういうつもり💢めちゃくちゃスケベなショタ奴隷の暴走メスイキポルノ見せられて、チンポがまともじゃいられないわよ。💢イく、イくわよ、私もっ💢

ラストスパート、それを如実に思わせる激しい腰使いで、幽香はリグルのアクメ最中のケツマンコを掘り続ける。アクメ痙攣のたびにきゅっ、きゅっ、と締まる牡膣が、幽香の巨根を搾り上げ、精液を吐き出せと迫る。ふわふわの感触とザラザラの感触、ぬるぬるの感触と、熱い体温。恥も外聞もないメス声、男のくせにオスを煽り立てるメス顔。全てが……幽香の射精を誘う。

で、るっ射精るわよ💢ザーメン出すわよ、リグルっ膣の肉襞一枚一枚のあいだまで、ザー汁で溺れさせてあげるから、きっちり孕みなさい。オス辞めるって言うなら、ちゃんと排卵して、ちゃんと受精しろ💢射精す、射精るっ、射精射精射精射精射精射精射精る……射精ッッッッッ💢💢💢っ、おっ、おッッッ

せーしせーし……ほぎゅっっへッしゅしゅごっっあっっつはーっ、はへっっっっはへーーーーっ孕みまひゅっ幽香さんの精子で、オス妊娠しましゅっっっボテるっすっごい量のザーメンで、ボクのお腹、妊娠すボテるっやっばがちでやばいぃっっ中射精しの感触だけで、オマンコまたイくっお腹のなか幽香さんの精虫ウジャついてる感触だけで、脳みそとけるっはへーっっ、はひっイくっまたイくっ

ごぼっ、ごボボっっ

幽香のちんぽから、リグルのケツにザーメン浣腸が注ぎ込まれる。尋常ではない射精量は、確実にリグルのお腹を押し膨らませ、その圧迫感がリグルを追加のオーガズムへ押し上げる。情けない雑魚ペニスが、ひくん、ひくん、と揺れて、透明な精液を漏らした。彼のアクメは男としてのそれではなく、腰の奥底に潜む、いや存在しない、想像子宮を震わせるメスイキ。

排卵っ幽香さんチンポでメス化させられて、ボク、強制排卵しますっ絶対妊娠します妊娠しますから……赤ちゃんできたら、お嫁さんにしてくださいっ

だから、情婦を娶る分けないでしょ💢はーっっ、っあ、めっちゃ射精るっまだ射精てる、やっべ……キンタマフル稼働してるわ……出しながら精子作ってる、このメス野郎見てたら、キンタマ過労死するっっ……💢💢

びゅっ

ひっ……

びゅびゅっっっ

んへぁ

ごぼぼぼっっ

はぺっ……

どっっぷんんっ

ぉっひんっ

幽香の最後搾りの噴出に合わせて、リグルの体は追加アクメで跳ね、鼻血で汚れた鼻の下を伸ばした顔面を歪めながら変なイき声を漏らしている。

射精が収まるまで、幽香はリグルの脚を掴み、逃げられないように固定している。長い射精時間をようやく終わった射精のあと、幽香はリグルオナホのケツ穴から、巨根を抜き取る。

ずろろろろ……っ

〜〜〜〜っっっっーーー〜〜〜っッ

はーーーーっ、はーーーーっっ、えげつねえオナホだわ……💢こんなの傍においてあるこっちの身にもなれっての💢

開いたまま戻らないリグルの肛門。幽香の肉棒が抜き取られると、すぐさま大量の精液が逆流して漏れ出そうとする。リグルはそれを手で抑えて、流れ去らないように仰向けになってケツを高く上げた。

幽香さんの……もったい……ない……

戻らないアヌス。精液が漏れ逃げないように抑え高く上げたはずの尻穴を、リグルは……再びホジリ始めた。

はへっ……はへっ……はへっっ……

どこまでスケベなのよ、この穴ガキ……💢そんなのされたら、またチンポイラツクじゃないっ💢

スケベ衣装のまま、自分の精液に塗れ、匂いもプンプンに漂わせているメスショタが、目の前でまたアナニーを始める。幽香にとってはまたチンポの憂いとなる。

この、底なしメス男子がっ……💢

幽香は立ち上がって、その穴めがけてペニスを叩き込んだ。

§

幽香さんのおちんぽ様……やっぱり、おっきぃ……本物っ

リグルの直腸オナホでひとしきり性欲処理を終えた幽香は、ベッドの上で仰向けになり、枕に上半身を投げ出して満足そうに目を瞑っている。開いた股の間にリグルを起き、まだふたり乱交の余韻を残して半勃ちのペニスを彼に掃除させている。

ベッドは大量の精液と少しの血と愛液、それに便でめちゃくちゃに汚れている。ベッドだけではない、二人の体も同様のものが大量に付着して、悪臭さえ放っている。が、ふたりともそれを気に留めていない。むしろ二人で作り出した汚物に塗れながら睦み合いことも、興奮へのスパイスになっているようだった。

幽香の超弩級ペニスに抉じ開けられたリグルの尻の穴はまだ閉じきっておらず、少し動くたびに中から幽香の精液残りが流れ出す。幽香のペニスは何で汚れているのかもうわからないが、リグルが丁寧に口で掃除していた。その間も幽香は、自らの破壊的に巨大な乳房を撫で乳首に触って緩やかな自慰に耽っていた。リグルはお掃除フェラをしながら、幽香の指がその乳房をなぞり撫でている煽情的な光景を眺めている。

お前のメス顔の方がよっぽどポルノだわ、見てるだけでまた……

そういうわけで、幽香は今のところ休憩と称して目を閉じ仰向けになって体を放りだしている。加熱し汚物に塗れた体をクールダウンさせながら、その匂いをアロマのように楽しんでいる。

幽香の巨チンを丁寧に世話しながら、リグルはふと呟いた。

……幽香さんにも、あるんですよね

なぁにがぁ〜?

バケツ何杯分、で数えた方が早いだろう量の精液を吐精した幽香は、さすがに一時的に疲労しているリグルの言葉を余り真剣に聞いてはいない。目を閉じたまま投げやりな態度で続きの言葉がリグルから出てくるのに任せている。

ここに……

えっ

リグルはお掃除フェラを、再び射精を誘う性行為フェラに切り替える。

がっつかないで。あんたも水くらい飲んでき……お

まだ続きをしろと甘えてくるリグルを想像して目を開いた幽香だが、次の瞬間に様子が変わる。

リグルの指が、幽香のアヌスに滑り込んでいた。潤滑剤が必要な状態ではない、リグルの細い指は巨尻のシワを押し広げて容易に入り込む。そのまま、まっすぐ、微塵も迷うことなくリグルの指は、そこを押し込んだ。

コリっコリコリッ……

前立腺

ちょっ……んぅや、やめなさい、勝手にっ、あっ、ふぅっっ

これほど巨大なペニスがクリトリスと共存している幽香の体には、子宮と共存する〝それ〟が、あった。それをリグルがどこで察したのか、あるいは当てずっぽうで言ったのかは定かではないが、それは確かにあった。

わ、ぁ……おお、きい……

さ、触るんじゃ、ないわよっっ……ひぅ、ぁあっ……私の許可無く、私の中っ、ンっ、にぃっ……

リグルが少し指で触っただけでも分かるほど、幽香の前立腺の感触は、はっきりしたものだった。そして、浅い。

幽香はと言えば、そうした自覚さえなかった。これまで自分の尻穴を他人に触らせたことなどない、行為の際には100%幽香は攻めであり、肛門は挿れさせるものではなく、挿れる穴。リグルに指を入れられたことは愚か、前立腺を刺激されるなど、初めてのことだった。

だが、その性的な開発は、無意識の内に進んでいたようだった。巨大なペニスはクリトリスと共存し、十分に発達した膣と子宮も備えている完全なアンドロギュヌス、完全者としてほとんどの存在に対して優生である風見幽香の下半身は、こうしてリグルに向かってペニスを使いまくる性生活において、間接的に刺激を受け続けている。

私にも、あるっていうの……いえ、ある事自体は不思議ではないけれど……おおきい、ですって……?

ボクと同じくらい、ふっくらしてますよ……

こりっ、こりこりっっ

!?や、やめなさい、勝手に……んヒっ許可なく、そんなことっっ……をほっっっ

がくがくっっ

ぞくん、ぞくっぞくっ

肛門の奥、お腹の底を弄られる感触、そこから真っ直ぐにペニスに向かって電流が走るような刺激……快感が迸った。幽香にとって初めての前立腺快感、狼狽えてしまう。

待ちなさい、リグル、ちょっと待って。そこ、勝手に……い、っ、いぢっ……いぢるの、はァッ

腰が、浮く。

仰向けになってリグルに奉仕させていた体が勝手に跳ね、幽香はペニス全体に熱を帯びた快感電流がまとわりつくのを感じる。

マズい、これ……

ケツ穴を弄り回すリグルから逃げるために腰を引こうとするが、力が入らない。

これ……気持ち、イイっ

背筋を駆け抜けペニス、それに膣にまで快感が及ぶそれに、幽香はうっとりとしてしまっていた。リグルなんか片手で振り払えるはずの幽香だが……どこかでそうするのを拒否していた。本気で振り払って嫌っているように捉えられても本位ではないし……散々アクメを重ねた幽香にとって、肉欲快感が逃れがたい誘惑だったからだ。

だが、その選択は彼女を後悔させる。

弾き飛ばされたり殴られたりしないことを幽香の暗黙の許可とみなして、リグルは幽香の前立腺を優しく撫で続けることにした。

ふわりと撫で、一方でコリコリと存在感を見せるそれを優しく、押す。

ンっ

効果が露骨なまでに見て取れる。

半勃ちだった幽香のペニスは、それだけでさっきまでの唯我独尊な勃起姿に戻っている。先端から、じゅわ、と先走りが垂れた。

ここまで、感じるなんてっ……

余りの浮遊感に幽香は、リグルに一旦中断を命じようとする。が。

幽香さん……ご奉仕、しますね

ま、待ちなさ、ん

指ではなくペニスが、幽香のアヌスに侵入する。リグルの小さいペニスは難なく幽香の中を分け入り、的確にそれを押し潰した。

い、要らないっ……勝手な真似は許さないわよ、メス男のくせに、役立たずの粗チ、ン……ッをふっ、おヲッ!?お、ンおおおおおおおををォ、ッン

リグルが、幽香のアヌスに入り込んで腰を振る。それこそいつものようにリグルのペニスを加えこんでいるのが幽香の女陰であれば、三擦り半で射精するのは、リグルの方だ。だが、今回は違う。

びゅっ!ぶびゅっっ!

えっ……はや……

早くも射精したのは、幽香だった。

無意識の内に開発が終わっていた前立腺への刺激、その快感への対処法がわからない幽香は、まるで童貞が初めてのセックスで早漏するが如く、あっという間に吐精した。

ヒ……ァふ……な、なに勝手に、挿入れ……💢

幽香さんが、こんなあっという間に射精しちゃうなんて……

くちっ、くちくちくちっ……くちゅっ

容赦ないリグルの前立腺責め。メス男子として、その経験値は幽香など足元にも及ばない。その(されたときの)知識をフル活用して、全室線刺激にメロついた幽香を、責め立てる。

あんたの雑魚ちんぽなんかで、届くわけ……あヒぁ……ふっ、あっ、や、やめ、な……さっ

クリッぱちゅっ、ぱちゅっぱちゅんっっ

ごりっごりごりっ

っっっっ!!こ、こんな、ホモショタちんぽなんかで……くヒぃィ~~~~ッッッそんなの、き、きかない、おっ、感じないほっっっ、んぉぉぉ~~~~~……

びゅっ、びゅびゅっっっ!ぶばっ、びちゃっっ!

また、射精。幽香のキンタマが張り詰めて、全力で精子を製造している。上下に揺れて射精のスタンバイに入っているのも、リグルの目には明らかだった。いつもは自分のケツマンコに出される大量のザーメンを、今は自分が絞り出すのだと思うと。

幽香さんを……犯すっっ……犯すっっ

幽香の腸膣の中でシコリ膨れて自己主張を始める前立腺、元々女性として備わっている子宮とは別に追加で存在するそれは、もはやただの性行為用の快感器官だ。

びゅっっ、びゅううっっっ

イグっっ、ケツイきで、射精……っ💢リグルなんかに、イかされ……おぐっち、ちくしょ、ぉっ💢

幽香さん……おしりまんこ、弱すぎじゃないですか?

は、はあ!?誰がセックスザコですって!?メス男子の不要ちんぽなんかに、私のガチブトが負けるわけ……ヲふっ……ンっっっっ

おまんこだと全然奥まで届かないけど、ここなら、幽香さんに喜んでもらえるっっ

どちゅっっ、どちゅどちゅどちゅっっ

ぐりぐりぐりぐりっっっ!

どぴゅんっっ

……ほ、ほんとに、いい加減に、しなさっっンそ、そこばっかりするの、やめなさ……っ

えー、幽香さんだって、ボクのおしりおまんこに挿れたとき、ずーーーーーっと、ココ、イジメて来るじゃないですか。一晩中メスイきさせられたの、忘れてませんから、ねっ!

っっふぁけ、んにゃ

どぷんっとぷっ……

だ、だめ……責められたこと、ないから、快感の逃がし方、わかんない……っ

幽香さん……可愛い、です……簡単に射精しちゃう、ザコアナルだったなんて……

ち、ちがうわ!ただ、ちょっと、は、初めてだからよ……💢

初めての前立腺で、アクメできちゃうなんて、ボクよりよっぽど……

ごりっ、ごりごりごりっっ

びゅーーーっっ

ぐり、ぐぐぐっっ、ごりゅっっ

どぱっっ

幽香さん攻めるの……たまん、ないです……幽香さんを、女性として、愛してる感じ……ボク、もしかして、男の子になってますか?

な、なってないわよ、このメス男子……んぎっっそんなとこばっかり責めて、男、なんて、男らしさなんてっ……おと、こらし……っ

幽香の表情がトロンと崩れ、リグルを見る目が潤む。

だ、だめ、よ……こんなことであいつの〝男〟を、認めるなんて……で、でもっ……そこ、ばっかり、責められたら……

幽香さんと、ホモセックスしてる……女性としてではなくて、ちんぽのあるメス男子としての幽香さんと、ホモ……幽香さんと疑似ホモセっ

ちょっ、は早いっ、激しっほっやめっ、そこっぉっふ、ふたなり女様を、メス化オスに、するなんてっゆる、しゃないわよっ💢お、ぉぉぉ〜〜〜っっ……ほひっ、ほへっっあとれ、あとれおぼえへなひゃいよ……💢

ずぼっ、ずぼずぼずぼっ

ぶぽっぶぶっ

コリコリコリっっっぐりぃぃっっっ!

幽香さんっメスホモしようっ?幽香さんの逞しいおちんぽ男性様の、かわいいかわいい女の子、開発してボクとホモセックスっ幽香さん名誉男性になって、ボクとホモしよっ男の子のボクと、男の子の幽香さんで、一緒にメスアクメしよっ

し、しないっ💢ホモセックスなんか……ぉほっ……チンポにメス快感流れてくるっ……こんなの、こんなの女の快感じゃないっ、メスっっこれ、メスっっ

メス男子のボクが頑張って男するから、幽香さんはちんぽメスになってホモセックス幽香さんとホモセックス

ぢが、うっ💢こんなの、ホモじゃ、ねぇっ💢んをちんぽイくっ……オス子宮ゴリられて、ちんぽいくっ……これじゃあ、ほんとに、ホモっこんなの、ゆるさ、にゆるひゃないかりゃっっ

幽香さんのオス子宮に、精子かけたいっっ中射精ししたいっホモセックス中だし、させてっいいでしょ?幽香さん、中出ししていいですよねっ?

か、かってに、すればイイじゃない💢女の子をオスとみなしてホモセックスっんぎホモセックスして中射精しなんて、このクソホモ野郎っ💢出したければ、勝手に、出せばいいでしょぉっっ

びゅーーーっ、ぶしゅっ、ぶしっっっ!

言葉ばかりの悪態虚しく、立派なペニスからメスウェットの証を噴き出す幽香。本物の子宮がギンギンと欲情を訴え、淫裂からは真っ白く濁った愛液が絶え間なく垂れているが、代わりに前立腺を責められてチンポが潮を噴いて果てる。そんな錯誤のオーガズムを押し付けられて、幽香の性欲に、新たな開花が訪れようとしている。

中射精し許可、いただきました幽香さんのオス膣に、メス男子の不能精子、射精しますっこんなのホモセックスっ絶対ホモセックスじゃんっっコーフンするっ不能オスのザコチンポ、がんばっちゃってるっ退化キンタマが、うっすい精子精一杯濃縮してますっ射精しますからっホモセックス中だし、しますからっ孕んではらんでくださいっオス子宮でボクの赤ちゃん孕んでっ

ふーーーっふーーーっっっお、女のまんこ相手に役立たずのくせに、ホモセックスでは射精せるの?クソホモっ💢女相手にホモセックス燃えるなんて、最低っ、だわっ💢精々うっすいザーメン注ぐのね💢前立腺小室オス子宮で妊娠なんて、出来ないんだからっできない……わよね……?

射精しますっ、メス精子だしましゅっっイくイくイくイくイくイっくっっっ

びゅっっっっっっ!びゅるっっ、びゅううっっっっ!

びゅっっ、ぴゅぴゅっっっっっ!

どっっぷぉっっっっ!びゅううっっっっ!

えっ……んヒっ射精っ……多いっ精子多いっいつもより多いじゃないのよっ💢なによっっ、んぉっこ、こんなに出せるなんて、聞いてないわにぉっっ💢

しゅごい、れるっっ幽香さんとのホモセックス、せいしいっぱいれるっっ男にっボク男に戻っひぇるっっっおキンタマせりあがるっっ幽香さんのオスマンコに、ザーメンひっこぬかれへタマタマがフル稼働で、せーしつくってるっ

あ、あてるなっっ💢んひぉっっ射精、前立腺にびしゃびしゃあてるにゃっっ💢おホぉっっキッく……リグルの本気ザーメン、クっそ、キクぅっっっ💢ケツ粘膜に、リグル精子ぅっっ💢💢いつもコレくらい根性だひなひゃいよぉっっおっほぉぉ……タプつくっケツまんこ精子でたぷつくぅっオス感じるっリグルからオスなんか、感じるわけっ、ないにょにぃっっ射精……かっこいいって、おもっちゃうぅっ

ぼびゅううううっっっっっ!

ぶしゃあっっっっ、びゅるるるるっっっ!

どばっっ、ばしゃっっっ!

リグルに中出しされた幽香が、つられてチンポアクメをキメる。

いかに今回珍しくリグルが男射精を頑張っていたとは言え、幽香のデカマラ・デカタマの射精には及ぶべくもない。

リグルが幽香の尻膣に射精したのとは比べ物にならないほどの精液が、新たに撒き散らされる。幽香の腹、胸、それに顔が白いゼリーでパックし直され、リグルは吸い込まれるようにその中に倒れ込んで湯気立つ程のオス匂いを漂わせる精液ゼラチンを、舐め回す。

幽香さんの、ホモイキ精子っ……ぷるっぷるで、くっさぁれろっれろぉっっぁむっごくっ、ごくっっ

射精を終えた幽香は、呆けたようにベッドに崩れ落ちる。いつもと違う射精後感。リグルを組み伏せイき潰したあとの制服感ではなく、イかされた、射精させられたという、敗北感と虚脱感。それに、その中に仄かに浮かぶ、悦楽。

め、メス男子……こんな、きもちぃの……リグルなんかに、教えられる、なんて……

ぞくぞくと背筋を往復する、今までにない快感の残滓。精液まみれの胸の中で、体をくねらせて全身に幽香を感じ続けているリグル。ピンと立ち上がった巨乳輪と乳首を愛撫しながら、脱力する幽香の顔を覗き込んだ。

……幽香さんのイキ顔……かわいい……

ば、か……💢💢

§

ドゴッッ!

痛いっっ!!

容赦のないげんこつが、リグルの脳天を割った。

フン、オナホの分際で、主人の断りなしに攻め転してんじゃないわよ💢

さっさと片付ける!越権な行為で幽香を責めた責任として、リグル・ナイトバグは汚れたベッドの片付けをさせられていた。そうでなければ妖精メイドが淡々と行っていただろう、精液と汚物に塗れたセックス現場の片付けを、全裸のまま一人でさせられるリグル・ナイトバグ。

風見幽香はシャワーを浴び身綺麗になって、すっかり身なりを整えてそれを見張っている。

ぼ、ボクもシャワー浴びたいんですけど……

終わったらね

これ、布団とか、べっちょりでどうすれば

交換すれば?

ウチの居領地ナワバリでこんな上等な生地作れないんですけど

じゃあ、後払いね。また体で払ってもらうから。帳簿につけておくわよ。

ふぁぃ……

体で払う、というのが情夫としての努めばかりではなく純粋な肉体労働での納税も含んでいることは、流石に彼もわかっていた。

風見幽香の地位とこの館の設えを見れば、否応なく分かる。二人が怪我しまくった寝具はいずれも超一級品のもので、それは風見幽香がその立場相応な懐から賄われるレベルの品物である。それが、原状復帰不能な形で交換となったわけだ。リグル・ナイトバグの立場では、そうやすやす替えを出せるものではない。向こうしばらくは、追加の労働を必要とするだろう。

余計なことしなければ、よかったのにねえ?

ぅぅ……わ、割の良いお仕事ください……

一番割がいいで仕事は、また汚してしまうかも知れないわね。

え……と……

その意図を、理解はしたが反応に困るリグル・ナイトバグ。呆れたように鼻で笑い、風見幽香は言う。

次は防水シートでも敷いてからにしましょ

え、は、はいっ男っていうのも、悪くない、ですね……

はっ。現金なヤツ

幽香さんは、どっちのボクとセックスするのが好きでしたか?

風見辺境伯TheSleepingDandeLionと、その麾下にあるナイトバグ・眷魁ロード・リグル。主人と、ただの情夫と言うには、些か、気を許し過ぎにも見える。

どっちが、と問われた風見幽香は、少しだけ顔を赤くしてリグルから逸らした。

口を尖らせて、不満そうに、でも満更でもなさそうに、答える。

男も、悪くないわね